323 / 379
第323話 鮎を素手で捕まえよう
しおりを挟む
「いえ。特には――。朝早く起きたので散歩に来ただけです。それよりも。メディーナさんは、いつもここで鍛錬を?」
「はい。副隊長より、ここが鍛錬の場として良いと聞いていましたので」
「なるほど……。それよりも寒くはないですか?」
もうすぐ11月に差し掛かる。
そんな中、川の流れの中に身を置くと言うのは、寒くはないのだろうか?
「いえ。身体強化をしていますので。身体強化をすると肉体が活性化しますので、その影響で体温の上昇と維持が用意になりますから」
「そうなんですか」
「はい。ゴロウ様も、どうですか? 鍛錬など」
「いえ。普通に風邪をひくと思うので」
「それは残念です」
「残念と言われても……。俺は、魔法が使えないので――」
「そうなのですか?」
俺は頷く。
俺が魔法を使う事が出来ないことを、どうやらルイズ辺境伯領の兵士達全員が知っているわけではないようだ。
「それは、申し訳ありません」
「どうしてメディーナさんが謝るんですか?」
「いえ。貴族の方でしたら魔法を扱えるのが普通で――、魔法が使えないと家督から外される事もありますから」
「へー」
異世界も色々とあるんだな。
その割には、ノーマン辺境伯は後継者として許可を出してくれたが……。
まぁ、たぶん、それは地球と異世界とのゲートを俺が唯一作り出せる事と、王家やルイズ辺境伯領に、それなりの利益をもたらすと考えたからかもな。
「ゴロウ様が家督を継がれると伺っていたので――」
「ああ。なるほど。それで、勘違いしていたということですか」
「はい」
申し訳なさそうに頷くメディーナさん。
「まぁ、気にしないでください。俺は、魔力だけは多いみたいですし、違う部分で評価されているみたいですから」
「そうですか……。あ――、そういえばゴロウ様」
「まだ何か?」
「はい。先ほどから足に当たるモノは何でしょうか?」
「ああ、鮎ですね」
「鮎?」
「川の中を流れる魚のことですよ」
俺は靴を脱ぎ凍えるほど寒い川の中へと入っていく。太ももの部分まで川に浸かったところで、俺は軽く息を吐く。
そして集中し――、その途端、周囲の川の音が全て聞こえなくなると同時に風景が灰色へと変化する。
そんな中で、俺は自然と手を動かし泳いできた鮎を素手で川から弾き飛ばす。
弾き飛ばされた鮎は、空中を飛び河原へと落ちる。
俺は、その足で河原まで戻り、鮎を掴んだあと、川の中に腰まで浸かっているメディーナさんの近くまで移動した。
「コレが鮎です」
「これが鮎ですか……。ゴロウ様、これは食べられるのですか?」
「そうですね。食べられます。そうだ! 今日の朝は、鮎でも皆で食べますか? 鮎の解禁は2月までですから」
「本当ですか?」
「はい。それでは、メディーナさんも頑張って鮎を獲りましょう!」
「頑張ります!」
俺は川の中に入り、目を閉じる。
そして――、集中し周囲の川の流れや気配を察知すると同時に、手を川の中へと突っ込み鮎を河原の方へと放り投げる。
そんな俺を見ていて、メディーナさんが少し身じろいだような気配が伝わってきたが、気にしている余裕はない。
鮎は下処理もしないといけないからだ。
俺は、精神を集中したまま、自分の領域に入ってきた鮎を次々と素手で、川の中から弾き飛ばし、河原へと流れるように放り投げていく。
そして20分もしたところで、20匹ほど獲ったところで精神集中を解く。
「とりあえず、こんなものですね」
俺は、早速、川の中から出る。
メディーナさんも、俺のあとに続いて川から上がってくる。
メディーナさんが河原まで来る間に、上着を脱ぎ――、上着の中に鮎を入れて持ち運びできるようにする。
「ゴロウ様。随分と手慣れているのですね」
「まぁ、子供の頃から親父にやらされていたので――」
「ゲシュペンスト様からですか?」
「そうですね。まぁ、慣れれば5歳でも出来る簡単な作業みたいなモノなので」
「簡単……」
「はい。要は慣れみたいなモノですよ? 川の流れや大気の動き、あとは、生物の気配とか何となく集中すれば分かりますよね?」
「……」
「どうかしましたか?」
「――い、いえ」
「とりあえず戻りましょう」
「はい」
どうやら、メディーナさんは鮎を捕まえられなかったみたいだ。
まぁ、熊と鮎獲りはまったくの別モノだからな。
慣れれば、そのうち出来るようになるだろう。
鮎を入れた上着を持ち上げて母屋へと足を向けたところで――、
「ゴロウ様のような事は他の方も出来たのですか?」
そう、背後からメディーナさんが聞いてきた。
「さあ? ただ、キャンプとかだと重宝されましたよ? あとは、妹は俺よりうまかったですね」
「妹と申されますと?」
「桜の母親の、月山恵子ですね。よく天気とか、地震とか当てていましたよ? まぐれだと思いますけど」
「……」
「どうかしましたか?」
「――い、いえ……。ゴロウ様は、本当に魔法を使うことが出来ないのですよね?」
「使えませんよ?」
それは、ノーマン辺境箔も断定していたし。
「はい。副隊長より、ここが鍛錬の場として良いと聞いていましたので」
「なるほど……。それよりも寒くはないですか?」
もうすぐ11月に差し掛かる。
そんな中、川の流れの中に身を置くと言うのは、寒くはないのだろうか?
「いえ。身体強化をしていますので。身体強化をすると肉体が活性化しますので、その影響で体温の上昇と維持が用意になりますから」
「そうなんですか」
「はい。ゴロウ様も、どうですか? 鍛錬など」
「いえ。普通に風邪をひくと思うので」
「それは残念です」
「残念と言われても……。俺は、魔法が使えないので――」
「そうなのですか?」
俺は頷く。
俺が魔法を使う事が出来ないことを、どうやらルイズ辺境伯領の兵士達全員が知っているわけではないようだ。
「それは、申し訳ありません」
「どうしてメディーナさんが謝るんですか?」
「いえ。貴族の方でしたら魔法を扱えるのが普通で――、魔法が使えないと家督から外される事もありますから」
「へー」
異世界も色々とあるんだな。
その割には、ノーマン辺境伯は後継者として許可を出してくれたが……。
まぁ、たぶん、それは地球と異世界とのゲートを俺が唯一作り出せる事と、王家やルイズ辺境伯領に、それなりの利益をもたらすと考えたからかもな。
「ゴロウ様が家督を継がれると伺っていたので――」
「ああ。なるほど。それで、勘違いしていたということですか」
「はい」
申し訳なさそうに頷くメディーナさん。
「まぁ、気にしないでください。俺は、魔力だけは多いみたいですし、違う部分で評価されているみたいですから」
「そうですか……。あ――、そういえばゴロウ様」
「まだ何か?」
「はい。先ほどから足に当たるモノは何でしょうか?」
「ああ、鮎ですね」
「鮎?」
「川の中を流れる魚のことですよ」
俺は靴を脱ぎ凍えるほど寒い川の中へと入っていく。太ももの部分まで川に浸かったところで、俺は軽く息を吐く。
そして集中し――、その途端、周囲の川の音が全て聞こえなくなると同時に風景が灰色へと変化する。
そんな中で、俺は自然と手を動かし泳いできた鮎を素手で川から弾き飛ばす。
弾き飛ばされた鮎は、空中を飛び河原へと落ちる。
俺は、その足で河原まで戻り、鮎を掴んだあと、川の中に腰まで浸かっているメディーナさんの近くまで移動した。
「コレが鮎です」
「これが鮎ですか……。ゴロウ様、これは食べられるのですか?」
「そうですね。食べられます。そうだ! 今日の朝は、鮎でも皆で食べますか? 鮎の解禁は2月までですから」
「本当ですか?」
「はい。それでは、メディーナさんも頑張って鮎を獲りましょう!」
「頑張ります!」
俺は川の中に入り、目を閉じる。
そして――、集中し周囲の川の流れや気配を察知すると同時に、手を川の中へと突っ込み鮎を河原の方へと放り投げる。
そんな俺を見ていて、メディーナさんが少し身じろいだような気配が伝わってきたが、気にしている余裕はない。
鮎は下処理もしないといけないからだ。
俺は、精神を集中したまま、自分の領域に入ってきた鮎を次々と素手で、川の中から弾き飛ばし、河原へと流れるように放り投げていく。
そして20分もしたところで、20匹ほど獲ったところで精神集中を解く。
「とりあえず、こんなものですね」
俺は、早速、川の中から出る。
メディーナさんも、俺のあとに続いて川から上がってくる。
メディーナさんが河原まで来る間に、上着を脱ぎ――、上着の中に鮎を入れて持ち運びできるようにする。
「ゴロウ様。随分と手慣れているのですね」
「まぁ、子供の頃から親父にやらされていたので――」
「ゲシュペンスト様からですか?」
「そうですね。まぁ、慣れれば5歳でも出来る簡単な作業みたいなモノなので」
「簡単……」
「はい。要は慣れみたいなモノですよ? 川の流れや大気の動き、あとは、生物の気配とか何となく集中すれば分かりますよね?」
「……」
「どうかしましたか?」
「――い、いえ」
「とりあえず戻りましょう」
「はい」
どうやら、メディーナさんは鮎を捕まえられなかったみたいだ。
まぁ、熊と鮎獲りはまったくの別モノだからな。
慣れれば、そのうち出来るようになるだろう。
鮎を入れた上着を持ち上げて母屋へと足を向けたところで――、
「ゴロウ様のような事は他の方も出来たのですか?」
そう、背後からメディーナさんが聞いてきた。
「さあ? ただ、キャンプとかだと重宝されましたよ? あとは、妹は俺よりうまかったですね」
「妹と申されますと?」
「桜の母親の、月山恵子ですね。よく天気とか、地震とか当てていましたよ? まぐれだと思いますけど」
「……」
「どうかしましたか?」
「――い、いえ……。ゴロウ様は、本当に魔法を使うことが出来ないのですよね?」
「使えませんよ?」
それは、ノーマン辺境箔も断定していたし。
171
お気に入りに追加
1,942
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる