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第367話 ATMを導入しよう(1)
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「そうですね。少し、仮眠を取らせてもらいます」
俺は言葉を返し、居間で布団を敷いて目を閉じた。
「おじちゃん! おじちゃん!」
気が付けば、桜が俺の体を揺らしていた。
居間の時計を見れば午後6時過ぎ。
完全に寝過ごしている。
「おじちゃんが起きたの」
「わんっ!」
寝ぼけた頭で、布団から起きあがると、俺の体の上に乗っていたフーちゃんがコロコロと掛布団の上を転がっていく。
俺は、布団から出る。
「桜、雪音さんは?」
「お店に出てるの!」
「そうか……。それで和美ちゃんと和美ちゃんのお母さんは帰ったのか?」
「うん!」
「そっか」
どうやら、俺の代わりに店の業務をしてくれているようだ。
「それじゃ店に行ってくるから桜も来るか?」
「ううん。寒いから行かない」
コタツの中へと入っていくフーちゃんと桜。
二人はコタツの中へとスポッと入ると手を振ってくる。
「それじゃ、少しの間、お留守番を頼んだぞ?」
「はーい!」
「わんっ!」
すっかり日も暮れ、肌寒くなった夜空の下を歩き軒先に到着する。
「すいません。寝過ごしました」
店舗に入り、とりあえずカウンターにいる雪音さんに話しかける。
「五郎さん? 疲れているのでしたら、店の閉店作業もしましたのに」
俺が店に来るとは思っていなかったのか、雪音さんが、そう言葉を返してきた。
「いえ。桜に起こされたので」
「もしかしたら、五郎さんに遊んでもらいたかったのかも知れないですね」
「そうですかね」
「たぶん?」
「今度から聞いてみます。それよりも業務は自分が引き継いでおくので、あとは大丈夫ですよ?」
「分かりました。それでは、夕飯でも作って待っていますね」
「はい」
雪音さんから業務を引き継いだあとは、一人で店番をする。
そこで俺は首を傾げる。
「あれ? そういえばナイルさんは、どこに……?」
店内を見渡してもナイルさんの姿はない。
もちろんお客様の姿もない。
そして店の外を見れば、道路を挟んだ向かい側の駐車場にナイルさんの姿があった。
駐車場には車の姿はないが、この前の台風で飛んできた枝や葉っぱがたくさん落ちていて、それをナイルさんが片付けていた。
「なるほど……」
だから、雪音さんは何も言わなかったんだな。
頷きつつ、俺は今日の売り上げを見るが、1万も売り上げはない。
思わず溜息が出てしまうが、ここ数日、よくある光景なので申し方ないと割り切った。
「それにしても客を増やすにはどうすればいいんだろうな……」
そんな事を思いつつ、俺は、ノートパソコンを起動する。
「とりあえず情報収集だな」
いくつかのサイトを見ていくと、やはり酒やタバコを扱っているコンビニ、あとはATMなども求められている事が書かれている。
今の月山雑貨店で扱っているのは、主に生鮮食品がごく一部と、菓子類や冷凍食品と言ったものが9割を占めていて、残りは清涼飲料水といったものだ。
「そうなると……。以前に藤和さんと話したATM設置と酒類の販売業免許の申請が必要か……」
結城村では、老人が9割を占めているから、都会に出なくてもお金の取引が出来るATM設置は必要かも知れない。
「あとは、酒か……」
お酒はな……。
ただ、結城村ではお酒を販売している店は――、酒造はかなり昔に廃業している事もあり今、結城村には存在していない。
それでも、お酒の販売は躊躇う気持ちがある。
車の運転が必須な田舎では、お酒は危険だと俺は認識しているからだ。
「とりあえずATMの設置だな。純資産が、個人だと300万円、法人だと500万円か……。村にはJAもないし郵便局もないからな。ATMあれば、お金の取引で客が来る可能性もあるよな……。――と、なると……」
俺は郵便局のサイトを確認する。
お金の出し入れの為だけのATMの設置なら、何とかなりそうだ。
人数も、俺と雪音さんと根室さんの3人でパスできているし。
「よし、ATMの設置だな」
まぁ、ATMの設置と簡易郵便局の開設は、最初から考えていた事だから、お金に余裕がある今なら日本郵便株式会社に業務委託契約の申請をしてもいいだろう。
あとの問題は、簡易郵便局をどうするかだな……。
今は暇だから、今の内に業務に慣れるというのありかも知れない。
さらに郵便局のホームページを見ていく。
すると――、簡易郵便局受託者募集地域というタイトルと共に募集をしている地域一覧が表示された。
「結城村……、結城村と……」
目を通していく。
すると北海道・東北エリアに結城村というのが書かれている。
「これか……」
どうやら、運良く結城村には簡易郵便局が無いらしく受託者募集地域になっているらしい。
「とりあえず、PDFをダウンロードしてと……」
店を閉めたら雪音さんとATMの導入の話をしてみよう。
会計をしてくれているのは雪音さんだし、税務署との兼ね合いもあるから、そこらへんをキチンと確認しないと不味いからな。
とくに内の店とか、異世界からの金で店の運営を支えているようなものだし。
俺は言葉を返し、居間で布団を敷いて目を閉じた。
「おじちゃん! おじちゃん!」
気が付けば、桜が俺の体を揺らしていた。
居間の時計を見れば午後6時過ぎ。
完全に寝過ごしている。
「おじちゃんが起きたの」
「わんっ!」
寝ぼけた頭で、布団から起きあがると、俺の体の上に乗っていたフーちゃんがコロコロと掛布団の上を転がっていく。
俺は、布団から出る。
「桜、雪音さんは?」
「お店に出てるの!」
「そうか……。それで和美ちゃんと和美ちゃんのお母さんは帰ったのか?」
「うん!」
「そっか」
どうやら、俺の代わりに店の業務をしてくれているようだ。
「それじゃ店に行ってくるから桜も来るか?」
「ううん。寒いから行かない」
コタツの中へと入っていくフーちゃんと桜。
二人はコタツの中へとスポッと入ると手を振ってくる。
「それじゃ、少しの間、お留守番を頼んだぞ?」
「はーい!」
「わんっ!」
すっかり日も暮れ、肌寒くなった夜空の下を歩き軒先に到着する。
「すいません。寝過ごしました」
店舗に入り、とりあえずカウンターにいる雪音さんに話しかける。
「五郎さん? 疲れているのでしたら、店の閉店作業もしましたのに」
俺が店に来るとは思っていなかったのか、雪音さんが、そう言葉を返してきた。
「いえ。桜に起こされたので」
「もしかしたら、五郎さんに遊んでもらいたかったのかも知れないですね」
「そうですかね」
「たぶん?」
「今度から聞いてみます。それよりも業務は自分が引き継いでおくので、あとは大丈夫ですよ?」
「分かりました。それでは、夕飯でも作って待っていますね」
「はい」
雪音さんから業務を引き継いだあとは、一人で店番をする。
そこで俺は首を傾げる。
「あれ? そういえばナイルさんは、どこに……?」
店内を見渡してもナイルさんの姿はない。
もちろんお客様の姿もない。
そして店の外を見れば、道路を挟んだ向かい側の駐車場にナイルさんの姿があった。
駐車場には車の姿はないが、この前の台風で飛んできた枝や葉っぱがたくさん落ちていて、それをナイルさんが片付けていた。
「なるほど……」
だから、雪音さんは何も言わなかったんだな。
頷きつつ、俺は今日の売り上げを見るが、1万も売り上げはない。
思わず溜息が出てしまうが、ここ数日、よくある光景なので申し方ないと割り切った。
「それにしても客を増やすにはどうすればいいんだろうな……」
そんな事を思いつつ、俺は、ノートパソコンを起動する。
「とりあえず情報収集だな」
いくつかのサイトを見ていくと、やはり酒やタバコを扱っているコンビニ、あとはATMなども求められている事が書かれている。
今の月山雑貨店で扱っているのは、主に生鮮食品がごく一部と、菓子類や冷凍食品と言ったものが9割を占めていて、残りは清涼飲料水といったものだ。
「そうなると……。以前に藤和さんと話したATM設置と酒類の販売業免許の申請が必要か……」
結城村では、老人が9割を占めているから、都会に出なくてもお金の取引が出来るATM設置は必要かも知れない。
「あとは、酒か……」
お酒はな……。
ただ、結城村ではお酒を販売している店は――、酒造はかなり昔に廃業している事もあり今、結城村には存在していない。
それでも、お酒の販売は躊躇う気持ちがある。
車の運転が必須な田舎では、お酒は危険だと俺は認識しているからだ。
「とりあえずATMの設置だな。純資産が、個人だと300万円、法人だと500万円か……。村にはJAもないし郵便局もないからな。ATMあれば、お金の取引で客が来る可能性もあるよな……。――と、なると……」
俺は郵便局のサイトを確認する。
お金の出し入れの為だけのATMの設置なら、何とかなりそうだ。
人数も、俺と雪音さんと根室さんの3人でパスできているし。
「よし、ATMの設置だな」
まぁ、ATMの設置と簡易郵便局の開設は、最初から考えていた事だから、お金に余裕がある今なら日本郵便株式会社に業務委託契約の申請をしてもいいだろう。
あとの問題は、簡易郵便局をどうするかだな……。
今は暇だから、今の内に業務に慣れるというのありかも知れない。
さらに郵便局のホームページを見ていく。
すると――、簡易郵便局受託者募集地域というタイトルと共に募集をしている地域一覧が表示された。
「結城村……、結城村と……」
目を通していく。
すると北海道・東北エリアに結城村というのが書かれている。
「これか……」
どうやら、運良く結城村には簡易郵便局が無いらしく受託者募集地域になっているらしい。
「とりあえず、PDFをダウンロードしてと……」
店を閉めたら雪音さんとATMの導入の話をしてみよう。
会計をしてくれているのは雪音さんだし、税務署との兼ね合いもあるから、そこらへんをキチンと確認しないと不味いからな。
とくに内の店とか、異世界からの金で店の運営を支えているようなものだし。
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