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第309話 山狩り(2)
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バックヤードから出たあと、店の軒先に戻る。
そして、軒先のシャッターを開けたあと、ナイルさんが異世界から持ち込んだ武器を兵士達へと配っていく。
「装備を点検したら、すぐに整列!」
ナイルさんの号令と共に兵士達が一斉に駐車場に整列していく。
その様子を見ていたナイルさんが頷くと、
「これから我々は、魔物討伐を行う! 動き詰めで大変だと思うが、ルイズ辺境伯領騎士団所属の騎士として、次期ルイズ辺境伯領の領主となられるゴロウ・フォン・ルイズ様に、我々、辺境伯領を守護する騎士団の力を――、忠義を示せ! 全力で、山に住まう魔物を殲滅せよ! 我々の力を見せよ! 良いな! お前たち!」
ナイルさんの言葉に静まり返る兵士達。
「ゴロウ様。それでは騎士達に何か号令を――」
「え? 俺に?」
「はい」
何を言っていいのか分からないが……。
とりあえず昼間の収穫作業で疲れている兵士達を鼓舞するような言葉が必要になるという事でいいのか?
それなら――、
「ルイズ辺境伯領の勇敢騎士達よ! 俺は、月山五郎――、ここの領地を治める領主だ。そして、将来は、ルイズ辺境伯領を治める伯爵になる予定である」
かなり大げさに脚色した内容になるが、今は、肩書をでっちあげても兵士達の俺への信頼を掴むことが重要。
「今回は、俺の要請により、昼から無理な行軍と偵察をさせてしまった。皆の者、疲れていると思う。だが! 汝たちの忠義、忠誠、それらを俺は疑っていはいない。何故なら、この何か月もの間、何時いかなる時であっても、店を守ってくれていたからだ! だからこそ、無理な頼みをしたいとは思っていないが――、領民を守ることは領主の仕事である! だからこそ、貴公たち、英雄に力を貸してほしい」
そこで、俺は一旦、言葉を区切り兵士達へと視線を向ける。
大半が半信半疑の様子。
それは、そうだ。
俺が、実際に暮らしてきたのは日本であり異世界ではない。
つまり異世界人として――、辺境伯領に住んできたという実績がないからだ。
「――そして!」
俺は、深く深呼吸したあと口を開く。
「貴公らの仕事は既に終わっている! だが、ここからは俺の個人からの依頼だと思ってくれていい」
その俺の言葉に、顔を見合わせる兵士達。
「もちろん! 依頼ということは、報酬は払う!」
俺の報酬という言葉に、ようやく死んだような目をしていた兵士達の目に活力が出てきたのが見て取れた。
「ゴロウ様、よろしいのですか?」
ナイルさんが、聞いてくるが――、俺は頷く。
追加の仕事を頼むのだ。
それも生死に関わる山狩りだ。
狩る相手は熊。
それこそ別途報酬を出さなければ兵士達もやる気はでないだろう。
だったら、それなりの報酬を提示するのが、誠意と言ったものだろう。
「今回の山狩りだが! 貴公ら全員に、ノーマン辺境伯様が提示していた報酬の10倍を出そう!」
報酬を提示した瞬間――、兵士達の雰囲気が変わる。
ざわつく声。
そして、兵士達で話し合う様子が見て取れる。
その中には、破格の金額だ! と、いう声も聞こえてくる。
「俺が、貴公らに提供できるのは、金品程度持ちえないが力を貸してほしい」
「ゴロウ様。あとは、私にお任せを――」
ナイルさんに引き継ぐ。
「お前達! 聞いたな? ゴロウ様が、莫大な報酬を用意してくださった! 一日の魔物狩りで1年以上は暮らせる報酬だ! ゴロウ様は、お前達の忠誠と忠義を、それだけ買われているのだ! ここで、その信頼を裏切る行為は騎士の精神に悖ることだ! よいな! 時間は限られている!」
ナイルさんが、腰から剣を引き抜くと同時に頭上へとい掲げる。
そして――、
「日が沈むまでの間に、山狩りを終わらせるぞ!」
「「「「「「「オオオオオオオオオオオッ」」」」」」」
兵士達が、一斉に雄叫びを上げた。
「――では、ゴロウ様。メディーナに現地まで案内させますので、ご自宅で吉報をお待ちください」
「俺も一緒に行きますが?」
「……分かりました」
現場には、一応、俺も行った方がいいだろう。
何かあった時に、すぐに対応できないと困るからな。
まぁ、対応と言っても村長の果実園を守ることくらいだが。
「――では、村長、行ってきます」
「うむ。気を付けてな」
村長と挨拶を交わしたあとは、俺はワゴンRに乗り込み歩き出した兵士達の後ろをついていく。
車で20分ほどかかる距離だが、しばらくすると兵士の人達は走り出す。
そして1時間ほどで田口村長の果実園に到着した。
ナイルさんは兵士を10人の小隊に分けていく。
20グループほど作ったあとは、果実園に分散していき多方向から調べる形となった。
兵士達が山の中へと入ってから2時間が経過したところで、俺は兵士達とやり取りをしていたナイルさんに訪ねることにした。
「ナイルさん、どうですか?」
「大きな魔物の討伐については、特に報告は上がってきていません」
「そうですか……」
「ただ、大量の熊の死体は確認できたそうです」
「熊の死体ですか?」
「はい。それも一体や二体ではなく37体の存在が確認されています」
そして、軒先のシャッターを開けたあと、ナイルさんが異世界から持ち込んだ武器を兵士達へと配っていく。
「装備を点検したら、すぐに整列!」
ナイルさんの号令と共に兵士達が一斉に駐車場に整列していく。
その様子を見ていたナイルさんが頷くと、
「これから我々は、魔物討伐を行う! 動き詰めで大変だと思うが、ルイズ辺境伯領騎士団所属の騎士として、次期ルイズ辺境伯領の領主となられるゴロウ・フォン・ルイズ様に、我々、辺境伯領を守護する騎士団の力を――、忠義を示せ! 全力で、山に住まう魔物を殲滅せよ! 我々の力を見せよ! 良いな! お前たち!」
ナイルさんの言葉に静まり返る兵士達。
「ゴロウ様。それでは騎士達に何か号令を――」
「え? 俺に?」
「はい」
何を言っていいのか分からないが……。
とりあえず昼間の収穫作業で疲れている兵士達を鼓舞するような言葉が必要になるという事でいいのか?
それなら――、
「ルイズ辺境伯領の勇敢騎士達よ! 俺は、月山五郎――、ここの領地を治める領主だ。そして、将来は、ルイズ辺境伯領を治める伯爵になる予定である」
かなり大げさに脚色した内容になるが、今は、肩書をでっちあげても兵士達の俺への信頼を掴むことが重要。
「今回は、俺の要請により、昼から無理な行軍と偵察をさせてしまった。皆の者、疲れていると思う。だが! 汝たちの忠義、忠誠、それらを俺は疑っていはいない。何故なら、この何か月もの間、何時いかなる時であっても、店を守ってくれていたからだ! だからこそ、無理な頼みをしたいとは思っていないが――、領民を守ることは領主の仕事である! だからこそ、貴公たち、英雄に力を貸してほしい」
そこで、俺は一旦、言葉を区切り兵士達へと視線を向ける。
大半が半信半疑の様子。
それは、そうだ。
俺が、実際に暮らしてきたのは日本であり異世界ではない。
つまり異世界人として――、辺境伯領に住んできたという実績がないからだ。
「――そして!」
俺は、深く深呼吸したあと口を開く。
「貴公らの仕事は既に終わっている! だが、ここからは俺の個人からの依頼だと思ってくれていい」
その俺の言葉に、顔を見合わせる兵士達。
「もちろん! 依頼ということは、報酬は払う!」
俺の報酬という言葉に、ようやく死んだような目をしていた兵士達の目に活力が出てきたのが見て取れた。
「ゴロウ様、よろしいのですか?」
ナイルさんが、聞いてくるが――、俺は頷く。
追加の仕事を頼むのだ。
それも生死に関わる山狩りだ。
狩る相手は熊。
それこそ別途報酬を出さなければ兵士達もやる気はでないだろう。
だったら、それなりの報酬を提示するのが、誠意と言ったものだろう。
「今回の山狩りだが! 貴公ら全員に、ノーマン辺境伯様が提示していた報酬の10倍を出そう!」
報酬を提示した瞬間――、兵士達の雰囲気が変わる。
ざわつく声。
そして、兵士達で話し合う様子が見て取れる。
その中には、破格の金額だ! と、いう声も聞こえてくる。
「俺が、貴公らに提供できるのは、金品程度持ちえないが力を貸してほしい」
「ゴロウ様。あとは、私にお任せを――」
ナイルさんに引き継ぐ。
「お前達! 聞いたな? ゴロウ様が、莫大な報酬を用意してくださった! 一日の魔物狩りで1年以上は暮らせる報酬だ! ゴロウ様は、お前達の忠誠と忠義を、それだけ買われているのだ! ここで、その信頼を裏切る行為は騎士の精神に悖ることだ! よいな! 時間は限られている!」
ナイルさんが、腰から剣を引き抜くと同時に頭上へとい掲げる。
そして――、
「日が沈むまでの間に、山狩りを終わらせるぞ!」
「「「「「「「オオオオオオオオオオオッ」」」」」」」
兵士達が、一斉に雄叫びを上げた。
「――では、ゴロウ様。メディーナに現地まで案内させますので、ご自宅で吉報をお待ちください」
「俺も一緒に行きますが?」
「……分かりました」
現場には、一応、俺も行った方がいいだろう。
何かあった時に、すぐに対応できないと困るからな。
まぁ、対応と言っても村長の果実園を守ることくらいだが。
「――では、村長、行ってきます」
「うむ。気を付けてな」
村長と挨拶を交わしたあとは、俺はワゴンRに乗り込み歩き出した兵士達の後ろをついていく。
車で20分ほどかかる距離だが、しばらくすると兵士の人達は走り出す。
そして1時間ほどで田口村長の果実園に到着した。
ナイルさんは兵士を10人の小隊に分けていく。
20グループほど作ったあとは、果実園に分散していき多方向から調べる形となった。
兵士達が山の中へと入ってから2時間が経過したところで、俺は兵士達とやり取りをしていたナイルさんに訪ねることにした。
「ナイルさん、どうですか?」
「大きな魔物の討伐については、特に報告は上がってきていません」
「そうですか……」
「ただ、大量の熊の死体は確認できたそうです」
「熊の死体ですか?」
「はい。それも一体や二体ではなく37体の存在が確認されています」
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