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第350話 豪邸を作ろう!

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「健さん、とりあえず手続きだけはお願いします」
「いいのか?」
「もちろん。是非、お願いします。あと図面の作成の打ち合わせも――」
「そうなると、設計事務所の手配が必要になってくるな。一応、声掛けをしてみるが……」
「何か?」
「――いや。一度、異世界の貴族が住んでいる建築物を見てみたいと思ったんだが――、その方が見劣りしない建物を作れるだろう?」
「まぁ、たしかに……」
 
 そうなると辺境伯の屋敷を見た方が早いか?
 
「そうなるとルイズ辺境伯邸を参考にした方がいいのか?」
「――いや、さすがにデカいんだろう?」
「まぁ、それは――」
「ふむ……、それでも一度、どれくらいの規模の屋敷に住んでいるのか足を運ぶのも悪くはないよな」
「ですよね」
 
 まぁ、そのへんはプロに一度、見て貰ってから、どれくらいの規模の建物を建てれば問題ないのか把握してもらって図面を書いてもらった方がいいかも知れない。
 
「それじゃ健さん。今日の午後9時以降に、また来てもらえますか?」
「異世界に連れて行ってくれるのか?」
「健さんが、今、異世界に行きたいって言ってたんじゃないですか」
「そうだな。じゃ、午後9時になったら、また来るから、その時までにエアコンの手配と工賃の算定を出しておくからよろしく頼むな」
 
 その踝健さんの言葉に俺は頷いた。
 
 
 
 リフォーム踝の社長である踝健さんが帰ったあと、俺は母屋へと戻る。
 
「おかえりなさい。五郎さん」
「今、戻りました」
「少し、話が聞こえてきましたけど、増築よりも新築されるのですか?」
「そんな感じになりました」
「そう……ですか……」
「何か、不味い事でも?」
 
 母屋に戻ってきて居間へと戻った俺に話しかけてきた雪音さんは、思案深い表情になったあと――、
 
「いえ。お金の出所が疑われそうだと思いまして――」
「それは村の人にってことですか?」
「いえ。税務署の方です。それで家を建てるのは何月ごろに?」
「早くて来年の4月以降ですね」
「それなら、何とかなりそうですね」
「何とかなればいいんですけどね。ただ、ルイーズ王女殿下との結婚も、あまり長引かせる訳にはいかないので、早めに、それなりの対外的に見栄えのする建物を建築はしたいんですが――」
「そうですよね……。迎賓館は、あくまでもエルム王国との外交を行う場所という体裁にしていますから。結婚後に住む場所としては、それなりの建物が必要になってきますものね」
 
 そう雪音さんは呟く。
 それにしても3階建てで――、ヘリポートもあり、車が数十台停めることが出来て、ダンスホールまである迎賓館が一時的な住まいとは、贅沢だよな。
 ただ、異世界の貴族に住まいを見せる場合、舐められると問題だからなー。
 
「お金が出まくりますね……」
 
 俺は溜息をつく。
 本来なら異世界と交流していく上で、かなりの貯蓄が出来ていてもおかしくないのに、収支が不思議とプラマイゼロどころか常にマイナスに傾いているのだ。
 
「それは必要経費ということで割り切るしかありませんね」
 
 雪音さんも苦笑いで話しかけてくる。
 
「ですよね」
 
 俺も、そう言葉を返すほかない。
 
「それで五郎さん」
「はい?」
「新築は、どのくらいの大きさを考えているのですか?」
「そうですね。とりあえず先ほど、雪音さんが言っていた迎賓館よりも上で、辺境伯邸に見劣りしないくらいの建築物を――と、考えています」
「それはお金がかかりそうですね。おそらく数億は、かかると思います」
「雪音さんも、そう思いますか……」
「はい。あと、掃除も大変だと思います。迎賓館の掃除は、辺境伯邸でメイドをしていた方がされているのですよね?」
 
 俺は頷く。
 よくあれだけの部屋数と建物を一人で掃除しているモノだと逆に驚いてしまう。
 
「アリアさんは、辺境伯が手配してくれたメイドなので優秀なのかも知れないですね」
「――でも、あれだけ広い建物だと、維持管理は大変ですから……、あと数人は五郎さんの御爺さんにメイドの手配をしてもらった方がいいと思います」
「それは、そうですね。今日は、辺境伯邸に向かう予定が出来たので、辺境伯と会ってきます。その時にメイドを追加で地球側に派遣できないか確認してみます」
「それがいいですね。ただ、メイドの方を派遣してもらうのは、五郎さんがルイーズ王女殿下と結婚してからではないと、情報が漏れてしまう可能性もありますから」
「それは問題ですよね……」
 
 地球と異世界との圧倒的なまでの文化と技術力の差。
 それが、大きなアドバンテージとなっていて、そのアドバンテージが、そのまま利益に直結している。
 だから、地球の情報はなるべく異世界には流したくない。
 それは、ここ最近、本で勉強をして思ったことだ。
 
 
 
 それから、何もなく時間は過ぎていく。
 ――午後9時。
 店を閉めたあと、しばらく母屋で、踝健さんが来るのを待っていると、車が母屋の敷地に入ってくる音が聞こえてきた。
 
「ゴロウ様。どうやら、客人が来られたようです」
「みたいですね」
 
 
 
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