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第333話 魔力欠乏症
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「メディーナさん、おつとめご苦労さまです」
「いえ、思ったよりも台風が早く過ぎましたから、それに設置していると魔力の消費が――うっ……」
フラリと倒れかけるメディーナさんを支える。
「大丈夫ですか? 今日は、ゆっくり休んでいてください」
「申し訳ありません、ゴロウ様。ただの魔力枯渇ですので――」
それって、不味いのでは?
「雪音さん!」
「はいって!? どうかしたのですか?」
台所から玄関まで歩いてきた雪音さんが、顔色が真っ青で俺に支えられているメディーナさんを見て驚いている。
「少し、異世界に行ってきます。魔力枯渇は死に直結するので――」
「え? そんなに危険なのですか?」
「はい。とりあえず、家のことをお願いします」
俺は、メディーナさんを抱き上げる。
思っていたよりもずっと軽い。
抱き上げたまま、母屋を出たあとはバックヤード側から店内へ。
そしてシャッターを開閉するボタンを押したあと、外へと出る。
外は、既に日が沈んでいたが――、
「ゴロウ様が、来られたぞ!」
店の前を警護していた兵士の一人が、俺達が店から出てきたのに気が付くとすぐ声を上げる。
「ゴロウ様、すぐに副隊長が来ますので、お待ちください」
「分かりました。それよりもメディーナさんが魔力枯渇症状が出ているので、すぐに治療をしてください」
「はっ!」
「ゴロウ様……」
俺が抱き上げていたメディーナさんを兵士に預けると、弱々しい口調でメディーナさんが俺の名前を呼んでくる。
「……申し訳ありません」
「気にしないでください。それよりも今は、体調を万全にすることを――、そこの事だけを考えて療養してください」
「はい……」
メディーナさんを兵士が抱き上げて連れていく姿を見たあと、俺はナイルさんが来るのを待つ。
何時もなら、すぐにナイルさんが対応してくれるのだが、流石に何時ものとは異なる時間帯に異世界に来たのだから仕方ない。
しばらく待っていると、馬の蹄の音が聞こえてくる。
すると日が落ちている異世界の路地を颯爽と駆けてくる馬の姿が!
馬は、俺の前で足を止める。
そして馬上からナイルさんが降りてきた。
「ゴロウ様! ご無事でしたか!? メディーナが、魔力欠乏症と報告がありまして……、五郎様の身の上に何かあったらと心配しておりました」
「ご心配おかけします。それと、メディーナさんが魔力欠乏症になったのは風避けの結界を多用したからだと思います」
「あ……、そういうことでしたか。たしかに龍神の加護は強力ですが、その分、魔力の消費が激しいので――、それでしたらメディーナも一週間もあれば魔力が回復すると思いますので、しばらくは辺境伯領で滞在すれば問題ないと思います」
「そうですか……」
とりあえず命に別状はないと言う事だな。
ホッとして息が漏れる。
「それにしても風避けの結界をメディーナの魔力量で扱うとは――」
「え?」
「いえ、何でもありません。それよりも、ゴロウ様の護衛は、これからは私が付きますのでご安心してください」
「分かりました。お願いします。それよりもメディーナさんの魔力量では、風避けの結界を使うのは危険だったんですか?」
「はい。ただ、彼女も自身の魔力量は理解していたはずです。命に危険がない範囲で利用していたはずですが……」
その言葉に、俺はハッ! とする。
メディーナさんが――、彼女の魔力が枯渇した理由、それは……。
一つしか心当たりがない。
俺がトイレに風避けの結界を張ってもらったからだ。
「ナイルさん」
「はい」
「メディーナさんの治療費は、俺が全額出すので、彼女を完治させてください」
「…………わ、分かりました」
一瞬、ナイルさんが硬直したかと想うと頷き、兵士達に指示を出していく。
その言葉の中には魔力回復ポーションも含まれていた。
「ナイルさん、魔力回復ポーションって、俺が何度か使ってもらっているモノですよね?」
「はい」
「それって、結構、高額だったりしますか?」
「高額というよりも、王都の錬金術師に依頼して作ってもらうか、もしくはルイズ辺境伯領内に存在するダンジョンから産出するモノしかありませんから、自然と高くなるというか……」
「そうなんですか」
好奇心から聞いてみたが、思ったより珍しいモノらしい。
「魔力回復ポーションの利用は控えた方がいいでしょうか?」
「いえ。それで、改善するのでしたら使ってください」
「ちなみに、ゴロウ様」
「何か?」
「魔力回復ポーションは、それ1個で王都の近衛騎士団の給金一ヵ月分に匹敵しますが……」
「問題ありません。俺が支払いを全部持ちます」
「――そ、そうですか……。それは、メディーナに伝えた方が?」
「どちらでも構いませんが?」
そもそも、彼女に無理をさせたのは俺であって、命を失いかけただからな。
責任を取るのは当たり前のことだろう。
「分かりました」
ナイルさんは、近くの兵士にメディーナさんの治療に関して指示を出す。
それを横目で見ながら、俺は溜息をついた。
魔力欠乏症は本当に苦しいからだ。
それをメディーナさんに体験させてしまったのは、俺の落ち度だ。
「いえ、思ったよりも台風が早く過ぎましたから、それに設置していると魔力の消費が――うっ……」
フラリと倒れかけるメディーナさんを支える。
「大丈夫ですか? 今日は、ゆっくり休んでいてください」
「申し訳ありません、ゴロウ様。ただの魔力枯渇ですので――」
それって、不味いのでは?
「雪音さん!」
「はいって!? どうかしたのですか?」
台所から玄関まで歩いてきた雪音さんが、顔色が真っ青で俺に支えられているメディーナさんを見て驚いている。
「少し、異世界に行ってきます。魔力枯渇は死に直結するので――」
「え? そんなに危険なのですか?」
「はい。とりあえず、家のことをお願いします」
俺は、メディーナさんを抱き上げる。
思っていたよりもずっと軽い。
抱き上げたまま、母屋を出たあとはバックヤード側から店内へ。
そしてシャッターを開閉するボタンを押したあと、外へと出る。
外は、既に日が沈んでいたが――、
「ゴロウ様が、来られたぞ!」
店の前を警護していた兵士の一人が、俺達が店から出てきたのに気が付くとすぐ声を上げる。
「ゴロウ様、すぐに副隊長が来ますので、お待ちください」
「分かりました。それよりもメディーナさんが魔力枯渇症状が出ているので、すぐに治療をしてください」
「はっ!」
「ゴロウ様……」
俺が抱き上げていたメディーナさんを兵士に預けると、弱々しい口調でメディーナさんが俺の名前を呼んでくる。
「……申し訳ありません」
「気にしないでください。それよりも今は、体調を万全にすることを――、そこの事だけを考えて療養してください」
「はい……」
メディーナさんを兵士が抱き上げて連れていく姿を見たあと、俺はナイルさんが来るのを待つ。
何時もなら、すぐにナイルさんが対応してくれるのだが、流石に何時ものとは異なる時間帯に異世界に来たのだから仕方ない。
しばらく待っていると、馬の蹄の音が聞こえてくる。
すると日が落ちている異世界の路地を颯爽と駆けてくる馬の姿が!
馬は、俺の前で足を止める。
そして馬上からナイルさんが降りてきた。
「ゴロウ様! ご無事でしたか!? メディーナが、魔力欠乏症と報告がありまして……、五郎様の身の上に何かあったらと心配しておりました」
「ご心配おかけします。それと、メディーナさんが魔力欠乏症になったのは風避けの結界を多用したからだと思います」
「あ……、そういうことでしたか。たしかに龍神の加護は強力ですが、その分、魔力の消費が激しいので――、それでしたらメディーナも一週間もあれば魔力が回復すると思いますので、しばらくは辺境伯領で滞在すれば問題ないと思います」
「そうですか……」
とりあえず命に別状はないと言う事だな。
ホッとして息が漏れる。
「それにしても風避けの結界をメディーナの魔力量で扱うとは――」
「え?」
「いえ、何でもありません。それよりも、ゴロウ様の護衛は、これからは私が付きますのでご安心してください」
「分かりました。お願いします。それよりもメディーナさんの魔力量では、風避けの結界を使うのは危険だったんですか?」
「はい。ただ、彼女も自身の魔力量は理解していたはずです。命に危険がない範囲で利用していたはずですが……」
その言葉に、俺はハッ! とする。
メディーナさんが――、彼女の魔力が枯渇した理由、それは……。
一つしか心当たりがない。
俺がトイレに風避けの結界を張ってもらったからだ。
「ナイルさん」
「はい」
「メディーナさんの治療費は、俺が全額出すので、彼女を完治させてください」
「…………わ、分かりました」
一瞬、ナイルさんが硬直したかと想うと頷き、兵士達に指示を出していく。
その言葉の中には魔力回復ポーションも含まれていた。
「ナイルさん、魔力回復ポーションって、俺が何度か使ってもらっているモノですよね?」
「はい」
「それって、結構、高額だったりしますか?」
「高額というよりも、王都の錬金術師に依頼して作ってもらうか、もしくはルイズ辺境伯領内に存在するダンジョンから産出するモノしかありませんから、自然と高くなるというか……」
「そうなんですか」
好奇心から聞いてみたが、思ったより珍しいモノらしい。
「魔力回復ポーションの利用は控えた方がいいでしょうか?」
「いえ。それで、改善するのでしたら使ってください」
「ちなみに、ゴロウ様」
「何か?」
「魔力回復ポーションは、それ1個で王都の近衛騎士団の給金一ヵ月分に匹敵しますが……」
「問題ありません。俺が支払いを全部持ちます」
「――そ、そうですか……。それは、メディーナに伝えた方が?」
「どちらでも構いませんが?」
そもそも、彼女に無理をさせたのは俺であって、命を失いかけただからな。
責任を取るのは当たり前のことだろう。
「分かりました」
ナイルさんは、近くの兵士にメディーナさんの治療に関して指示を出す。
それを横目で見ながら、俺は溜息をついた。
魔力欠乏症は本当に苦しいからだ。
それをメディーナさんに体験させてしまったのは、俺の落ち度だ。
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