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第395話 辺境伯との会話2(8)
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「もうしばらくとは?」
「今、雪音さんの指輪を作っている段階ですし、式場もまだ――」
「式場? 式場は、この辺境伯邸を使えばよいではないか?」
「え?」
流石に、雪音さんは現代日本を比重を置いているから異世界で結婚式を挙げるのは些か問題だと思うんだが……。
「月山様」
「藤和さん?」
「雪音さんの結婚式に関して思う所がありましたら、日本と異世界で、それぞれ挙式をあげればいいだけかと思われます」
その手があったか!
ただ、それを雪音さんが了承してくれるかどうかは別問題だが、異世界においても雪音さんが正妻と言う事を印象付けておきたいから、異世界で結婚式を挙げることは意味のあることだよな? ――と、言うか異世界で上げておかないと雪音さんの立場が、他のルイーゼさんや、リーシャさんよりも下と見られかねない。
それは、俺としても望むことではない。
「そうですね……。それでは辺境伯様」
「うむ。――では、指輪が出来たら教えてくれ。それに合わせて、こちらも準備をするとしよう」
「分かりました」
「ヴェルナー卿も、それで宜しいかな?」
「もちろんです。それでは、結婚式は全員一緒にされるということで?」
「うむ。それがよかろう」
ヴェルナー卿は納得したようで頷くと、
「それでは、本日は、これでお暇させてさせていただきます。他にゴロウ様と辺境伯様との間で話し合いがあるようですし」
「すまんな」
「――いえいえ。こちらとしても、今回は実りのあることでしたから――。エミリー、帰るぞ」
「はい、お父様。ルイズ辺境伯様、ゴロウ様、それでは失礼致します」
ヴェルナー卿と、エミリーさんは頭をそれぞれ下げてくると執務室から出ていった。
執務室に残されたのは俺と藤和さんと辺境伯。
「――さて、少し気分を変えるとするかのう?」
そう言った辺境伯は、使用人を呼び出す為に鈴を鳴らす。
すぐにメイド達が入ってくると、お茶の準備を整えて部屋から出ていった。
「まずは、お茶でも飲んで気分転換と言ったところかのう」
俺や藤和さんの前にも、ティーカップが置かれており、陶器の中には紅茶が注がれていた。
二人してティーカップに口をつけたあと、
「それにしても、流石は儂の孫と言ったところかのう? 天然で女を落すとは思っても見なんだぞ?」
「天然って……。自分は、そのつもりではないんですが……」
「まぁ、貴族が何人も妾を持つ事は当たり前だからのう。そして、それは貴族としての嗜みでもあるから問題ないがの」
「そ、そうですか……」
てっきりお小言をもらうと思っていたが、どうやらそういう感じではないようだ。
むしろ、褒められている? と、感じてしまうほどだ。
「それにしても、トウワとやら」
「何でしょうか? ノーマン辺境伯様」
「お主、ハマス伯爵家令嬢が抱えている問題を看破しておったな?」
「それは、御令嬢との婚約を他貴族家は敬遠しているという問題点でしょうか?」
――ん? どういうことだ? 敬遠されている? 婚約を? 病を患っている時なら、いざ知らず、すでに完治しているというのに?
「ふむ。どうやら、我が孫は何が理由かまでは察してはいないようだのう」
「――っ」
俺を試すかのような言葉を投げかけてくる辺境伯。
それに対して、俺は頭を回転させる。
すでに藤和さんが看破した問題。
それは、病に起因する事だと言っていいはずだ。
そうなると……。
「病が完治しても、それを証明する手立てがないということで結婚を忌避されると言う事ですか……。あとは結婚適齢期を過ぎていると――」
「ふむ。まぁ、半分正解と言ったところかのう」
「半分……」
「簡単な話じゃ。一度でも不治の病に罹った女性を嫁に貰うと言うのは、危険を内包している可能性があると言うこと。それは生まれてくる子供にも影響があると、どの貴族は考えておる。――いや、貴族だけではないな。平民も同じように考えておる」
「……そうですか」
「うむ」
俺と辺境伯との話を聞いてた藤和さんが、ティーカップを置くと口を開く。
「優生思想ですか……。困ったものですね」
眉間に皺を寄せて、そう呟く藤和さんを見て――、「だが、それが普通である」と、辺境伯は答えた。
「そうですか。ただ優生学というのは、あくまでも主観的なモノであり科学的な根拠はありません。私達の世界でも、優生学が証明されていませんが――」
そこで藤和さんが言葉を切る。
そして――、少し考えた素振りを見せると、
「こちらの世界では科学は、そこまで発展はしていませんから、そういう考えになる事は否定はしませんし、できません。何よりも、私達の世界とは技術の進歩もそうですが、色々な面で異なりますから」
「うむ。そう言う事もあってハマス伯爵家の令嬢は嫁としての嫁ぎ先は絶望的であった。ゴロウが居なければな――」
「あ……」
つまり俺は体のいい嫁ぎ先として見られたということか……。
「まぁ、ヴェルナー卿も、どういう考えがあってゴロウの元に娘を嫁がせようとしたのかは分からぬが、少なくとも子煩悩で有名であったヴェルナー卿が決めたのだ。何かしらの事はあったのだろう?」
そう辺境伯は、俺に問いかけてきた。
「今、雪音さんの指輪を作っている段階ですし、式場もまだ――」
「式場? 式場は、この辺境伯邸を使えばよいではないか?」
「え?」
流石に、雪音さんは現代日本を比重を置いているから異世界で結婚式を挙げるのは些か問題だと思うんだが……。
「月山様」
「藤和さん?」
「雪音さんの結婚式に関して思う所がありましたら、日本と異世界で、それぞれ挙式をあげればいいだけかと思われます」
その手があったか!
ただ、それを雪音さんが了承してくれるかどうかは別問題だが、異世界においても雪音さんが正妻と言う事を印象付けておきたいから、異世界で結婚式を挙げることは意味のあることだよな? ――と、言うか異世界で上げておかないと雪音さんの立場が、他のルイーゼさんや、リーシャさんよりも下と見られかねない。
それは、俺としても望むことではない。
「そうですね……。それでは辺境伯様」
「うむ。――では、指輪が出来たら教えてくれ。それに合わせて、こちらも準備をするとしよう」
「分かりました」
「ヴェルナー卿も、それで宜しいかな?」
「もちろんです。それでは、結婚式は全員一緒にされるということで?」
「うむ。それがよかろう」
ヴェルナー卿は納得したようで頷くと、
「それでは、本日は、これでお暇させてさせていただきます。他にゴロウ様と辺境伯様との間で話し合いがあるようですし」
「すまんな」
「――いえいえ。こちらとしても、今回は実りのあることでしたから――。エミリー、帰るぞ」
「はい、お父様。ルイズ辺境伯様、ゴロウ様、それでは失礼致します」
ヴェルナー卿と、エミリーさんは頭をそれぞれ下げてくると執務室から出ていった。
執務室に残されたのは俺と藤和さんと辺境伯。
「――さて、少し気分を変えるとするかのう?」
そう言った辺境伯は、使用人を呼び出す為に鈴を鳴らす。
すぐにメイド達が入ってくると、お茶の準備を整えて部屋から出ていった。
「まずは、お茶でも飲んで気分転換と言ったところかのう」
俺や藤和さんの前にも、ティーカップが置かれており、陶器の中には紅茶が注がれていた。
二人してティーカップに口をつけたあと、
「それにしても、流石は儂の孫と言ったところかのう? 天然で女を落すとは思っても見なんだぞ?」
「天然って……。自分は、そのつもりではないんですが……」
「まぁ、貴族が何人も妾を持つ事は当たり前だからのう。そして、それは貴族としての嗜みでもあるから問題ないがの」
「そ、そうですか……」
てっきりお小言をもらうと思っていたが、どうやらそういう感じではないようだ。
むしろ、褒められている? と、感じてしまうほどだ。
「それにしても、トウワとやら」
「何でしょうか? ノーマン辺境伯様」
「お主、ハマス伯爵家令嬢が抱えている問題を看破しておったな?」
「それは、御令嬢との婚約を他貴族家は敬遠しているという問題点でしょうか?」
――ん? どういうことだ? 敬遠されている? 婚約を? 病を患っている時なら、いざ知らず、すでに完治しているというのに?
「ふむ。どうやら、我が孫は何が理由かまでは察してはいないようだのう」
「――っ」
俺を試すかのような言葉を投げかけてくる辺境伯。
それに対して、俺は頭を回転させる。
すでに藤和さんが看破した問題。
それは、病に起因する事だと言っていいはずだ。
そうなると……。
「病が完治しても、それを証明する手立てがないということで結婚を忌避されると言う事ですか……。あとは結婚適齢期を過ぎていると――」
「ふむ。まぁ、半分正解と言ったところかのう」
「半分……」
「簡単な話じゃ。一度でも不治の病に罹った女性を嫁に貰うと言うのは、危険を内包している可能性があると言うこと。それは生まれてくる子供にも影響があると、どの貴族は考えておる。――いや、貴族だけではないな。平民も同じように考えておる」
「……そうですか」
「うむ」
俺と辺境伯との話を聞いてた藤和さんが、ティーカップを置くと口を開く。
「優生思想ですか……。困ったものですね」
眉間に皺を寄せて、そう呟く藤和さんを見て――、「だが、それが普通である」と、辺境伯は答えた。
「そうですか。ただ優生学というのは、あくまでも主観的なモノであり科学的な根拠はありません。私達の世界でも、優生学が証明されていませんが――」
そこで藤和さんが言葉を切る。
そして――、少し考えた素振りを見せると、
「こちらの世界では科学は、そこまで発展はしていませんから、そういう考えになる事は否定はしませんし、できません。何よりも、私達の世界とは技術の進歩もそうですが、色々な面で異なりますから」
「うむ。そう言う事もあってハマス伯爵家の令嬢は嫁としての嫁ぎ先は絶望的であった。ゴロウが居なければな――」
「あ……」
つまり俺は体のいい嫁ぎ先として見られたということか……。
「まぁ、ヴェルナー卿も、どういう考えがあってゴロウの元に娘を嫁がせようとしたのかは分からぬが、少なくとも子煩悩で有名であったヴェルナー卿が決めたのだ。何かしらの事はあったのだろう?」
そう辺境伯は、俺に問いかけてきた。
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