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第379話 簡易郵便局の話をお受けします!
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まぁ、あくまでの俺の予測に過ぎないが、きっとそうなのだろう。
そうじぁないと、20代の新人を何人も雇うような事はしないだろうし。
「あれですか? やっぱり、全員、正社員ですか?」
「そうだな。やっぱパートやアルバイトだと、会社のことを大事にしてくれることはないからな。帰属意識を持ってもらうには、会社の一員だと思ってくれることが何よりも重要だろう?」
「……」
その言葉に、俺は思わず無言になる。
踝さんの言葉を、当てはめると、パートとして働いてもらっている根室さんは……と、思ってしまったからだ。
やっぱり、今後のことを考えると根室さんも正社員として登用した方がいいのかも知れないな。
何より彼女も異世界の事を知っている人だし何時までもパートという身分よりも、正社員として安定的な立場を確立させた方が、打算的ではあるが配慮などもしてくれそうだ。
「どうした? 五郎」
「いえ。なかなに良案だと思っただけです。それでは、工事の方をお願いします」
「おう! 任せておけ!」
「俺は雪音さんと、桜たちに、今日は工事に入ることを伝えてきますので」
「分かった。荷物を下す作業もあるから、工事をするために建物内に入るのは10分後だから、そう伝えておいてくれ」
「分かりました」
踝さんと会話を切り上げると母屋に戻る。
玄関に到着し戸を開けたところで雪音さんが台所から走り寄ってくる。
「あ、五郎さん。今日、工事なのですよね?」
「そうですね。工事する部屋は客間二つと桜の部屋の3つになります。10分後に室内の方も室内機を取り付けるので家内に上がってくると思いますので、桜たちに伝えておいてください。あとは電話会社も今日は来ます」
「今日は、御忙しですね」
「そうですね……。まぁ、店をオープンする前は、もっと忙しかったので久しぶりというか……」
「くすっ。分かりました」
雪音さんが笑みを浮かべると頷いてきた。
そこで携帯電話が鳴る。
まだ時刻は午前10時前だが、随分と電話会社からの訪問事前連絡としては早いな? と、思いながら携帯電話を取る。
「はい。月山です」
「朝早くから申し訳ありません。石川芽依です」
その言葉に、俺は雪音さんへ咄嗟に視線を向ける。
彼女は、一瞬怪訝そうな表情をしたあと――、
「それでは、私は桜ちゃんたちに伝えてきます」
そう場を離れてくれた。
どうやら聞かれたくない仕事の話だと察してくれたのだろう。
俺は、雪音さんの気遣いに頷きながら、母屋の外へと出る。
外に出てみれば、すでにリフォーム踝の新人さんが室外機をトラックから降ろしている場面が見えた。
俺は、その様子を確認しつつ――、
「どうかされましたか?」
極めて事務的に言葉を選びつつ、対応することにした。
「じつは先日の、簡易郵便局の件なのですが……」
「はい。答えは、出ましたか?」
まぁ、辛辣な前回の対応から見るに断られても仕方ないだろう。
俺は、そう思い身構える。
出来れば、長年、簡易郵便局を切り盛りしてきた石川さんの助力が無くなるのは痛手だが、それは仕方ない。
「先日の、簡易郵便局の職員としての登用のお話ですが、受けたいと思います」
「そうですか、それはざんね――ん?」
いま、一瞬、受けてくれると聞こえたが気のせいか?
「いま、何と?」
「ですから、お引き受けします」
どうやら幻聴ではないらしい。
本気で仕事を引き受けてくれると。
ただ、ここで食い気味にいくのは宜しくない。
あくまでもオーナーは俺であり、石川さんは従業員ということをキチンと明確に態度で示しておかなければいけない。
「石川さん」
「はい」
「無理そうでしたら――、貴女の父親から頼まれたという意味で、そういう責任感で引き受けるのでしたら、大変になると思います。そういう事で仕事を引き受けられるのでしたら考え直した方が宜しいかと思います」
「いえ。これは、あくまでも私が決めたことですので……、ですから村の発展の為にも私も少しでも力になりたいと思っていますので――」
「そうですか……」
少し間を置く。
あくまでも俺が何かを考えていますよ? と、言うアピールをするがごとく。
「分かりました。それでは、詳しい契約内容の話を詰めたいと思いますので、石川順次さんも同伴で来て頂くことは可能ですか?」
「お父さんもですか?」
「はい。郵便局業務については、私は素人ですので、以前に郵便局――、簡易郵便局をおひとりで回していた石川さんのお父さんも同席された方が話はスムーズに進むと思いますから」
「先達の知恵ということですね」
「そうなります」
まぁ、俺としては石川のおっさんが簡易郵便局に関わっているという体裁をとりたい。
その方が村では受け入れやすいだろうし。
最初から若い人が郵便局長だと、嫉妬もそうだし、心配することもあるだろうからな。
それと――、
「あと石川順次さんの診断書も持ってきてもらえますか?」
「お父さんのですか? もしかして、お父さんにも仕事を?」
「――いえ。少し、気になっただけなので」
「そうですか……」
そうじぁないと、20代の新人を何人も雇うような事はしないだろうし。
「あれですか? やっぱり、全員、正社員ですか?」
「そうだな。やっぱパートやアルバイトだと、会社のことを大事にしてくれることはないからな。帰属意識を持ってもらうには、会社の一員だと思ってくれることが何よりも重要だろう?」
「……」
その言葉に、俺は思わず無言になる。
踝さんの言葉を、当てはめると、パートとして働いてもらっている根室さんは……と、思ってしまったからだ。
やっぱり、今後のことを考えると根室さんも正社員として登用した方がいいのかも知れないな。
何より彼女も異世界の事を知っている人だし何時までもパートという身分よりも、正社員として安定的な立場を確立させた方が、打算的ではあるが配慮などもしてくれそうだ。
「どうした? 五郎」
「いえ。なかなに良案だと思っただけです。それでは、工事の方をお願いします」
「おう! 任せておけ!」
「俺は雪音さんと、桜たちに、今日は工事に入ることを伝えてきますので」
「分かった。荷物を下す作業もあるから、工事をするために建物内に入るのは10分後だから、そう伝えておいてくれ」
「分かりました」
踝さんと会話を切り上げると母屋に戻る。
玄関に到着し戸を開けたところで雪音さんが台所から走り寄ってくる。
「あ、五郎さん。今日、工事なのですよね?」
「そうですね。工事する部屋は客間二つと桜の部屋の3つになります。10分後に室内の方も室内機を取り付けるので家内に上がってくると思いますので、桜たちに伝えておいてください。あとは電話会社も今日は来ます」
「今日は、御忙しですね」
「そうですね……。まぁ、店をオープンする前は、もっと忙しかったので久しぶりというか……」
「くすっ。分かりました」
雪音さんが笑みを浮かべると頷いてきた。
そこで携帯電話が鳴る。
まだ時刻は午前10時前だが、随分と電話会社からの訪問事前連絡としては早いな? と、思いながら携帯電話を取る。
「はい。月山です」
「朝早くから申し訳ありません。石川芽依です」
その言葉に、俺は雪音さんへ咄嗟に視線を向ける。
彼女は、一瞬怪訝そうな表情をしたあと――、
「それでは、私は桜ちゃんたちに伝えてきます」
そう場を離れてくれた。
どうやら聞かれたくない仕事の話だと察してくれたのだろう。
俺は、雪音さんの気遣いに頷きながら、母屋の外へと出る。
外に出てみれば、すでにリフォーム踝の新人さんが室外機をトラックから降ろしている場面が見えた。
俺は、その様子を確認しつつ――、
「どうかされましたか?」
極めて事務的に言葉を選びつつ、対応することにした。
「じつは先日の、簡易郵便局の件なのですが……」
「はい。答えは、出ましたか?」
まぁ、辛辣な前回の対応から見るに断られても仕方ないだろう。
俺は、そう思い身構える。
出来れば、長年、簡易郵便局を切り盛りしてきた石川さんの助力が無くなるのは痛手だが、それは仕方ない。
「先日の、簡易郵便局の職員としての登用のお話ですが、受けたいと思います」
「そうですか、それはざんね――ん?」
いま、一瞬、受けてくれると聞こえたが気のせいか?
「いま、何と?」
「ですから、お引き受けします」
どうやら幻聴ではないらしい。
本気で仕事を引き受けてくれると。
ただ、ここで食い気味にいくのは宜しくない。
あくまでもオーナーは俺であり、石川さんは従業員ということをキチンと明確に態度で示しておかなければいけない。
「石川さん」
「はい」
「無理そうでしたら――、貴女の父親から頼まれたという意味で、そういう責任感で引き受けるのでしたら、大変になると思います。そういう事で仕事を引き受けられるのでしたら考え直した方が宜しいかと思います」
「いえ。これは、あくまでも私が決めたことですので……、ですから村の発展の為にも私も少しでも力になりたいと思っていますので――」
「そうですか……」
少し間を置く。
あくまでも俺が何かを考えていますよ? と、言うアピールをするがごとく。
「分かりました。それでは、詳しい契約内容の話を詰めたいと思いますので、石川順次さんも同伴で来て頂くことは可能ですか?」
「お父さんもですか?」
「はい。郵便局業務については、私は素人ですので、以前に郵便局――、簡易郵便局をおひとりで回していた石川さんのお父さんも同席された方が話はスムーズに進むと思いますから」
「先達の知恵ということですね」
「そうなります」
まぁ、俺としては石川のおっさんが簡易郵便局に関わっているという体裁をとりたい。
その方が村では受け入れやすいだろうし。
最初から若い人が郵便局長だと、嫉妬もそうだし、心配することもあるだろうからな。
それと――、
「あと石川順次さんの診断書も持ってきてもらえますか?」
「お父さんのですか? もしかして、お父さんにも仕事を?」
「――いえ。少し、気になっただけなので」
「そうですか……」
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