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第347話 和美ちゃんの依頼達成(4)
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「おはようございます」
「おっさん! ちっす!」
「根室さん、和美ちゃん。おはようございます」
出社してきた二人と挨拶を交わす。
「おはようございます」
ナイルさんも遅れて挨拶をしたところで――、
「和美、母屋の方へ行ってなさい」
「はーい」
和美ちゃんが、店から出ていく。
そして残されたのは、俺と根室さんとナイルさんだけ。
すると、根室恵美さんが頭を下げてくる。
「ナイルさん、ごめんなさい。少し、私はどうかしていました。それと月山さん、ご指摘頂いて痛み要ります。昨日、あれから義理父さんや義理母さんにも話は伺いました。月山さんのお父さんが異世界人だったということ。それと謎の体調不良を抱えて死去したこと。それらを鑑みて、やっぱり異世界の方と付き合った時に、もし、その方が逝去したら娘も悲しむと思って――」
「いえ。私の方こそ、思わせぶりな態度をとってしまい申し訳ない。私は、ルイズ辺境伯領の領主に仕え、民を守る騎士であり副団長です。その重職を忘れたとは言いませんが、軽挙妄動であったことは、今は振り返れば恥ずかしい限りです。根室さんに、誤解されるような態度をとったのは全て私の不徳とするところです。今後は、そのようなことがないようにしておきたいと思います。それと、今後は友人として、店を盛り上げていくことに一緒に邁進して頂ければと思うのですが、どうでしょうか? 根室さん」
「はい! 私の方こそ、よろしくお願いします」
どうやら二人とも落としどころは見つけたようだ。
これで、二人ともどんな障害があっても男女の仲を継続する! とか、言ってきたら、大変なところになるところだったな。
「二人共、今日から新規一転、また頑張りましょう」
「はっ!」
「はい!」
何となく話が纏まったところで、俺は一旦、店のことはナイルさんと根室さんに任せることにする。
二人で話し合うことも必要だろうし。
「ただいまー」
母屋に戻り、土間に上がったところで――、
「おっさん! 少し話があるんやけど?」
和美ちゃんが俺を待ち伏せしていた。
どうも、俺が母屋に帰ってくることを予測していたようだ。
「話?」
「うちのおかんのことやけど?」
「ああ、そっちの話か」
人間関係のことなら、色々と俺に聞きたいことがあって待っていたというのも納得できる。
何せ人同士の問題ってのは気になるものだからな。
本人が納得できないと他に手がつかないこともあるし。
「分かった。――で、後ろで隠れている桜とフーちゃんは、一緒には駄目だぞ?」
「えー」
「くぅーん」
「雪音さんは、桜を見ていてください」
「――え? あ、はい……」
どうも雪音さんも、俺と和美ちゃんとの話には興味はあったらしいが、そのへんは流石に同席させることはできない。
「それじゃ、客間に行くとするか」
「うん」
客間で、何時ものように座布団に座ったあと、まずは俺から話を切り出すことにする。
「それで、俺に話ってのは、以前のナイルさんと母親との関係についてか?」
「うん。おっさんが、おかんにうまいこと言うてくれたんやろ?」
「そうだな」
俺は肯定する。
「だが、和美ちゃんの名前は一言も出してないから安心していいぞ? 名前を出されるのは困るだろう?」
「うん、そら知っとる。そうじゃなかったら、おかんから何ぞ言われとったし……」
「そうか……」
「おっさんには迷惑かけてすまん。せやさかい、今度、おっさんが困ったらうちが力になるから! そん時は、相談してほええ」
「――いや、大丈夫だから」
そもそも5歳の女の子に相談することなんて普通はないだろ。
「それじゃウチの気持ちが納得できひんよって! 貸し借りはきちんとするのが大阪人やさけ!」
「和美ちゃんは大阪人だったのかー」
その割には、母親は標準語を話しているよな。
諸文は、どっちかと言えば東北弁だし。
「おかんの実家にずっと預けられとったから、ほんで……。実家は、大阪の道頓堀やったから」
「なるほど……」
「せやさかい、困ったことがあったら言うたれや」
まぁ、困ることは無いと思うが――、そこまで恩を着るのが嫌なら――、
「――なら、おっさんじゃなくてお兄さんと呼んで欲しいかもな。それでいいぞ? むしろ、それで手を打とうじゃないか!」
「……なら、ゴローって言うけどええ?」
「別に構わないぞ?」
おっさんと呼ばれるよりも、ずっとマシだからな。
「うん。わかった! ゴロー! 困ったことがあったらいつでも言うたってな! ゴローは、ウチの悩みを解ぜったいくれたんやさかい! 私もゴローの悩みを解決するから! 等価交換やさかい!」
「――お、おう……」
「じゃ、ゴロー……。ありがとさん!」
「おう」
和美ちゃんは立ちあがり、頭を下げると居間から出ていった。
まぁ、どうやら和美ちゃんからの依頼は何とか解決できたようだな。
少ししたら和美ちゃんと桜とフーちゃんの声が聞こえてきたから、どうやら、特に問題ないようだ。
俺は、客間に敷かれている畳の上で横になる。
「あー、疲れた。マジで……」
思わず愚痴が出た。
「おっさん! ちっす!」
「根室さん、和美ちゃん。おはようございます」
出社してきた二人と挨拶を交わす。
「おはようございます」
ナイルさんも遅れて挨拶をしたところで――、
「和美、母屋の方へ行ってなさい」
「はーい」
和美ちゃんが、店から出ていく。
そして残されたのは、俺と根室さんとナイルさんだけ。
すると、根室恵美さんが頭を下げてくる。
「ナイルさん、ごめんなさい。少し、私はどうかしていました。それと月山さん、ご指摘頂いて痛み要ります。昨日、あれから義理父さんや義理母さんにも話は伺いました。月山さんのお父さんが異世界人だったということ。それと謎の体調不良を抱えて死去したこと。それらを鑑みて、やっぱり異世界の方と付き合った時に、もし、その方が逝去したら娘も悲しむと思って――」
「いえ。私の方こそ、思わせぶりな態度をとってしまい申し訳ない。私は、ルイズ辺境伯領の領主に仕え、民を守る騎士であり副団長です。その重職を忘れたとは言いませんが、軽挙妄動であったことは、今は振り返れば恥ずかしい限りです。根室さんに、誤解されるような態度をとったのは全て私の不徳とするところです。今後は、そのようなことがないようにしておきたいと思います。それと、今後は友人として、店を盛り上げていくことに一緒に邁進して頂ければと思うのですが、どうでしょうか? 根室さん」
「はい! 私の方こそ、よろしくお願いします」
どうやら二人とも落としどころは見つけたようだ。
これで、二人ともどんな障害があっても男女の仲を継続する! とか、言ってきたら、大変なところになるところだったな。
「二人共、今日から新規一転、また頑張りましょう」
「はっ!」
「はい!」
何となく話が纏まったところで、俺は一旦、店のことはナイルさんと根室さんに任せることにする。
二人で話し合うことも必要だろうし。
「ただいまー」
母屋に戻り、土間に上がったところで――、
「おっさん! 少し話があるんやけど?」
和美ちゃんが俺を待ち伏せしていた。
どうも、俺が母屋に帰ってくることを予測していたようだ。
「話?」
「うちのおかんのことやけど?」
「ああ、そっちの話か」
人間関係のことなら、色々と俺に聞きたいことがあって待っていたというのも納得できる。
何せ人同士の問題ってのは気になるものだからな。
本人が納得できないと他に手がつかないこともあるし。
「分かった。――で、後ろで隠れている桜とフーちゃんは、一緒には駄目だぞ?」
「えー」
「くぅーん」
「雪音さんは、桜を見ていてください」
「――え? あ、はい……」
どうも雪音さんも、俺と和美ちゃんとの話には興味はあったらしいが、そのへんは流石に同席させることはできない。
「それじゃ、客間に行くとするか」
「うん」
客間で、何時ものように座布団に座ったあと、まずは俺から話を切り出すことにする。
「それで、俺に話ってのは、以前のナイルさんと母親との関係についてか?」
「うん。おっさんが、おかんにうまいこと言うてくれたんやろ?」
「そうだな」
俺は肯定する。
「だが、和美ちゃんの名前は一言も出してないから安心していいぞ? 名前を出されるのは困るだろう?」
「うん、そら知っとる。そうじゃなかったら、おかんから何ぞ言われとったし……」
「そうか……」
「おっさんには迷惑かけてすまん。せやさかい、今度、おっさんが困ったらうちが力になるから! そん時は、相談してほええ」
「――いや、大丈夫だから」
そもそも5歳の女の子に相談することなんて普通はないだろ。
「それじゃウチの気持ちが納得できひんよって! 貸し借りはきちんとするのが大阪人やさけ!」
「和美ちゃんは大阪人だったのかー」
その割には、母親は標準語を話しているよな。
諸文は、どっちかと言えば東北弁だし。
「おかんの実家にずっと預けられとったから、ほんで……。実家は、大阪の道頓堀やったから」
「なるほど……」
「せやさかい、困ったことがあったら言うたれや」
まぁ、困ることは無いと思うが――、そこまで恩を着るのが嫌なら――、
「――なら、おっさんじゃなくてお兄さんと呼んで欲しいかもな。それでいいぞ? むしろ、それで手を打とうじゃないか!」
「……なら、ゴローって言うけどええ?」
「別に構わないぞ?」
おっさんと呼ばれるよりも、ずっとマシだからな。
「うん。わかった! ゴロー! 困ったことがあったらいつでも言うたってな! ゴローは、ウチの悩みを解ぜったいくれたんやさかい! 私もゴローの悩みを解決するから! 等価交換やさかい!」
「――お、おう……」
「じゃ、ゴロー……。ありがとさん!」
「おう」
和美ちゃんは立ちあがり、頭を下げると居間から出ていった。
まぁ、どうやら和美ちゃんからの依頼は何とか解決できたようだな。
少ししたら和美ちゃんと桜とフーちゃんの声が聞こえてきたから、どうやら、特に問題ないようだ。
俺は、客間に敷かれている畳の上で横になる。
「あー、疲れた。マジで……」
思わず愚痴が出た。
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