339 / 437
第339話 異世界の説明(3)
しおりを挟む
「お客様が来ないですね。ゴロウ様」
「それを言わないでくれ」
ナイルさんと二人して、レジで男二人で立っていると、ナイルさんの方から話しかけてきた。
「私は思うに――」
「思わなくてもいいから」
「ハッ」
まぁ、ナイルさんが何を言おうとしたくらいは察しがつく。
店の立地条件が悪いとでも言いたいのだろう。
それは、分かる。
非常によく分かる。
元々、結城村の人口は2000人ほどいた。
だから過疎化する前の結城村では、じつは、こんなに客が来ないと言う事はなかった。
ノーマン辺境伯との取引が無かったら本当にやばかったかも知れない。
「そういえば、ゴロウ様」
「どうかしましたか?」
「今回の台風ですが、風除けの結界が必要な程の規模ということは伺いましたが、ルイーズ王女殿下の方は大丈夫だったのでしょうか?」
「まぁ、向こうはコンクリート製の建物ですからビクともしないと思いますよ」
地震の時はいざ知らず、台風相手なら、全面コンクリートで作られた建物は強いからな。
「そうですか。それで、連絡とかは入れたのですか?」
「入れてないですね」
「それは……」
困ったような表情をするナイルさん。
まぁ、たしかに婚約者の身を案じない男性は、どうなのか? とは思ったりもするが、こっちも、それほど余裕があったという訳ではないからな。
ただ、連絡をしないという選択肢はないか……。
「そうですね。わかりました。電話をしてきます」
「その方が宜しいかと――、ルイーズ王女殿下もゴロウ様からの連絡を待っていると思いますので」
「そうであったならいいですね。それでは、ナイルさん、電話をしてくるので店の方を頼みます」
「はい。お任せください」
店の外へ出て迎賓館の電話番号へ発信する。
数コール鳴り――、
「はい。エルム王国大使館です」
ちゃっかり大使館と名乗ってきたぞ? しかも、電話に出たのは、やっぱりアリアさんか。
「ゴロウです」
「あっ! ゴ、ゴロウ様!? お久しぶりでございます」
「お久しぶりです。電話の使い方は慣れたみたいですね」
「はい! えっと、ルイーズ様にお電話でございますよね?」
「お願いできますか?」
「はい。お待ちください」
保留の仕方については教えていたはずだが、忘れているのかどうかは知らないが、保留になる気配もない。
そして少し移動するような音が聞こえたあと、保留になる。
途中で気が付いたってことか。
そして、しばらく待っていると――、
「ルイーズです。急な連絡、何かありましたでしょうか?」」
――と、突然、王女殿下の声が聞こえてきた。
特に俺からの連絡を待っていた様子では無い事に、少しだけがっかりしながらも、
「昨日は台風が強かったので、身を案じていました。ただ、領内で数日間、手が離せないこともあり連絡が遅れました。何か困った事などありましたら、言ってください」
「……たしかに、昨日は強い風でしたね。ゴロウ様の方は大丈夫でしたでしょうか?」
「はい、こっちは何ともないです」
「そうなのですか。領民の方は、台風の影響を受けてはいられませんか?」
「大丈夫です」
実際のところ、大丈夫かどうかは情報が回ってきてないから知らない。
ただ、少なくとも結城村は俺が治めているとルイーズ王女殿下は、信じているから、知らないとは言えないよな。
「そうでしたか。それは良かったです。こちらは、かなり丈夫な建物をゴロウ様が用意してくださったので、何一つ不自由はありません」
「それは良かったです。それでは、何か困ったことがありましたら、自分に電話をください」
「はい。その時はお願いいたしますわ」
電話を切ったあと、俺は溜息をつく。
特に、何がおかしなことはなかったようで安心した。
それよりも、何の不自由もないと感じているとは、一体、どういう生活をしているのか。
俺なら、インターネットもテレビもない建物でずっと暮らすのはキツイんだが……。
まぁ、それはもしかしたら、元々、そういう文明に浸っているからこそ、そう思うのかも知れないな。
店の中に戻ると、
「ゴロウ様。ルイーズ王女殿下の御様子は如何でしたか?」
「特に問題はないとのことです」
俺は即答する。
隠す必要もないからだ。
「それは良かったです」
「ただ、自分からの電話を待っているという感じではなかったですね」
「そうでしたか……。おそらくルイーズ王女殿下は、監視の居ないのびのびとした場所で暮らしているからなのかも知れませんね」
「そういえば庶子でしたっけ?」
「はい。庶子ですと、後ろ盾がありませんから、色々と立場的に難しい位置にいたと思われます。おそらく男子として生まれていたのなら、今頃は、生きてはいなかったでしょう」
――シビアだな、異世界……。
「そうですか……、王族に産まれたからと言って、後ろ盾がないと大変なんですね」
「それは、王族だけでなく貴族家でも同じですから」
「なるほど……」
そういえば、そんなことを中世ヨーロッパの勉強をしていた時に書いてあったな。
「それを言わないでくれ」
ナイルさんと二人して、レジで男二人で立っていると、ナイルさんの方から話しかけてきた。
「私は思うに――」
「思わなくてもいいから」
「ハッ」
まぁ、ナイルさんが何を言おうとしたくらいは察しがつく。
店の立地条件が悪いとでも言いたいのだろう。
それは、分かる。
非常によく分かる。
元々、結城村の人口は2000人ほどいた。
だから過疎化する前の結城村では、じつは、こんなに客が来ないと言う事はなかった。
ノーマン辺境伯との取引が無かったら本当にやばかったかも知れない。
「そういえば、ゴロウ様」
「どうかしましたか?」
「今回の台風ですが、風除けの結界が必要な程の規模ということは伺いましたが、ルイーズ王女殿下の方は大丈夫だったのでしょうか?」
「まぁ、向こうはコンクリート製の建物ですからビクともしないと思いますよ」
地震の時はいざ知らず、台風相手なら、全面コンクリートで作られた建物は強いからな。
「そうですか。それで、連絡とかは入れたのですか?」
「入れてないですね」
「それは……」
困ったような表情をするナイルさん。
まぁ、たしかに婚約者の身を案じない男性は、どうなのか? とは思ったりもするが、こっちも、それほど余裕があったという訳ではないからな。
ただ、連絡をしないという選択肢はないか……。
「そうですね。わかりました。電話をしてきます」
「その方が宜しいかと――、ルイーズ王女殿下もゴロウ様からの連絡を待っていると思いますので」
「そうであったならいいですね。それでは、ナイルさん、電話をしてくるので店の方を頼みます」
「はい。お任せください」
店の外へ出て迎賓館の電話番号へ発信する。
数コール鳴り――、
「はい。エルム王国大使館です」
ちゃっかり大使館と名乗ってきたぞ? しかも、電話に出たのは、やっぱりアリアさんか。
「ゴロウです」
「あっ! ゴ、ゴロウ様!? お久しぶりでございます」
「お久しぶりです。電話の使い方は慣れたみたいですね」
「はい! えっと、ルイーズ様にお電話でございますよね?」
「お願いできますか?」
「はい。お待ちください」
保留の仕方については教えていたはずだが、忘れているのかどうかは知らないが、保留になる気配もない。
そして少し移動するような音が聞こえたあと、保留になる。
途中で気が付いたってことか。
そして、しばらく待っていると――、
「ルイーズです。急な連絡、何かありましたでしょうか?」」
――と、突然、王女殿下の声が聞こえてきた。
特に俺からの連絡を待っていた様子では無い事に、少しだけがっかりしながらも、
「昨日は台風が強かったので、身を案じていました。ただ、領内で数日間、手が離せないこともあり連絡が遅れました。何か困った事などありましたら、言ってください」
「……たしかに、昨日は強い風でしたね。ゴロウ様の方は大丈夫でしたでしょうか?」
「はい、こっちは何ともないです」
「そうなのですか。領民の方は、台風の影響を受けてはいられませんか?」
「大丈夫です」
実際のところ、大丈夫かどうかは情報が回ってきてないから知らない。
ただ、少なくとも結城村は俺が治めているとルイーズ王女殿下は、信じているから、知らないとは言えないよな。
「そうでしたか。それは良かったです。こちらは、かなり丈夫な建物をゴロウ様が用意してくださったので、何一つ不自由はありません」
「それは良かったです。それでは、何か困ったことがありましたら、自分に電話をください」
「はい。その時はお願いいたしますわ」
電話を切ったあと、俺は溜息をつく。
特に、何がおかしなことはなかったようで安心した。
それよりも、何の不自由もないと感じているとは、一体、どういう生活をしているのか。
俺なら、インターネットもテレビもない建物でずっと暮らすのはキツイんだが……。
まぁ、それはもしかしたら、元々、そういう文明に浸っているからこそ、そう思うのかも知れないな。
店の中に戻ると、
「ゴロウ様。ルイーズ王女殿下の御様子は如何でしたか?」
「特に問題はないとのことです」
俺は即答する。
隠す必要もないからだ。
「それは良かったです」
「ただ、自分からの電話を待っているという感じではなかったですね」
「そうでしたか……。おそらくルイーズ王女殿下は、監視の居ないのびのびとした場所で暮らしているからなのかも知れませんね」
「そういえば庶子でしたっけ?」
「はい。庶子ですと、後ろ盾がありませんから、色々と立場的に難しい位置にいたと思われます。おそらく男子として生まれていたのなら、今頃は、生きてはいなかったでしょう」
――シビアだな、異世界……。
「そうですか……、王族に産まれたからと言って、後ろ盾がないと大変なんですね」
「それは、王族だけでなく貴族家でも同じですから」
「なるほど……」
そういえば、そんなことを中世ヨーロッパの勉強をしていた時に書いてあったな。
232
お気に入りに追加
1,961
あなたにおすすめの小説
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる