上 下
350 / 437

第350話 豪邸を作ろう!

しおりを挟む
「健さん、とりあえず手続きだけはお願いします」
「いいのか?」
「もちろん。是非、お願いします。あと図面の作成の打ち合わせも――」
「そうなると、設計事務所の手配が必要になってくるな。一応、声掛けをしてみるが……」
「何か?」
「――いや。一度、異世界の貴族が住んでいる建築物を見てみたいと思ったんだが――、その方が見劣りしない建物を作れるだろう?」
「まぁ、たしかに……」
 
 そうなると辺境伯の屋敷を見た方が早いか?
 
「そうなるとルイズ辺境伯邸を参考にした方がいいのか?」
「――いや、さすがにデカいんだろう?」
「まぁ、それは――」
「ふむ……、それでも一度、どれくらいの規模の屋敷に住んでいるのか足を運ぶのも悪くはないよな」
「ですよね」
 
 まぁ、そのへんはプロに一度、見て貰ってから、どれくらいの規模の建物を建てれば問題ないのか把握してもらって図面を書いてもらった方がいいかも知れない。
 
「それじゃ健さん。今日の午後9時以降に、また来てもらえますか?」
「異世界に連れて行ってくれるのか?」
「健さんが、今、異世界に行きたいって言ってたんじゃないですか」
「そうだな。じゃ、午後9時になったら、また来るから、その時までにエアコンの手配と工賃の算定を出しておくからよろしく頼むな」
 
 その踝健さんの言葉に俺は頷いた。
 
 
 
 リフォーム踝の社長である踝健さんが帰ったあと、俺は母屋へと戻る。
 
「おかえりなさい。五郎さん」
「今、戻りました」
「少し、話が聞こえてきましたけど、増築よりも新築されるのですか?」
「そんな感じになりました」
「そう……ですか……」
「何か、不味い事でも?」
 
 母屋に戻ってきて居間へと戻った俺に話しかけてきた雪音さんは、思案深い表情になったあと――、
 
「いえ。お金の出所が疑われそうだと思いまして――」
「それは村の人にってことですか?」
「いえ。税務署の方です。それで家を建てるのは何月ごろに?」
「早くて来年の4月以降ですね」
「それなら、何とかなりそうですね」
「何とかなればいいんですけどね。ただ、ルイーズ王女殿下との結婚も、あまり長引かせる訳にはいかないので、早めに、それなりの対外的に見栄えのする建物を建築はしたいんですが――」
「そうですよね……。迎賓館は、あくまでもエルム王国との外交を行う場所という体裁にしていますから。結婚後に住む場所としては、それなりの建物が必要になってきますものね」
 
 そう雪音さんは呟く。
 それにしても3階建てで――、ヘリポートもあり、車が数十台停めることが出来て、ダンスホールまである迎賓館が一時的な住まいとは、贅沢だよな。
 ただ、異世界の貴族に住まいを見せる場合、舐められると問題だからなー。
 
「お金が出まくりますね……」
 
 俺は溜息をつく。
 本来なら異世界と交流していく上で、かなりの貯蓄が出来ていてもおかしくないのに、収支が不思議とプラマイゼロどころか常にマイナスに傾いているのだ。
 
「それは必要経費ということで割り切るしかありませんね」
 
 雪音さんも苦笑いで話しかけてくる。
 
「ですよね」
 
 俺も、そう言葉を返すほかない。
 
「それで五郎さん」
「はい?」
「新築は、どのくらいの大きさを考えているのですか?」
「そうですね。とりあえず先ほど、雪音さんが言っていた迎賓館よりも上で、辺境伯邸に見劣りしないくらいの建築物を――と、考えています」
「それはお金がかかりそうですね。おそらく数億は、かかると思います」
「雪音さんも、そう思いますか……」
「はい。あと、掃除も大変だと思います。迎賓館の掃除は、辺境伯邸でメイドをしていた方がされているのですよね?」
 
 俺は頷く。
 よくあれだけの部屋数と建物を一人で掃除しているモノだと逆に驚いてしまう。
 
「アリアさんは、辺境伯が手配してくれたメイドなので優秀なのかも知れないですね」
「――でも、あれだけ広い建物だと、維持管理は大変ですから……、あと数人は五郎さんの御爺さんにメイドの手配をしてもらった方がいいと思います」
「それは、そうですね。今日は、辺境伯邸に向かう予定が出来たので、辺境伯と会ってきます。その時にメイドを追加で地球側に派遣できないか確認してみます」
「それがいいですね。ただ、メイドの方を派遣してもらうのは、五郎さんがルイーズ王女殿下と結婚してからではないと、情報が漏れてしまう可能性もありますから」
「それは問題ですよね……」
 
 地球と異世界との圧倒的なまでの文化と技術力の差。
 それが、大きなアドバンテージとなっていて、そのアドバンテージが、そのまま利益に直結している。
 だから、地球の情報はなるべく異世界には流したくない。
 それは、ここ最近、本で勉強をして思ったことだ。
 
 
 
 それから、何もなく時間は過ぎていく。
 ――午後9時。
 店を閉めたあと、しばらく母屋で、踝健さんが来るのを待っていると、車が母屋の敷地に入ってくる音が聞こえてきた。
 
「ゴロウ様。どうやら、客人が来られたようです」
「みたいですね」
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強の英雄は幼馴染を守りたい

なつめ猫
ファンタジー
 異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。  そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...