346 / 437
第346話 和美ちゃんの依頼達成(3)
しおりを挟む
「五郎の家は、大丈夫だったか?」
「大丈夫とは?」
「台風で被害が出なかったかの確認だったのだが……」
「あ……そのことですか」
「うむ。五郎の家もかなり古いと思っての」
「――と、いうことは村長の家も被害が出たんですか?」
「屋根瓦が数枚持ってかれたくらいじゃな」
「それじゃ、そこまでという感じではないんですね?」
「うむ。だが、我が家はリフォームをしてから10年ほどじゃからの。五郎が住んでいる母屋は、築50年以上じゃろう?」
「まぁ、そのへんは、護衛に来てくれていた兵士の方が魔法で何とかしてくれました」
「そ、そうか……」
「はい。ですから、うちは大丈夫です」
「それは店舗の方も、そうかの?」
「はい。店舗の方は空間に店の形状が固定されているらしくて、影響を受けないそうです」
「それは地震の影響も受けない――と、いうことかの?」
「さあ? どうでしょうか?」
そこまでは、俺も知らない。
ただ地震の影響を受けないなら、日本では最強の店舗なのでは? 何せ自然界の災害を一切受け付けないのだから、強すぎる。
「どちらにしても、五郎の家が被害を受けていなくて安心したのう」
「村長の家も被害は少なかったようですので良かったです」
「うむ」
「村長」
「どうかしたのか?」
「村長の家がリフォームしたばかりでも被害があったということは――」
「他の家も被害があったと考えた方がいいかもしれんのう」
「ですよね……」
まぁ、本当に台風で建造物に被害が出ているとしたら、行政や保険屋との手続きが忙しくて、買い物に来られないと言う理由から、来店客が殆ど来ない理由にも説明がつく。
そうなると、しばらくは閑古鳥が鳴る状態か……。
ただ店を開けないという選択肢はないから、開けるしかない訳だが――、
「村長」
「どうかしたのかの?」
「結城村で何かありましたら、言ってください」
「五郎、情報を渡しても良いが、無暗矢鱈に人助けはするんじゃないぞ?」
「分かっています」
前回の農作物の採取に関しては、ある程度は理由をつけて何とかなったが、今回の台風災害で被害にあった人には何もできない。
何故なら、俺は一介のコンビニのオーナーだからだ。
「分かっているのなら良い。――ではな、五郎」
――そこで電話が切れる。
すると、電話をしていた事に気が付いたのか雪音さんが台所から――、
「お爺ちゃんから電話ですか?」
――と、聞いて来た。
俺は、こちらを見て来ている雪音さんに頷く。
「ですね。台風で、村長の家の屋根の一部の瓦が飛ばされたから、うちは大丈夫か? って、心配して電話してきました」
「そうだったのですか。――でも、お爺ちゃんの家で台風の影響を受けていたってことは、他の結城村の住人の方の家は、もっと被害を受けているかも知れませんね」
その雪音さんの言葉に、俺は頷く。
「そのことに関しては、村長と俺も同じ結論で話はつきました。ただ、今回の台風で被災した人たちには、関与しないようにと言われました」
「そうですね。それがいいと思います。あまり、でしゃばりすぎるのもあれですから……」
雪音さんは、それだけ言うと台所に戻り料理の続きを始める。
それからしばらくしてナイルさんが、フーちゃんを連れて帰ってきた。
俺は桜を起こしにいく。
部屋に入れば、桜は布団の中で、まだ寝ていた。
「桜、ご飯だぞ」
「……」
「桜」
静かに目を開けた桜は、布団の中にスポっと入ってしまう。
これは……。
「おじちゃん。寒いの」
だよなー。
俺も、そろそろ朝が寒くなってきていたとは思っていたが、40歳を超えると寒さに鈍感になるから、若い時とは違うのだ。
「ほら、雪音さんが朝食を作っているから、ご飯を食べるぞ」
「うん……」
渋々と言った感じで布団の中から出てくる桜。
「寒いの……」
「ほら、体を動かせば温かくなるから」
「うん」
パジャマ姿のままの桜と一緒に居間に戻る。
そして、フーちゃんが居間の畳の上で寝転がっていた。
「フーちゃん……」
桜が、そんなフーちゃんを見て近づく。
「わふ!?」
桜がフーちゃんを抱きかかえると、自分自身のパジャマの中にフーちゃんを入れてしまう。
「フーちゃんカイロなの。あったかいの」
桜が暖を取るためだけに、フーちゃんは桜のパジャマの中に囚われてしまった。
まぁいいか。
しかし、子供の発想力は何と言うかすごいな。
ホッカイロの代わりにフーちゃんを使うとは。
朝食を食べ終わったあと、フーちゃんは解放された。
朝食後は、いつも通り店を開店する。
「ゴロウ様」
「どうかしましたか? ナイルさん」
「根室さんは来られますでしょうか?」
「とくに休みの連絡は入ってないので来ると思いますが?」
異世界では、どうかは知らないが、日本の労働者は、余程のことが無い限り休んだりはしない。
「そうですか……」
「はい。それに日本の労働者は過剰すぎるまでの責任感を持って仕事をしていますから大丈夫ですよ」
「日本という国は、すごいのですね」
「まぁ、良くもあり悪くもありみたいな……」
ナイルさんと会話をしていると根室さんが出社してきた。
「大丈夫とは?」
「台風で被害が出なかったかの確認だったのだが……」
「あ……そのことですか」
「うむ。五郎の家もかなり古いと思っての」
「――と、いうことは村長の家も被害が出たんですか?」
「屋根瓦が数枚持ってかれたくらいじゃな」
「それじゃ、そこまでという感じではないんですね?」
「うむ。だが、我が家はリフォームをしてから10年ほどじゃからの。五郎が住んでいる母屋は、築50年以上じゃろう?」
「まぁ、そのへんは、護衛に来てくれていた兵士の方が魔法で何とかしてくれました」
「そ、そうか……」
「はい。ですから、うちは大丈夫です」
「それは店舗の方も、そうかの?」
「はい。店舗の方は空間に店の形状が固定されているらしくて、影響を受けないそうです」
「それは地震の影響も受けない――と、いうことかの?」
「さあ? どうでしょうか?」
そこまでは、俺も知らない。
ただ地震の影響を受けないなら、日本では最強の店舗なのでは? 何せ自然界の災害を一切受け付けないのだから、強すぎる。
「どちらにしても、五郎の家が被害を受けていなくて安心したのう」
「村長の家も被害は少なかったようですので良かったです」
「うむ」
「村長」
「どうかしたのか?」
「村長の家がリフォームしたばかりでも被害があったということは――」
「他の家も被害があったと考えた方がいいかもしれんのう」
「ですよね……」
まぁ、本当に台風で建造物に被害が出ているとしたら、行政や保険屋との手続きが忙しくて、買い物に来られないと言う理由から、来店客が殆ど来ない理由にも説明がつく。
そうなると、しばらくは閑古鳥が鳴る状態か……。
ただ店を開けないという選択肢はないから、開けるしかない訳だが――、
「村長」
「どうかしたのかの?」
「結城村で何かありましたら、言ってください」
「五郎、情報を渡しても良いが、無暗矢鱈に人助けはするんじゃないぞ?」
「分かっています」
前回の農作物の採取に関しては、ある程度は理由をつけて何とかなったが、今回の台風災害で被害にあった人には何もできない。
何故なら、俺は一介のコンビニのオーナーだからだ。
「分かっているのなら良い。――ではな、五郎」
――そこで電話が切れる。
すると、電話をしていた事に気が付いたのか雪音さんが台所から――、
「お爺ちゃんから電話ですか?」
――と、聞いて来た。
俺は、こちらを見て来ている雪音さんに頷く。
「ですね。台風で、村長の家の屋根の一部の瓦が飛ばされたから、うちは大丈夫か? って、心配して電話してきました」
「そうだったのですか。――でも、お爺ちゃんの家で台風の影響を受けていたってことは、他の結城村の住人の方の家は、もっと被害を受けているかも知れませんね」
その雪音さんの言葉に、俺は頷く。
「そのことに関しては、村長と俺も同じ結論で話はつきました。ただ、今回の台風で被災した人たちには、関与しないようにと言われました」
「そうですね。それがいいと思います。あまり、でしゃばりすぎるのもあれですから……」
雪音さんは、それだけ言うと台所に戻り料理の続きを始める。
それからしばらくしてナイルさんが、フーちゃんを連れて帰ってきた。
俺は桜を起こしにいく。
部屋に入れば、桜は布団の中で、まだ寝ていた。
「桜、ご飯だぞ」
「……」
「桜」
静かに目を開けた桜は、布団の中にスポっと入ってしまう。
これは……。
「おじちゃん。寒いの」
だよなー。
俺も、そろそろ朝が寒くなってきていたとは思っていたが、40歳を超えると寒さに鈍感になるから、若い時とは違うのだ。
「ほら、雪音さんが朝食を作っているから、ご飯を食べるぞ」
「うん……」
渋々と言った感じで布団の中から出てくる桜。
「寒いの……」
「ほら、体を動かせば温かくなるから」
「うん」
パジャマ姿のままの桜と一緒に居間に戻る。
そして、フーちゃんが居間の畳の上で寝転がっていた。
「フーちゃん……」
桜が、そんなフーちゃんを見て近づく。
「わふ!?」
桜がフーちゃんを抱きかかえると、自分自身のパジャマの中にフーちゃんを入れてしまう。
「フーちゃんカイロなの。あったかいの」
桜が暖を取るためだけに、フーちゃんは桜のパジャマの中に囚われてしまった。
まぁいいか。
しかし、子供の発想力は何と言うかすごいな。
ホッカイロの代わりにフーちゃんを使うとは。
朝食を食べ終わったあと、フーちゃんは解放された。
朝食後は、いつも通り店を開店する。
「ゴロウ様」
「どうかしましたか? ナイルさん」
「根室さんは来られますでしょうか?」
「とくに休みの連絡は入ってないので来ると思いますが?」
異世界では、どうかは知らないが、日本の労働者は、余程のことが無い限り休んだりはしない。
「そうですか……」
「はい。それに日本の労働者は過剰すぎるまでの責任感を持って仕事をしていますから大丈夫ですよ」
「日本という国は、すごいのですね」
「まぁ、良くもあり悪くもありみたいな……」
ナイルさんと会話をしていると根室さんが出社してきた。
211
お気に入りに追加
1,931
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる