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第361話 店舗拡大の構想(4)

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 その言葉に根室さんは頷く。
 
「そうなのですか……。少し、安心しました。突然、来られなくなりましたから、何かあったのかと思って――」
「そうでしたか。部下を思って頂き、ありがたく思います」
 
 頭を下げるナイルさん。
 そんなナイルさんの様子に慌てた根室恵美さんが、「そ、そんなことないです! わ、私の早とちりみたいでしたし……」と、照れた姿を見せる。
 そんな二人を横で見ながら、俺は口を開く。
 
「まぁ、メディーナさんのことは、自分が伏せていましたから、根室さんが誤解する原因にもなりましたし、これからはそう言う事は無いと思いますので大丈夫ですよ」
 
 一応、俺はフォローを含めて二人に話しかけた。
 
 
 
 そのあとは、何事もなく一日が過ぎた。
 夕方になり根室恵美さんと根室和美ちゃんが帰り、そして午後9時近くになったところで――、
 
「それじゃ、桜」
「わかったの!」
「わんっ!」
 
 母屋に移動しておいたフォークリフトのエンジンキーを、俺の膝の上に乗っていた桜が回す。
 それと同時にフォークリフトのエンジンが掛かる。
 
「それにしても桜にしかフォークリフトのエンジンが掛けられないとは、これ如何に……」
「えへへ。桜、フォークリフトさんとお話したの!」
 
 また、ファンタジーなことを桜が言い出した。
 流石に無機物と話すような超常現象は、俺は一度も乗り物に乗ってあったことがない。
 
「そうかー。すごいなー」
 
 ただ、真っ向から否定するのは良くない。
 まだ、桜も5歳なのだ。
 ここは、褒めて伸ばす方向で行くとしよう。
 
「わんっ!」
 
 桜の頭の上に乗っているフーちゃんも、桜がスゴイ! と、褒めているようだ。
 
「それじゃ、俺は仕事があるから、家に戻っているようにな」
「うん! フーちゃん行くの!」
「わんっ!」
 
 俺の膝の上に乗っていた桜をフォークリフトから降ろしたあと、俺は、フォークリフトで月山雑貨店の駐車場へと向かう。
 駐車場に到着したあとは、荷物が乗っているパレットを持ち上げて店内に移動する。
 駐車場に置かれていた6パレット全部を店内に移動し終えたあとは、フォークリフトを戻してから、再度、店舗へと戻ってから、店を閉めた。
 
「そういえば、ゴロウ様」
 
 シャッターを閉めたところで、ナイルさんが俺に話しかけてくる。
 
「はい? どうかしましたか?」
「いえ。少し気になったのですが……」
「はい」
「ルイーズ王女殿下は、こちらに食糧調達に来ていませんが、大丈夫なのですか?」
「まぁ、何かあれば電話してくださいと伝えてあるので」
「そうですか……」
「何か気になる点でも?」
「いえ。まぁ、エメラス侯爵令嬢が居ますから問題はありませんか。それに、アリアも居ますから」
「そうですね。アリアさんは、遠慮されるような事はありませんから」
 
 本当に、アリアさんは、価格を気にせずに店から商品を持っていくからな。
 エンゲル係数がヤバい事になっているぞ? あの王女様一行は……。
 藤和さんが年末のお歳暮ってことで納入した商品で一番高いズワイガニの缶詰とか1ケースまるごともっていくし……。
 あれ高いんだよな……。
 3缶1ケースで1万円くらいしているし。
 俺ですら食ったことないのに……。
 
「まぁ、食糧が必要だったら電話してくると思いますよ?」
 
 流石に、ずっと迎賓館に篭っているのも可哀想だからな。
 買い物で気分転換してもらうのもいいだろう。
 ただし、その買い物が経済的な圧迫感をこれでもか! と、言うくらいに月山雑貨店の売り上げを下げているが……。
 
「そうですね。それでは、ゴロウ様。一応、ノーマン様の家臣でもあるアリアには、何か困ったことがあったら命じてください。将来、ルイズ辺境伯領を治めるのはゴロウ様ですから、命令には従うと思いますから」
「そ、そうですね……」
 
 とりあえず高価なお歳暮関係は持ち帰らないで欲しいと言いたいが、そんな事を言ったらケチな領主だと思われるから、そのことをアリアさんに相談することは却下だ。
 俺は苦笑いしながらナイルさんのアドナイスに頷いた。
 
 
 
 母屋に行き夕食を食べたあとは異世界へと赴く。
 バックヤード側から店内へ。
 そして店内からシャッターをいつものように開けたあとは異世界側へと移動し――、異世界に到着したあとは、副隊長のナイルさんの命令が飛ぶ。
 
「お前達、パレットに積んである商品を荷車に移動するように! 他には手を触れるなよ? 作業開始!」
 
 ナイルさんの命令と共に20人を超える兵士達が店内と異世界側を行ったり来たりしながら店内のパレットの上に積まれている塩や胡椒などを異世界側へと持ち出す。
 兵士の人達が店内に最初に入ったときに店がピカピカと光っていたが、きっと体調が悪い人がいたのだろう。
 そんなことを思っていると、30分も掛からずに商品の移動が終わる。
 やっぱり人海戦術は偉大だな。
 
「ゴロウ様。それでは、こちらの商品はノーマン様の元へ運ぶという形で宜しいでしょうか?」
「そうですね。それでお願いします」
 
 いつも通りと言っては何だが予定調和のごとく商品の搬入は済んだ。
 
 
 
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