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第298話 秋の大収穫(8)

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「そうですか。それは助かります」
「――いえ。これは、こちらの世界を、ゴロウ様が住まう異世界の国家に気付かれないようにするノーマン様の考えですので」
「なるほど……」
 
 一体、辺境伯は、こちらの行動を、どこまで予測しているのかと思ってしまう。
 
「では、ナイルさん、店の中への移動を兵士達に言ってください」
「分かりました」
 
 ナイルさんは、一歩、俺から進み出ると――、
 
「ルイズ辺境伯領の騎士団に所属する騎士達よ! これから、ゴロウ様が統治する異世界に向かう! だが! これは戦いではない! あくまでも異世界に関しての情報収集である! 異世界人には、絶対に悟られないように! よいな!」
 
 ナイルさんの号令に、兵士達が声を揃えて「はい!」と叫ぶ。
 重なる声――、もはや音と言っていい。
 その音が周囲に響き渡る。
 
「異世界人との交流は、極力控えるように! それと異世界人からの指示には、あくまでも従順に従い正体がバレないようにするように! 分かったな!」
 
 頷く兵士達。
 
「これから向かう領地は、次期ルイズ辺境伯領の領主となられるゴロウ・フォン・ルイズ様の領地とも心得よ! 領民に対する非礼は、ノーマン様に弓引く行為と心得よ! もし、あとで問題が発覚した場合には――、我々の国の存在が異世界人に知られた場合には、情報を漏らした者と家族に連帯責任を負わせるとする! 努々、忘れぬように! ――では、進軍!」
 
 ナイルさんの指示と同時に、連帯を組んで兵士達が店の中へと入っていく。
 その都度、ピカピカと店が点滅する。
 どうやら、病を患っている人が、かなりの数いるようだ。
 おそらく以前の俺だったら魔力が足りずに大変なことになっていたはず。
 
「ゴロウ様。魔力の方は大丈夫ですか?」
 
 どうやら、ナイルさんも店が光まくっている事に気が付いたらしい。
 慌てて、俺の容態の確認の為に聞いてくる。
 たしかにナイルさんが驚くのも無理はない。
 
月山雑貨店は、異世界側に病を持ち込まないようにと、聖剣エクスカリバーが、店の入り口を通過した人間を自動的に完全治癒しているのだ。
そして、その完全治癒の為には魔力が必要で、その魔力は俺から供給されている。
つまり兵士達が多く通過すると言うことは、それだけ魔力が必要になるということ。
 
最初は、花火の重なりのように派手に光っていた月山雑貨店だった。
そう、当初はピカッ! ピカッ! と、言う感じであったが――、今では、ピカカカカカアカカッと言う具合に光っている。
 
もはや常軌を逸した光り方だ。
ナイルさんが心配になって聞いてくるのも当然と言えた。
 
「大丈夫です。まったく、魔力がへっている気がしません」
「それならいいのですが――」
 
 少し引き攣ったような表情で答えてくるナイルさん。
 実際に、まったく体に負担が圧し掛かってこない。
 やはり以前に呑んだポーションで魔力量が増加したのが要因なのだろう。
 
「ゴロウ様。兵士達は全員、店の中へ移動しました」
 
 話しかけてきたのはセルジッドさん。
 どうやら、店の中への移動を指揮――、手伝ってくれていたようだ。
 
「ありがとうございます。それで、セルジッドさんは、異世界には来られますか?」
「――いえいえ。この老体が参加すると、変な目で見られることになりますから。それよりもナイル」
 
 俺との会話の途中へナイルさんへと視線を向けるセルジッドさん。
 
「分かっていると思うが、今回の兵士指揮は、ノーマン様は期待しているという事を忘れぬようにな」
「分かっています」
「期待?」
 
 俺は、思わずセルジッドさんの言葉を拾い上げて口にした。
 
「はい。ナイルは、次期騎士団長有力候補ですから。兵士の運用に関しては、今回はテストのようなモノなのです」
「そうなのですか?」
「はい。ですから、ゴロウ様は気になさらないでください」
「分かりました」
 
 そういえば、ナイルさんも以前になにか言いかけていた気がするな。
 もしかしたら、このことだったのかも知れない。
 
「それでは、ゴロウ様。成功を祈っております」
 
 執事の服を着た老紳士風を装っているセルジッドさんは、頭を下げてくる。
 
「セルジッドさん。御助力、感謝致します」
「勿体ないお言葉。ノーマン様の御指示ですので、お気になさらず」
「分かりました。それではナイルさん、行きましょう」
「はい。それではセルジッド様」
「うむ。気を付けるのだぞ」
 
 ナイルさんと共に店の中に入る。
 店の中は200人の人を入れたからギュウギュウの寿司詰め状態だが、何とかシャッターを下ろすボタンを押す。
 そしてシャッターが閉まったあとは、バックヤードまで移動し、一人ずつバックヤード側から日本側へと連れていく。
 200人を全員、日本に連れて出た時には、すでに太陽はゆっくりと登り始めていた。
 
「ナイルさん。全員を店舗の駐車場まで連れていってください。俺は、村長に電話して手配をするので」
「分かりました。お前達、ついてこい!」
 
 
 
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