田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫

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第388話 辺境伯との会話2(1)

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「藤和さんの事務所に?」
 
 雪音さんは首を傾げながら問いかけてくる。
 
「はい。せっかく秋田市内にまで足を運びましたから。そのついでに、今までは現金取引が藤和さんの所とメインでしたけど、これからは口座間取引をすることを伝えてきました」
「そういうことですか……」
「あと、藤和さんの事務所ですけど改築というか移転していました」
「そうなのですか?」
「はい。結構、敷地面積の広い倉庫にプレハブ小屋を建てて事務所としていましたから、多分一時的なモノだと思いますから、たぶん結構老朽化が進んでいる建物を事務所にしていましたから、それで建て替えているのかも知れないですね」
「そうなのですね」
「それと今日は、異世界に行ってきます」
「異世界に?」
「はい。異世界の出店の話で辺境伯と話す点が幾つかありますから」
「それでは、深夜に発たれますか?」
「いえ。御店を閉めてから、行こうと思います」
「それでは、夕飯は早めにした方がいいですね」
「そうですね……。お願いできますか?」
「はい! 任せてください!」
 
 雪音さんが笑みを浮かべ頷いてくる。
 
「――では、あとは御店の方は自分とナイルさんでやっておきますので、任せてください」
「はい! 五郎さん、お願いします」
「任されました」
 
 雪音さんは、すぐに店から出ていく。
 それと入れ替わるようにしてナイルさんが店内入ってくると――、
 
「奥方様は、ご自宅に戻られたのですね」
「そうですね。今日は、早めに異世界に行くことになったので――」
「夕飯ですか」
「夕飯ですね」
「それにしても、此方の世界の料理は洗練されていますよね」
「まぁ洗練されていない国も中にはありますが、往々にして地球は物流の基盤が整っていますから」
「それは私も感じております。ゴロウ様は、異世界では車を持って行こうなどとは考えてはいないのですか?」
「どうですかね……。車って、道路がキチンと舗装されているのが前提みたいな所がありますから。まぁオフロード系の車両なら、その限りではないですけど……」
 
 まぁ、普及させるかどうかは今の段階では無理と言わざるを得ない。
 何せ車となると支出が今までとは桁が違うし、金の流入量も格段に跳ね上がる。
 そうなれば、今の状況だと、現金化することは難しいし、何よりも車を購入しようとすると車庫証明なども含めて色々と多方面に注目される事にもなりそうだし。
 
「ただ、今は、まだ自分も生活の基盤というか、色々とありますから異世界の領地への車両の導入は考えていないですね」
「そうなのですか……」
 
 残念そうな表情をナイルさんはするが、そこは仕方ないと諦めてもらう他ない。
 
「それにしても、ナイルさんが車を推しているとは思いませんでした」
「おかしかったですか? 私としては兵站の移動の為に車というのは、とても有効に活用できると思っただけですが……」
 
 あー、そっちの方向か。
 たしかに馬や人力での物資運搬よりも車で移動した方が迅速に目的地に運ぶことは出来るからな。
 その思考は、俺にも分からなくはない。
 ノーマン辺境伯も、以前は、そのような考えで車の手配を俺に依頼してきたんだろうし。
 
「そうですか。自分としても、余裕があればと考えていますが、いまは少し難しいですね」
「それは残念です」
「とりあえず仕事をしましょう」
「はい。ゴロウ様」
 
 
 
 ――午後9時まで仕事をしている間に、夕飯を交互に摂ったあと、午後9時になり店のシャッターを閉めようとしたところで、問屋の藤和というステッカーが貼られた車が駐車場に入ってくる。
 丁度というかタイミングがとてもいい。
 
「月山様、御待たせ致しました。丁度いい時間に伺えたみたいですね」
 
 藤和さんも、どうやら同じことを思っていたようで車から降りてくると、話しかけてきた。
 
「そうですね」
 
 俺もシャッターを閉めながら答える。
挨拶もそこそこにアタッシュケースを車から降ろした藤和さん。
 店を閉めたあとは、藤和さんとナイルさんと共に異世界へと向かう。
 母屋からバックヤードを介して異世界に出たところで、店前を護衛していた兵士達にナイルさんの指示がすぐに指示を出していく。
 しばらくして、馬車が用意されたところで、俺達は馬車に乗り辺境伯邸へと向かった。
 
 
 
 20分ほどで辺境伯邸の敷地内に入り、そこから暫く馬車で移動したところで俺達が乗る馬車は辺境伯邸の入り口に到着した。
 馬車から降りたところでナイルさんが――、
 
「ゴロウ様。本日は、急いで来ましたので、すぐにノーマン様には会えないかと思います」
 
 ――と、申し訳なさそうに話しかけてくる。
 いつもは伝令の方に、辺境伯と話をしたいという内容を、先に辺境伯に伝えて対応してもらっていたが――、
 
「少し待つと言う事ですか?」
「申し訳ありません」
 
 ナイルさんが頭を下げてくるが、それは致し方ない。
 
「――いえ。辺境伯様が忙しいのは分かりますから」
「それではゴロウ様、本日は客間に先にお連れ致します」
 
 ナイルさんの案内で、以前は良く通されていた客間に通される。
 
 
 
 
 

 
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