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第189話 ワンチューバー爆誕っ!
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「ああ、なるほど。それで……」
「代わりにやっているってことだな。まぁ、エアコンの取り付けは単価がいいからな」
「――ん? つまり修理は……」
「してないな」
「壊れたら交換みたいな?」
「古ければ交換だが、新しい内に故障ならメーカーだな」
「なるほど……」
どうやら面倒な部分はメーカーに放り投げているようだ。
まぁ、最近のエアコンの故障は基板か配管の問題だからな。
「――で、今日はリフォームの見積もりってことで聞いていたが……、まさか……とは思うが……」
洋館内を見渡しながら、踝さんが言葉を一度切る。
「はい。この洋館内を日本の大使館のような内装にしたいと考えているんですが……」
「五郎」
「はい?」
「ハッキリ言うぞ?」
「――?」
「アホほど金が掛かるから止めておけ」
査定もせずに踝さんが忠告してくる。
「それが、どうしても必要で」
「ここって、第三セクターがバブル崩壊と同時に建築中断して捨てた建物だろう? それを手入れするとか正気か?」
「正気かどうかと聞かれると正気ですね」
「お前、前に、お金が無いって言っていただろ? 店の方も儲かってなさそうだし。お金は、大丈夫なのか? 諸文の奥さんも雇っているんだろ?」
「そうですね。まぁ、資金においては何とか都合をつけようかと」
「そうか……。どうしても必要なことなんだな?」
コクリと首肯すると、踝さんは溜息をつく。
「しかし……、まぁ……、これだけの建物をリフォームするとなると……。――で、大使館のようにリフォームするって言っても、俺は大使館の内装とか知らないぞ?」
「その資料については私が説明しますので」
二人で話をしていると階段を下りてきた藤和さんと、村長。
「問屋さんか」
「はい。お久しぶりです。踝様」
「様づけは止してくれ。それより、ここのリフォームを決めたのは村長か? それともアンタか?」
「どちらかと言えば、村長の紹介です」
あっさりと村長が、ここの建物を紹介したと踝さんに暴露する藤和さん。
「村長、ここの建物をリフォームするには概算でも1億近くかかりますよ? それでも良いんですか?」
「うむ。緊急なことだからな。何とか手配をしてほしい。出来れば一ヵ月以内に」
村長のその言葉に「一ヵ月!?」と、踝さんが口を大きく開けた。
「それはいくらなんでも無理だ」
「そこを何とかならんか?」
「無理な物は無理だ。中途半端な仕事なら、俺は仕事を受けるような事はしない」
踝さんは、首を縦に振らない。
「五郎。お前も、中途半端な仕事を引き受けるのは、業者としての信頼を捨てる行為だというのは分かっているよな?」
「ですよね」
まぁ、良い意味でも悪い意味でも、踝健さんは職人肌であり、俺の店をリフォームしてくれた時も、きちんと時間をかけて工事をしてくれた。
その事には感謝している。
――なので、俺としては、一ヵ月という作業で、洋館全体のリフォームが無理だと、踝さんが言うのなら、それに従うのみ。
餅は餅屋にってやつだ。
「それは、困ったな」
村長が唸る。
それを見て、駄目押しとばかりに「まぁ、うちの会社じゃ中途半端な仕事は受けない」と、踝さんが口にする。
「人海戦術などでは?」
「それは無理だ。うちのような小さな工務店でも大企業でも、まずは内装工事までに図面を引くことになる。そのあとに図面から資材手配を始めるからな。それと同時に作業員を手配するという形になるから、どんなに急いでも、この大きさの洋館をリフォームするなら、早くて3ヵ月。遅くて半年は必要だな」
「……なるほど」
さすがに畑違いの分野の事に関しては藤和さんも強くは出られないのか、職人である踝さんの言葉に頷くしかできない。
「――で、どうするんだ?」
「そうですね。それでしたら、内装は必要ありませんので、中を第三者が見ても問題ないように綺麗に掃除して頂くことは可能でしょうか?」
「――ん? それなら、俺の所に頼む必要はないだろう?」
「いえ。内装をしていらっしゃるのでしたら、付き合いのある清掃業者に心当たりがあるのでは……、と、思いまして」
「ああ、それならいいが……。分かった、少し待っていてくれ」
踝さんはズボンから携帯を取り出すと直ぐに電話をかける。
そして、会話が終わったようで――、
「すぐに清掃業者が、現場を見にくるようだが時間は大丈夫か?」
「時間はありますから」
「そっか。それじゃ、業者名は共同クリーニングって名前だからな。担当者は青木(あおき)って奴だから」
「分かりました。何か、無駄足を踏ませてしまって」
「いいってことよ。それより、何か考えがあるんだろう? きちんと仕事を振れるようなら、また電話をくれよ」
その踝さんの言葉に俺は頷く。
そのあとは、踝さんは車に乗り帰っていった。
車が走り去っていくのを見送ったあと
「藤和さん」
「何でしょうか?」
「クリーニングをするのは分かるんですけど、リフォームなどしなくて良かったんですか? 時間がないと」
そう、時間がないなら、すぐにでも作業を開始して貰わないといけないのに、帰して良かったのか? と思ってしまうが……。
「どうせ、間に合いませんから」
「それでも、多少は形に……って、踝さんは納得しませんよね」
「そうですね。ですから、発想の逆転をします」
「発想の逆転?」
「はい」
俺の疑問に藤和さんが頷く。
「内装作業が間に合わないのでしたら、建物を清掃して向こうの王族を迎い入れましょう」
「――え? それだと……」
相手は歓迎されてないと立腹するのでは……。
「向こうから来られる王族の方に、直接、聞きましょう」
「直接?」
「はい。どう建物内の内装をしたいのかを聞きながら行えばエルム王国の王族の方が望むように内装工事が出来ます。多少、誤解を生むかも知れませんが、中途半端に建物を用意するよりも、ずっといいと思います」
「ああ、なるほど……」
俺は頷く。
それに、村長は「だが、いくつか使える部屋は用意しておいた方がいいな」と、アドバイスしてくる。
――大使館候補の建物を訪れた翌朝。
何時ものように、雪音さんと、俺と、桜とフーちゃんと朝食を摂っている。
フーちゃんは、今日はポークビーフを食べている。
ちなみに俺達の食事は、もうすぐ夏も本来なら終わりなはずなのだが、まだ暑いという事もあり、ざるうどんである。
「犬の方が良いモノを食べている気がする」
心の中で、ドックフードと水だけ与えておけばいいのに……と、俺は呟きつつフーちゃんを見ていると、「うーっ!」と唸ってきた。
どうやら、犬らしく、人間の感情の機微に聡いらしい。
まったく犬のくせに……。
「おじちゃん、おじちゃん!」
心の中で突っ込んでいると、俺の隣に座っていた姪っ子の桜が話しかけてくる。
しかも目をキラキラとさせていて、『大事な話があるの!』みたいな表情をしていた。
「――ん? どうした?」
「えっとね! フーちゃんが、すごいの!」
「フーちゃんが?」
「うん!」
桜が差し出してくるスマートフォンは、赤い革ケースに入っており、ピンク色のウサギの刺繍が施されていた。
以前は、裸のまま桜に渡したモノだが、何時の間にかケースを買ってデコレーションしたらしい。
「ケース買ったのか」
「ううん。雪音お姉ちゃんが作ってくれたの!」
「そうなのか。雪音さん、すいません」
「いいえ。落として壊れてしまったら困りますから」
「そのウサギね! 日曜日の朝6時から魔法少女キングドラゴンに出てくるマスコットキャラのウサミミボンバーってキャラなの!」
「代わりにやっているってことだな。まぁ、エアコンの取り付けは単価がいいからな」
「――ん? つまり修理は……」
「してないな」
「壊れたら交換みたいな?」
「古ければ交換だが、新しい内に故障ならメーカーだな」
「なるほど……」
どうやら面倒な部分はメーカーに放り投げているようだ。
まぁ、最近のエアコンの故障は基板か配管の問題だからな。
「――で、今日はリフォームの見積もりってことで聞いていたが……、まさか……とは思うが……」
洋館内を見渡しながら、踝さんが言葉を一度切る。
「はい。この洋館内を日本の大使館のような内装にしたいと考えているんですが……」
「五郎」
「はい?」
「ハッキリ言うぞ?」
「――?」
「アホほど金が掛かるから止めておけ」
査定もせずに踝さんが忠告してくる。
「それが、どうしても必要で」
「ここって、第三セクターがバブル崩壊と同時に建築中断して捨てた建物だろう? それを手入れするとか正気か?」
「正気かどうかと聞かれると正気ですね」
「お前、前に、お金が無いって言っていただろ? 店の方も儲かってなさそうだし。お金は、大丈夫なのか? 諸文の奥さんも雇っているんだろ?」
「そうですね。まぁ、資金においては何とか都合をつけようかと」
「そうか……。どうしても必要なことなんだな?」
コクリと首肯すると、踝さんは溜息をつく。
「しかし……、まぁ……、これだけの建物をリフォームするとなると……。――で、大使館のようにリフォームするって言っても、俺は大使館の内装とか知らないぞ?」
「その資料については私が説明しますので」
二人で話をしていると階段を下りてきた藤和さんと、村長。
「問屋さんか」
「はい。お久しぶりです。踝様」
「様づけは止してくれ。それより、ここのリフォームを決めたのは村長か? それともアンタか?」
「どちらかと言えば、村長の紹介です」
あっさりと村長が、ここの建物を紹介したと踝さんに暴露する藤和さん。
「村長、ここの建物をリフォームするには概算でも1億近くかかりますよ? それでも良いんですか?」
「うむ。緊急なことだからな。何とか手配をしてほしい。出来れば一ヵ月以内に」
村長のその言葉に「一ヵ月!?」と、踝さんが口を大きく開けた。
「それはいくらなんでも無理だ」
「そこを何とかならんか?」
「無理な物は無理だ。中途半端な仕事なら、俺は仕事を受けるような事はしない」
踝さんは、首を縦に振らない。
「五郎。お前も、中途半端な仕事を引き受けるのは、業者としての信頼を捨てる行為だというのは分かっているよな?」
「ですよね」
まぁ、良い意味でも悪い意味でも、踝健さんは職人肌であり、俺の店をリフォームしてくれた時も、きちんと時間をかけて工事をしてくれた。
その事には感謝している。
――なので、俺としては、一ヵ月という作業で、洋館全体のリフォームが無理だと、踝さんが言うのなら、それに従うのみ。
餅は餅屋にってやつだ。
「それは、困ったな」
村長が唸る。
それを見て、駄目押しとばかりに「まぁ、うちの会社じゃ中途半端な仕事は受けない」と、踝さんが口にする。
「人海戦術などでは?」
「それは無理だ。うちのような小さな工務店でも大企業でも、まずは内装工事までに図面を引くことになる。そのあとに図面から資材手配を始めるからな。それと同時に作業員を手配するという形になるから、どんなに急いでも、この大きさの洋館をリフォームするなら、早くて3ヵ月。遅くて半年は必要だな」
「……なるほど」
さすがに畑違いの分野の事に関しては藤和さんも強くは出られないのか、職人である踝さんの言葉に頷くしかできない。
「――で、どうするんだ?」
「そうですね。それでしたら、内装は必要ありませんので、中を第三者が見ても問題ないように綺麗に掃除して頂くことは可能でしょうか?」
「――ん? それなら、俺の所に頼む必要はないだろう?」
「いえ。内装をしていらっしゃるのでしたら、付き合いのある清掃業者に心当たりがあるのでは……、と、思いまして」
「ああ、それならいいが……。分かった、少し待っていてくれ」
踝さんはズボンから携帯を取り出すと直ぐに電話をかける。
そして、会話が終わったようで――、
「すぐに清掃業者が、現場を見にくるようだが時間は大丈夫か?」
「時間はありますから」
「そっか。それじゃ、業者名は共同クリーニングって名前だからな。担当者は青木(あおき)って奴だから」
「分かりました。何か、無駄足を踏ませてしまって」
「いいってことよ。それより、何か考えがあるんだろう? きちんと仕事を振れるようなら、また電話をくれよ」
その踝さんの言葉に俺は頷く。
そのあとは、踝さんは車に乗り帰っていった。
車が走り去っていくのを見送ったあと
「藤和さん」
「何でしょうか?」
「クリーニングをするのは分かるんですけど、リフォームなどしなくて良かったんですか? 時間がないと」
そう、時間がないなら、すぐにでも作業を開始して貰わないといけないのに、帰して良かったのか? と思ってしまうが……。
「どうせ、間に合いませんから」
「それでも、多少は形に……って、踝さんは納得しませんよね」
「そうですね。ですから、発想の逆転をします」
「発想の逆転?」
「はい」
俺の疑問に藤和さんが頷く。
「内装作業が間に合わないのでしたら、建物を清掃して向こうの王族を迎い入れましょう」
「――え? それだと……」
相手は歓迎されてないと立腹するのでは……。
「向こうから来られる王族の方に、直接、聞きましょう」
「直接?」
「はい。どう建物内の内装をしたいのかを聞きながら行えばエルム王国の王族の方が望むように内装工事が出来ます。多少、誤解を生むかも知れませんが、中途半端に建物を用意するよりも、ずっといいと思います」
「ああ、なるほど……」
俺は頷く。
それに、村長は「だが、いくつか使える部屋は用意しておいた方がいいな」と、アドバイスしてくる。
――大使館候補の建物を訪れた翌朝。
何時ものように、雪音さんと、俺と、桜とフーちゃんと朝食を摂っている。
フーちゃんは、今日はポークビーフを食べている。
ちなみに俺達の食事は、もうすぐ夏も本来なら終わりなはずなのだが、まだ暑いという事もあり、ざるうどんである。
「犬の方が良いモノを食べている気がする」
心の中で、ドックフードと水だけ与えておけばいいのに……と、俺は呟きつつフーちゃんを見ていると、「うーっ!」と唸ってきた。
どうやら、犬らしく、人間の感情の機微に聡いらしい。
まったく犬のくせに……。
「おじちゃん、おじちゃん!」
心の中で突っ込んでいると、俺の隣に座っていた姪っ子の桜が話しかけてくる。
しかも目をキラキラとさせていて、『大事な話があるの!』みたいな表情をしていた。
「――ん? どうした?」
「えっとね! フーちゃんが、すごいの!」
「フーちゃんが?」
「うん!」
桜が差し出してくるスマートフォンは、赤い革ケースに入っており、ピンク色のウサギの刺繍が施されていた。
以前は、裸のまま桜に渡したモノだが、何時の間にかケースを買ってデコレーションしたらしい。
「ケース買ったのか」
「ううん。雪音お姉ちゃんが作ってくれたの!」
「そうなのか。雪音さん、すいません」
「いいえ。落として壊れてしまったら困りますから」
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