345 / 437
第345話 和美ちゃんの依頼達成(2)
しおりを挟む
「それにしても、メディーナさんもそうでしたけど、ナイルさん……」
「はい?」
「寒くないんですか?」
「身体強化をしていますから」
「そ、そうですか……」
コレは真冬でも同じことをしてそうだな。
俺は河原にフーちゃんを放して、ナイルさんの動きを見ていると、ある事に気が付く。
川の中で立っているというのに微動だにしてないのだ。
つまり、相当下半身を鍛えているというのが分かる。
よくよく見て見れば、川の水が跳ねたことで、Tシャツがナイルさんの体に貼りついていて、Tシャツの下からは筋肉隆々な肉体が見え隠れしている。
「なるほど……」
「ゴ、ゴロウ様……、そんなに私を見て何を――」
「いや、勘違いしないでくれ。ただ随分と鍛えているなと思っただけだから」
「そうでしたか。それは良かったです」
俺を、どういう目で見ていたのか小一時間ツッコミたくはなったが、黙って河原に転がっている大岩に座る。
そうして、大岩の上で寝そべり瞼を閉じると目以外の五感が研ぎ澄まされる。
それによって川のせせらぎが気持ちを癒してくれると共に――、
「さむっ! まじでさむっ!」
石の上に寝転がってみたが、もうすぐ11月と言う事もあり石は完全に冷えていて、とても寒い。
「ゴロウ様」
「――は、はい……なんでしょうか?」
そろそろ母屋に帰ろうか? と、考えたところでナイルさんの方から話しかけてきた。
「昨日、ゴロウ様に言われたことを、先ほどまでずっと考えていました」
ナイルさんの呟き。
俺は相槌を打つのも違うと思い黙って聞くことにする。
「私は、騎士となった時に、この命は、エルム王国に捧げています。そして、それと同時に、私はルイズ辺境伯領の騎士であり、民を守る剣にして盾ということで騎士になりました」
「……」
「そして騎士になった以上、自身が仕える領主が治める領地を守ることは最優先です。その為には、色恋沙汰に現を抜かす暇はないと考えています。ゴロウ様が、異世界と地球との関係性と、危険性、そして不安定性について深く思慮を巡らせていること。そして、私と根室恵美さんとの関係について苦慮していたことを察することが出来なかったのは、騎士として有るまじき失態だと思っております」
「……」
「私は、一人の男の前に、ルイズ辺境伯領の騎士として――、副団長として、職場での公私混同はしない事にします。それが、引いてはルイズ辺境伯領の為と思いますので」
「……」
俺は無言を貫く。
ナイルさんの意見は極力尊重したいが、正直言って、和美ちゃんからの依頼も大事だからだ。
そして和美ちゃんの問題は、根室恵美さんの労働環境ややる気に直結するから、雇用主としては、悩むところだ。
「――ですので、私は根室恵美さんとは友人関係で行こうと考えています」
「……」
「ゴロウ様」
「はい?」
「友人関係で居たいと思うのは、どうでしょうか?」
「そうですね……。そのへんは自分が干渉する部分ではないので、ナイルさんの判断にお任せします」
俺は、あくまでもナイルさんの意見と考えを尊重するという感じで、話を持って行くことにする。
後々、何か面倒事になった時に、俺の意見が介在していた場合、問題になる事は目に見えているからだ。
「分かりました。ゴロウ様のお気持ち、ありがたく頂戴します」
俺は何も言っていないが、ナイルさんが頭を下げてきて納得してくれたのだから、別にいいか……。
俺は、少し大物ぶって、コクリと頷き――、
「フーちゃん、帰るぞ」
「ガルルル!」
どうやら、まだ遊びたいらしい。
「ゴロウ様。フーちゃん様は、私が、朝食までに連れて帰ります」
「そうですか? それでは、お願いします」
それにしても、どうして、フーちゃんが様付けなのか。
異世界では犬に様付けをする風習でもあるのか?
まぁ、他所様の風習に口を出すほど俺は野暮ではないからな。
一人、寒空の中から脱出し、母屋へと戻ったあとは、とりあえず布団に入り二度寝をしようと居間へと入る。
すると布団は雪音さんにより撤去されていた。
「俺の布団が――」
「あ、五郎さん! お布団は、干しておきました」
庭から縁側に上がってきた雪音さんが一仕事を終えたとばかりに良い笑顔で話しかけてきた。
もう本当に、いい笑顔で。
「そ、そうですか……。いやー、俺も、そろそろ起きないととは思っていたんですよ……」
俺はチラリと居間の壁に掛けられている時計を見る。
時刻は午前7時半過ぎ。
よくよく考えたら二度寝の時間じゃないな。
「それでは、私は朝食を作りますから」
雪音さんは台所に立つと、冷蔵庫を開けて、献立を考えているのか思考しているようで――、
「さて、俺はどうしようかな……」
家の家事は雪音さんに一任しているし、やることがない。
桜は、午前8時頃になってからお起しに行ってもいいし。
完全に手持ち無沙汰だな。
そう思ったところで――、携帯電話が鳴る。
「はい。五郎です」
「田口じゃ」
「村長? どうかしたんですか? こんな朝早くから――」
「はい?」
「寒くないんですか?」
「身体強化をしていますから」
「そ、そうですか……」
コレは真冬でも同じことをしてそうだな。
俺は河原にフーちゃんを放して、ナイルさんの動きを見ていると、ある事に気が付く。
川の中で立っているというのに微動だにしてないのだ。
つまり、相当下半身を鍛えているというのが分かる。
よくよく見て見れば、川の水が跳ねたことで、Tシャツがナイルさんの体に貼りついていて、Tシャツの下からは筋肉隆々な肉体が見え隠れしている。
「なるほど……」
「ゴ、ゴロウ様……、そんなに私を見て何を――」
「いや、勘違いしないでくれ。ただ随分と鍛えているなと思っただけだから」
「そうでしたか。それは良かったです」
俺を、どういう目で見ていたのか小一時間ツッコミたくはなったが、黙って河原に転がっている大岩に座る。
そうして、大岩の上で寝そべり瞼を閉じると目以外の五感が研ぎ澄まされる。
それによって川のせせらぎが気持ちを癒してくれると共に――、
「さむっ! まじでさむっ!」
石の上に寝転がってみたが、もうすぐ11月と言う事もあり石は完全に冷えていて、とても寒い。
「ゴロウ様」
「――は、はい……なんでしょうか?」
そろそろ母屋に帰ろうか? と、考えたところでナイルさんの方から話しかけてきた。
「昨日、ゴロウ様に言われたことを、先ほどまでずっと考えていました」
ナイルさんの呟き。
俺は相槌を打つのも違うと思い黙って聞くことにする。
「私は、騎士となった時に、この命は、エルム王国に捧げています。そして、それと同時に、私はルイズ辺境伯領の騎士であり、民を守る剣にして盾ということで騎士になりました」
「……」
「そして騎士になった以上、自身が仕える領主が治める領地を守ることは最優先です。その為には、色恋沙汰に現を抜かす暇はないと考えています。ゴロウ様が、異世界と地球との関係性と、危険性、そして不安定性について深く思慮を巡らせていること。そして、私と根室恵美さんとの関係について苦慮していたことを察することが出来なかったのは、騎士として有るまじき失態だと思っております」
「……」
「私は、一人の男の前に、ルイズ辺境伯領の騎士として――、副団長として、職場での公私混同はしない事にします。それが、引いてはルイズ辺境伯領の為と思いますので」
「……」
俺は無言を貫く。
ナイルさんの意見は極力尊重したいが、正直言って、和美ちゃんからの依頼も大事だからだ。
そして和美ちゃんの問題は、根室恵美さんの労働環境ややる気に直結するから、雇用主としては、悩むところだ。
「――ですので、私は根室恵美さんとは友人関係で行こうと考えています」
「……」
「ゴロウ様」
「はい?」
「友人関係で居たいと思うのは、どうでしょうか?」
「そうですね……。そのへんは自分が干渉する部分ではないので、ナイルさんの判断にお任せします」
俺は、あくまでもナイルさんの意見と考えを尊重するという感じで、話を持って行くことにする。
後々、何か面倒事になった時に、俺の意見が介在していた場合、問題になる事は目に見えているからだ。
「分かりました。ゴロウ様のお気持ち、ありがたく頂戴します」
俺は何も言っていないが、ナイルさんが頭を下げてきて納得してくれたのだから、別にいいか……。
俺は、少し大物ぶって、コクリと頷き――、
「フーちゃん、帰るぞ」
「ガルルル!」
どうやら、まだ遊びたいらしい。
「ゴロウ様。フーちゃん様は、私が、朝食までに連れて帰ります」
「そうですか? それでは、お願いします」
それにしても、どうして、フーちゃんが様付けなのか。
異世界では犬に様付けをする風習でもあるのか?
まぁ、他所様の風習に口を出すほど俺は野暮ではないからな。
一人、寒空の中から脱出し、母屋へと戻ったあとは、とりあえず布団に入り二度寝をしようと居間へと入る。
すると布団は雪音さんにより撤去されていた。
「俺の布団が――」
「あ、五郎さん! お布団は、干しておきました」
庭から縁側に上がってきた雪音さんが一仕事を終えたとばかりに良い笑顔で話しかけてきた。
もう本当に、いい笑顔で。
「そ、そうですか……。いやー、俺も、そろそろ起きないととは思っていたんですよ……」
俺はチラリと居間の壁に掛けられている時計を見る。
時刻は午前7時半過ぎ。
よくよく考えたら二度寝の時間じゃないな。
「それでは、私は朝食を作りますから」
雪音さんは台所に立つと、冷蔵庫を開けて、献立を考えているのか思考しているようで――、
「さて、俺はどうしようかな……」
家の家事は雪音さんに一任しているし、やることがない。
桜は、午前8時頃になってからお起しに行ってもいいし。
完全に手持ち無沙汰だな。
そう思ったところで――、携帯電話が鳴る。
「はい。五郎です」
「田口じゃ」
「村長? どうかしたんですか? こんな朝早くから――」
241
お気に入りに追加
1,954
あなたにおすすめの小説
最強の英雄は幼馴染を守りたい
なつめ猫
ファンタジー
異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。
そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる