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第258話 生の牛乳は美味しい。
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「うーっ!」
どうやら、俺の発言がフーちゃんは気にいらなかったらしい。
「だ、大丈夫なのか? 五郎?」
「何がですか?」
「――いや、だから……、その生物は――」
「生物って、ただの犬じゃないですか」
なんで、そんなに表情を青くしているのか。
そんなに犬が苦手なのか?
犬アレルギーなのか?
「犬って……」
「犬ですよ、犬。宮越さんも、そんなに犬とか苦手ですか?」
俺は、宮越さんに答えつつ、肩の上にフーちゃんを載せる。
するとフーちゃんが狙っていたとばかりに犬撫でパンチを放ってくるが、痛くも痒くもない。
「がるるるるっ」
フーちゃん、怒りの連撃。
それら全ては、俺に当たっても何らダメージは発生しない。
少しばかり強い微風が吹いてくるくらいだ。
「ご、五郎……」
「どうかしましたか?」
「本当に、何ともないのか?」
どうやら、俺が犬アレルギーだと思っているらしい。
まったく――、心配性にも程がある。
ベトナム戦争帰りということで、戦闘経験は豊富な感じがする。
なにせ、副隊長のナイルさんを手玉に取ったのだから。
だが、犬が苦手という弱点を抱えているのは、それはそれでどうなのだろう?
まぁ、母屋に来ると犬が苦手なら色々と大変だろうな。
「柳橋さん、宮越さん。護衛は無理しない範囲でしてくれて構いませんから。あと、フーちゃんは母屋に置いてくるので。母屋から離れていて護衛してくれればいいです」
俺は、二人に配慮しつつお願いする。
そして時計を確認しつつ、ナイルさんの方を見て――、
「ナイルさん、もうすぐ開店時間ので、準備をお願いします」
「分かりました。ゴロウ様」
3人を店先の駐車場の放置したまま、俺は母屋へと向かう。
そして3人から離れると、ようやくフーちゃんが落ち着いたのか、俺の肩の上で四肢をだらーんとして置物のようになる。
「まったく……」
うちの犬は、時々、へんなことをするからな。
きちんと躾ないと駄目かも知れない。
ペットは仔犬の内に躾けることが重要だと、どこかのサイトで見た事があるし。
「あら? 五郎さんって……、どうして、フーちゃんと一緒に?」
「雪音さん。それは俺のセリフです。気が付いたら店の屋根の上に登っていたんですよ」
「そうなのですか……。駄目よ! フーちゃん! 怪我したら、大変でしょう!」
「くーん」
「分かったのならいいの」
「わんっ!」
どうして、雪音さんの話は素直にフーちゃんは聞くのか? そこは、色々と疑問が浮かぶが、まぁ、そこはあとで考えるとしよう。
「あ、そういえば、雪音さん」
「はい?」
「柳橋さんと宮越さんが近くでサバイバルゲームするとか言っていました」
「サバイバル? もう還暦をとっくに過ぎたおじいちゃんたちですよね?」
「あれです。男は、いつまでも少年の心を持ちたいみたいな」
「そうですか」
本当のことを言う事もできないので、適当にお茶を濁しておく。
まぁ、本当に必要な事なら、村長から言ってくれるはずだし。
「それじゃ、俺は店を開けてきますので」
「はい。いってらっしゃい」
雪音さんに見送られて、俺は月山雑貨店の軒先に向かった。
「あ、ゴロウ様」
店内に入ると、すでにレジの電源から店内の蛍光灯まで灯りはついていた。
どうやら、ナイルさんに店を開店させる準備は一人で任せても大丈夫なようだ。
「もう殆ど開店準備は終わっていますね」
「はい。それよりも、先ほどの御老人たちなのですが――」
「ああ。そういえば……」
駐車場の方を見ると、迷彩色のトラックの姿は消えていた。
「帰りました?」
「少し離れたところで見守っていると言っていました」
「そうですか」
「あのゴロウ様。あの御老人たちは、アロイス様に匹敵するほど強い方々だと見受けられました」
「そうですか」
まぁ、ベトナム帰りだとか言っていたし。
俺が昔に見た漫画でもベトナム帰りのスイーパーとかいたからな。
きっとベトナム帰りはすごいんだろう、知らんけど。
「まぁ、とりあえずは、放置しておきましょう」
何かあれば連絡してくるだろうし、何もなくても、帰ると思うし。
今は、店を開店させて運営させていく方が重要。
俺は、レジを打ち、設定をしたあと、店舗を開店させた。
開店させてからしばらく経つと、根室さんが和美ちゃんを連れて出勤してくる。
もちろん恵美さんと和美ちゃんを乗せてきたのは、根室正文さん。
「ではな! 五郎!」
「また――」
俺は、搾りたての瓶に入った牛乳を根室正文さんから貰ったまま、彼が運転する耕運機が去っていくのを見送ったあと、母屋へと戻る。
「雪音さん」
「はーい」
トタトタと廊下の上を歩いてくる雪音さん。
「どうかしましたか?」
「今日は、正文さんが牛乳をくれました。搾りたてです」
「それは、美味しそうですね!」
「ですよね!」
雪音さんが、片手鍋に牛乳を投下し5分ほど温める。
しばらくするといい感じな匂いが漂ってくる。
「おっさん!」
「お、和美ちゃん」
「雪音お姉さん、おじゃまします」
「はーい」
和美ちゃんも、何故か、俺以外には礼儀正しいんだが……。
そして――、どうやら、恵美さんが仕事についたので、和美ちゃんは何時ものように母屋に来たようだ。
「牛乳温めてる!?」
「そう。飲む?」
「飲む!」
「牛乳のいい匂いなの!」
「わんっ!」
どうやら、桜とフーちゃんも引き寄せられた模様。
俺達は、雪音さんが温めてくれた搾りたての牛乳に舌鼓を打つ。
「五郎さん」
「はい?」
「恵美さんと、ナイルさんにも持って行ってあげてください」
「分かりました」
俺は湯飲みには入れられた温められた牛乳をお盆に乗せたまま店の方へと向かう。
そして――、二人にも振る舞った。
「やっぱり、義理父さんの牛乳は美味しいですね」
「ルイズ辺境伯領では、このような牛乳はありませんでした。大変、美味しいですね」
「――え? ルイズ? 辺境?」
何気なくナイルさんが呟いた言葉を聞いた恵美さんが不思議そうに呟く。
「あれです。ナイルさんはヨーロッパ出身なので、牛乳とか珍しいんです」
「え? ヨーロッパって牛乳の本場なのでは?」
「そういう所じゃないところもあるので――」
「そうなんですか……」
良かった。
どうやら、納得してくれたようだ。
あとで異世界の事は、話さないように再度注意しておかないと。
二人が飲んだ湯飲みを母屋に持って行ったあとは、俺は居間で勉強をする。
主にすることは、鉱山関係に関しての勉強。
何せ金鉱山の取り扱い一つで、今後の俺や家族の運命が変わるのだから。
インターネットで、情報を仕入れて勉強をしていると――、
「おっさん、おっさん」
「何だよ……。おっさんは、勉強中なんだよ……」
「くーん、くーん」
「おじちゃん! おじちゃん!」
和美ちゃんしかいなかったのに、いつの間にかフーちゃんと桜まで、和美ちゃんを追って来た。
「どうしたんだ? 2人とも」
「わんっわんっ!」
フーちゃんが、まるで自分の存在をスルーするな! と、言わんばかりに、存在感をアピールしてくる。
俺は仕方なく、フーちゃんを寝かせてお腹を撫でる。
「わふう、わふぅ、わふーう!」
必死に俺の腕に噛みつこうとしてくるが、寝かされている状態でお腹を触りまくっている時点で、犬には、俺の腕を掴むか蹴るくらいしか選択肢はない。
所詮は犬よのう。
「わんわんっ!」
「おじちゃん、フーちゃんが嫌がっているの」
まるで、フーちゃんの気持ちが分かるかのごとく、桜が話しかけてくる。
「そっか」
まぁ、嫌がっているのなら仕方ないな。
俺は、フーちゃんを抱き上げる。
そして気が付く。
「フーちゃんって、雌だったのか……」
「わううう! わんっ! わんっ!」
大激怒したフーちゃんが、空中で回転すると、体を回転させながら突っ込んでくる。
俺は、それを片手で受け止める。
「わんっ!?」
「ふっ、所詮は仔犬。人間様の敵ではない」
俺は、フーちゃんを目一杯! モフってやった。
どうやら、俺の発言がフーちゃんは気にいらなかったらしい。
「だ、大丈夫なのか? 五郎?」
「何がですか?」
「――いや、だから……、その生物は――」
「生物って、ただの犬じゃないですか」
なんで、そんなに表情を青くしているのか。
そんなに犬が苦手なのか?
犬アレルギーなのか?
「犬って……」
「犬ですよ、犬。宮越さんも、そんなに犬とか苦手ですか?」
俺は、宮越さんに答えつつ、肩の上にフーちゃんを載せる。
するとフーちゃんが狙っていたとばかりに犬撫でパンチを放ってくるが、痛くも痒くもない。
「がるるるるっ」
フーちゃん、怒りの連撃。
それら全ては、俺に当たっても何らダメージは発生しない。
少しばかり強い微風が吹いてくるくらいだ。
「ご、五郎……」
「どうかしましたか?」
「本当に、何ともないのか?」
どうやら、俺が犬アレルギーだと思っているらしい。
まったく――、心配性にも程がある。
ベトナム戦争帰りということで、戦闘経験は豊富な感じがする。
なにせ、副隊長のナイルさんを手玉に取ったのだから。
だが、犬が苦手という弱点を抱えているのは、それはそれでどうなのだろう?
まぁ、母屋に来ると犬が苦手なら色々と大変だろうな。
「柳橋さん、宮越さん。護衛は無理しない範囲でしてくれて構いませんから。あと、フーちゃんは母屋に置いてくるので。母屋から離れていて護衛してくれればいいです」
俺は、二人に配慮しつつお願いする。
そして時計を確認しつつ、ナイルさんの方を見て――、
「ナイルさん、もうすぐ開店時間ので、準備をお願いします」
「分かりました。ゴロウ様」
3人を店先の駐車場の放置したまま、俺は母屋へと向かう。
そして3人から離れると、ようやくフーちゃんが落ち着いたのか、俺の肩の上で四肢をだらーんとして置物のようになる。
「まったく……」
うちの犬は、時々、へんなことをするからな。
きちんと躾ないと駄目かも知れない。
ペットは仔犬の内に躾けることが重要だと、どこかのサイトで見た事があるし。
「あら? 五郎さんって……、どうして、フーちゃんと一緒に?」
「雪音さん。それは俺のセリフです。気が付いたら店の屋根の上に登っていたんですよ」
「そうなのですか……。駄目よ! フーちゃん! 怪我したら、大変でしょう!」
「くーん」
「分かったのならいいの」
「わんっ!」
どうして、雪音さんの話は素直にフーちゃんは聞くのか? そこは、色々と疑問が浮かぶが、まぁ、そこはあとで考えるとしよう。
「あ、そういえば、雪音さん」
「はい?」
「柳橋さんと宮越さんが近くでサバイバルゲームするとか言っていました」
「サバイバル? もう還暦をとっくに過ぎたおじいちゃんたちですよね?」
「あれです。男は、いつまでも少年の心を持ちたいみたいな」
「そうですか」
本当のことを言う事もできないので、適当にお茶を濁しておく。
まぁ、本当に必要な事なら、村長から言ってくれるはずだし。
「それじゃ、俺は店を開けてきますので」
「はい。いってらっしゃい」
雪音さんに見送られて、俺は月山雑貨店の軒先に向かった。
「あ、ゴロウ様」
店内に入ると、すでにレジの電源から店内の蛍光灯まで灯りはついていた。
どうやら、ナイルさんに店を開店させる準備は一人で任せても大丈夫なようだ。
「もう殆ど開店準備は終わっていますね」
「はい。それよりも、先ほどの御老人たちなのですが――」
「ああ。そういえば……」
駐車場の方を見ると、迷彩色のトラックの姿は消えていた。
「帰りました?」
「少し離れたところで見守っていると言っていました」
「そうですか」
「あのゴロウ様。あの御老人たちは、アロイス様に匹敵するほど強い方々だと見受けられました」
「そうですか」
まぁ、ベトナム帰りだとか言っていたし。
俺が昔に見た漫画でもベトナム帰りのスイーパーとかいたからな。
きっとベトナム帰りはすごいんだろう、知らんけど。
「まぁ、とりあえずは、放置しておきましょう」
何かあれば連絡してくるだろうし、何もなくても、帰ると思うし。
今は、店を開店させて運営させていく方が重要。
俺は、レジを打ち、設定をしたあと、店舗を開店させた。
開店させてからしばらく経つと、根室さんが和美ちゃんを連れて出勤してくる。
もちろん恵美さんと和美ちゃんを乗せてきたのは、根室正文さん。
「ではな! 五郎!」
「また――」
俺は、搾りたての瓶に入った牛乳を根室正文さんから貰ったまま、彼が運転する耕運機が去っていくのを見送ったあと、母屋へと戻る。
「雪音さん」
「はーい」
トタトタと廊下の上を歩いてくる雪音さん。
「どうかしましたか?」
「今日は、正文さんが牛乳をくれました。搾りたてです」
「それは、美味しそうですね!」
「ですよね!」
雪音さんが、片手鍋に牛乳を投下し5分ほど温める。
しばらくするといい感じな匂いが漂ってくる。
「おっさん!」
「お、和美ちゃん」
「雪音お姉さん、おじゃまします」
「はーい」
和美ちゃんも、何故か、俺以外には礼儀正しいんだが……。
そして――、どうやら、恵美さんが仕事についたので、和美ちゃんは何時ものように母屋に来たようだ。
「牛乳温めてる!?」
「そう。飲む?」
「飲む!」
「牛乳のいい匂いなの!」
「わんっ!」
どうやら、桜とフーちゃんも引き寄せられた模様。
俺達は、雪音さんが温めてくれた搾りたての牛乳に舌鼓を打つ。
「五郎さん」
「はい?」
「恵美さんと、ナイルさんにも持って行ってあげてください」
「分かりました」
俺は湯飲みには入れられた温められた牛乳をお盆に乗せたまま店の方へと向かう。
そして――、二人にも振る舞った。
「やっぱり、義理父さんの牛乳は美味しいですね」
「ルイズ辺境伯領では、このような牛乳はありませんでした。大変、美味しいですね」
「――え? ルイズ? 辺境?」
何気なくナイルさんが呟いた言葉を聞いた恵美さんが不思議そうに呟く。
「あれです。ナイルさんはヨーロッパ出身なので、牛乳とか珍しいんです」
「え? ヨーロッパって牛乳の本場なのでは?」
「そういう所じゃないところもあるので――」
「そうなんですか……」
良かった。
どうやら、納得してくれたようだ。
あとで異世界の事は、話さないように再度注意しておかないと。
二人が飲んだ湯飲みを母屋に持って行ったあとは、俺は居間で勉強をする。
主にすることは、鉱山関係に関しての勉強。
何せ金鉱山の取り扱い一つで、今後の俺や家族の運命が変わるのだから。
インターネットで、情報を仕入れて勉強をしていると――、
「おっさん、おっさん」
「何だよ……。おっさんは、勉強中なんだよ……」
「くーん、くーん」
「おじちゃん! おじちゃん!」
和美ちゃんしかいなかったのに、いつの間にかフーちゃんと桜まで、和美ちゃんを追って来た。
「どうしたんだ? 2人とも」
「わんっわんっ!」
フーちゃんが、まるで自分の存在をスルーするな! と、言わんばかりに、存在感をアピールしてくる。
俺は仕方なく、フーちゃんを寝かせてお腹を撫でる。
「わふう、わふぅ、わふーう!」
必死に俺の腕に噛みつこうとしてくるが、寝かされている状態でお腹を触りまくっている時点で、犬には、俺の腕を掴むか蹴るくらいしか選択肢はない。
所詮は犬よのう。
「わんわんっ!」
「おじちゃん、フーちゃんが嫌がっているの」
まるで、フーちゃんの気持ちが分かるかのごとく、桜が話しかけてくる。
「そっか」
まぁ、嫌がっているのなら仕方ないな。
俺は、フーちゃんを抱き上げる。
そして気が付く。
「フーちゃんって、雌だったのか……」
「わううう! わんっ! わんっ!」
大激怒したフーちゃんが、空中で回転すると、体を回転させながら突っ込んでくる。
俺は、それを片手で受け止める。
「わんっ!?」
「ふっ、所詮は仔犬。人間様の敵ではない」
俺は、フーちゃんを目一杯! モフってやった。
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