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第316話 猟友会の対応(3)
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「これ。……」
俺も、夜と明け方に気が付かなかった惨状に、一言呟いてから言葉を失う。
何と言うかゲームでいうとゾンビゲームで言う所のスプラッタな場所だと言えば分かりやすいだろうか。
兵士たちが死体を持ち運んではいたが、肉片があちらこちらにぶちまけられている。
全ては回収しきれなかったというところだろう。
「大丈夫か? 月山さん」
「――は、はい。大丈夫です」
楠木さんからかけられた言葉で、ハッ! と、した俺は自分でも信じられないくらい問題ないと即答していた。
「気にすることは無い。素人さんが、こんな現場を見たら普通は卒倒するからな」
「そうですか」
「――しかし……。これは……」
俺に声をかけてきた楠木さんの声色は固く、表情も眉間に皺を寄せたまま――。
「副会長!」
「どうした!?」
一人の猟友会の――、50代後半と思わしき男が声を上げる。
その男は、さらに――、
「至る所に、熊の頭部が落ちています」
「何だと!? 死体は、無いと言うのにか!?」
「――は、はい! 少なくとも20以上の熊の頭部が落ちていると思われ――」
「すぐに……」
楠木さんが、呟く。
その顔色は蒼白と化していた。
「すぐに山を下りるぞ!」
「――で、ですが、副会長。事態の把握をしませんと――」
「もう、そういう段階ではない! 得体の知れない何かが、居る。20体以上もの熊の頭部が散乱しているだけでなく、胴体の部分がないのだ。すぐに撤収だ! 月山さん。申し訳ないが、猟友会では手には負えない。田口から市長を通して自衛隊の派遣を検討を依頼した方がいい」
「そんなにですか?」
「ああ。冗談では、こんなことは言わない。これは、もう猟友会が担当できる領域を超えている」
「そ、そうですか……」
この流れ、相当ヤバいのでは?
このままだと、結城村に悪評が付いて下手すると村民が減る可能性もあるぞ?
そうなったら、ただでさえ少ない結城村の人口が減る可能性もありうる。
「あの……、楠木さん」
「月山さん、申し訳ない。今は、こんな危険な場所で立ち話をしている場合じゃない。すぐに麓まで降りよう。詳しい話は、それからだ」
「分かりました……」
渋々、俺は同意する。
ここで、ゴネて会話をすることは不可能だと悟ったからだ。
すぐに猟友会の人達と、元来た道を戻り、麓まで降りたあとは車に乗り込んだあと、月山雑貨店の駐車場まで移動する。
月山雑貨店の駐車場に移動したあとは、猟友会の人達12人全員を母屋の居間では受け入れる事ができないため、楠木さん以外の猟友会の人達には、先に帰ってもらう事になった。
母屋に楠木さんを連れてき、客間のテーブルに俺と楠木さんは着席した。
そして――、俺は、どう話をすればいいのかと迷う。
俺の理想としては、『猟友会の人に結城村で起きた熊の出没に関しては、すでに熊は処分していて、山狩りも行ったが問題なかった』という証言が欲しかった。
だが――、そんな証言を得られるような雰囲気ではない。
話しを切り出すタイミングを完全に逸した俺は、しばらく黙り――、
それは楠木さんも同じだったようで、お互い、しばらく無言のまま時間が過ぎる。
「お茶を持ってきました」
雪音さんが客間にお茶を持って入ってくる。
客間のテーブルの上に置かれる湯飲みと、そこから立ち上る緑茶の匂い。
その匂いを嗅いだ俺と楠木さんは、互いに目配せをしたあと、お茶を啜る。
「――月山さん」
すると話を楠木さんの方から切り出してきた。
「はい」
「申し訳がないが、今回の山狩りは、秋田猟友会では無理だ。先ほどの山の裏手の惨状を見て、月山さんも理解したと思うが、20体以上の熊が死んだあとに、その死体は何者かに持ち運び去られている。正直、何がどうなったのか、さっぱり分からない。こういう時は、猟友会の人間は動かないというか安全面から動くことはできない。何せ、前代未聞の事だからな」
「そうですか……」
「悪いが今回の依頼は取り消しさせてくれ」
その言葉から、確固たる意志が伝わってくる。
ここは下手に何か言うとボロが出る可能性があると思い、俺も頷くことしかできない。
「分かりました」
「すまんな。力になれなくて――」
「いえ。命あっての物種ですから」
「そうだな……」
楠木さんは、頭を下げてくる。
「少し待っていてください」
俺は、客間から出て居間へと向かう。
そこで――、
「五郎さん。どうでしたか?」
台所で、俺達の話を聞いていたのだろう。
心配な表情で、雪音さんが聞いてくる。
「今回は、猟友会は手出しが出来ないと断られました」
「そうですか……。それで、どうしましょうか? おじいちゃんにも――」
「もちろん伝えるつもりです。ありのままを――」
「そうですよね……」
「猟友会の副会長からは、自衛隊へ依頼も考えた方が良いと言われました」
「それって、おじいちゃん経由で市長への要請と言う形ですよね?」
「そうなりますね」
「たぶん自衛隊は動かないと思います。警察が先に動くことになるかと思います」
「ですか……」
「はい。それで警察でも難しいと判断したら――」
「自衛隊ですか」
「それは分かりませんけど、市長が、どう判断するかどうかですよね」
「確かに……」
「どちらにしても、お爺ちゃんに報告をした方がいいですね。それよりも、五郎さんは、どうして会話の途中で席を立ったのですか?」
「今回の報酬を払おうと思って居間の箪笥からお金を取って来ようと思っただけです」
「そうだったのですか」
俺も、夜と明け方に気が付かなかった惨状に、一言呟いてから言葉を失う。
何と言うかゲームでいうとゾンビゲームで言う所のスプラッタな場所だと言えば分かりやすいだろうか。
兵士たちが死体を持ち運んではいたが、肉片があちらこちらにぶちまけられている。
全ては回収しきれなかったというところだろう。
「大丈夫か? 月山さん」
「――は、はい。大丈夫です」
楠木さんからかけられた言葉で、ハッ! と、した俺は自分でも信じられないくらい問題ないと即答していた。
「気にすることは無い。素人さんが、こんな現場を見たら普通は卒倒するからな」
「そうですか」
「――しかし……。これは……」
俺に声をかけてきた楠木さんの声色は固く、表情も眉間に皺を寄せたまま――。
「副会長!」
「どうした!?」
一人の猟友会の――、50代後半と思わしき男が声を上げる。
その男は、さらに――、
「至る所に、熊の頭部が落ちています」
「何だと!? 死体は、無いと言うのにか!?」
「――は、はい! 少なくとも20以上の熊の頭部が落ちていると思われ――」
「すぐに……」
楠木さんが、呟く。
その顔色は蒼白と化していた。
「すぐに山を下りるぞ!」
「――で、ですが、副会長。事態の把握をしませんと――」
「もう、そういう段階ではない! 得体の知れない何かが、居る。20体以上もの熊の頭部が散乱しているだけでなく、胴体の部分がないのだ。すぐに撤収だ! 月山さん。申し訳ないが、猟友会では手には負えない。田口から市長を通して自衛隊の派遣を検討を依頼した方がいい」
「そんなにですか?」
「ああ。冗談では、こんなことは言わない。これは、もう猟友会が担当できる領域を超えている」
「そ、そうですか……」
この流れ、相当ヤバいのでは?
このままだと、結城村に悪評が付いて下手すると村民が減る可能性もあるぞ?
そうなったら、ただでさえ少ない結城村の人口が減る可能性もありうる。
「あの……、楠木さん」
「月山さん、申し訳ない。今は、こんな危険な場所で立ち話をしている場合じゃない。すぐに麓まで降りよう。詳しい話は、それからだ」
「分かりました……」
渋々、俺は同意する。
ここで、ゴネて会話をすることは不可能だと悟ったからだ。
すぐに猟友会の人達と、元来た道を戻り、麓まで降りたあとは車に乗り込んだあと、月山雑貨店の駐車場まで移動する。
月山雑貨店の駐車場に移動したあとは、猟友会の人達12人全員を母屋の居間では受け入れる事ができないため、楠木さん以外の猟友会の人達には、先に帰ってもらう事になった。
母屋に楠木さんを連れてき、客間のテーブルに俺と楠木さんは着席した。
そして――、俺は、どう話をすればいいのかと迷う。
俺の理想としては、『猟友会の人に結城村で起きた熊の出没に関しては、すでに熊は処分していて、山狩りも行ったが問題なかった』という証言が欲しかった。
だが――、そんな証言を得られるような雰囲気ではない。
話しを切り出すタイミングを完全に逸した俺は、しばらく黙り――、
それは楠木さんも同じだったようで、お互い、しばらく無言のまま時間が過ぎる。
「お茶を持ってきました」
雪音さんが客間にお茶を持って入ってくる。
客間のテーブルの上に置かれる湯飲みと、そこから立ち上る緑茶の匂い。
その匂いを嗅いだ俺と楠木さんは、互いに目配せをしたあと、お茶を啜る。
「――月山さん」
すると話を楠木さんの方から切り出してきた。
「はい」
「申し訳がないが、今回の山狩りは、秋田猟友会では無理だ。先ほどの山の裏手の惨状を見て、月山さんも理解したと思うが、20体以上の熊が死んだあとに、その死体は何者かに持ち運び去られている。正直、何がどうなったのか、さっぱり分からない。こういう時は、猟友会の人間は動かないというか安全面から動くことはできない。何せ、前代未聞の事だからな」
「そうですか……」
「悪いが今回の依頼は取り消しさせてくれ」
その言葉から、確固たる意志が伝わってくる。
ここは下手に何か言うとボロが出る可能性があると思い、俺も頷くことしかできない。
「分かりました」
「すまんな。力になれなくて――」
「いえ。命あっての物種ですから」
「そうだな……」
楠木さんは、頭を下げてくる。
「少し待っていてください」
俺は、客間から出て居間へと向かう。
そこで――、
「五郎さん。どうでしたか?」
台所で、俺達の話を聞いていたのだろう。
心配な表情で、雪音さんが聞いてくる。
「今回は、猟友会は手出しが出来ないと断られました」
「そうですか……。それで、どうしましょうか? おじいちゃんにも――」
「もちろん伝えるつもりです。ありのままを――」
「そうですよね……」
「猟友会の副会長からは、自衛隊へ依頼も考えた方が良いと言われました」
「それって、おじいちゃん経由で市長への要請と言う形ですよね?」
「そうなりますね」
「たぶん自衛隊は動かないと思います。警察が先に動くことになるかと思います」
「ですか……」
「はい。それで警察でも難しいと判断したら――」
「自衛隊ですか」
「それは分かりませんけど、市長が、どう判断するかどうかですよね」
「確かに……」
「どちらにしても、お爺ちゃんに報告をした方がいいですね。それよりも、五郎さんは、どうして会話の途中で席を立ったのですか?」
「今回の報酬を払おうと思って居間の箪笥からお金を取って来ようと思っただけです」
「そうだったのですか」
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