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第375話 簡易郵便局設立に向けて(6)
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「違いますな……」
お茶を濁すように、雪音さんの問いかけに全面降伏する踝さん。
どうやら、雪音さんには弱いようだ。
「ご理解頂けてなによりです! 五郎さんも、ご自分を侮辱されたのに、へらへらとしていないでください! 五郎さんが、侮辱されたと言う事は、五郎さんが庇護している私や、桜ちゃんも下に見られるという事なのですよ!」
「たしかに……、その通りですね」
ぐうの音も出ないほどの正論。
「はい、気を付けてくださいね。それで、踝さんは、今日は、仲介ということで来たんですか?」
「――いや、エアコンの見積もりも出来たから、その話を含めてな……」
「それなら最初から、そう言ってください!」
「あ、はい……」
雪音さんに完全に委縮してしまっている踝さんを見るのは、田口村長以外では見た事が無かったので、やっぱり村長の孫なんだなと改めて思いつつ、俺は二人のやり取りをしてみると――、
「それなら、私は一度、席を外しますね。あと、踝さん。変に介入してくるのは止めてくださいね。あくまでも、石川さんの娘を雇うかどうかは、オーナーである五郎さんにあるのですから」
「わかっているって!」
「もう……」
一通り言って満足したのか雪音さんが客間から出ていく。
踝さんは音を立てずにコタツから出ると襖を閉める。
「しっかし、村長の孫ってだけあって怖えーな」
「雪音さんは、普段は優しいですよ?」
「それは、そうなんだろうよ。それにしても、まぁ……、男女の仲が良いってことはいいことだ。俺からは、石川さんの事については何も言わないことにしておくさ」
そう呟きながら肩を竦める踝健さん。
「その方がいいですね」
俺も、そこには同意だ。
「――じゃ、話を本来の要件に戻すとするか。まずは、エアコンの設置費用とエアコンの種類だが、12月に向けてのエアコンの需要は、そんなに高くはない。だから、種類も価格も抑えることが出来る。工賃含めて、費用としては100万いくか行かないかくらいだと考えているが、どうだ?」
「そうですね。どれくらいで工事に取り掛かれますか?」
「五郎が了承するのなら、明日からでも工事に取り掛かれる」
「――では、それでお願いします」
「分かった。それと例の件だが――」
「簡易郵便局を店の前に建てる件ですね?」
「ああ。費用としては2500万円くらいを予定している。それで、問題ないのか?」
「そうですね。――で、工事は踝さんが指揮を?」
「――いや。流石に郵便局として使う建物を建てるわけだからな。それなりの実績のある工務店に頼むのがいいだろうな」
「それだと、結城村外の?」
「そうなるが……問題か?」
「支払いとかを考えると――」
「なるほど……。法人口座は作ったのか?」
「まだ出来立てですね」
「そうか……。それなら、俺に支払いを一括で渡せばいいんじゃないのか? それと、此方の世界でも実際に使える現金というのは、そろそろ用意しておいた方がいいな。何しろ、今度は郵便局と取引をする事になるからな。郵便局と取引をするのなら税務署も黙ってはいないだろうし」
「そうですね。資産が目減りするのは痛いですが、土地の買収などを考えると――」
「そうなるよな……」
本当に、幾らお金があっても足りない。
異世界と取引をしていなかったら、とっくの昔に詰んでいたところだ。
「とりあえず、踝さん」
「何だ?」
「簡易郵便局の建物の建築を取り急ぎお願いします」
「分かった。だが、人材は、どうするんだ?」
「ハローワークにでも求人を出してみようかと」
「なるほど……。だが、いい人材が見つかるかどうかは分からないぞ?」
「まぁ、いい人材を集めるというか――、名目上は、求人という体裁を取っていますが……」
「ああ、なるほど……」
踝さんは、そこで頷く。
断片的な情報だけで、俺が何をしたいのか――、どうしてハローワークで求人をかけようとしているのか、それらを彼は看過した。
こういう所は、自分で会社を経営している人間だなと、思ってしまう。
「つまり、石川のおっさんの娘には頼るつもりはないと暗に追い詰めるってことか」
「はい。それで、踝さんにはお願いがあるんですが……」
「分かっている。それとなく、そういう求人が出ているって事を、石川のおっさんに伝えておけばいいんだろう?」
「そうですね」
「しかし、五郎も少しは変わったようで安心したぞ?」
「それは村長にも言われました」
「そっか。じゃ、明日には工事に入るから雪音さんには言っておいてくれ」
「分かりました」
「それと、この書類が、簡易郵便局を立てる上での簡単な見積もりになる。あくまでも頼む工務店が以前に簡易郵便局を立てる時に掛かった費用らしいから、価格は前後することはあるがな」
「それでも、分かるだけ十分です」
「そうだな」
お茶を呑み干した踝さんは立ち上がるとコタツから出る。
俺は、踝さんを見送ったあと、着信し音が鳴ったスマートフォンを通話にしてから耳に当てる。
「携帯電話会社アイ・ユー営業部の田中恒と言いますが、月山五郎様の携帯電話番号で宜しかったでしょうか?」
お茶を濁すように、雪音さんの問いかけに全面降伏する踝さん。
どうやら、雪音さんには弱いようだ。
「ご理解頂けてなによりです! 五郎さんも、ご自分を侮辱されたのに、へらへらとしていないでください! 五郎さんが、侮辱されたと言う事は、五郎さんが庇護している私や、桜ちゃんも下に見られるという事なのですよ!」
「たしかに……、その通りですね」
ぐうの音も出ないほどの正論。
「はい、気を付けてくださいね。それで、踝さんは、今日は、仲介ということで来たんですか?」
「――いや、エアコンの見積もりも出来たから、その話を含めてな……」
「それなら最初から、そう言ってください!」
「あ、はい……」
雪音さんに完全に委縮してしまっている踝さんを見るのは、田口村長以外では見た事が無かったので、やっぱり村長の孫なんだなと改めて思いつつ、俺は二人のやり取りをしてみると――、
「それなら、私は一度、席を外しますね。あと、踝さん。変に介入してくるのは止めてくださいね。あくまでも、石川さんの娘を雇うかどうかは、オーナーである五郎さんにあるのですから」
「わかっているって!」
「もう……」
一通り言って満足したのか雪音さんが客間から出ていく。
踝さんは音を立てずにコタツから出ると襖を閉める。
「しっかし、村長の孫ってだけあって怖えーな」
「雪音さんは、普段は優しいですよ?」
「それは、そうなんだろうよ。それにしても、まぁ……、男女の仲が良いってことはいいことだ。俺からは、石川さんの事については何も言わないことにしておくさ」
そう呟きながら肩を竦める踝健さん。
「その方がいいですね」
俺も、そこには同意だ。
「――じゃ、話を本来の要件に戻すとするか。まずは、エアコンの設置費用とエアコンの種類だが、12月に向けてのエアコンの需要は、そんなに高くはない。だから、種類も価格も抑えることが出来る。工賃含めて、費用としては100万いくか行かないかくらいだと考えているが、どうだ?」
「そうですね。どれくらいで工事に取り掛かれますか?」
「五郎が了承するのなら、明日からでも工事に取り掛かれる」
「――では、それでお願いします」
「分かった。それと例の件だが――」
「簡易郵便局を店の前に建てる件ですね?」
「ああ。費用としては2500万円くらいを予定している。それで、問題ないのか?」
「そうですね。――で、工事は踝さんが指揮を?」
「――いや。流石に郵便局として使う建物を建てるわけだからな。それなりの実績のある工務店に頼むのがいいだろうな」
「それだと、結城村外の?」
「そうなるが……問題か?」
「支払いとかを考えると――」
「なるほど……。法人口座は作ったのか?」
「まだ出来立てですね」
「そうか……。それなら、俺に支払いを一括で渡せばいいんじゃないのか? それと、此方の世界でも実際に使える現金というのは、そろそろ用意しておいた方がいいな。何しろ、今度は郵便局と取引をする事になるからな。郵便局と取引をするのなら税務署も黙ってはいないだろうし」
「そうですね。資産が目減りするのは痛いですが、土地の買収などを考えると――」
「そうなるよな……」
本当に、幾らお金があっても足りない。
異世界と取引をしていなかったら、とっくの昔に詰んでいたところだ。
「とりあえず、踝さん」
「何だ?」
「簡易郵便局の建物の建築を取り急ぎお願いします」
「分かった。だが、人材は、どうするんだ?」
「ハローワークにでも求人を出してみようかと」
「なるほど……。だが、いい人材が見つかるかどうかは分からないぞ?」
「まぁ、いい人材を集めるというか――、名目上は、求人という体裁を取っていますが……」
「ああ、なるほど……」
踝さんは、そこで頷く。
断片的な情報だけで、俺が何をしたいのか――、どうしてハローワークで求人をかけようとしているのか、それらを彼は看過した。
こういう所は、自分で会社を経営している人間だなと、思ってしまう。
「つまり、石川のおっさんの娘には頼るつもりはないと暗に追い詰めるってことか」
「はい。それで、踝さんにはお願いがあるんですが……」
「分かっている。それとなく、そういう求人が出ているって事を、石川のおっさんに伝えておけばいいんだろう?」
「そうですね」
「しかし、五郎も少しは変わったようで安心したぞ?」
「それは村長にも言われました」
「そっか。じゃ、明日には工事に入るから雪音さんには言っておいてくれ」
「分かりました」
「それと、この書類が、簡易郵便局を立てる上での簡単な見積もりになる。あくまでも頼む工務店が以前に簡易郵便局を立てる時に掛かった費用らしいから、価格は前後することはあるがな」
「それでも、分かるだけ十分です」
「そうだな」
お茶を呑み干した踝さんは立ち上がるとコタツから出る。
俺は、踝さんを見送ったあと、着信し音が鳴ったスマートフォンを通話にしてから耳に当てる。
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