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第337話 異世界の説明(1)

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 思考しながら、俺は居間へと――、そして縁側に出てから横になり、10月も半ばの空を見上げる。
 青空は、どこまでも澄んでいる。
 
「どうしたものかな……」
 
 和美ちゃんには、『任せろ!』と、大見得を切ったまでは良かったが、どうしたらいいのか? と、言う判断がつかない。
 何せ、ナイルさんと根室恵美さんの男女の問題なのだ。
 俺が下手に口を出していいのか? と、言えば――、本来、部外者であるなら否と言ったところだろう。
 だが、今回は、和美ちゃんからの相談を受けている以上、部外者であったとしても手を尽くす必要が出てきている。
 
「五郎さん」
「――ん?」
 
 縁側で横になっていた俺は、空を見上げていた視線を台所の方へと向ける。
 すると、すぐ横に、雪音さんが座っていた。
 どうやら、考えすぎていたことで雪音さんが来ることを察することが出来なかったらしい。
 
「雪音さん、どうかしましたか?」
「五郎さんが、悩んでいると思いましたので――」
「そうですか……」
「はい……」
 
 しばらく無言のまま。
 
「五郎さんは、恵美さんとナイルさんとの間に立つおつもりなのですか?」
「……やっぱり聞いていたんですね」
「はい。ジュースを、もっていった時に、聞こえてきました」
 
 返事をしながらコクリと頷く雪音さん。
 そういえば、襖で隔てられているだけだからな。
 客間の入室のタイミングを計っていたのなら、会話が外に響くの分からなくもない。
 
 
「申し訳ありません」
 
 続いて答えてくる彼女に、俺は首を左右に振りながら――、
 
「いえ。気にしないでください。こういう立て付けの家だと、秘密の会話というのは難しいですから。それよりも――」
「分かっています。ここだけの話ということですよね?」
「はい」
「それよりも、五郎さんは、どうするおつもりなのですか?」
「先ほど、俺に聞いて来たナイルさんと根室恵美さんとの間を取り持つのか? と、言う話ですか?」
「はい。大体の事情は伺いました。ただ、男女の営みという一点を考えますと、余計な口出しは、相手にとっては、宜しくないと思いますので……。関係の悪化が考えられます」
 
 それは、俺も想っていたことだ。
 
「ナイルさんと、根室恵美さん、両方との関係悪化ですか」
 
 コクリと頷く雪音さん。
 
「まぁ、好ましい展開とは言えないですよね」
「はい。ここは、遠回しに話を持って行った方がいいかも知れません」
「遠回しに?」
「はい。異世界の方は、魔力欠乏症があって命に関わる大問題なのですよね?」
「それはそうですね」
「それでは、それを理由に二人には遠回しに気付いてもらう方法を取るというのは如何でしょうか? ストレートに言えば角が立つかも知れませんが、今回は魔力欠乏症という生命維持に関して直結する問題を抱えているわけですし」
「なるほど……」
 
 つまり、あくまでも二人の今後について、何かあった場合、異世界に帰れなくなったら、死ぬかも知れないということを全面的に押し出すことで、現在、和美ちゃんがどう思っているのかまで波及させて考えさせるという。
 
 ――果たして、そう上手くいくのか?
 
 一瞬、そう考えてしまうが、それ以外には方法は無いとさえ思えてしまう。
 
「それでは、まずは、魔力欠乏症について話を持って行く方がいいですね。ただ、そのためには、前提条件が整ってないので――」
「あっ――」
 
 俺の言葉に、雪音さんが気が付いたようで――、
 
「異世界人だと言う事を、恵美さんは知らないのですよね?」
「まだ言ってないですからね」
 
 俺は、雪音さんの言葉を肯定しながら頷く。
 そう、問題は、魔力欠乏症の話をする時点で、地球には魔力なんてものは存在してないから、異世界について話をする必要が出てくることだ。
 そして、異世界についての話を本当にしていいのか?
 それが問題になる。
 ただ、ナイルさんと付き合う以上、遅かれ早かれ異世界について知る事になる。
 それなら、先に知らせておいた方がいいだろう。
 
「でも、言わないと話は進みませんからね」
「まぁ……。とりあえず異世界について話をしてみますよ。それで、魔力欠乏症について説明した上で、和美ちゃんの事まで考えてくれるように話を誘導する方向で――」
「五郎さん」
「何ですか?」
「頑張ってください!」
「頑張ります……。それじゃ話し合いは、午後9時以降ですね」
「それって、説明だけで異世界の事を信じてくれなかった場合、直接、異世界に恵美さんを連れていくということですか?」
 
 俺は頷きつつ、
 
「百聞は一見に如かずと言いますから」
「そうですね」
「――では、自分は店に行き二人に話してきます」
「はい」
 
 頷く雪音さんに背中を押されるような形で、俺は母屋から店へと戻る。
 店に入れば、幸い閑古鳥が鳴いていたので、すぐに会話ができそうではあったが――、
 
「やっぱり台風の後だから、客は来ないよな……」
 
 思わずそんな言葉が口から出てしまうが、俺は気を取り直す。
 
「根室さん」
「はい? 月山さん、どうかしましたか?」
 
 
 
 
 
 
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