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第329話 台風到来!(3)
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フーちゃんの料理を担当することになった俺は、まずはインターネットで犬の手作りご飯レシピを検索する。
「ふむ……」
「五郎さん!」
「はい! どうかしましたか?」
「フーちゃんのご飯ですけど、ローストポークが、まだ3キロくらい残っていますから。解凍してもいいと思います」
「わんっ! わんっ! わんっ!」
俺に媚びるように、目の前で目をキラキラと輝かせながら何度も吠えてくるフーちゃん。
もう尻尾が千切れんばかりに振っていることから、ローストポークが食べたいのだろう。
だが! あまり油っこいのは仔犬の内には宜しくない!
「大丈夫だぞ。フーちゃん」
「わう?」
「お前の健康の為に! 俺が! 完璧な! 無添加な手作りご飯を作ってやるからな!」
「ガルウルルルルッル」
どうして、そこで反骨精神を俺に向けてくるのか。
俺はフーちゃんの為に手作り料理を作ってやろうと思っているのに。
「フーちゃんは、俺の手料理よりも雪音さんの手料理がいいのか?」
「わんっ!」
「…………」
おかしい。
俺の家の中での序列は、フーちゃんの中では、どうなっているのか?
俺はパソコンで、『犬 序列』で検索するが、どうやら犬には序列というのが最近の研究では無いらしいと書かれている。
つまり――、フーちゃんは純粋に俺を嫌っているのか?
――だが! 俺は、フーちゃんに嫌われるような真似をしたことなぞ一切! ない!
「仕方ないな……」
俺は立ち上がり、居間から台所に出る。
するとフーちゃんが付いてくる。
さらに俺は右へと曲がり通路を歩く。
そして棚の上から99%オフ! お徳用! 業務用なドックフードを手に取る。
「今日は、ドックフードでいいか」
「わふ……!? ガルルルルルルッル。ワン! ワン!」
四肢に力を入れて吠えてくるフーちゃん。
「冗談だって――」
「わううう」
「五郎さん。フーちゃんを虐めたら駄目ですよ?」
「あ、はい……」
俺は冷凍庫からローストポークが入っているタッパーをとりだし、電子レンジに入れて解凍ボタンを押す。
すると、俺を吠えていたフーちゃんが静かにブスッとした表情で、俺を見てきていた。
まるで俺を信用してないようだ!
まったくもう……。
俺だって、フーちゃんの健康管理は色々と考えているというのに。
――チン!
しばらくすると解凍が終わった音が鳴る。
俺は、タッパーを取り出し、フーちゃんをお皿にローストポークを乗せていく。
「雪音さん、先にフーちゃんにご飯をあげてもいいですか?」
「はい。お願いします」
ローストポークを乗せたお皿を持ったまま、縁側まで移動する。
そして――、
「フーちゃん。おすわり!」
「わんっ!」
「フーちゃん。お手!」
「わんっ!」
「フーちゃん、おかわり!」
「わんっ!」
珍しく俺の言う通りに芸をするフーちゃん。
ご飯の時だけいうことを聞くとは……。
「はい。いいぞ」
「わんっ! ガツガツガツガツ」
すごい勢いで、ローストポークを食べ始めるフーちゃん。
さて、俺の仕事は終わりと。
「あのメディーナさん。さっきから青い顔をして俺とフーちゃんを見て来ていましたけど何か問題でもありましたか?」
「――い、いえ! 何でもありません!」
「そうですか?」
「は、はい! それにしても、ゴロウ様は、よくフーちゃんから攻撃されていますけど、何も感じないのですか?」
「攻撃って……、仔犬ですよ? フーちゃんは。仔犬の攻撃なんて、高が知れていますし」
「そ、そうなのですか……」
何故に、そこで驚いたような表情をしているのか。
もしかして、俺が仔犬に撫でられて何かを感じるほど柔く思われているのか。
「そうですよ。それよりもメディーナさん」
「はい。何でしょうか?」
「屋根に結界を施してきたって言っていましたけど、具体的には何をされてきたのですか?」
「そうですね。簡単に説明するのでしたら、風避けの結界です」
「風避けの結界ですか? それも魔法なんですか?」
「魔法ではありません。風を司る龍神の加護の一つですね」
「龍神ですか……。そういえば、以前にナイルさんが龍神の加護を特例で借りられたから、遠方と意思疎通が出来るようになっているみたいな事を言ってましたね」
「はい。それと同じです。風を司る龍神の加護を借りることが出来れば、風避けの結界を展開することが出来るのです」
「なるほど……。それって、どこでも借りられるんですか?」
「――いえ。基本的に龍神の加護を借り受けることが出来るのは龍神が婚約を結んでいる相手……」
「ガルルルルルッ」
「ひっ! ――な、何でもありません。色々とあるのです」
「そうですか。それにしても、フーちゃんが、メディーナさんに吠えるなんて珍しいですね」
「え、ええ……」
明かに俺から目を背け、フーちゃんから距離を取るメディーナさん。
その反応を見て、俺は何となく察してしまった――、いや、理解してしまった。
フーちゃんは、何時の間にかご飯を食べ終わったかと思うと、メディーナさんに吠えた。
そこから推測するに、メディーナさんは普段は平気な表情と態度をしていたが、犬が苦手なのだろうと。
「フーちゃん! 無暗に人に吠えるんじゃありません!」
まったく、吠え癖は何とか直さないと駄目だな!
「ふむ……」
「五郎さん!」
「はい! どうかしましたか?」
「フーちゃんのご飯ですけど、ローストポークが、まだ3キロくらい残っていますから。解凍してもいいと思います」
「わんっ! わんっ! わんっ!」
俺に媚びるように、目の前で目をキラキラと輝かせながら何度も吠えてくるフーちゃん。
もう尻尾が千切れんばかりに振っていることから、ローストポークが食べたいのだろう。
だが! あまり油っこいのは仔犬の内には宜しくない!
「大丈夫だぞ。フーちゃん」
「わう?」
「お前の健康の為に! 俺が! 完璧な! 無添加な手作りご飯を作ってやるからな!」
「ガルウルルルルッル」
どうして、そこで反骨精神を俺に向けてくるのか。
俺はフーちゃんの為に手作り料理を作ってやろうと思っているのに。
「フーちゃんは、俺の手料理よりも雪音さんの手料理がいいのか?」
「わんっ!」
「…………」
おかしい。
俺の家の中での序列は、フーちゃんの中では、どうなっているのか?
俺はパソコンで、『犬 序列』で検索するが、どうやら犬には序列というのが最近の研究では無いらしいと書かれている。
つまり――、フーちゃんは純粋に俺を嫌っているのか?
――だが! 俺は、フーちゃんに嫌われるような真似をしたことなぞ一切! ない!
「仕方ないな……」
俺は立ち上がり、居間から台所に出る。
するとフーちゃんが付いてくる。
さらに俺は右へと曲がり通路を歩く。
そして棚の上から99%オフ! お徳用! 業務用なドックフードを手に取る。
「今日は、ドックフードでいいか」
「わふ……!? ガルルルルルルッル。ワン! ワン!」
四肢に力を入れて吠えてくるフーちゃん。
「冗談だって――」
「わううう」
「五郎さん。フーちゃんを虐めたら駄目ですよ?」
「あ、はい……」
俺は冷凍庫からローストポークが入っているタッパーをとりだし、電子レンジに入れて解凍ボタンを押す。
すると、俺を吠えていたフーちゃんが静かにブスッとした表情で、俺を見てきていた。
まるで俺を信用してないようだ!
まったくもう……。
俺だって、フーちゃんの健康管理は色々と考えているというのに。
――チン!
しばらくすると解凍が終わった音が鳴る。
俺は、タッパーを取り出し、フーちゃんをお皿にローストポークを乗せていく。
「雪音さん、先にフーちゃんにご飯をあげてもいいですか?」
「はい。お願いします」
ローストポークを乗せたお皿を持ったまま、縁側まで移動する。
そして――、
「フーちゃん。おすわり!」
「わんっ!」
「フーちゃん。お手!」
「わんっ!」
「フーちゃん、おかわり!」
「わんっ!」
珍しく俺の言う通りに芸をするフーちゃん。
ご飯の時だけいうことを聞くとは……。
「はい。いいぞ」
「わんっ! ガツガツガツガツ」
すごい勢いで、ローストポークを食べ始めるフーちゃん。
さて、俺の仕事は終わりと。
「あのメディーナさん。さっきから青い顔をして俺とフーちゃんを見て来ていましたけど何か問題でもありましたか?」
「――い、いえ! 何でもありません!」
「そうですか?」
「は、はい! それにしても、ゴロウ様は、よくフーちゃんから攻撃されていますけど、何も感じないのですか?」
「攻撃って……、仔犬ですよ? フーちゃんは。仔犬の攻撃なんて、高が知れていますし」
「そ、そうなのですか……」
何故に、そこで驚いたような表情をしているのか。
もしかして、俺が仔犬に撫でられて何かを感じるほど柔く思われているのか。
「そうですよ。それよりもメディーナさん」
「はい。何でしょうか?」
「屋根に結界を施してきたって言っていましたけど、具体的には何をされてきたのですか?」
「そうですね。簡単に説明するのでしたら、風避けの結界です」
「風避けの結界ですか? それも魔法なんですか?」
「魔法ではありません。風を司る龍神の加護の一つですね」
「龍神ですか……。そういえば、以前にナイルさんが龍神の加護を特例で借りられたから、遠方と意思疎通が出来るようになっているみたいな事を言ってましたね」
「はい。それと同じです。風を司る龍神の加護を借りることが出来れば、風避けの結界を展開することが出来るのです」
「なるほど……。それって、どこでも借りられるんですか?」
「――いえ。基本的に龍神の加護を借り受けることが出来るのは龍神が婚約を結んでいる相手……」
「ガルルルルルッ」
「ひっ! ――な、何でもありません。色々とあるのです」
「そうですか。それにしても、フーちゃんが、メディーナさんに吠えるなんて珍しいですね」
「え、ええ……」
明かに俺から目を背け、フーちゃんから距離を取るメディーナさん。
その反応を見て、俺は何となく察してしまった――、いや、理解してしまった。
フーちゃんは、何時の間にかご飯を食べ終わったかと思うと、メディーナさんに吠えた。
そこから推測するに、メディーナさんは普段は平気な表情と態度をしていたが、犬が苦手なのだろうと。
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