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第233話 それぞれの思惑2
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「――ち、違うから! 勘違いしないでっ! アリア!」
「え? ――で、でも!」
「だから違うから!」
「月山様!」
「えっと……。あれだ……。エメラスさんの容体が気になって見に来たら、シャワーから出てきたエメラスさんとばったりと会ったって感じです」
とりあえず、これ以上、誤解を招かないようにすることが先決だと思い、ありのまま起こったことを口にする。
「そ、それって……、裸のエメラス様を見たという?」
「――いや、バスローブを羽織っていたから……」
俺の言葉に、深く溜息をつくアリアさん。
「エメラス様、本当の事ですか?」
「ええ。本当だから――、だから、大事にはしないで」
「…………分かりました」
ようやく彼女は――、アリアさんは落ち着いたのか頷く。
そして――、
「もしかして、エメラス様のことをしつこく聞いたのは容態のことだったのですか?」
俺は頷く。
「ああ。もし、俺の領地で受け入れている貴賓に何かあればエルム王国との国交に問題が生じるからな。それだけは避けたい。だから、秘密裏にことを進めたかった」
「そうなのですか……」
どうやら納得してくれたようだ。
「とりあえず、体調に問題が無いのなら、王女殿下と一緒に洋服をカタログから選んでくれ」
俺はエメラスの方を見て話しかける。
「分かったわ。すぐに向かうから。アリア、手伝ってもらえる?」
「分かりました」
俺と入れ替わりでエメラスが使っている客室へとアリアは入っていく。
そして扉が閉まったところで、俺は溜息をついた。
どうして、面倒な方向に話が進むのか。
それでも何とか誤解なく問題が解決したことに俺は安堵した。
「とりあえず、あれだな……」
俺は雪音さんと、ルイーズ王女殿下が居る部屋の前まで移動する。
――コンコン
「五郎です」
「はい。どうぞ――」
中からルイーズ王女殿下の声が聞こえてくる。
立場的には、ルイーズ王女殿下の方が上だが、正妻としては雪音さんの方が上だと思うので、何となく微妙な気がしながら扉を開ける。
すると、雪音さんとルイーズ王女殿下は、二人でパンフレットを見ながら談話していたようで、二人して俺に視線を向けてきた。
「今から、エメラスさんも来るので、アリアさんも含めて洋服を選んでいてください」
「五郎さんは?」
「自分は一回、目黒さんのところに行ってきます」
「あ……」
そこまでで雪音さんは俺が何をしたいのか察してくれたようだ。
「分かりました。それでは、五郎さんが戻ってくるまで待っていますね」
「はい。お願いします」
雪音さんに迎賓館でのことについては任せたあと、俺は迎賓館から出たあと、車に乗り込みエンジンをかけて目黒さんの家に向かう。
目黒さんの家に到着したあとは玄関の戸を叩く。
「俺です」
「俺じゃ、わからんわ! このバカものが!」
相変わらず口が悪い目黒さんの爺さんが出てくる。
すると、近くをキョロキョロと見渡す。
「今日は、桜ちゃんは来ておらんのか?」
「今日は、店に居ます」
「なんじゃー」
すごく落胆する目黒さん。
どうやら、桜のことを随分と気にかけてくれているようだ。
すぐに工房に通される。
そして、事務用の椅子を進められて座ったところで――、
「――で? 今日は、何の用じゃ?」
単刀直入に聞いてくる目黒さん。
「金の装飾品を販売しても足のつかない買取店を教えてください」
「ふむ。大方、新しい店の建築費といったところか」
「知っているのですか」
「当たり前だ。村社会を舐めるでない。何か、新しいことをしようとすれば、必ず情報は出回るからの」
「そうでした」
村ネットワークを忘れていた。
目黒さんは、事務机に置かれているノートパソコンを起動し、しばらく操作したかと思うと、立ち上がる。
そして、プリンターから出力されたプリント用紙を手にすると、俺に差し出してきた。
受け取り視線を落せば、金の買い取り店舗や質屋の名前、住所、店舗連絡先番号の一覧がズラっと、プリントされていた。
「コレが、そうですか……」
「うむ。そこでの換金ならば、足が付くことは無いと思うが、あまりにも多い量を売るのは止した方がよい。税関も馬鹿ではないからの」
「分かりました。気を付けます」
目黒さんから受け取った用紙を畳んでポケットの中に入れる。
「五郎」
「はい?」
「そろそろATMを設置しておいた方がよいぞ?」
「ATMですか……」
「うむ。郵政民営化に伴って、村から簡易郵便局が無くなったからの。銀行もないし、農協も隣の町に移動しおった。ATMがあれば利用客は増えると思うぞ?」
「……考えておきます」
実際にATMの誘致となると、それなりの額が必要にあることは、以前に調べて分かっているが、いまの資産と運用状況ならATMを設置することは可能だ。
一度、雪音さんと話し合うのもいいかもな。
「うむ。気をつけてな」
「目黒さんも、お体には気を付けてください」
話を終えた足で、俺は迎賓館に戻る。
往復で1時間ほどかかってしまったが、迎賓館に戻り、雪音さん達が居るであろう部屋にノックをしてから入ると、
「お帰りなさい、五郎さん。話し合いは終わりましたか?」
「はい。それで洋服の方は?」
「あらかた決まりました。あとは、発注するだけです」
「そうですか」
何はともあれ洋服購入の目途が立ったことは良かったことだ。
「月山様」
俺と雪音さんの話が終わったところで――、ルイーズ王女殿下が話しかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
「いえ。とくに、問題はありません。ただ、かなりの洋服を選んでしまったのですが……、問題はないのかなと――」
「ルイーズ王女殿下。そのような事は気にしないでください。今回は、異世界に来て頂いたお礼ということで承ってください」
「……分かりました。ありがたく頂戴いたします」
「エメラスさんは、どうでしたか?」
「悪くはないわ」
ツンデレさんのかな?
「アリアさんは、どうですか? いい服などは見つかりましたか?」
「私は、おしゃれをすると言ったことはありませんでしたので、戸惑ってしまいましたけど……、雪音様にアドバイスを頂きまして、良い物に恵まれたと思います」
「そうですか。それは、よかったです。――では、本日は、これでお暇させていただきます」
「――で、では! 私が、玄関までお送りします」
立ち上がったエメラスさんは、言葉通り玄関まで送ってくれた。
そのあとは、車で雪音さんと一緒に店まで戻る。
母屋の駐車スペースに車を停めたところで車を降りる。
「そういえば、五郎さん」
「どうかしましたか?」
「――いえ。とくにどうということはないのですが……、私のことを雪音と呼び捨てにされてしまうと――」
「申し訳ない。あの場は、ああした方がいいと思ったのですが――」
「まぁ! そうなのですね! 私としては、『さん』付けよりも呼び捨てにしてもらった方が嬉しいです。名前を呼ばれるという事は、自身の存在を肯定されているようなモノですから」
「そうですか」
俺には、その辺は理解できないが、その辺の考えは女性特有なのかも知れないな。
「それでは、五郎さん。私は、洋服の発注をしてきます。早めに発注しておかないと、色々と不都合が出てくると思いますので」
「そうですね。手直しとか出てきたら厄介ですからね」
「はい」
玄関前で分かれたあと、俺は店に向かう。
母屋に戻る前に、店前の道路を通ったときに気が付いていたが、向かい側の駐車場には大量のパレットが山積みになっていた。
「月山様!」
「あ、藤和さん」
「一応、全ての塩と香辛料の荷下ろしが先ほど終わりました」
「え? ――で、でも!」
「だから違うから!」
「月山様!」
「えっと……。あれだ……。エメラスさんの容体が気になって見に来たら、シャワーから出てきたエメラスさんとばったりと会ったって感じです」
とりあえず、これ以上、誤解を招かないようにすることが先決だと思い、ありのまま起こったことを口にする。
「そ、それって……、裸のエメラス様を見たという?」
「――いや、バスローブを羽織っていたから……」
俺の言葉に、深く溜息をつくアリアさん。
「エメラス様、本当の事ですか?」
「ええ。本当だから――、だから、大事にはしないで」
「…………分かりました」
ようやく彼女は――、アリアさんは落ち着いたのか頷く。
そして――、
「もしかして、エメラス様のことをしつこく聞いたのは容態のことだったのですか?」
俺は頷く。
「ああ。もし、俺の領地で受け入れている貴賓に何かあればエルム王国との国交に問題が生じるからな。それだけは避けたい。だから、秘密裏にことを進めたかった」
「そうなのですか……」
どうやら納得してくれたようだ。
「とりあえず、体調に問題が無いのなら、王女殿下と一緒に洋服をカタログから選んでくれ」
俺はエメラスの方を見て話しかける。
「分かったわ。すぐに向かうから。アリア、手伝ってもらえる?」
「分かりました」
俺と入れ替わりでエメラスが使っている客室へとアリアは入っていく。
そして扉が閉まったところで、俺は溜息をついた。
どうして、面倒な方向に話が進むのか。
それでも何とか誤解なく問題が解決したことに俺は安堵した。
「とりあえず、あれだな……」
俺は雪音さんと、ルイーズ王女殿下が居る部屋の前まで移動する。
――コンコン
「五郎です」
「はい。どうぞ――」
中からルイーズ王女殿下の声が聞こえてくる。
立場的には、ルイーズ王女殿下の方が上だが、正妻としては雪音さんの方が上だと思うので、何となく微妙な気がしながら扉を開ける。
すると、雪音さんとルイーズ王女殿下は、二人でパンフレットを見ながら談話していたようで、二人して俺に視線を向けてきた。
「今から、エメラスさんも来るので、アリアさんも含めて洋服を選んでいてください」
「五郎さんは?」
「自分は一回、目黒さんのところに行ってきます」
「あ……」
そこまでで雪音さんは俺が何をしたいのか察してくれたようだ。
「分かりました。それでは、五郎さんが戻ってくるまで待っていますね」
「はい。お願いします」
雪音さんに迎賓館でのことについては任せたあと、俺は迎賓館から出たあと、車に乗り込みエンジンをかけて目黒さんの家に向かう。
目黒さんの家に到着したあとは玄関の戸を叩く。
「俺です」
「俺じゃ、わからんわ! このバカものが!」
相変わらず口が悪い目黒さんの爺さんが出てくる。
すると、近くをキョロキョロと見渡す。
「今日は、桜ちゃんは来ておらんのか?」
「今日は、店に居ます」
「なんじゃー」
すごく落胆する目黒さん。
どうやら、桜のことを随分と気にかけてくれているようだ。
すぐに工房に通される。
そして、事務用の椅子を進められて座ったところで――、
「――で? 今日は、何の用じゃ?」
単刀直入に聞いてくる目黒さん。
「金の装飾品を販売しても足のつかない買取店を教えてください」
「ふむ。大方、新しい店の建築費といったところか」
「知っているのですか」
「当たり前だ。村社会を舐めるでない。何か、新しいことをしようとすれば、必ず情報は出回るからの」
「そうでした」
村ネットワークを忘れていた。
目黒さんは、事務机に置かれているノートパソコンを起動し、しばらく操作したかと思うと、立ち上がる。
そして、プリンターから出力されたプリント用紙を手にすると、俺に差し出してきた。
受け取り視線を落せば、金の買い取り店舗や質屋の名前、住所、店舗連絡先番号の一覧がズラっと、プリントされていた。
「コレが、そうですか……」
「うむ。そこでの換金ならば、足が付くことは無いと思うが、あまりにも多い量を売るのは止した方がよい。税関も馬鹿ではないからの」
「分かりました。気を付けます」
目黒さんから受け取った用紙を畳んでポケットの中に入れる。
「五郎」
「はい?」
「そろそろATMを設置しておいた方がよいぞ?」
「ATMですか……」
「うむ。郵政民営化に伴って、村から簡易郵便局が無くなったからの。銀行もないし、農協も隣の町に移動しおった。ATMがあれば利用客は増えると思うぞ?」
「……考えておきます」
実際にATMの誘致となると、それなりの額が必要にあることは、以前に調べて分かっているが、いまの資産と運用状況ならATMを設置することは可能だ。
一度、雪音さんと話し合うのもいいかもな。
「うむ。気をつけてな」
「目黒さんも、お体には気を付けてください」
話を終えた足で、俺は迎賓館に戻る。
往復で1時間ほどかかってしまったが、迎賓館に戻り、雪音さん達が居るであろう部屋にノックをしてから入ると、
「お帰りなさい、五郎さん。話し合いは終わりましたか?」
「はい。それで洋服の方は?」
「あらかた決まりました。あとは、発注するだけです」
「そうですか」
何はともあれ洋服購入の目途が立ったことは良かったことだ。
「月山様」
俺と雪音さんの話が終わったところで――、ルイーズ王女殿下が話しかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
「いえ。とくに、問題はありません。ただ、かなりの洋服を選んでしまったのですが……、問題はないのかなと――」
「ルイーズ王女殿下。そのような事は気にしないでください。今回は、異世界に来て頂いたお礼ということで承ってください」
「……分かりました。ありがたく頂戴いたします」
「エメラスさんは、どうでしたか?」
「悪くはないわ」
ツンデレさんのかな?
「アリアさんは、どうですか? いい服などは見つかりましたか?」
「私は、おしゃれをすると言ったことはありませんでしたので、戸惑ってしまいましたけど……、雪音様にアドバイスを頂きまして、良い物に恵まれたと思います」
「そうですか。それは、よかったです。――では、本日は、これでお暇させていただきます」
「――で、では! 私が、玄関までお送りします」
立ち上がったエメラスさんは、言葉通り玄関まで送ってくれた。
そのあとは、車で雪音さんと一緒に店まで戻る。
母屋の駐車スペースに車を停めたところで車を降りる。
「そういえば、五郎さん」
「どうかしましたか?」
「――いえ。とくにどうということはないのですが……、私のことを雪音と呼び捨てにされてしまうと――」
「申し訳ない。あの場は、ああした方がいいと思ったのですが――」
「まぁ! そうなのですね! 私としては、『さん』付けよりも呼び捨てにしてもらった方が嬉しいです。名前を呼ばれるという事は、自身の存在を肯定されているようなモノですから」
「そうですか」
俺には、その辺は理解できないが、その辺の考えは女性特有なのかも知れないな。
「それでは、五郎さん。私は、洋服の発注をしてきます。早めに発注しておかないと、色々と不都合が出てくると思いますので」
「そうですね。手直しとか出てきたら厄介ですからね」
「はい」
玄関前で分かれたあと、俺は店に向かう。
母屋に戻る前に、店前の道路を通ったときに気が付いていたが、向かい側の駐車場には大量のパレットが山積みになっていた。
「月山様!」
「あ、藤和さん」
「一応、全ての塩と香辛料の荷下ろしが先ほど終わりました」
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