田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫

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第346話 和美ちゃんの依頼達成(3)

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「五郎の家は、大丈夫だったか?」
「大丈夫とは?」
「台風で被害が出なかったかの確認だったのだが……」
「あ……そのことですか」
「うむ。五郎の家もかなり古いと思っての」
「――と、いうことは村長の家も被害が出たんですか?」
「屋根瓦が数枚持ってかれたくらいじゃな」
「それじゃ、そこまでという感じではないんですね?」
「うむ。だが、我が家はリフォームをしてから10年ほどじゃからの。五郎が住んでいる母屋は、築50年以上じゃろう?」
「まぁ、そのへんは、護衛に来てくれていた兵士の方が魔法で何とかしてくれました」
「そ、そうか……」
「はい。ですから、うちは大丈夫です」
「それは店舗の方も、そうかの?」
「はい。店舗の方は空間に店の形状が固定されているらしくて、影響を受けないそうです」
「それは地震の影響も受けない――と、いうことかの?」
「さあ? どうでしょうか?」
 
 そこまでは、俺も知らない。
 ただ地震の影響を受けないなら、日本では最強の店舗なのでは? 何せ自然界の災害を一切受け付けないのだから、強すぎる。
 
「どちらにしても、五郎の家が被害を受けていなくて安心したのう」
「村長の家も被害は少なかったようですので良かったです」
「うむ」
「村長」
「どうかしたのか?」
「村長の家がリフォームしたばかりでも被害があったということは――」
「他の家も被害があったと考えた方がいいかもしれんのう」
「ですよね……」
 
 まぁ、本当に台風で建造物に被害が出ているとしたら、行政や保険屋との手続きが忙しくて、買い物に来られないと言う理由から、来店客が殆ど来ない理由にも説明がつく。
 そうなると、しばらくは閑古鳥が鳴る状態か……。
 ただ店を開けないという選択肢はないから、開けるしかない訳だが――、
 
「村長」
「どうかしたのかの?」
「結城村で何かありましたら、言ってください」
「五郎、情報を渡しても良いが、無暗矢鱈に人助けはするんじゃないぞ?」
「分かっています」
 
 前回の農作物の採取に関しては、ある程度は理由をつけて何とかなったが、今回の台風災害で被害にあった人には何もできない。
 何故なら、俺は一介のコンビニのオーナーだからだ。
 
「分かっているのなら良い。――ではな、五郎」
 
 ――そこで電話が切れる。
 すると、電話をしていた事に気が付いたのか雪音さんが台所から――、
 
「お爺ちゃんから電話ですか?」
 
 ――と、聞いて来た。
 俺は、こちらを見て来ている雪音さんに頷く。
 
「ですね。台風で、村長の家の屋根の一部の瓦が飛ばされたから、うちは大丈夫か? って、心配して電話してきました」
「そうだったのですか。――でも、お爺ちゃんの家で台風の影響を受けていたってことは、他の結城村の住人の方の家は、もっと被害を受けているかも知れませんね」
 
 その雪音さんの言葉に、俺は頷く。
 
「そのことに関しては、村長と俺も同じ結論で話はつきました。ただ、今回の台風で被災した人たちには、関与しないようにと言われました」
「そうですね。それがいいと思います。あまり、でしゃばりすぎるのもあれですから……」
 
 雪音さんは、それだけ言うと台所に戻り料理の続きを始める。
 それからしばらくしてナイルさんが、フーちゃんを連れて帰ってきた。
 俺は桜を起こしにいく。
 部屋に入れば、桜は布団の中で、まだ寝ていた。
 
「桜、ご飯だぞ」
「……」
「桜」
 
 静かに目を開けた桜は、布団の中にスポっと入ってしまう。
 これは……。
 
「おじちゃん。寒いの」
 
 だよなー。
 俺も、そろそろ朝が寒くなってきていたとは思っていたが、40歳を超えると寒さに鈍感になるから、若い時とは違うのだ。
 
「ほら、雪音さんが朝食を作っているから、ご飯を食べるぞ」
「うん……」
 
 渋々と言った感じで布団の中から出てくる桜。
 
「寒いの……」
「ほら、体を動かせば温かくなるから」
「うん」
 
 パジャマ姿のままの桜と一緒に居間に戻る。
 そして、フーちゃんが居間の畳の上で寝転がっていた。
 
「フーちゃん……」
 
 桜が、そんなフーちゃんを見て近づく。
 
「わふ!?」
 
 桜がフーちゃんを抱きかかえると、自分自身のパジャマの中にフーちゃんを入れてしまう。
 
「フーちゃんカイロなの。あったかいの」
 
 桜が暖を取るためだけに、フーちゃんは桜のパジャマの中に囚われてしまった。
 まぁいいか。
 しかし、子供の発想力は何と言うかすごいな。
 ホッカイロの代わりにフーちゃんを使うとは。
 朝食を食べ終わったあと、フーちゃんは解放された。
 
 
 
 朝食後は、いつも通り店を開店する。
 
「ゴロウ様」
「どうかしましたか? ナイルさん」
「根室さんは来られますでしょうか?」
「とくに休みの連絡は入ってないので来ると思いますが?」
 
 異世界では、どうかは知らないが、日本の労働者は、余程のことが無い限り休んだりはしない。
 
「そうですか……」
「はい。それに日本の労働者は過剰すぎるまでの責任感を持って仕事をしていますから大丈夫ですよ」
「日本という国は、すごいのですね」
「まぁ、良くもあり悪くもありみたいな……」
 
 ナイルさんと会話をしていると根室さんが出社してきた。
 
 
 
 
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