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第400話 利益折半

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「藤和さん、でもそれだと、普通に大型のスーパーとかで良くないですか? アメリカの大資本が展開しているようなパレットの上に商品を置いたまま販売するような形の方が――」
「それだと、影響力がありすぎます。月山様、総合デパートやスーパーですら個人商店を駆逐しました。それは歴史が証明しています。歴史では19世紀後半のフランスで実際に総合デパートが出来て個人商店を潰し、問題になっていたとされています。ですから、そうなれば、要らぬ諍いを起こす原因にもなりますし妬みや憎しみと言った矛先を向けられることになります。そして、そんな総合デパートやスーパーですら駆逐したのがアメリカの大資本が運営する倉庫での販売です。そんなモノを、この世界に持ち込んだらどうなるのか想像もつきません」
「つまり、ギャルリを作るというのは――」
「個人商店を取り入れる方式で考えています」
「個人商店を?」
「はい。おそらく王族と関わりがあり、婚姻関係を結んだ月山様とルイーゼ様との子供は王位継承権を持ちます。そうなれば、良くはい思わない貴族も多いでしょう。そこで利益を分散し与える方式を取ろうと考えています」
 
 それって――、
 
「貴族に個人商店を出させる? みたいな?」
「はい。もちろん、月山様が商品を提供するという形を取りますが――」
「つまり仲買――、問屋みたいな方式を取ると?」
「平たく言えばそうなります。利益折半と言ったところですね。そうすれば貴族や商人なども利益にありつくことができますから、彼らが月山様の盾になってくれるでしょう」
「なるほど……」
 
 会話をしていると馬車は、月山雑貨店の前に停まる。
 俺と藤和さんは馬車から降りる。
 そして、周囲を見渡した藤和さんは、
 
「ざっと見渡した限りでは、おそらく200店舗は入れることは出来るでしょう。それだけの店舗を取りまとめて運営するのは大変ですが、商品を卸すと言う事だけを考えるのなら問題は無いと思います」
「つまり、俺が異世界で商品を販売するというよりも商品を卸すという方向で舵を切った方が良いって事ですか?」
「はい。社員教育をするには人手も時間もありませんから」
「そうですか……」
 
 たしかに、大型店舗を経営する為には、人材育成が必要だと言う事は理解できる。
 それに、いまの俺には、それだけの余裕も時間もない。
 それならいっその事、問屋として商品を卸すだけに力を入れた方が良いのかも知れない。
 異世界には異世界の販売の流儀があることだし。
 
「それって、商品は卸すけど、そのあとの販売に関しては問屋は関与しないって事ですよね? 藤和さんが、無線機に関して話していたみたいな……」
 
 つまり責任の所在を別のところに移してしまうということ。
 
「はい。余計な問題事は、現地の人に被ってもらうのが得策でしょうね。それでも、日本の製品は古代ローマ帝国時代よりも中世暗黒期よりも遥かに進んでいますから、こぞって商人や貴族が商品を求めてくれると思っています」
「なるほど……商品に魅力があるからこそできる芸当ということですね」
「はい。今の日本の家電業界が持っていないモノですね。それでは月山様もギャルリを作ると言う事で――」
「そうですね。それで行きましょう」
 
 まぁ、俺としては、元の世界でする事は山のようにあるから異世界での事に関しては出来るだけ問題を起こさずに低コストで進めていきたい。
 
「――では、そのような形で今後は異世界ではギャルリを作る事。それに伴いテナントを募ることに致しましょう。月山様は商品を提供する問屋という形で」
「ですね。商品の降ろす事に関しては、藤和さんに一任しても大丈夫ですか?」
 
 正直、土地の売買や簡易郵便局の開設に、自宅の新築や高速道路工事に、金山の運用、結城村内での大型ガソリンスタンドや大型スーパーの建築などと、異世界に掛かり切りになるのは無理がありすぎる。
 
「――! わ、分かりました。藤和一成、月山様のご期待に沿えるように全身全霊を賭して取り組ませて頂きます」
「あ――、でも……、藤和さん」
「はい? なんでしょうか?」
「他の店舗にも商品を卸していて忙しいようでしたら、そこまで無理はしなくていいので、何かあれば言ってください」
「いえいえ。大丈夫ですから! それよりも問屋として取引をしていく上で貨幣のやり取りは如何致しましょうか?」
「そういえば、藤和さんは、金での支払いも可能になったと以前に言っていましたよね?」
「はい」
 
 コクリと頷く藤和さん。
 以前に藤和さんは紙幣での支払いでなくとも金での直接の取引でも問題ないと言っていた。
 それなら――、
 
「藤和さんが問題ないのなら、金での取引でも大丈夫ですよ?」
「分かりました。それでは、売上に対するマージンですが――」
「ああ。そうですね」
 
 そういえば、今までは、異世界に卸していた利益の大半は月山雑貨店を経由していたから、殆ど月山雑貨店の売り上げとして受け取っていたが――、 
  
 「いままで月山様に納品していた金額ではなく、貴族や商人に卸した後の利益の金額の3割と言ったところで、どうでしょうか?」
 
「3割ですか? 別にいいですけど……」
 
 まぁ、俺的には店を経由するだけで利益が入るから何の文句もない。
 管理や卸しを藤和さんに一括するのだから半分でも良いくらいだが、まぁ藤和さん側から、そういう風に提示してきたのだから文句はない。
 
 
 
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