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第355話 屋敷の取材(5)
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ノートパソコンに映し出された映像。
それは、上空を飛んでいるドローンが映し出した辺境伯邸の全貌。
「これは、儂の邸宅かの?」
「はい。辺境伯様の邸宅の全容が現在、映し出されています」
「ほほう。もしかして、あの空を飛んでいる魔道具で?」
「魔道具ではなくドローンという機械になりますね」
踝さんの説明に、「なるほどのう」と、何度か頷く辺境伯。
「――して、クルブシとやら」
「はい?」
「このドローンというのは、どのくらい空を飛んでいられるのだ?」
「接続時間は30分前後ですね」
「ほう……。――して、かなりの移動速度が出ているようだが……」
「だいたい、馬が全力で走る距離で移動することができますね。ただ、通信距離というのがありますので、この機種だと500メートルが限界ですが」
「ゴロウ」
踝さんと会話をしていた辺境伯が俺の方を見てくる。
「何でしょうか?」
「このドローンという機械? じゃが、10台ほど用立ててはもらえぬか?」
「10台?」
「うむ」
「そんなに何に使うのですか?」
「ブランデンの騎士団の間で情報をやり取りするために使いたいと思ってのう」
その運用方法は致命的な問題を抱えている。
それは――、
「辺境伯様。このドローンは、電気がないと再度使う事ができません」
「そ、そうなのか?」
「はい。それと電気は放電現象というのがあり、何もしなくても電気が消費されていき、使わなくても動かなくなります」
「それは、魔法では何ともならないのか?」
「何ともなりません」
「……そ、そうか……」
辺境伯の発想力。
ドローンを使ってでの情報伝達の構築の構想には一瞬驚いた。
ただ、ドローンを運用するに当たって、一番必要なのは、ドローンを動かすための動力となるバッテリーの電気供給というインフラ。
そのインフラが無い時点で、ドローンを運用することはできない。
「それは残念じゃのう」
まぁ、情報のやり取りだけならトランシーバーなどの方法もあるが、それを態々、言うつもりもないと思い、俺は口を噤む。
「辺境伯様。辺境伯邸の全容をデーターとして映像に残すことが出来ましたので、参考資料はこれで十分です」
「もう、よいのか?」
「はい。あくまでも参考にまでなので――、そこまで細かい……詳細のデーターは必要ありませんので」
「そうか……。それにしても……一台は、緊急時には欲しいのう。五郎」
「もしかして、充電は俺に任せると?」
「うむ。何とかならんかの? 将来的には、お主の領地になるのだ。自身の領地を守るために先行投資というのは必要ではないか?」
「それを言われると……。考えておきます」
「色よい返事を期待しておるぞ。もちろん代金は払う」
「分かりました。調べておきます」
「うむ。――では、儂は他に仕事があるからの。あとは好きにすればよい」
辺境伯は、踵を返すと館へと向かって歩き出す。
すると足を止めて、こちらへ振り返って――、
「五郎。また、何時でも来るとよい。それと例のブツ、待っておるぞ?」
「分かっています。すでに胡椒は手配していますので」
「うむ。では、クルブシとやら。これからもゴロウを支えてくれることを願っておるぞ?」
「は、はい――」
「うむ」
辺境伯は、他に仕事があると言っていたこともあり、館の中へと戻っていく。
残されたのは、俺と踝さんとナイルさんだけ。
「とりあえず俺は片付けるとするか……」
ドローンを戻し、アタッシュケースの中に戻しながら、そう語る踝さんを、手持ち無沙汰な俺とナイルさんは見ていた。
俺達が見ている中で、ノートパソコンやタブレット、コントローラが仕舞われていく。
全てが片付け終わったところで、
「五郎。とりあえず参考にできる動画は取れたから、帰るとしよう。大体の図面を起こしたいからな」
俺は頷く。
「ナイルさん、地球に帰ります」
「分かりました。すぐに馬車を手配してきます」
俺達から離れて御者の手配をしに離れていくナイルさんの背中が小さくなったところで――、
「はぁ、ほんっと疲れた……」
「踝さん?」
「五郎、最初から言っておいてくれよ。お前が、辺境伯の孫だってことをさ」
「それについては申し訳なかったと思っている」
「はあ……、本当に今日は疲れた。しかし、お前の爺さん、すごい迫力だよな……。あれが本物の貴族ってやつか……」
そう、踝さんが言葉を返してくる。
「まぁ、そのうち慣れると思いますよ」
「そう願いたいね。それにしても、王女さんを見た事があったけど、それとは別格の存在力だったな……」
「まぁ、実務を取り仕切っているのかどうかで大きく違いがあるかも知れないですね」
そこは、俺も同意するところだ。
「それよりも、良かったのか?」
「何がです?」
「だから、ドローンの配備に関してだ。辺境伯の口ぶりからしてドローンの提供を五郎がするのは確定だと思っているような雰囲気だったからな」
「なるほど……」
俺は頷く。
「――で、本当に提供するつもりなのか?」
「仕える時間は限られるから問題ないと思う」
「そうか……」
それは、上空を飛んでいるドローンが映し出した辺境伯邸の全貌。
「これは、儂の邸宅かの?」
「はい。辺境伯様の邸宅の全容が現在、映し出されています」
「ほほう。もしかして、あの空を飛んでいる魔道具で?」
「魔道具ではなくドローンという機械になりますね」
踝さんの説明に、「なるほどのう」と、何度か頷く辺境伯。
「――して、クルブシとやら」
「はい?」
「このドローンというのは、どのくらい空を飛んでいられるのだ?」
「接続時間は30分前後ですね」
「ほう……。――して、かなりの移動速度が出ているようだが……」
「だいたい、馬が全力で走る距離で移動することができますね。ただ、通信距離というのがありますので、この機種だと500メートルが限界ですが」
「ゴロウ」
踝さんと会話をしていた辺境伯が俺の方を見てくる。
「何でしょうか?」
「このドローンという機械? じゃが、10台ほど用立ててはもらえぬか?」
「10台?」
「うむ」
「そんなに何に使うのですか?」
「ブランデンの騎士団の間で情報をやり取りするために使いたいと思ってのう」
その運用方法は致命的な問題を抱えている。
それは――、
「辺境伯様。このドローンは、電気がないと再度使う事ができません」
「そ、そうなのか?」
「はい。それと電気は放電現象というのがあり、何もしなくても電気が消費されていき、使わなくても動かなくなります」
「それは、魔法では何ともならないのか?」
「何ともなりません」
「……そ、そうか……」
辺境伯の発想力。
ドローンを使ってでの情報伝達の構築の構想には一瞬驚いた。
ただ、ドローンを運用するに当たって、一番必要なのは、ドローンを動かすための動力となるバッテリーの電気供給というインフラ。
そのインフラが無い時点で、ドローンを運用することはできない。
「それは残念じゃのう」
まぁ、情報のやり取りだけならトランシーバーなどの方法もあるが、それを態々、言うつもりもないと思い、俺は口を噤む。
「辺境伯様。辺境伯邸の全容をデーターとして映像に残すことが出来ましたので、参考資料はこれで十分です」
「もう、よいのか?」
「はい。あくまでも参考にまでなので――、そこまで細かい……詳細のデーターは必要ありませんので」
「そうか……。それにしても……一台は、緊急時には欲しいのう。五郎」
「もしかして、充電は俺に任せると?」
「うむ。何とかならんかの? 将来的には、お主の領地になるのだ。自身の領地を守るために先行投資というのは必要ではないか?」
「それを言われると……。考えておきます」
「色よい返事を期待しておるぞ。もちろん代金は払う」
「分かりました。調べておきます」
「うむ。――では、儂は他に仕事があるからの。あとは好きにすればよい」
辺境伯は、踵を返すと館へと向かって歩き出す。
すると足を止めて、こちらへ振り返って――、
「五郎。また、何時でも来るとよい。それと例のブツ、待っておるぞ?」
「分かっています。すでに胡椒は手配していますので」
「うむ。では、クルブシとやら。これからもゴロウを支えてくれることを願っておるぞ?」
「は、はい――」
「うむ」
辺境伯は、他に仕事があると言っていたこともあり、館の中へと戻っていく。
残されたのは、俺と踝さんとナイルさんだけ。
「とりあえず俺は片付けるとするか……」
ドローンを戻し、アタッシュケースの中に戻しながら、そう語る踝さんを、手持ち無沙汰な俺とナイルさんは見ていた。
俺達が見ている中で、ノートパソコンやタブレット、コントローラが仕舞われていく。
全てが片付け終わったところで、
「五郎。とりあえず参考にできる動画は取れたから、帰るとしよう。大体の図面を起こしたいからな」
俺は頷く。
「ナイルさん、地球に帰ります」
「分かりました。すぐに馬車を手配してきます」
俺達から離れて御者の手配をしに離れていくナイルさんの背中が小さくなったところで――、
「はぁ、ほんっと疲れた……」
「踝さん?」
「五郎、最初から言っておいてくれよ。お前が、辺境伯の孫だってことをさ」
「それについては申し訳なかったと思っている」
「はあ……、本当に今日は疲れた。しかし、お前の爺さん、すごい迫力だよな……。あれが本物の貴族ってやつか……」
そう、踝さんが言葉を返してくる。
「まぁ、そのうち慣れると思いますよ」
「そう願いたいね。それにしても、王女さんを見た事があったけど、それとは別格の存在力だったな……」
「まぁ、実務を取り仕切っているのかどうかで大きく違いがあるかも知れないですね」
そこは、俺も同意するところだ。
「それよりも、良かったのか?」
「何がです?」
「だから、ドローンの配備に関してだ。辺境伯の口ぶりからしてドローンの提供を五郎がするのは確定だと思っているような雰囲気だったからな」
「なるほど……」
俺は頷く。
「――で、本当に提供するつもりなのか?」
「仕える時間は限られるから問題ないと思う」
「そうか……」
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