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第139話 イベント準備も佳境
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日付は、8月下旬に差し掛かった事で、日が落ちるのも早くなり――、周囲にあるのは何時も街灯だけあったが――、今は明日の猟友会の集まりに向けて幾つものテントや、長椅子が置かれていることもあり少しばかり雑多な様相を見せていた。
「今日までお疲れ様です」
明日の猟友会の集まり――、その作業が終わったあとで俺は踝さん以下――、手伝ってくれた作業員の方に労いの言葉をかける。
「皆さんのおかげで、何とかイベントまで漕ぎつける事が出来ました。明日、良ければ見に来て頂ければ幸いです」
俺は頭を下げる。
実際、かなりの出費ではあった。
ただ、それだけの成果を――、夜遅くまで作業を行い職人の方々は期日どおり間に合わせてくれたのだから、感謝してもしきれない。
「困った時はお互い様だ。また何かあったら声をかけてくれや」
そう返してきてくれるのは、隣の村で工務店を経営している阿武隈社長。
年齢は60歳前後の背は低いが肩幅が広い職人さんでもある。
踝さんの話だと、彼が声をかけてくれたこともあり、多くの職人が集まったとのこと。
「はい。ぜひ! その時は、よろしくお願いします」
撤収準備を進めていく職人さん達を労ったあと、俺は田口村長に近寄る。
「田口村長」
「話は終わったのか?」
「はい」
「そうか。――それじゃ、明日のイベントに関してだが――」
田口村長の言葉に長椅子に座っていた男達が立ち上がる。
誰もが年齢としては40代前後から後半と言ったところだろう。
「明日の猟友会の山追イベントについて説明はしてある。あとは、明日の主催者グループを紹介しておこう」
そう話す田口村長。
話しが一区切りついたところで立ち上がった男達が名刺を取り出す。
俺も名刺を取り出しつつ交換していく。
「北海道猟友会の長倉信也です」
「青森県猟友会の松原健介です」
「岩手県猟友会の藤堂十郎です」
「秋田県猟友会の武田平八です」
「山形県猟友会の岩村奏太です」
「宮城県猟友会の香堂常草です」
誰もが厳つい顔と、鍛えられた肉体を持っていて――、それらが服の上からでも分かってしまう。
「村長?」
「どうかしたのか?」
「えっと皆さん、何か特別なスポーツでも?」
「スポーツと言うより、全員が元・陸上自衛隊に所属していたからの」
「そ、そうですか……」
「ちなみに儂は、大日本猟友会の代表理事会長というのは、五郎は知っておるの?」
「――え? そうなんですか?」
それは初耳だ。
だが――、こんな村で毎年、猟友会の集まりを決行している事を考えると代表理事会長というのも納得が出来る所だ。
たしか、大日本猟友会の下に各支部――、都道府県ごとの猟友会組織があって構成数は合計で13万人を超えていたはず。
その猟友会の理事長だったとは……。
人は見かけによらないというか――。
「まさか五郎は知らなかったのか?」
「はい……」
田口村長は少しだけ思案した表情で頷いたあと。
「とりあえず明日のことに関しては、用意された的を撃つという方向性で話はしておいた。警察への許可も取ってあるから、そこは安心してくれていい。あとは――、例の件は大丈夫なのか?」
例の件というのは異世界人を連れてくるという話だと言うのは分かったが、そこらへんは藤和さんが後で来るので、そのあと異世界に行ってからの話し合いになる。
大丈夫なのかどうかは、その話し合いの結果次第という事になるので頷くことは出来ないが――、周りに人が居る状態で詳しい話をするのも避けられる。
「大丈夫です」
「そうか。それじゃ明日の事に関しては、儂に任せてくれればいい」
「はい! あと皆様もご協力のほど宜しくお願いします」
俺は各都道府県支部の責任者の方々に頭を下げる。
さて――、あとは異世界の王族の出方次第か……。
明日のイベントの作業をしていた工務店の方々の撤収が終わり、現在――、店番は俺だけとなっていた。
もちろん、午後8時を過ぎてからお客は来ていない。
まぁ、おかげで商品を棚に並べる事とレジ打ちを一人で賄えるからいい。
ただ――、こう何時間もお客が来ないと精神的にだらけてしまうのは否めない。
「――んっ!」
さすがに多くの作業員が商品を購入してくれたこともあり、商品を並べる作業は一人は大変だった。
おかげで腰が……。
「もう年かな……」
40歳を超えてから体の衰えを感じるようになってきた。
やはり、有名な戦国武将が言っていた『人生40年』理論は少し当たっているような気がする。
「――いや、桜を成人させるまでは!」
思わずネガティブな発想が出来てきてしまった事を――、頭を振るう事で払拭していた所で店舗の来客を知らせるチャイムが鳴る。
「こんな時間にお客とは……」
思わず珍しいな? と、思いつつも立ち上がり入口へと視線を向けると、大型のトラックが何台も駐車場に入ってくるのが見えた。
「――ん? どういう……」
店舗から出て駐車場に停まっていくトラックを念のために見にいくと、駐車場には既にいつも見慣れた車が停まっている事に気が付く。
「月山様」
「ひゃい!」
いきなり後ろから声をかけられたことで少しだけビックリしつつ振り向く。
そこには黒のクリップボードを手に持つ藤和さんの姿が!
「……申し訳ありません。後ろから声をかけてしまいまして……」
申し訳なさそうに頭を下げてくる藤和さん。
「いえ。こちらこそ――」
思わず目を背けながら俺は言葉を返す。
いつもなら、こんな失態を犯す事はないのに……。
せめて言い訳をさせて頂けるのなら、店舗の利用客が殆ど無く、品出しを半ば機械的に行っていたことで気が緩んで変に声を上げてしまったと言いたい。
「それより、藤和さん――、このトラックは……」
「はい。一応、ビッグサイト周辺で消費される物品関係を調べて商品の用意をしてきました。これが搬入品の目録になります」
渡されるクリップボード。
そこには、A4のプリント用紙に商品の項目と数がズラッと書かれて並んでいる。
「あの、藤和さん……」
「何でしょうか?」
「タオルとか、頭に貼る湿布とか必要ですか?」
「明日の天気予報は30度近くの晴天と言う事でしたので、念のためにご用意致しました」
「なるほど……」
「あとは水分系とアイスクリーム関係の商品も大量に搬入する形になっています」
「飲料は別として、アイスクリームを置く場所は……」
「それに関しましては冷凍車を用意してありますのでご安心ください。明日には、冷凍車から随時商品の搬入を出来るようにいたしますので――、それと明日は多くの利用客を見越していますので日雇いの派遣アルバイトを20人ほど手配しておきました。明日の朝には、手配したマイクロバスで来る予定になっています」
俺が、明日のイベントの商品や運営に関して手伝うと言ったら、全部任せて欲しいと言ってきたので、全て丸投げしてしまった後、俺は少しだけ大丈夫なのか? と、気にはなったが……、大丈夫だったようだ。
だが! もしかしたら……俺が手伝っていたら、もっと迅速に楽に出来ていたのかも知れない。
そう思ってしまうと藤和さんに迷惑を掛けてしまったのかも知れないな。
一通り説明を聞いたところで、伝票に印鑑を押していく。
「たしかに――」
受け渡された伝票の数は相当な量になる。
「それでは、店を閉めますので少し待っていてください」
「――月山様」
「どうかしましたか?」
店に向かおうとすると待った! を、かけてくる藤和さん。
時刻的には21時を過ぎているので早く閉店の準備をしたいのだが――。
「今日は、トラックの運転手は此方の駐車場で仮眠などを取らせても大丈夫でしょうか?」
「今日までお疲れ様です」
明日の猟友会の集まり――、その作業が終わったあとで俺は踝さん以下――、手伝ってくれた作業員の方に労いの言葉をかける。
「皆さんのおかげで、何とかイベントまで漕ぎつける事が出来ました。明日、良ければ見に来て頂ければ幸いです」
俺は頭を下げる。
実際、かなりの出費ではあった。
ただ、それだけの成果を――、夜遅くまで作業を行い職人の方々は期日どおり間に合わせてくれたのだから、感謝してもしきれない。
「困った時はお互い様だ。また何かあったら声をかけてくれや」
そう返してきてくれるのは、隣の村で工務店を経営している阿武隈社長。
年齢は60歳前後の背は低いが肩幅が広い職人さんでもある。
踝さんの話だと、彼が声をかけてくれたこともあり、多くの職人が集まったとのこと。
「はい。ぜひ! その時は、よろしくお願いします」
撤収準備を進めていく職人さん達を労ったあと、俺は田口村長に近寄る。
「田口村長」
「話は終わったのか?」
「はい」
「そうか。――それじゃ、明日のイベントに関してだが――」
田口村長の言葉に長椅子に座っていた男達が立ち上がる。
誰もが年齢としては40代前後から後半と言ったところだろう。
「明日の猟友会の山追イベントについて説明はしてある。あとは、明日の主催者グループを紹介しておこう」
そう話す田口村長。
話しが一区切りついたところで立ち上がった男達が名刺を取り出す。
俺も名刺を取り出しつつ交換していく。
「北海道猟友会の長倉信也です」
「青森県猟友会の松原健介です」
「岩手県猟友会の藤堂十郎です」
「秋田県猟友会の武田平八です」
「山形県猟友会の岩村奏太です」
「宮城県猟友会の香堂常草です」
誰もが厳つい顔と、鍛えられた肉体を持っていて――、それらが服の上からでも分かってしまう。
「村長?」
「どうかしたのか?」
「えっと皆さん、何か特別なスポーツでも?」
「スポーツと言うより、全員が元・陸上自衛隊に所属していたからの」
「そ、そうですか……」
「ちなみに儂は、大日本猟友会の代表理事会長というのは、五郎は知っておるの?」
「――え? そうなんですか?」
それは初耳だ。
だが――、こんな村で毎年、猟友会の集まりを決行している事を考えると代表理事会長というのも納得が出来る所だ。
たしか、大日本猟友会の下に各支部――、都道府県ごとの猟友会組織があって構成数は合計で13万人を超えていたはず。
その猟友会の理事長だったとは……。
人は見かけによらないというか――。
「まさか五郎は知らなかったのか?」
「はい……」
田口村長は少しだけ思案した表情で頷いたあと。
「とりあえず明日のことに関しては、用意された的を撃つという方向性で話はしておいた。警察への許可も取ってあるから、そこは安心してくれていい。あとは――、例の件は大丈夫なのか?」
例の件というのは異世界人を連れてくるという話だと言うのは分かったが、そこらへんは藤和さんが後で来るので、そのあと異世界に行ってからの話し合いになる。
大丈夫なのかどうかは、その話し合いの結果次第という事になるので頷くことは出来ないが――、周りに人が居る状態で詳しい話をするのも避けられる。
「大丈夫です」
「そうか。それじゃ明日の事に関しては、儂に任せてくれればいい」
「はい! あと皆様もご協力のほど宜しくお願いします」
俺は各都道府県支部の責任者の方々に頭を下げる。
さて――、あとは異世界の王族の出方次第か……。
明日のイベントの作業をしていた工務店の方々の撤収が終わり、現在――、店番は俺だけとなっていた。
もちろん、午後8時を過ぎてからお客は来ていない。
まぁ、おかげで商品を棚に並べる事とレジ打ちを一人で賄えるからいい。
ただ――、こう何時間もお客が来ないと精神的にだらけてしまうのは否めない。
「――んっ!」
さすがに多くの作業員が商品を購入してくれたこともあり、商品を並べる作業は一人は大変だった。
おかげで腰が……。
「もう年かな……」
40歳を超えてから体の衰えを感じるようになってきた。
やはり、有名な戦国武将が言っていた『人生40年』理論は少し当たっているような気がする。
「――いや、桜を成人させるまでは!」
思わずネガティブな発想が出来てきてしまった事を――、頭を振るう事で払拭していた所で店舗の来客を知らせるチャイムが鳴る。
「こんな時間にお客とは……」
思わず珍しいな? と、思いつつも立ち上がり入口へと視線を向けると、大型のトラックが何台も駐車場に入ってくるのが見えた。
「――ん? どういう……」
店舗から出て駐車場に停まっていくトラックを念のために見にいくと、駐車場には既にいつも見慣れた車が停まっている事に気が付く。
「月山様」
「ひゃい!」
いきなり後ろから声をかけられたことで少しだけビックリしつつ振り向く。
そこには黒のクリップボードを手に持つ藤和さんの姿が!
「……申し訳ありません。後ろから声をかけてしまいまして……」
申し訳なさそうに頭を下げてくる藤和さん。
「いえ。こちらこそ――」
思わず目を背けながら俺は言葉を返す。
いつもなら、こんな失態を犯す事はないのに……。
せめて言い訳をさせて頂けるのなら、店舗の利用客が殆ど無く、品出しを半ば機械的に行っていたことで気が緩んで変に声を上げてしまったと言いたい。
「それより、藤和さん――、このトラックは……」
「はい。一応、ビッグサイト周辺で消費される物品関係を調べて商品の用意をしてきました。これが搬入品の目録になります」
渡されるクリップボード。
そこには、A4のプリント用紙に商品の項目と数がズラッと書かれて並んでいる。
「あの、藤和さん……」
「何でしょうか?」
「タオルとか、頭に貼る湿布とか必要ですか?」
「明日の天気予報は30度近くの晴天と言う事でしたので、念のためにご用意致しました」
「なるほど……」
「あとは水分系とアイスクリーム関係の商品も大量に搬入する形になっています」
「飲料は別として、アイスクリームを置く場所は……」
「それに関しましては冷凍車を用意してありますのでご安心ください。明日には、冷凍車から随時商品の搬入を出来るようにいたしますので――、それと明日は多くの利用客を見越していますので日雇いの派遣アルバイトを20人ほど手配しておきました。明日の朝には、手配したマイクロバスで来る予定になっています」
俺が、明日のイベントの商品や運営に関して手伝うと言ったら、全部任せて欲しいと言ってきたので、全て丸投げしてしまった後、俺は少しだけ大丈夫なのか? と、気にはなったが……、大丈夫だったようだ。
だが! もしかしたら……俺が手伝っていたら、もっと迅速に楽に出来ていたのかも知れない。
そう思ってしまうと藤和さんに迷惑を掛けてしまったのかも知れないな。
一通り説明を聞いたところで、伝票に印鑑を押していく。
「たしかに――」
受け渡された伝票の数は相当な量になる。
「それでは、店を閉めますので少し待っていてください」
「――月山様」
「どうかしましたか?」
店に向かおうとすると待った! を、かけてくる藤和さん。
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