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第390話 辺境伯との会話2(3)
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「あの、そろそろ良いですか?」
仲が良いのは結構なことだが、あまり長く対話をされても、明日も俺は仕事があるので早めに辺境伯との会話を終わらせたい。
なので、藤和さんとセルジッドさんとの会話に割って入ることにした。
「あ――。これは、申し訳ありません。ゴロウ様」
セルジッドさんが、頭を下げて謝辞を述べてくる。
「――いえ。お二人の仲が良い事は自分としても良い事なので――」
「月山様……」
藤和さんが、何やら恨めしい声色で俺の苗字を呼んでくるが、そういう本当は嫌なんですよ! って、表情はいいから。
「ふっ――、それではゴロウ様。辺境伯様は執務室でお待ちしています。ご案内致します」
「あ、お願いします」
セルジッドさんの言葉に俺は返事しながらソファーから立ち上がる。
そして執務室まで、俺と藤和さんは、セルジッドさんの後をついて歩く。
「月山様」
すると、後ろから小声で、藤和さんが話しかけてくる。
「どうかしましたか?」
「いえ。訂正しておこうと思いまして――」
「訂正ですか?」
「はい。セルジッドさんは、私のことを月山家の正式な家令として見ているようです」
「そうみたいですね」
「はい。そして、彼は、どうやら私が彼の今の立場を奪うと勘違いしているようです。私が訂正しなかったのも多少は問題はありますが……」
「どういう意味ですか?」
小声で、俺も藤和さんに話しかける。
「簡単な話です。セルジッドさんは、私に家令の座を奪われかねないと――、そう思っているのです」
「え? それって、つまり……」
俺が、二人の仲は良いと思っていたのは勘違いだと?
「はい。私の方はセルジッドさんに関しては何とも思っていませんが、向こうは敵視しています」
「そうなんですか……。でも、藤和さんが例え執事だったとしても、藤和さんに仕事を奪われるなんて普通は――」
藤和さんは、頭を左右に振り、俺の言葉を最後まで聞かずに動作で否定してくる。
「月山様は家臣団という言葉を知っていますか?」
「家臣団?」
「そうです。分かりやすくいえば、日本では総理大臣が新しく決まった場合、閣僚が一新されますよね? それと同じで、貴族も自身の意思決定がスムーズに決まるようにと、自分の息がかかっている人間だけで配下――、つまり家臣団を形成するのが一般的なのです。ですから、セルジッドさんが、私が月山家に仕えている家令だと思っている以上、彼が自身の立場や役職に危機感を覚えるのは当然なのです」
「なるほど……。それなら、藤和さんのことは伝えておいた方がいいかも知れないですね。余計な波風を立てるのも困りますから」
「いえ。丁度、聞こえていたようです」
前を歩いていたセルジッドさんが、こちらをチラリと見て来ていた事に気が付いていた。
「やはり、異世界の方は、油断なりませんね」
その藤和さんの言葉に――、
「どうやら、ゴロウ様は、良いご友人に恵まれているようで、安心しました。それと、トウワさんでしたか?」
「セルジッド様。お気になさらず」
「中々に良い性分をしておられますね。こうも面と向かって、試されたのは初めてです」
「そうですか?」
「藤和さん」
「彼には、この方がお互いに分かりやすいと思いまして――。これからの事を考えますと、お互いに腹の探り合いをしながら同じ方向を向いて行動できるとは思えませんから。そうですよね? セルジッド様」
嗜めようとしたが、藤和さんは気にせずに前を歩くセルジッドさんへ声をかける。
そしてセルジッドさんと言えば足を止めて、此方を見てくると口を開ける。
「いま、このタイミングで其方の情報を――、トウワさんでしたか? そのトウワさんと、ゴロウ様との関係性を暴露してきた理由は何でしょうか?」
眉間に皺を寄せて、そう語りかけてくるセルジッドさん。
「藤和さん……」
「丁度、良かった」
俺の後ろを歩いていた藤和さんは、一歩前へと出ると俺の前へと立つ。
「私は、貴方を――、セルジッド様を味方にしたいと考えています」
その藤和さんの言葉に、さらに眉間に皺を寄せるセルジッドさん。
「貴方は、何を言っているのですか?」
「簡単な話です。セルジッドさん、貴方には、月山様の味方になってもらいたい。そういうことです」
「……な、何を言って……」
「貴方は、ノーマン辺境伯様の味方だと思っていました。ですから、セルジッド様のお考えを試させて頂きました。そして、分かりました。セルジッド様、貴方はノーマン辺境伯様ではなく、ルイズ辺境伯家に仕えておられているのだと。だから、これからルイズ辺境伯領を継ぐ予定の月山様の味方になって頂きたいです」
どういうことだ?
ルイズ辺境伯家と、ノーマン辺境伯に仕える事は同じではないのか?
――いや、家に仕える事と、個人に仕えることは、全くの別物ということか?
「……そ、そんなことの為に……、秘密を開示したという事ですか?」
「はい。ご理解頂けまして幸いです」
俺の前に立っている藤和さんが自信満々と言った声色で答えた。
仲が良いのは結構なことだが、あまり長く対話をされても、明日も俺は仕事があるので早めに辺境伯との会話を終わらせたい。
なので、藤和さんとセルジッドさんとの会話に割って入ることにした。
「あ――。これは、申し訳ありません。ゴロウ様」
セルジッドさんが、頭を下げて謝辞を述べてくる。
「――いえ。お二人の仲が良い事は自分としても良い事なので――」
「月山様……」
藤和さんが、何やら恨めしい声色で俺の苗字を呼んでくるが、そういう本当は嫌なんですよ! って、表情はいいから。
「ふっ――、それではゴロウ様。辺境伯様は執務室でお待ちしています。ご案内致します」
「あ、お願いします」
セルジッドさんの言葉に俺は返事しながらソファーから立ち上がる。
そして執務室まで、俺と藤和さんは、セルジッドさんの後をついて歩く。
「月山様」
すると、後ろから小声で、藤和さんが話しかけてくる。
「どうかしましたか?」
「いえ。訂正しておこうと思いまして――」
「訂正ですか?」
「はい。セルジッドさんは、私のことを月山家の正式な家令として見ているようです」
「そうみたいですね」
「はい。そして、彼は、どうやら私が彼の今の立場を奪うと勘違いしているようです。私が訂正しなかったのも多少は問題はありますが……」
「どういう意味ですか?」
小声で、俺も藤和さんに話しかける。
「簡単な話です。セルジッドさんは、私に家令の座を奪われかねないと――、そう思っているのです」
「え? それって、つまり……」
俺が、二人の仲は良いと思っていたのは勘違いだと?
「はい。私の方はセルジッドさんに関しては何とも思っていませんが、向こうは敵視しています」
「そうなんですか……。でも、藤和さんが例え執事だったとしても、藤和さんに仕事を奪われるなんて普通は――」
藤和さんは、頭を左右に振り、俺の言葉を最後まで聞かずに動作で否定してくる。
「月山様は家臣団という言葉を知っていますか?」
「家臣団?」
「そうです。分かりやすくいえば、日本では総理大臣が新しく決まった場合、閣僚が一新されますよね? それと同じで、貴族も自身の意思決定がスムーズに決まるようにと、自分の息がかかっている人間だけで配下――、つまり家臣団を形成するのが一般的なのです。ですから、セルジッドさんが、私が月山家に仕えている家令だと思っている以上、彼が自身の立場や役職に危機感を覚えるのは当然なのです」
「なるほど……。それなら、藤和さんのことは伝えておいた方がいいかも知れないですね。余計な波風を立てるのも困りますから」
「いえ。丁度、聞こえていたようです」
前を歩いていたセルジッドさんが、こちらをチラリと見て来ていた事に気が付いていた。
「やはり、異世界の方は、油断なりませんね」
その藤和さんの言葉に――、
「どうやら、ゴロウ様は、良いご友人に恵まれているようで、安心しました。それと、トウワさんでしたか?」
「セルジッド様。お気になさらず」
「中々に良い性分をしておられますね。こうも面と向かって、試されたのは初めてです」
「そうですか?」
「藤和さん」
「彼には、この方がお互いに分かりやすいと思いまして――。これからの事を考えますと、お互いに腹の探り合いをしながら同じ方向を向いて行動できるとは思えませんから。そうですよね? セルジッド様」
嗜めようとしたが、藤和さんは気にせずに前を歩くセルジッドさんへ声をかける。
そしてセルジッドさんと言えば足を止めて、此方を見てくると口を開ける。
「いま、このタイミングで其方の情報を――、トウワさんでしたか? そのトウワさんと、ゴロウ様との関係性を暴露してきた理由は何でしょうか?」
眉間に皺を寄せて、そう語りかけてくるセルジッドさん。
「藤和さん……」
「丁度、良かった」
俺の後ろを歩いていた藤和さんは、一歩前へと出ると俺の前へと立つ。
「私は、貴方を――、セルジッド様を味方にしたいと考えています」
その藤和さんの言葉に、さらに眉間に皺を寄せるセルジッドさん。
「貴方は、何を言っているのですか?」
「簡単な話です。セルジッドさん、貴方には、月山様の味方になってもらいたい。そういうことです」
「……な、何を言って……」
「貴方は、ノーマン辺境伯様の味方だと思っていました。ですから、セルジッド様のお考えを試させて頂きました。そして、分かりました。セルジッド様、貴方はノーマン辺境伯様ではなく、ルイズ辺境伯家に仕えておられているのだと。だから、これからルイズ辺境伯領を継ぐ予定の月山様の味方になって頂きたいです」
どういうことだ?
ルイズ辺境伯家と、ノーマン辺境伯に仕える事は同じではないのか?
――いや、家に仕える事と、個人に仕えることは、全くの別物ということか?
「……そ、そんなことの為に……、秘密を開示したという事ですか?」
「はい。ご理解頂けまして幸いです」
俺の前に立っている藤和さんが自信満々と言った声色で答えた。
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