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第402話 負動産

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 呟いた声は、周辺に響き渡る。
 ただ、それは反響することはない。
 どこまでも続く空虚な場所で、声が広がり拡散していくだけ。
 そこで、俺は足元を見て自分が空の上に立っていることに気が付いた。
 
「うおおおおっ!?」
 
 思わず意識してしまい声を上げてしまう。
 それと同時に、足元が崩れるような感覚を覚えると同時に、体は落下を始める。
 体は慣性に従い落下し続け――、地表が見えてきたところで気が付く。
 
「――ッ」
 
 声にならないが、視界に入ったのは、ギリシャの神殿のようなモノ。
 それらが数十、数百と視界に入ってくる。
 それを見て、日本ではないと言う事に気が付くと同時に、神殿は俺が落下し続けるごとに視界内で大きくなっていく。
 地表まであと、数十メートルで叩きつけられる! と、思ったところで――、
 
「最強の魔法師の匂いを感じ取ってきてみれば――」
 
 そう声が聞こえた瞬間、俺は目を覚ました。
 瞼を空けて天井を見る。
 視界に入る天井は、俺の部屋――、居間だった。
 
「へんな夢を見たな」
 
 まるで夢とは思えないほどな現実感のある夢に、俺は溜息をつきながら無意識の内に両手をわしゃわしゃと動かす。
 
「がるるるっるるる。わんっ! わんっ!」
「あ、悪いな。フーちゃん」
「わんっ!」
 
 そういえば寝る前に、湯たんぽ代わりに懐に入れて寝たんだっけか。
 フーちゃんから手を離すと、腕の中から出ていき台所の方へと向かっていく。
 
「あ。五郎さん、おはようございます。寝られましたか?」
「はい。俺、何か変な事を言ってませんでしたか?」
 
 へんな夢を見た事もあり俺は雪音さんに話しかけるが、彼女は頭を左右に振ると、
 
「いえ。良く寝ていましたよ? 桜ちゃんと和美ちゃんが、何度か五郎さんが寝ている居間を出入りしていましたけど?」
「そうですか」
「二人とも、ぐっすりと寝ている五郎さんを見たらつまらなそうに部屋に戻っていきましたけど」
「そ、そうですか……。そういえば、店の方はどうですか?」
「お店の方は、休憩が終わってからは恵美さんとナイルさんとメディーナさんの3人で回しています」
「それでは特に問題は無いと言う事ですね」
「そうですね。それよりも五郎さんもお昼ご飯を食べますよね?」
「あ。お願いします」
「それでは一緒に食事をしましょう」
 
 雪音さんが作ってくれた昼食、それを少し遅れた時間に摂ったあと、雪音さんが出してくれたお茶を啜る。
 
「あ、そういえば五郎さん。白井不動産の方から、五郎さんが寝ている間に電話がありました」
「そうですか。わかりました。すぐに電話をしてみます」
 
 お茶を飲んだあと、俺は携帯電話をとり白井不動産に電話を入れる。
 数コール鳴ったところで――、
 
「はい。白井不動産です」
「月山五郎です。白井孝也さんへ取次をお願いできますか?」
「畏まりました。月山五郎様ですね? すぐに当社、白井に代わりますのでお待ちください」
 
 落ち着いた雰囲気の女性が、そう答えてくると保留音が鳴る。
 保留の時間は20秒ほどだろうか?
 電話が繋がる音と共に――、
 
「白井孝也です」
 
 以前に、話した事がある年配特有の擦れた声が電話口から聞こえてきた。
 
「月山です。先ほど、連絡を頂いたと聞いたのですが――」
「はい。先日、外資系企業が投資している結城村周辺の山間部や山林部の売買について、目途が立ったため、ご連絡をさせて頂きました」
「それって外資系のみという事でしょうか?」
「そうなります。個人や日本企業相手ですと、交渉のテーブルを用意するのには、もう少し時間がかかりますから」
「そうですか……」
 
 まぁ外資系企業は利益には聡い。
それに、少しでも黒字になるようなら意思決定も早いから、先んじて交渉出来るのは当然と言えば当然なのかも知れないな。
 
「それで、先方からの提案なのですが、外資系企業が購入した土地は、結城村の10%ほどの面積がありまして――」
「それって、かなりの広さですよね?」
「はい。ただ、山林部と山間部という事もあり、10億円ほどあれば手を打つと――」
「儲けはでるんですか?」
「――むしろ固定資産税や、山の管理や維持費で赤字状態ですから、すぐに手放したいというのが購入した外資系企業側の考えのようです。完全に負動産と化していますから」
「それは、喜ぶべきことか微妙ですね」
 
 俺は思わず口に出してしまうが――、
 
「はい。ただ、外資系企業としては、プラスになるならと購入をしたようですが土地の活用方法に至っては補助金制度を利用した太陽光発電くらいしか今はありませんからね。ただ、太陽光発電は斜面に作れば、土砂崩れの原因になり国道や県道を塞ぐことにもなりかねませんから。その時には、権利者に全責任が行きますから――。現に、日本全国で太陽光パネルによる土砂崩れはニュースにはなってないだけで膨大な件数に渡っていますから」
「そうなんですか?」
「はい。それに補助金がなければ正直赤字ですし、メンテナンスや修繕費用、モジュールの交換などを考えると原発以上の環境破壊設備と言っても過言ではありませんし、それは既に表面化しつつありますから、外資系企業としては手を引きたいというのが正直なところのようです」
「じゃ、自分の提案は――」
「渡りに舟と言ったところかと思います」
 
 
 
 
 
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