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第373話 簡易郵便局設立に向けて(4)
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「それが何か?」
俺は、その程度のことくらい気が付いていないと思っているのか。
「だから――」
「芽依先輩。五郎さんは、そのくらいの計算はしています」
「計算しているって……、――なら! なおさら悪いわよ! 年収で総支給額450万円なんて金額で私を雇うなんて、どうかしているわ! 御店だって、上手く回っているとは聞いてないし……」
なるほど。
日にちを開けたと思ったら、事前に此方の情報を調べてきたということか。
まぁ、表に出ている情報だけだと、そういう判断になるのは致し方ないよな……。
ここは、事前に考えていた通り、ハッタリで何とかするしかないな。
「石川さん。落ち着いてください」
「……」
無言で、俺を睨みつけてくる石川芽依さん。
今までは好意的な対応をしてくれた人ばかりだったので、ここまで敵意を向けられるのは初めてだが、一旦、俺は気にしないことにする。
「石川さん。俺――、私としては、別に簡易郵便局員を石川さんに頼まなくてもいいと思っています」
「――なっ!」
「え?」
俺の切り出した言葉に、石川さんは目を見開く。
そして、俺の横に座っていた雪音さんも驚いた表情で俺を見てくるが――、
「別に嫌なら断ってくれても構いません。その時には、郵便局で仕事に従事している方を雇って簡易郵便局の申請をするだけなので。――ですから、感情に任せて声を荒げるようでしたら、このままお帰り頂いてもいいです」
「……」
突き放したような言い方に、石川さんが無言で俯いてしまうが、それは俺の知った事ではない。
そもそも、運営資金を全て捻出するのは、俺であり、彼女ではない。
あくまでも、目の前に座っている石川芽依という人物は、替えの利く人物であり、唯一無二という人材ではないのだ。
それでも、結城村で簡易郵便局業務に長年携わってきた石川さんに敬意を払って話を最初に持っていったのは、その方が話がスムーズに進むこともあるが、結城村の人間を雇うことで、田舎特有の疎外感を考慮に入れた上だ。
その考慮に入れたとしても、石川さんの態度は許容できるのか? と、問われれば難しいと言わざるを得ない。
だから、この際、切ってしまってもいいのでは? と、考えてしまうのは、当然とも言えた。
俺の話を聞いていた石川芽依さんは無言のまま。
「無言のままと言う事は、私の話を理解して頂いたと言う事で宜しいでしょうか? それでは、話を進めたいと思うのですが、いいでしょうか?」
「……」
まったく、何故にも、こんなに敵意を剥き出しなのか。
「芽依先輩。五郎さんが、聞いています。五郎さんが言わないから、私が言いますど――、芽依先輩! 五郎さんは、お金を全て出すクライアントの立場です。そして、石川さんは、雇われる立場です。そこをはき違えているのではありませんか?」
雪音さんが、無言のままの石川さんに注意に近い内容で語り掛ける。
「それは……」
「石川先輩。簡易郵便局という体裁を取っていますが、今度、結城村に作られる簡易郵便局のトップは、五郎さんです。そこを勘違いされないようにお願いします。もう石川さんのお父さんが、簡易郵便局のトップだった時とは時代は変わっています。いつまでも上から物事を見るような態度だと、石川さんのお父さんも困るのではありませんか?」
「――ッ」
「雪音さん」
「ごめんなさい。出過ぎた真似をしてしまいました」
「――いえ。少し席を外してもらってもいいですか?」
「はい」
流石に、雪音さんと石川さんを同じ客間に居ると話が進まないと思い雪音さんには退室してもらう。
襖が閉まったところで――、
「石川さん」
「はい」
「石川さんは、俺が簡易郵便局を開設すること。それと貴女を雇用する資金力があるかどうかを心配している。そう言う事でいいですか?」
「……」
無言のまま頷く彼女を見て俺は口を開く。
「石川さんは、プロドライバーの年収がいくらか知っていますか?」
「――え?」
「プロドライバーの年収です」
無言のまま頭を振る石川さん。
「プロドライバーの平均所得は年収として500万円前後ですが、トップのプロのドライバーになれば、その年収は億を超えます。そして、俺もプロのドライバーとして数年間活動していました。ですから」
「それだけのお金があるということですか?」
「ご名答です。店や家を見て頂くだけで、それなりの資金を投入している事くらいは、気が付かれたのではありませんか?」
「それは……はい。私が、知っている廃屋同然だった月山雑貨店や母屋とは、今はまるで別モノです」
「それはご理解頂き助かります」
「はい……」
「それでは単刀直入に聞きます。石川芽依さん、貴女は私の下で働く気はありますか? 仕事の内容は簡易郵便局での仕事です。ノルマなどを設定するつもりはありません。年収も、450万円だします。それで、どうですか?」
「………考えさせてもらえますか?」
「もちろんです」
俺は頷く。
すぐに答えが返ってくるとは思わなかったからだ。
ただ、ここまで拗れるとも思ってもいなかった。
俺は、その程度のことくらい気が付いていないと思っているのか。
「だから――」
「芽依先輩。五郎さんは、そのくらいの計算はしています」
「計算しているって……、――なら! なおさら悪いわよ! 年収で総支給額450万円なんて金額で私を雇うなんて、どうかしているわ! 御店だって、上手く回っているとは聞いてないし……」
なるほど。
日にちを開けたと思ったら、事前に此方の情報を調べてきたということか。
まぁ、表に出ている情報だけだと、そういう判断になるのは致し方ないよな……。
ここは、事前に考えていた通り、ハッタリで何とかするしかないな。
「石川さん。落ち着いてください」
「……」
無言で、俺を睨みつけてくる石川芽依さん。
今までは好意的な対応をしてくれた人ばかりだったので、ここまで敵意を向けられるのは初めてだが、一旦、俺は気にしないことにする。
「石川さん。俺――、私としては、別に簡易郵便局員を石川さんに頼まなくてもいいと思っています」
「――なっ!」
「え?」
俺の切り出した言葉に、石川さんは目を見開く。
そして、俺の横に座っていた雪音さんも驚いた表情で俺を見てくるが――、
「別に嫌なら断ってくれても構いません。その時には、郵便局で仕事に従事している方を雇って簡易郵便局の申請をするだけなので。――ですから、感情に任せて声を荒げるようでしたら、このままお帰り頂いてもいいです」
「……」
突き放したような言い方に、石川さんが無言で俯いてしまうが、それは俺の知った事ではない。
そもそも、運営資金を全て捻出するのは、俺であり、彼女ではない。
あくまでも、目の前に座っている石川芽依という人物は、替えの利く人物であり、唯一無二という人材ではないのだ。
それでも、結城村で簡易郵便局業務に長年携わってきた石川さんに敬意を払って話を最初に持っていったのは、その方が話がスムーズに進むこともあるが、結城村の人間を雇うことで、田舎特有の疎外感を考慮に入れた上だ。
その考慮に入れたとしても、石川さんの態度は許容できるのか? と、問われれば難しいと言わざるを得ない。
だから、この際、切ってしまってもいいのでは? と、考えてしまうのは、当然とも言えた。
俺の話を聞いていた石川芽依さんは無言のまま。
「無言のままと言う事は、私の話を理解して頂いたと言う事で宜しいでしょうか? それでは、話を進めたいと思うのですが、いいでしょうか?」
「……」
まったく、何故にも、こんなに敵意を剥き出しなのか。
「芽依先輩。五郎さんが、聞いています。五郎さんが言わないから、私が言いますど――、芽依先輩! 五郎さんは、お金を全て出すクライアントの立場です。そして、石川さんは、雇われる立場です。そこをはき違えているのではありませんか?」
雪音さんが、無言のままの石川さんに注意に近い内容で語り掛ける。
「それは……」
「石川先輩。簡易郵便局という体裁を取っていますが、今度、結城村に作られる簡易郵便局のトップは、五郎さんです。そこを勘違いされないようにお願いします。もう石川さんのお父さんが、簡易郵便局のトップだった時とは時代は変わっています。いつまでも上から物事を見るような態度だと、石川さんのお父さんも困るのではありませんか?」
「――ッ」
「雪音さん」
「ごめんなさい。出過ぎた真似をしてしまいました」
「――いえ。少し席を外してもらってもいいですか?」
「はい」
流石に、雪音さんと石川さんを同じ客間に居ると話が進まないと思い雪音さんには退室してもらう。
襖が閉まったところで――、
「石川さん」
「はい」
「石川さんは、俺が簡易郵便局を開設すること。それと貴女を雇用する資金力があるかどうかを心配している。そう言う事でいいですか?」
「……」
無言のまま頷く彼女を見て俺は口を開く。
「石川さんは、プロドライバーの年収がいくらか知っていますか?」
「――え?」
「プロドライバーの年収です」
無言のまま頭を振る石川さん。
「プロドライバーの平均所得は年収として500万円前後ですが、トップのプロのドライバーになれば、その年収は億を超えます。そして、俺もプロのドライバーとして数年間活動していました。ですから」
「それだけのお金があるということですか?」
「ご名答です。店や家を見て頂くだけで、それなりの資金を投入している事くらいは、気が付かれたのではありませんか?」
「それは……はい。私が、知っている廃屋同然だった月山雑貨店や母屋とは、今はまるで別モノです」
「それはご理解頂き助かります」
「はい……」
「それでは単刀直入に聞きます。石川芽依さん、貴女は私の下で働く気はありますか? 仕事の内容は簡易郵便局での仕事です。ノルマなどを設定するつもりはありません。年収も、450万円だします。それで、どうですか?」
「………考えさせてもらえますか?」
「もちろんです」
俺は頷く。
すぐに答えが返ってくるとは思わなかったからだ。
ただ、ここまで拗れるとも思ってもいなかった。
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