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第122話 富士総合火力演習
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だからこその違和感。
――そういえば……。
そこで俺はふと気が付く。
どうして藤和さんは銀行に融通――、融資をしてもらってまで俺達の為に動いてくれているのか?
普通なら、此方から商談を頼んだのだから、商談で掛かる費用は此方が出すのがセオリーだろう。
それなのに、それをせずに藤和さんは銀行に頼んだと言っていた。
それは何故だ?
どうして、藤和さんは自腹を切ってまで今回の商談に精力的に動いている?
そこまで考えてしまうと藤和さんも何か意図があって動いているように思えて仕方なくなってしまう。
「藤和さん」
「何でしょうか?」
「ずっと考えていたのですが――」
今さっき思いついた考え――。
それが正しいのかどうかは分からない。
藤和さんだって良かれと思って資金調達をしてくれたのかも知れない。
それでも一度でも芽生えた心の靄は晴れることはない。
「ホテルとリムジンのお金は商談を任せたのもこっちですし全額負担させてもらえませんか?」
やはり藤和さんに負担させておくのは何となくだが良くない気がする。
「それは……」
言葉が詰まる藤和さん。
何か問題もあるのか?
疑問が浮かび上がってきたところで――、
「分かりました。それでは支払いにつきましては月山様にお願いしたいと思います」
「はい。それでは、あとで幾ら掛かったのか費用の請求をしてください」
藤和さんが頷いてくるのを見ると、どうやら俺の考えすぎだったようだな。
二人してリムジンに乗り込む。
「用件は済んだのかの?」
俺達が戻ったところで辺境伯が話しかけてくる。
それに対して二人で返事を返したあと車は走り出す。
首都高から用賀ICを通り東名高速へ。
途中、パーキングエリアで休憩を取りつつ御殿場ICで降りる。
国道246号方面へ移動し――、東富士演習場に近くに着いたのは10時少し前。
車は、一般車両が通行する道ではなく山道の方へと向かう。
演習場の方には向かっているようだけど、一般車両が通る道ではない。
辺境伯達の手間、聞く事も出来ず俺はスマートフォンで総合火力演習について調べていくが――、そこで俺は目を見張る。
今日が、総合火力演習日なのはいい。
問題は、応募期間が6月から7月の一か月のみという点だ。
つまり、昨日・今日で見学は出来ないと言う事になる。
本当に見学が出来るのか心配になってきた所で、俺達が乗るリムジンは関係者以外立ち入り禁止と書かれている柵の前で停止した。
柵の前には人影が見える。
「少しお待ちください」
藤和さんが車から出ると、柵の中から出てきた自衛隊員と話をしているのが見えた。
そして――、すぐに柵が開く。
「お待たせしました」
戻ってくるなり藤和さんは、それだけ言うと運転手に「自衛隊の誘導に従ってください」とだけ説明する。
車は、すぐに走り出し自衛隊員が乗る車を追従し明らかに一目で高級な車が何台も停まっている場所に到着する。
到着するなり、俺達はリムジンから降りると――、陸上自衛隊員の女性が見晴らしのいい高台に案内してくれる。
「それでは失礼致します」
去っていく自衛隊員の女性の後ろ姿を見送る。
そのあとは、簡易的に置かれたパイプ椅子を地面の上に置く。
「それでは、こちらへお座りください」
藤和さんの申し出に辺境伯は頷くと座る。
その様子を見ていたところで俺は……藤和さんの服を掴む。
それだけで藤和さんは、俺が何かを聞きたいのか理解してくれたようで大人しく建物から一緒にでる。
「藤和さん、ここの場所は、関係者以外は立ち入り禁止では?」
「はい、そうなります。ただ、今回は関係者と言う事で陸上幕僚長に話を通してありますので大丈夫です」
「――え?」
陸上幕僚長? あまり聞き慣れない言葉だが、幕僚長というのは自衛隊の階級でも上の方だと言うのは俺も知っている。
そんな人物と、どうして知り合いなのか……。
「私の父が東北で問屋事業を展開していた際に、陸上自衛隊からの天下りも何人も受け入れていましたので、その縁もあり知り合いがいただけです。今回は、その伝手で何とか総合火力演習が見られるように手配致しました」
「そうだったんですか……。それはすごいですね」
つまりコネを使って何とかしたってことか。
軽く嫉妬を覚えるくらいすごい。
俺とかコネとか殆どない。
ここまで差を見せつけられると、まるで俺が駄目なような感じがしてくる。
「いえいえ、すごくはありません。あくまでも父のコネクションを利用しただけに過ぎませんから。それに月山様も大きなコネクションがあります。しかも、私のコネなんて足元にも及ばないモノが――」
一瞬、俺は藤和さんが何を言ったのか理解できなかった。
藤和さんが俺にもコネがあると言ってきた事について俺は思わず否定しそうになったが――。
「それは辺境伯とのコネですか?」
それ以外に考えられない。
だが、藤和さんは首を左右に振り否定してくる。
「たしかに辺境伯様と知り合いという部分もありますが……それだけではありません。月山様はご自分で気が付かれていないだけです」
自分では気が付いていないだけ?
何を言っているのだろう……。
俺には藤和さんのような人脈なんて無い。
「そろそろ富士総合火力演習が始まるようです」
考え込んでいたところで、大きな音と共に富士総合火力演習が始まった。
総合火力演習が始まった所で、ノーマン辺境伯が月山五郎に話しかける。
「ゴロウ」
「何でしょうか?」
「あれが、日本国の軍なのかの?」
「はい。詳しくは、いま流れている拡張された声を聴いて頂ければ分かるかと思います」
「ふむ」
納得いかない様子でノーマン辺境伯は陸上自衛隊の方を、その眼で真っ直ぐに見つめる。
それと同時に、月山五郎の日本軍という言葉に納得いかない様子であった。
「キース」
「はい。魔力は確認できません」
「――あれで兵士なのですか?」
アロイスも戸惑いの表情を見せている。
次々と視線の先には陸上自衛隊の戦車などが姿を現すが――、それを異世界人である彼らは理解する事は出来ずにいた。
彼らの常識では、魔法師は杖を持ち魔力を増幅させ攻撃魔法や回復魔法を使い――、騎士や兵士は帯剣を帯び騎馬兵はランスを持ち突撃するというのがスタンダードであったからだ。
さらに遠距離であっても基本的に弓か魔法のみ。
「我が日本国の兵士は、自衛隊と言います」
「自衛隊……」
アロイスの「兵士ですか?」と、言う問いかけに答えたのは藤和であった。
「今日は、日本国民に兵士の演習を見せる事と、諸外国への日本国の軍力を見せる為に演習を行っています」
「――なんと……」
リスタルテが声を上げる。
異世界では、自国の軍隊がどのような布陣で戦うのか――、どのような魔法を戦争で使用するかなど軍事機密であり、それらを自国民に知らせるのは禁止されている。
戦術を知られた場合、隣国との戦争で行動や戦術が読まれるからであった。
藤和がアロイスの疑問に答えたあと、ノーマン辺境伯達の顔色を見ながら言葉を続ける。
「それでは、これからは司会者が自衛隊の武装についての説明を行い実際に戦う術を御見せ致しますので、ご覧ください」
そう藤和が話したあと、次々と自衛隊の兵装が説明されていく。
話が進み――、実際の砲撃が始まり着弾の様子が見えたところでノーマン辺境伯達の顔色が変わった。
全てのカリキュラムが終わったあと、俺達一行はリムジンが停まっている場所まで戻る。
――そういえば……。
そこで俺はふと気が付く。
どうして藤和さんは銀行に融通――、融資をしてもらってまで俺達の為に動いてくれているのか?
普通なら、此方から商談を頼んだのだから、商談で掛かる費用は此方が出すのがセオリーだろう。
それなのに、それをせずに藤和さんは銀行に頼んだと言っていた。
それは何故だ?
どうして、藤和さんは自腹を切ってまで今回の商談に精力的に動いている?
そこまで考えてしまうと藤和さんも何か意図があって動いているように思えて仕方なくなってしまう。
「藤和さん」
「何でしょうか?」
「ずっと考えていたのですが――」
今さっき思いついた考え――。
それが正しいのかどうかは分からない。
藤和さんだって良かれと思って資金調達をしてくれたのかも知れない。
それでも一度でも芽生えた心の靄は晴れることはない。
「ホテルとリムジンのお金は商談を任せたのもこっちですし全額負担させてもらえませんか?」
やはり藤和さんに負担させておくのは何となくだが良くない気がする。
「それは……」
言葉が詰まる藤和さん。
何か問題もあるのか?
疑問が浮かび上がってきたところで――、
「分かりました。それでは支払いにつきましては月山様にお願いしたいと思います」
「はい。それでは、あとで幾ら掛かったのか費用の請求をしてください」
藤和さんが頷いてくるのを見ると、どうやら俺の考えすぎだったようだな。
二人してリムジンに乗り込む。
「用件は済んだのかの?」
俺達が戻ったところで辺境伯が話しかけてくる。
それに対して二人で返事を返したあと車は走り出す。
首都高から用賀ICを通り東名高速へ。
途中、パーキングエリアで休憩を取りつつ御殿場ICで降りる。
国道246号方面へ移動し――、東富士演習場に近くに着いたのは10時少し前。
車は、一般車両が通行する道ではなく山道の方へと向かう。
演習場の方には向かっているようだけど、一般車両が通る道ではない。
辺境伯達の手間、聞く事も出来ず俺はスマートフォンで総合火力演習について調べていくが――、そこで俺は目を見張る。
今日が、総合火力演習日なのはいい。
問題は、応募期間が6月から7月の一か月のみという点だ。
つまり、昨日・今日で見学は出来ないと言う事になる。
本当に見学が出来るのか心配になってきた所で、俺達が乗るリムジンは関係者以外立ち入り禁止と書かれている柵の前で停止した。
柵の前には人影が見える。
「少しお待ちください」
藤和さんが車から出ると、柵の中から出てきた自衛隊員と話をしているのが見えた。
そして――、すぐに柵が開く。
「お待たせしました」
戻ってくるなり藤和さんは、それだけ言うと運転手に「自衛隊の誘導に従ってください」とだけ説明する。
車は、すぐに走り出し自衛隊員が乗る車を追従し明らかに一目で高級な車が何台も停まっている場所に到着する。
到着するなり、俺達はリムジンから降りると――、陸上自衛隊員の女性が見晴らしのいい高台に案内してくれる。
「それでは失礼致します」
去っていく自衛隊員の女性の後ろ姿を見送る。
そのあとは、簡易的に置かれたパイプ椅子を地面の上に置く。
「それでは、こちらへお座りください」
藤和さんの申し出に辺境伯は頷くと座る。
その様子を見ていたところで俺は……藤和さんの服を掴む。
それだけで藤和さんは、俺が何かを聞きたいのか理解してくれたようで大人しく建物から一緒にでる。
「藤和さん、ここの場所は、関係者以外は立ち入り禁止では?」
「はい、そうなります。ただ、今回は関係者と言う事で陸上幕僚長に話を通してありますので大丈夫です」
「――え?」
陸上幕僚長? あまり聞き慣れない言葉だが、幕僚長というのは自衛隊の階級でも上の方だと言うのは俺も知っている。
そんな人物と、どうして知り合いなのか……。
「私の父が東北で問屋事業を展開していた際に、陸上自衛隊からの天下りも何人も受け入れていましたので、その縁もあり知り合いがいただけです。今回は、その伝手で何とか総合火力演習が見られるように手配致しました」
「そうだったんですか……。それはすごいですね」
つまりコネを使って何とかしたってことか。
軽く嫉妬を覚えるくらいすごい。
俺とかコネとか殆どない。
ここまで差を見せつけられると、まるで俺が駄目なような感じがしてくる。
「いえいえ、すごくはありません。あくまでも父のコネクションを利用しただけに過ぎませんから。それに月山様も大きなコネクションがあります。しかも、私のコネなんて足元にも及ばないモノが――」
一瞬、俺は藤和さんが何を言ったのか理解できなかった。
藤和さんが俺にもコネがあると言ってきた事について俺は思わず否定しそうになったが――。
「それは辺境伯とのコネですか?」
それ以外に考えられない。
だが、藤和さんは首を左右に振り否定してくる。
「たしかに辺境伯様と知り合いという部分もありますが……それだけではありません。月山様はご自分で気が付かれていないだけです」
自分では気が付いていないだけ?
何を言っているのだろう……。
俺には藤和さんのような人脈なんて無い。
「そろそろ富士総合火力演習が始まるようです」
考え込んでいたところで、大きな音と共に富士総合火力演習が始まった。
総合火力演習が始まった所で、ノーマン辺境伯が月山五郎に話しかける。
「ゴロウ」
「何でしょうか?」
「あれが、日本国の軍なのかの?」
「はい。詳しくは、いま流れている拡張された声を聴いて頂ければ分かるかと思います」
「ふむ」
納得いかない様子でノーマン辺境伯は陸上自衛隊の方を、その眼で真っ直ぐに見つめる。
それと同時に、月山五郎の日本軍という言葉に納得いかない様子であった。
「キース」
「はい。魔力は確認できません」
「――あれで兵士なのですか?」
アロイスも戸惑いの表情を見せている。
次々と視線の先には陸上自衛隊の戦車などが姿を現すが――、それを異世界人である彼らは理解する事は出来ずにいた。
彼らの常識では、魔法師は杖を持ち魔力を増幅させ攻撃魔法や回復魔法を使い――、騎士や兵士は帯剣を帯び騎馬兵はランスを持ち突撃するというのがスタンダードであったからだ。
さらに遠距離であっても基本的に弓か魔法のみ。
「我が日本国の兵士は、自衛隊と言います」
「自衛隊……」
アロイスの「兵士ですか?」と、言う問いかけに答えたのは藤和であった。
「今日は、日本国民に兵士の演習を見せる事と、諸外国への日本国の軍力を見せる為に演習を行っています」
「――なんと……」
リスタルテが声を上げる。
異世界では、自国の軍隊がどのような布陣で戦うのか――、どのような魔法を戦争で使用するかなど軍事機密であり、それらを自国民に知らせるのは禁止されている。
戦術を知られた場合、隣国との戦争で行動や戦術が読まれるからであった。
藤和がアロイスの疑問に答えたあと、ノーマン辺境伯達の顔色を見ながら言葉を続ける。
「それでは、これからは司会者が自衛隊の武装についての説明を行い実際に戦う術を御見せ致しますので、ご覧ください」
そう藤和が話したあと、次々と自衛隊の兵装が説明されていく。
話が進み――、実際の砲撃が始まり着弾の様子が見えたところでノーマン辺境伯達の顔色が変わった。
全てのカリキュラムが終わったあと、俺達一行はリムジンが停まっている場所まで戻る。
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