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第407話 コミュニケーション能力
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俺は、メディーナさんに同意を示しつつ、空笑いを返す。
そんなことをして玄関で会話をしていると、足音が近づいてくる。
「五郎さん、おかえりなさい」
「雪音さん、ただいま戻りました」
すぐに玄関から移動しなかった俺達に話しかけてくる雪音さん。
「ナイルさんと、メディーナさんもお仕事お疲れ様です。夕食の準備が出来ていますので、食事にしましょう」
「はい。奥方様」
「はっ! 馳走になります」
ナイルさんと、メディーナさんが、それぞれ居住まいを正すと、そう雪音さんに答える。
「そんなに畏まらなくていいですから」
逆に雪音さんが恐縮してしまう始末。
「いえ! ゴロウ様は、ノーマン様の孫に当たられる方であります。それに時期、ルイズ辺境伯領の領主になられる方! そうなれば伯爵位も有しているノーマン様の位を受け継ぐことにもなられます! つまり雪音様は、次期伯爵夫人とも言えます。そんな方が、我ら兵士の食事を作ってくれるなど、普通はあり得ない事です!」
「そ、そうですよね……。でも、そのへんは日本に居る間は気にせずに行動してください。他の方に知られるのは困りますから。ナイルさんは、その辺は、ご理解頂けますよね?」
「はっ! 申し訳ございません!」
「そんなにいいですから」
「はっ!」
「メディーナさんも、まだ私は五郎さんとは結婚していませんから結婚式を挙げてから、そう言ってくださいね。あとは様付けはしなくていいですから」
「分かりました。以後、気を付けます」
「それではご飯に致しましょう」
「わんっ!」
「フーちゃんもここに居たのね? フーちゃんの分の料理も用意するから」
雪音さんは台所へと向かってしまう。
そんな後ろ姿を見ながら――、
「ナイルさん、メディーナさん。部屋着に着替えてください」
「分かりました。ゴロウ様」
「はっ!」
んー、どうも二人とも雪音さんの話を雪音さん限定で聞いている節があるようだ。
まぁ、俺としては、二人がどう俺を思っているかは分からないが、一応敬意を示してくれてもいるし話し方も治す必要もあるのか? と、問われれば、雪音さんと違って、俺は異世界に多く赴く場面もあるし、下手に治すと今度、公的な場で言い方を間違えたら侮られる原因にもなりかねないし、治す事に固執する必要もないだろう。
何か地球の方で問題があるのなら、その都度、フォローすればいいわけだし。
「じゃ居間で待っていますね」
俺は、二人にそう返すと、廊下を歩き台所を通り過ぎる。
台所では、雪音さんが天ぷらなどを皿に載せているところだった。
「これ運びますね」
「はい! お願いします」
野菜を中心とした天ぷらが盛られた大皿を手に居間へと移動すると、桜がお茶碗や箸を並べていた。
「――あ! おじちゃん! おかえりなさい!」
「ただいま。よく眠れたか?」
「うん! そういえば、おじちゃん!」
「どうした?」
「2週間後から雪が降るって!」
「そうなのか?」
さっきから、やたらと雪が降ると聞かされているが――、
「それってフーちゃんが情報源か?」
「うん!」
「なるほど……」
どうやら、そういう遊びが流行っているらしい。
きっとナイルさんやメディーナさんと示し合わせている可能性があるが……、
「わかった。気を付けておく」
天ぷらが盛られている大皿を居間のテーブルの上に置いたあと、桜の頭を撫でながら俺は答える。
そして食事の準備が終わったところで、ナイルさんとメディーナさんが姿を見せる。
二人ともラフな格好をしている。
ナイルさんは、紺色のジーパンと青いシャツ。
メディーナさんは、赤色のワンピースと言った具合で――。
「ゴロウ様、遅くりました」
「ナイルさん、気にしないでください。それよりも食事にしましょうか」
「はっ! それでは手を洗ってまいります。いきますよ、メディーナ」
「了解しました。副隊長」
まるで軍人みたいなやりとりを横目で見ながら、俺はコタツの中に入る。
フーちゃんは、すでに雪音さんが用意したローストビーフを口にしている。
桜は、1500mlのオレンジジュースの蓋を開けようと頑張っている。
「かたいのー」
「ほら、貸してみろ」
「桜がんばるの!」
「そ、そうか……」
新品の? オレンジジュースのペットボトルは、それなりに固いから桜では、開けるのは難しいと思うんだが……。
でも、以前にママ友掲示板で子供は自分で物事を何とかしたいという欲求もあるからと描かれていたからな……。
俺はじーっと桜がペットボトルと格闘しているのを見ていると――、
「桜ちゃん。はい、ご飯」
「――あ、ありがとうなの」
雪音さんが差し出した白米の入ったお茶碗を受け取る桜。
そして、ごく自然な動きで桜からオレンジジュースを受け取った雪音さんがプシュ! と、言う音と共にオレンジジュースのペットボトルを空けて桜に渡していた。
それをごく普通に受け取る桜。
「……」
それを見ていた俺は思わず無言になる。
「どうかしましたか? ゴロウ様」
「――いや、何でもないです」
「そうですか?」
何と言うか桜と自然とコミュニケーションが取れる雪音さんは普通にすごいな。
そんなことをして玄関で会話をしていると、足音が近づいてくる。
「五郎さん、おかえりなさい」
「雪音さん、ただいま戻りました」
すぐに玄関から移動しなかった俺達に話しかけてくる雪音さん。
「ナイルさんと、メディーナさんもお仕事お疲れ様です。夕食の準備が出来ていますので、食事にしましょう」
「はい。奥方様」
「はっ! 馳走になります」
ナイルさんと、メディーナさんが、それぞれ居住まいを正すと、そう雪音さんに答える。
「そんなに畏まらなくていいですから」
逆に雪音さんが恐縮してしまう始末。
「いえ! ゴロウ様は、ノーマン様の孫に当たられる方であります。それに時期、ルイズ辺境伯領の領主になられる方! そうなれば伯爵位も有しているノーマン様の位を受け継ぐことにもなられます! つまり雪音様は、次期伯爵夫人とも言えます。そんな方が、我ら兵士の食事を作ってくれるなど、普通はあり得ない事です!」
「そ、そうですよね……。でも、そのへんは日本に居る間は気にせずに行動してください。他の方に知られるのは困りますから。ナイルさんは、その辺は、ご理解頂けますよね?」
「はっ! 申し訳ございません!」
「そんなにいいですから」
「はっ!」
「メディーナさんも、まだ私は五郎さんとは結婚していませんから結婚式を挙げてから、そう言ってくださいね。あとは様付けはしなくていいですから」
「分かりました。以後、気を付けます」
「それではご飯に致しましょう」
「わんっ!」
「フーちゃんもここに居たのね? フーちゃんの分の料理も用意するから」
雪音さんは台所へと向かってしまう。
そんな後ろ姿を見ながら――、
「ナイルさん、メディーナさん。部屋着に着替えてください」
「分かりました。ゴロウ様」
「はっ!」
んー、どうも二人とも雪音さんの話を雪音さん限定で聞いている節があるようだ。
まぁ、俺としては、二人がどう俺を思っているかは分からないが、一応敬意を示してくれてもいるし話し方も治す必要もあるのか? と、問われれば、雪音さんと違って、俺は異世界に多く赴く場面もあるし、下手に治すと今度、公的な場で言い方を間違えたら侮られる原因にもなりかねないし、治す事に固執する必要もないだろう。
何か地球の方で問題があるのなら、その都度、フォローすればいいわけだし。
「じゃ居間で待っていますね」
俺は、二人にそう返すと、廊下を歩き台所を通り過ぎる。
台所では、雪音さんが天ぷらなどを皿に載せているところだった。
「これ運びますね」
「はい! お願いします」
野菜を中心とした天ぷらが盛られた大皿を手に居間へと移動すると、桜がお茶碗や箸を並べていた。
「――あ! おじちゃん! おかえりなさい!」
「ただいま。よく眠れたか?」
「うん! そういえば、おじちゃん!」
「どうした?」
「2週間後から雪が降るって!」
「そうなのか?」
さっきから、やたらと雪が降ると聞かされているが――、
「それってフーちゃんが情報源か?」
「うん!」
「なるほど……」
どうやら、そういう遊びが流行っているらしい。
きっとナイルさんやメディーナさんと示し合わせている可能性があるが……、
「わかった。気を付けておく」
天ぷらが盛られている大皿を居間のテーブルの上に置いたあと、桜の頭を撫でながら俺は答える。
そして食事の準備が終わったところで、ナイルさんとメディーナさんが姿を見せる。
二人ともラフな格好をしている。
ナイルさんは、紺色のジーパンと青いシャツ。
メディーナさんは、赤色のワンピースと言った具合で――。
「ゴロウ様、遅くりました」
「ナイルさん、気にしないでください。それよりも食事にしましょうか」
「はっ! それでは手を洗ってまいります。いきますよ、メディーナ」
「了解しました。副隊長」
まるで軍人みたいなやりとりを横目で見ながら、俺はコタツの中に入る。
フーちゃんは、すでに雪音さんが用意したローストビーフを口にしている。
桜は、1500mlのオレンジジュースの蓋を開けようと頑張っている。
「かたいのー」
「ほら、貸してみろ」
「桜がんばるの!」
「そ、そうか……」
新品の? オレンジジュースのペットボトルは、それなりに固いから桜では、開けるのは難しいと思うんだが……。
でも、以前にママ友掲示板で子供は自分で物事を何とかしたいという欲求もあるからと描かれていたからな……。
俺はじーっと桜がペットボトルと格闘しているのを見ていると――、
「桜ちゃん。はい、ご飯」
「――あ、ありがとうなの」
雪音さんが差し出した白米の入ったお茶碗を受け取る桜。
そして、ごく自然な動きで桜からオレンジジュースを受け取った雪音さんがプシュ! と、言う音と共にオレンジジュースのペットボトルを空けて桜に渡していた。
それをごく普通に受け取る桜。
「……」
それを見ていた俺は思わず無言になる。
「どうかしましたか? ゴロウ様」
「――いや、何でもないです」
「そうですか?」
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