上 下
326 / 437

第326話 携帯電話を購入しよう(2)

しおりを挟む
「桜は、どんな携帯が欲しい?」
 
 俺は、キーボードを打ち、マウスで携帯電話会社のサイトを表示させながら姪っ子に尋ねる。
 その間にも和美ちゃんが、俺の横に来て画面を見てくる。
 そして、暇になったフーちゃんはと言うと、座っている俺の背中を登ってくると頭の上に乗ってきた。
 まったく、和美ちゃんもフーちゃんも。
 そう思いつつも、携帯電話の機種を表示させた。
 
「いっぱいあるの! おじちゃん! この小さいのは何?」
「あー、ミニフォンって言うスマートフォンの小さい奴だな」
「へー。いっぱいあるの」
「とりあえず桜が持つとしたら――」
 
 俺は、子供が持つスマートフォンを検索する。
 子供には防水、防塵、さらには頑丈という三要素をセットにした携帯電話が良いと考えて検索し――、
 
「桜、これとかどうだ?」
「どれなの?」
 
 姪っ子が背伸びしてデスクトップの画面を見てくる。
 
「これだな」
 
 防水耐性、防塵体制、衝撃耐性、薬品にも強いという仕様。
 さらには、銃弾すらはじき返すというダイヤモンド並の硬度を持つ画面が特徴。
あとは5G対応のGPS機能搭載、そして衛星と自動切換え機能がついている。
携帯電話の価格は、40万近いが、桜の安全のことを思えば安いものだろう。
 
「すごく大きいの……」
「それは見た目だからな。俺が普段使っているスマートフォンと大きさは大差ないから大丈夫だぞ?」
「そうなの?」
「ああ。それで、どうだ?」
「桜のスマートフォン?」
「そうだな」
「こっちがいいの!」
 
 桜がマウスを操作して、表示したのは、普通のスマートフォンで色はピンク。
 とくに何の特徴もないスマートフォンではあったが――、
 
「もしかして色か?」
「うん! ピンクの方がいいの!」
「たしかに可愛い色やね」
 
 和美ちゃんは興味深々と言った表情で見て来ている。
 
「わんっ!」
「――いや、犬にスマートフォンはいらないだろ」
 
 俺は頭の上で俺の髪の毛を怒って引っ張るフーちゃんに冷静にツッコミを入れつつ、引き剥がす。
 そして桜にパスする。
 桜はフーちゃんを頭の上に置くと、フーちゃんは、俺の方へと向き直ると「ガルルルル」と威嚇してくる。
 まったく、ほんと人間の言葉が分かるのか? と、思うほど多彩な犬だな。
 
「それにしても、桜はピンクの携帯電話がいいのか……」
「駄目?」
「駄目とは言わないが――」
 
 上目遣いで駄目って言われると俺としても断りきれない。
 うちの姪っ子は可愛いな。
 だめだ、だめだ。
 惑わされては……。
 今回、桜のために購入するスマートフォンは、安全な日本であっても――、安全だからこそ、桜の身を守るために必要なモノなのだ。
 つまり、どんなことがあってもとは言わないが、壊れにくいスマートフォンじゃないと意味がない。
 
「分かった。それじゃ、俺が塗装しよう」
「塗装?」
「ああ。この黒い武骨な携帯電話を、俺がピンク色に塗装するから、それならいいよな?」
「うん!」
「よし、それなら携帯電話の契約をするか」
 
 パソコンを操作して契約操作を行う。
 もちろん一台だけでなく、俺と雪音さんと、ナイルさん、メディーナさんを含めて4台。
 さらに余裕を見て6台追加の10台を契約する。
 本体価格だけで400万を超えるが、必要経費ということで仕方ないだろう。
 
 審査と含めると、到着まで14営業日か……。
 
「終わったの?」
「ああ。再来週には届くみたいだな。そのあとは塗装が必要だから数日したら使えるようになるな」
「本当に!?」
「本当だぞ」
「楽しみなの!」
「そうか、そうか――」
「そういえば、和美ちゃんは、携帯電話を持っているのか?」
「ないねん……」
「そうか」
 
 よくよく考えて見れば和美ちゃんが携帯電話を持っていた場面を見た事がなかったな。 
 そうなると丁度いいかも知れないな。
 契約する携帯電話は10台。
 6台、余りになるが、これから桜と長く一緒に友達をしてくれるのなら、福利厚生の一環として、根室恵美さんと、娘の根室和美ちゃんに、それぞれ携帯電話を持たせておくのもありだろう。
 バッテリーは有限だし、何かあった時に桜の携帯電話が使えなくなったら困るからな。
 まぁ、その辺に関しては、後々、和美ちゃんのお母さんと話し合う方向でいいな。
 
 ――トゥルルルル
 
「はい。月山です」
 
 色々と思考していたところで唐突に携帯電話が鳴る。
 電話をとってみると知らない番号だったが――、
 
「携帯電話会社IUの営業部の田中(たなか)恒(ひさし)と言います。月山五郎様の携帯電話で宜しかったでしょうか?」 
「はい。そうですが?」
「本日は、当社の携帯電話を10台以上、ご契約されるという事で宜しかったでしょうか?」
「何か問題でも?」
「――いえ。月山様が、ご契約された携帯電話ですが、一台40万円の携帯電話でしたので、もし価格を勘違いされていたらと思いまして――」
「ああ。なるほど……」
 
 たしかに400万円分、携帯電話の本体を購入する個人っていないからな。
 
「それでは機種の方は間違っているという事でしょうか? あと、10台という台数なのですが……」
 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強の英雄は幼馴染を守りたい

なつめ猫
ファンタジー
 異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。  そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...