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第344話 和美ちゃんの依頼達成(1)
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「ナイルさんも、ノーマン辺境伯様が、俺の護衛に、貴方を付けた理由を考えてください。ゲートを維持することを、ノーマン辺境伯様が大事にしているからこそ、こちらの安全な世界にまで騎士を派遣しているということを」
「はい……。申し訳ありません。ゴロウ様」
「分かってくれればいいです」
さて――、とりあえず、これで話は終わったな。
あとは、どう答えを出すかは二人次第と言ったところか。
根室さんも難しい表情をしているので、ナイルさんと安易に付き合うような真似はしないと思うし、コレで和美ちゃんの相談も何とか解決かな?
「とりあえず、今日の俺からの話は以上です」
そこで、俺は話を一旦、区切る。
そして――、
「根室さん」
「――は、はい」
「ご自宅までお送りします。もう遅いですから」
「――で、では、私もお供します。ゴロウ様」
「そんなに遠くないので大丈夫です。それよりもナイルさんも考えておいてください」
「そういう訳には! 私は、ゴロウ様の護衛として、お傍にいる必要がありますので!」
「……分かりました。それでは、一緒に同行してください」
「はっ!」
まぁ、無理に断ったら俺の発言がおかしいことになるから、仕方ないな。
車で、根室恵美さんを自宅まで送ったあと、帰り道の車の中で何度か溜息をつくナイルさん。
「ゴロウ様」
「何ですか?」
「ゴロウ様は、私と恵美さんとの関係については、どう考えておられるのですか?」
「どうも何も本当のことを知らないで男女の仲になった方が問題だと思っているだけですが?」
「……つまり、応援も否定もするつもりは無いということですか」
「まぁ、男女の仲に口を出すほど野暮ではないので」
「そうでしたか……。てっきり私と、恵美さんの仲を……。いえ、何でもありません」
まったく……下の名前で呼んでいるあたり隠さなくなっているな。
仲がいいとは思っていたが、和美ちゃんが危機感を覚えるはずだ。
まぁ、ナイルさんは別として――、根室恵美さんが、和美ちゃんの母親である以上、どう思って行動するかだな。
これで駄目だったら、素直に和美ちゃんに無理だったと謝るとしよう。
「そういえばナイルさん」
「はい」
「もし仮にですが、もしですよ? もし、根室さんと結婚したら、ナイルさんは異世界と日本、どっちを取るんですか?」
「――え?」
「どっちを主軸とした生活を送るのか? と、言う事です。ナイルさんが日本で暮らす場合、戸籍を作る必要もありますし、資格を取る必要も出てきます。そして何よりも何かがあって異世界に帰れなくなった場合、冗談ぬきで魔力枯渇で命を落とす事になります」
これは冗談抜きで本当の問いかけだ。
異世界人では、地球では生きていけない。
地球で暮らしている限り、魔力は回復せず最後には枯渇して死ぬ。
だから、俺はナイルさんに聞いたのだ。
こっちの世界で――、何かあった時に伴侶の心に傷跡を残す可能性があるのに、地球で暮らす気持ちはあるのか? と――。
「それは……」
「よく考えてください。本当は何がいいのかを。そして――、もし異世界側を主軸として暮らす場合は、二人だけの問題では無くなります。根室恵美さんには、娘の和美ちゃんも居ます」
「――そ、それは……。そうでしたね……。ゴロウ様、気付かせて頂きありがとうざいます」
「気にしないでください。俺としては、今後のことを考えて聞いただけに過ぎないので」
俺は車を運転しながら、答えた。
――翌日の早朝。
「ぺろぺろぺろ――」
生暖かい……。
そう感じながら、俺は瞼を開ける。
すると、俺の胸の上にはフーちゃんが乗っていた。
「何をしているんだ……」
俺はフーちゃんの首根っこを掴むと畳の上に下ろす。
「まだ6時か……」
欠伸をしながら、俺は背伸びをして服に着替える。
それにしても朝早くからフーちゃんが俺のところに来るなんて珍しいな。
何より、俺を舐めてくる事自体、初めてではないだろうか?
つまり、何かしらの報酬を俺に求めているに違いない!
可能性として高いのは――、
「フーちゃん、ドックフードが食べたいのか?」
俺は、こちらを見てきているフーちゃんに話しかける。
「ガルルルルルッル」
いきなりの不機嫌モードからの大激怒モードへと変わるフーちゃん。
どうやら、ドックフードではないようだ。
「そうすると散歩か?」
「わんっ!」
「仕方ないな……」
フーちゃんを肩の上に乗せて、俺は河原へと向かう。
どうせ、周りには何も家どころか建物すらないのだ。
河原でフーちゃんを放して遊ばせておけば問題ないだろう。
河原に到着したところで、川の中に人影が見える。
それは、ナイルさんだった。
メディーナさんもそうだったが、どうやら異世界の兵士は、川の中で鍛錬をするのが日課らしい。
俺が視線でナイルさんの動きを追っていると、ナイルさんが此方を見てきた。
「ゴロウ様? どうかされましたか?」
「いえ。メディーナさんも同じ訓練をしていたなと思っただけなので」
「それよりも、どうしてゴロウ様は、河原などへ?」
「フーちゃんの散歩です。朝から散歩を強請ってきたので――」
「そうでしたか」
「はい……。申し訳ありません。ゴロウ様」
「分かってくれればいいです」
さて――、とりあえず、これで話は終わったな。
あとは、どう答えを出すかは二人次第と言ったところか。
根室さんも難しい表情をしているので、ナイルさんと安易に付き合うような真似はしないと思うし、コレで和美ちゃんの相談も何とか解決かな?
「とりあえず、今日の俺からの話は以上です」
そこで、俺は話を一旦、区切る。
そして――、
「根室さん」
「――は、はい」
「ご自宅までお送りします。もう遅いですから」
「――で、では、私もお供します。ゴロウ様」
「そんなに遠くないので大丈夫です。それよりもナイルさんも考えておいてください」
「そういう訳には! 私は、ゴロウ様の護衛として、お傍にいる必要がありますので!」
「……分かりました。それでは、一緒に同行してください」
「はっ!」
まぁ、無理に断ったら俺の発言がおかしいことになるから、仕方ないな。
車で、根室恵美さんを自宅まで送ったあと、帰り道の車の中で何度か溜息をつくナイルさん。
「ゴロウ様」
「何ですか?」
「ゴロウ様は、私と恵美さんとの関係については、どう考えておられるのですか?」
「どうも何も本当のことを知らないで男女の仲になった方が問題だと思っているだけですが?」
「……つまり、応援も否定もするつもりは無いということですか」
「まぁ、男女の仲に口を出すほど野暮ではないので」
「そうでしたか……。てっきり私と、恵美さんの仲を……。いえ、何でもありません」
まったく……下の名前で呼んでいるあたり隠さなくなっているな。
仲がいいとは思っていたが、和美ちゃんが危機感を覚えるはずだ。
まぁ、ナイルさんは別として――、根室恵美さんが、和美ちゃんの母親である以上、どう思って行動するかだな。
これで駄目だったら、素直に和美ちゃんに無理だったと謝るとしよう。
「そういえばナイルさん」
「はい」
「もし仮にですが、もしですよ? もし、根室さんと結婚したら、ナイルさんは異世界と日本、どっちを取るんですか?」
「――え?」
「どっちを主軸とした生活を送るのか? と、言う事です。ナイルさんが日本で暮らす場合、戸籍を作る必要もありますし、資格を取る必要も出てきます。そして何よりも何かがあって異世界に帰れなくなった場合、冗談ぬきで魔力枯渇で命を落とす事になります」
これは冗談抜きで本当の問いかけだ。
異世界人では、地球では生きていけない。
地球で暮らしている限り、魔力は回復せず最後には枯渇して死ぬ。
だから、俺はナイルさんに聞いたのだ。
こっちの世界で――、何かあった時に伴侶の心に傷跡を残す可能性があるのに、地球で暮らす気持ちはあるのか? と――。
「それは……」
「よく考えてください。本当は何がいいのかを。そして――、もし異世界側を主軸として暮らす場合は、二人だけの問題では無くなります。根室恵美さんには、娘の和美ちゃんも居ます」
「――そ、それは……。そうでしたね……。ゴロウ様、気付かせて頂きありがとうざいます」
「気にしないでください。俺としては、今後のことを考えて聞いただけに過ぎないので」
俺は車を運転しながら、答えた。
――翌日の早朝。
「ぺろぺろぺろ――」
生暖かい……。
そう感じながら、俺は瞼を開ける。
すると、俺の胸の上にはフーちゃんが乗っていた。
「何をしているんだ……」
俺はフーちゃんの首根っこを掴むと畳の上に下ろす。
「まだ6時か……」
欠伸をしながら、俺は背伸びをして服に着替える。
それにしても朝早くからフーちゃんが俺のところに来るなんて珍しいな。
何より、俺を舐めてくる事自体、初めてではないだろうか?
つまり、何かしらの報酬を俺に求めているに違いない!
可能性として高いのは――、
「フーちゃん、ドックフードが食べたいのか?」
俺は、こちらを見てきているフーちゃんに話しかける。
「ガルルルルルッル」
いきなりの不機嫌モードからの大激怒モードへと変わるフーちゃん。
どうやら、ドックフードではないようだ。
「そうすると散歩か?」
「わんっ!」
「仕方ないな……」
フーちゃんを肩の上に乗せて、俺は河原へと向かう。
どうせ、周りには何も家どころか建物すらないのだ。
河原でフーちゃんを放して遊ばせておけば問題ないだろう。
河原に到着したところで、川の中に人影が見える。
それは、ナイルさんだった。
メディーナさんもそうだったが、どうやら異世界の兵士は、川の中で鍛錬をするのが日課らしい。
俺が視線でナイルさんの動きを追っていると、ナイルさんが此方を見てきた。
「ゴロウ様? どうかされましたか?」
「いえ。メディーナさんも同じ訓練をしていたなと思っただけなので」
「それよりも、どうしてゴロウ様は、河原などへ?」
「フーちゃんの散歩です。朝から散歩を強請ってきたので――」
「そうでしたか」
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