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第313話 じっちゃんの名にかけて!
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扇風機を店内に設置していき、バックヤード側の扉も開けて通気をよくする。
そうしていると、開店時間が近づいてくる。
獣臭もようやく薄れてきたところで――、
「ゴロウ様」
「はい?」
「シャッターを開けている時にバックヤードを開けても何も起きないんですね」
「ん?」
俺は首を傾げる。
「いえ。シャッターを開けている状態で、バックヤードの扉を中から空けても特に変化はないと思いまして」
「なるほど……」
あまり深く考えた事はなかったが、恐らく異世界へのONOFFに関してはシャッターの開け閉めとバックヤード側の扉が関係しているのかも知れないな。
まぁ、余計なことをして異世界に繋がらなくなったら大問題だから放置でいいと思うが……。
「ゴロウ様は、気にはなりませんか? どのような条件下でルイズ辺境伯領と繋がるのかとか」
「まぁ、興味は無いと言えば嘘になりますけど、好奇心は猫を殺すとも言いますからね」
「高資金は?」
「そうじゃなくて、『好奇心は猫を殺す』です」
「それは、どういった意味なのでしょうか?」
「簡単に説明すると、好奇心が強すぎると、余計なことにまで首を突っ込むことで自分の身を亡ぼす事になりかねないという意味です」
「なるほど……。たしかにルイズ辺境伯領に繋がらなくなったら困りますものね。私も、帰れなくなりますし」
そのメディーナさんは納得した様子。
モップでタイルの掃除をし終えたあとは、扇風機を全開のまま換気を続けながら開店した。
しばらくすると、和美ちゃんを連れた根室恵美さんが出社してくる。
「おっさん、おはよ!」
「おはよ。朝から元気だな」
「今日こそは、桜ちゃんに勝つために特訓してきた!」
「ほう……、それは良い事だな」
まぁ、どうせ、またフルコンボを喰らって負けるんだろうが、それは俺の預かり知らぬところだな。
「あれ? 月山さん」
「どうかしましたか?」
店の中を見ていた根室さんが俺に話しかけてくる。
「ナイルさんは、今日はお休みですか?」
「あー。ナイルさんは、今日は、ビザの更新で一日、休みを取っています」
「そうのですか……」
もう明らかに、しゅんとしてテンション駄々下がりな根室恵美さん。
「あ――、着替えてきますね」
ただ、すぐに仕事の時間が差し迫っていた事に気が付いたのか根室さんはバックヤードの方へ向かっていく。
「じゃ、おっさん! うちは、家に行っとるから!」
「おう。桜と仲良くしてくれな」
「わかっとるって!」
5歳とは思えないほど口達者な様子で店から出ていこうとする和美ちゃん。
だが、その足は店から出ようとしたところでピタリと止まる。
「おっさん」
「どうした?」
「今日、店の中、変なにおいがする」
「そ、そうか……。気のせいだろ?」
「うち、鼻はいいええ」
扇風機を全力で回し業務用空調機を全力で動かしていても、分かるとは、和美ちゃんは動物なのかな?
「それにこないに扇風機を動かしとるってことは何ぞあった! この和美の目は誤魔化せへん」
「そ、そうか」
口が達者だな。
そういえば、女の子は男と違って小さい頃から口が達者だとネットの記事で読んだことがある。
「ウチには、謎は解けた!」
「じっちゃんの名にかけてか?」
国民的なセリフを先読みして先制パンチを打っておく。
「おっさん、先にセリフを取るのは駄目やと思う」
「そんなことを言われてもな」
「和美、何をしているの? 月山さんと――」
「あ……。そ、それじゃな! おっさん!」
脱兎のごとく店から出ていく和美ちゃん。
本当に元気だよな。
以前とは見違えている。
「何だか、すいません。月山さん」
そう申し訳なさそうに頭を下げてくる根室恵美さんに俺は首を振る。
「気にしないでください。桜のことで話をしていただけなので」
「そうでしたか。桜ちゃんは、どうですか? 少しは気持ちの整理はつきましたか?」
「はい。今は落ち着いています。昨日は、リンゴ狩りにもいきましたから、いい気分転換になったと思います」
まぁ、熊とかに襲われたが、桜の方は、メディーナさんが迅速に護衛してくれたようで、大して気にはしていなかったようだ。
「そうですか。それは、よかったです」
「それじゃ、自分は、母屋の方で仕事があるので、メディーナさんと一緒に、お昼休憩まで御店の方をお願いします」
「分かりました。それで、メディーナさんは?」
「外で片付けをしています」
俺は、店の鏡越しに道路向かい側の駐車場でブルーシートを折り畳んでいるメディーナさんを見る。
「たくさんブルーシートが敷いてありますけど何かあったんですか?」
「じつは昨日は熊が出たので、その後処理をしていたんです」
「あ……、それで義母と義父が朝から慌てていたんですね」
「そういえば、今日は、車では?」
「自転車を購入しました。自転車は、あそこに停めておいてよかったですか?」
店前に止めてある自転車。
それを見て、そういえば自転車やバイクの駐輪場が無い事に今さながら気が付く。
まぁ、そもそも、こんな土田舎で自転車で移動する人間なんて稀なんだよな。
そうしていると、開店時間が近づいてくる。
獣臭もようやく薄れてきたところで――、
「ゴロウ様」
「はい?」
「シャッターを開けている時にバックヤードを開けても何も起きないんですね」
「ん?」
俺は首を傾げる。
「いえ。シャッターを開けている状態で、バックヤードの扉を中から空けても特に変化はないと思いまして」
「なるほど……」
あまり深く考えた事はなかったが、恐らく異世界へのONOFFに関してはシャッターの開け閉めとバックヤード側の扉が関係しているのかも知れないな。
まぁ、余計なことをして異世界に繋がらなくなったら大問題だから放置でいいと思うが……。
「ゴロウ様は、気にはなりませんか? どのような条件下でルイズ辺境伯領と繋がるのかとか」
「まぁ、興味は無いと言えば嘘になりますけど、好奇心は猫を殺すとも言いますからね」
「高資金は?」
「そうじゃなくて、『好奇心は猫を殺す』です」
「それは、どういった意味なのでしょうか?」
「簡単に説明すると、好奇心が強すぎると、余計なことにまで首を突っ込むことで自分の身を亡ぼす事になりかねないという意味です」
「なるほど……。たしかにルイズ辺境伯領に繋がらなくなったら困りますものね。私も、帰れなくなりますし」
そのメディーナさんは納得した様子。
モップでタイルの掃除をし終えたあとは、扇風機を全開のまま換気を続けながら開店した。
しばらくすると、和美ちゃんを連れた根室恵美さんが出社してくる。
「おっさん、おはよ!」
「おはよ。朝から元気だな」
「今日こそは、桜ちゃんに勝つために特訓してきた!」
「ほう……、それは良い事だな」
まぁ、どうせ、またフルコンボを喰らって負けるんだろうが、それは俺の預かり知らぬところだな。
「あれ? 月山さん」
「どうかしましたか?」
店の中を見ていた根室さんが俺に話しかけてくる。
「ナイルさんは、今日はお休みですか?」
「あー。ナイルさんは、今日は、ビザの更新で一日、休みを取っています」
「そうのですか……」
もう明らかに、しゅんとしてテンション駄々下がりな根室恵美さん。
「あ――、着替えてきますね」
ただ、すぐに仕事の時間が差し迫っていた事に気が付いたのか根室さんはバックヤードの方へ向かっていく。
「じゃ、おっさん! うちは、家に行っとるから!」
「おう。桜と仲良くしてくれな」
「わかっとるって!」
5歳とは思えないほど口達者な様子で店から出ていこうとする和美ちゃん。
だが、その足は店から出ようとしたところでピタリと止まる。
「おっさん」
「どうした?」
「今日、店の中、変なにおいがする」
「そ、そうか……。気のせいだろ?」
「うち、鼻はいいええ」
扇風機を全力で回し業務用空調機を全力で動かしていても、分かるとは、和美ちゃんは動物なのかな?
「それにこないに扇風機を動かしとるってことは何ぞあった! この和美の目は誤魔化せへん」
「そ、そうか」
口が達者だな。
そういえば、女の子は男と違って小さい頃から口が達者だとネットの記事で読んだことがある。
「ウチには、謎は解けた!」
「じっちゃんの名にかけてか?」
国民的なセリフを先読みして先制パンチを打っておく。
「おっさん、先にセリフを取るのは駄目やと思う」
「そんなことを言われてもな」
「和美、何をしているの? 月山さんと――」
「あ……。そ、それじゃな! おっさん!」
脱兎のごとく店から出ていく和美ちゃん。
本当に元気だよな。
以前とは見違えている。
「何だか、すいません。月山さん」
そう申し訳なさそうに頭を下げてくる根室恵美さんに俺は首を振る。
「気にしないでください。桜のことで話をしていただけなので」
「そうでしたか。桜ちゃんは、どうですか? 少しは気持ちの整理はつきましたか?」
「はい。今は落ち着いています。昨日は、リンゴ狩りにもいきましたから、いい気分転換になったと思います」
まぁ、熊とかに襲われたが、桜の方は、メディーナさんが迅速に護衛してくれたようで、大して気にはしていなかったようだ。
「そうですか。それは、よかったです」
「それじゃ、自分は、母屋の方で仕事があるので、メディーナさんと一緒に、お昼休憩まで御店の方をお願いします」
「分かりました。それで、メディーナさんは?」
「外で片付けをしています」
俺は、店の鏡越しに道路向かい側の駐車場でブルーシートを折り畳んでいるメディーナさんを見る。
「たくさんブルーシートが敷いてありますけど何かあったんですか?」
「じつは昨日は熊が出たので、その後処理をしていたんです」
「あ……、それで義母と義父が朝から慌てていたんですね」
「そういえば、今日は、車では?」
「自転車を購入しました。自転車は、あそこに停めておいてよかったですか?」
店前に止めてある自転車。
それを見て、そういえば自転車やバイクの駐輪場が無い事に今さながら気が付く。
まぁ、そもそも、こんな土田舎で自転車で移動する人間なんて稀なんだよな。
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