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第276話 鮭茶漬け
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お茶漬け――、それは男の料理の一つである。
白米に、お茶漬けの素を散らしてお湯を注ぐだけで完成するという、カップラーメンを超えるお手軽さなのに美味しいという日本の料理の神髄。
「はい。そういえば、ナイルさんは、お茶漬けを食べたことは?」
「ないですね」
「なるほど。俺としては、ミートボールラーメンに並ぶ完成度だと思っています」
「ミートボール?」
どうやら、ナイルさんは、ミートボールを食べたことがないらしい。
袋麺にミートボールを入れて完成するという攻守完璧なラーメンを。
「はい。桜にも好評でした」
「中々に興味深いですね」
「今度、作りますよ」
「楽しみにしています」
ナイルさんと会話している間に、お湯が沸く。
俺はどんぶりに白米を盛っていき――、そしてお茶漬けの素を、その上に散らした後に、熱々のお湯を注ぎ――、
「完成です! おあがりよ!」
俺はナイルさんに、男の手料理の一つ――、お茶漬けを差し出す。
「随分と早いんですね」
どんぶりを俺から受け取ったナイルさんは、恐る恐ると言った感じでお茶漬けを啜り口に含む。
その瞬間!
「お、美味しい……」
「でしょう?」
「はい! こちらの世界の料理は、どれも美味しいですが、この短時間で作れる料理が、ここまで完成度が高いとは――!」
「俺は更に、冷蔵庫の中から塩鮭を取り出し、フライパンに油を少量垂らしてから、鮭を焼く」
「ゴロウ様、一体何を?」
まだ、お茶漬けを食べていた手を止めて俺に話しかけてくるナイルさん。
「見せてあげますよ。男の手料理! 裏メニューを!」
「裏メニュー!?」
鮭を焼いたあと、俺は包丁で半分に鮭の切り身を切ったあと――、
「ナイルさん、どんぶりを――」
「は、はい」
ナイルさんから、どんぶりを預かり、白米を盛ったあと、お茶漬けの素を白米の上にまぶしたあとお湯を注ぐ。
そして――、そのあとに焼いた鮭の切り身を乗せて完成!
「男の料理! 裏メニューの一つ! モノホンの鮭茶漬けです」
俺は焼いた鮭と鮭茶漬けを合わせた俺風の料理を――、どんぶりをナイルさんに手渡す。
少し、どんぶりの中を見ていたナイルさんがゴクリと唾を呑み込んだあと――、
「こ、これは!?」
一口食べて手を止める。
「ゴロウ様!」
「どうですか? 美味しいでしょう?」
「はい。これは、すごく美味しいです。これでしたら戦場でも食べられますね」
「まぁ、簡単な男の手料理ですからね」
あっと言う間に白米と鮭と鮭茶漬けという奇跡のゴールデンコンビたる茶漬けを3杯完食するナイルさん。
「それにしても、ゴロウ様は料理が得意なのですね」
「まぁ、一人暮らしが長かったですから」
男は一人暮らしが長いと料理や材料、手間に時間を使うようになる。
その集大成が男の手料理であり、俺風にアレンジしたのが男の手料理、裏メニューなのだ。
「なるほど……。私達の世界は、火などは気軽に使うことはできないので、存在しない料理法ですね」
「火を気軽に扱えない?」
「はい。一般の家庭ですと、薪を利用しますから。そうしますと火種の問題もありますし、薪は有限ですから」
「つまり、薪が高いと?」
「それもありますが、火種の確保が大変なのです。ですから、隣の家から火種を借りてくることも多いですね。ですから料理に関しては主に外食が多くなるのです」
「――と、いうことはエルム王国では、簡単に自宅で手料理は作れないと?」
「そうなります」
「色々とあるんですね」
「そうですね。私達の世界の一般家庭にお越しいただければ、こちらの世界と比べて、どこを改善すれば庶民の生活が豊かになるのか? という部分が、多く見つかるかも知れません」
それって、俺に領主として仕事をして欲しいってことだよな?
まぁ、そのうち、考えることになると思うが――、技術革新は色々と弊害を生むとも神田町で購入した異世界についての本にも書かれていたからな。
一概に頷くことはできない。
俺は思考しながら、湯飲みを二つだし、急須からお茶を注ぐ。
一つはナイルさんへ。
もう一つは自分自身に。
互いにお茶を飲んだあと――、
「そういえば、ゴロウ様」
ナイルさんが食べ終わった後片付けをしながら俺に話しかけてきた。
「はい?」
「今日は、秋田市に行かれたとお伺いしましたが、何か用事があったのですか?」
「指輪の発注に行っていただけです」
「なるほど……。それでは、そろそろプロポーズを?」
「そうですね」
ナイルさんの言葉に俺は頷く。
あまり引き延ばしておくのもよくない。
それにしても、雪音さんと一緒に暮らし始めてから4ヵ月も経ってないのに、プロポーズまで行くとか、以前の自分からは考えられない。
普通、一般的には1年とか2年とか交際期間を経て結婚するもんだが――、
「そうですか」
頷くナイルさんを見て俺は口を開く。
「そういえば、ナイルさんは、結婚は?」
「まだです。隊の中では、遅くはありますが――」
「なるほど……」
まぁ、ナイルさんの根室さんに対する態度からして独身なのは薄々気が付いてはいたが――、
白米に、お茶漬けの素を散らしてお湯を注ぐだけで完成するという、カップラーメンを超えるお手軽さなのに美味しいという日本の料理の神髄。
「はい。そういえば、ナイルさんは、お茶漬けを食べたことは?」
「ないですね」
「なるほど。俺としては、ミートボールラーメンに並ぶ完成度だと思っています」
「ミートボール?」
どうやら、ナイルさんは、ミートボールを食べたことがないらしい。
袋麺にミートボールを入れて完成するという攻守完璧なラーメンを。
「はい。桜にも好評でした」
「中々に興味深いですね」
「今度、作りますよ」
「楽しみにしています」
ナイルさんと会話している間に、お湯が沸く。
俺はどんぶりに白米を盛っていき――、そしてお茶漬けの素を、その上に散らした後に、熱々のお湯を注ぎ――、
「完成です! おあがりよ!」
俺はナイルさんに、男の手料理の一つ――、お茶漬けを差し出す。
「随分と早いんですね」
どんぶりを俺から受け取ったナイルさんは、恐る恐ると言った感じでお茶漬けを啜り口に含む。
その瞬間!
「お、美味しい……」
「でしょう?」
「はい! こちらの世界の料理は、どれも美味しいですが、この短時間で作れる料理が、ここまで完成度が高いとは――!」
「俺は更に、冷蔵庫の中から塩鮭を取り出し、フライパンに油を少量垂らしてから、鮭を焼く」
「ゴロウ様、一体何を?」
まだ、お茶漬けを食べていた手を止めて俺に話しかけてくるナイルさん。
「見せてあげますよ。男の手料理! 裏メニューを!」
「裏メニュー!?」
鮭を焼いたあと、俺は包丁で半分に鮭の切り身を切ったあと――、
「ナイルさん、どんぶりを――」
「は、はい」
ナイルさんから、どんぶりを預かり、白米を盛ったあと、お茶漬けの素を白米の上にまぶしたあとお湯を注ぐ。
そして――、そのあとに焼いた鮭の切り身を乗せて完成!
「男の料理! 裏メニューの一つ! モノホンの鮭茶漬けです」
俺は焼いた鮭と鮭茶漬けを合わせた俺風の料理を――、どんぶりをナイルさんに手渡す。
少し、どんぶりの中を見ていたナイルさんがゴクリと唾を呑み込んだあと――、
「こ、これは!?」
一口食べて手を止める。
「ゴロウ様!」
「どうですか? 美味しいでしょう?」
「はい。これは、すごく美味しいです。これでしたら戦場でも食べられますね」
「まぁ、簡単な男の手料理ですからね」
あっと言う間に白米と鮭と鮭茶漬けという奇跡のゴールデンコンビたる茶漬けを3杯完食するナイルさん。
「それにしても、ゴロウ様は料理が得意なのですね」
「まぁ、一人暮らしが長かったですから」
男は一人暮らしが長いと料理や材料、手間に時間を使うようになる。
その集大成が男の手料理であり、俺風にアレンジしたのが男の手料理、裏メニューなのだ。
「なるほど……。私達の世界は、火などは気軽に使うことはできないので、存在しない料理法ですね」
「火を気軽に扱えない?」
「はい。一般の家庭ですと、薪を利用しますから。そうしますと火種の問題もありますし、薪は有限ですから」
「つまり、薪が高いと?」
「それもありますが、火種の確保が大変なのです。ですから、隣の家から火種を借りてくることも多いですね。ですから料理に関しては主に外食が多くなるのです」
「――と、いうことはエルム王国では、簡単に自宅で手料理は作れないと?」
「そうなります」
「色々とあるんですね」
「そうですね。私達の世界の一般家庭にお越しいただければ、こちらの世界と比べて、どこを改善すれば庶民の生活が豊かになるのか? という部分が、多く見つかるかも知れません」
それって、俺に領主として仕事をして欲しいってことだよな?
まぁ、そのうち、考えることになると思うが――、技術革新は色々と弊害を生むとも神田町で購入した異世界についての本にも書かれていたからな。
一概に頷くことはできない。
俺は思考しながら、湯飲みを二つだし、急須からお茶を注ぐ。
一つはナイルさんへ。
もう一つは自分自身に。
互いにお茶を飲んだあと――、
「そういえば、ゴロウ様」
ナイルさんが食べ終わった後片付けをしながら俺に話しかけてきた。
「はい?」
「今日は、秋田市に行かれたとお伺いしましたが、何か用事があったのですか?」
「指輪の発注に行っていただけです」
「なるほど……。それでは、そろそろプロポーズを?」
「そうですね」
ナイルさんの言葉に俺は頷く。
あまり引き延ばしておくのもよくない。
それにしても、雪音さんと一緒に暮らし始めてから4ヵ月も経ってないのに、プロポーズまで行くとか、以前の自分からは考えられない。
普通、一般的には1年とか2年とか交際期間を経て結婚するもんだが――、
「そうですか」
頷くナイルさんを見て俺は口を開く。
「そういえば、ナイルさんは、結婚は?」
「まだです。隊の中では、遅くはありますが――」
「なるほど……」
まぁ、ナイルさんの根室さんに対する態度からして独身なのは薄々気が付いてはいたが――、
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