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第105話 月山雑貨店会議(4)
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「なるほど……。これは思ったよりも交渉が楽かも知れませんね」
「交渉が楽?」
「はい。もし、私達の世界にエルム王国側が侵略を想定して辺境伯が事前に察していたのならば、田口様が言われた通り月山様の身を案じて取引を辞めて異世界へ通じる道を封じる手筈を取ると言うのが一般的だと思います。それと共に、エルム王国側は月山雑貨店の特性を理解していない可能性があります。――ただし、結界を作ったと目されるエルフ一族が結界の条件を変更したとなれば話は変わりますが――」
「それでは、交渉はどちらにしても難しいのでは?」
「いえ、逆です。話を伺った限り相手側は此方の戦力と文化的水準を理解していないと考えるのが妥当でしょう。文化水準というのは食に反映されるのは、歴史を見れば分かります。技術は戦争が進化させますが、文明は政情が安定しませんと進化はしませんので――。先ほどの市場動画を見た限りでは、エルム王国は食保管に関しては、そこまで進んでいないというのが見て取れます。魔法が存在しているとなると一概には言えませんが恐らくは、地球との文明レベルの差は1000年から2000年近く。これなら、十分に相手を説得することは可能です。それどころか――」
そこで藤和さんが、目を細める。
「月山様、一日だけお時間を頂けますか?」
「――それでは?」
「はい。3万人もの市場を――、強いてはエルム王国の市場を手放すのはもったいないですから。王国側との取引で多少、損失が出たとしても全体から見れば些細な物です。莫大な利益を捨てるなど勿体ないですから」
そう呟くと藤和さんが、スマートフォンを手にする。
「一か月後に総合火力演習ですか」
ボソッと呟いた言葉を俺は聞きとることが出来なかった。
「何かありましたか?」
「いえ、何でもありません。それでは私は一度、社に戻り資料を作って参りますので――」
立ち上がった藤和さんを俺は玄関まで見送った。
――翌朝。
トントントンとリズミカルな音が聞こえてくる。
それは、最近では慣れしたんだ物であり、眠気を堪え乍ら瞼を開ければ台所にはエプロンを身につけた雪音さんが立っていて料理をしていた。
そして室内を見渡せば桜とフーちゃんが寝ている。
壁掛けの時計を見れば時刻は午前7時少し過ぎ。
「ふぁー」
思わず欠伸が出る。
それに気が付いたのか――、
「月山さん、おはようございます」
「ああっ……おはようございます」
挨拶をしてきた雪音さんに挨拶し返すと寝床から出る。
昨日は、藤和さんを見送ったあと、いつもどおり店の営業を行った。
そして何時も通り雪音さんは、事務処理をする上で遅くなることもあり客間の一室で泊まっていくことになり、いまに至る。
もう最近では、家事の殆どを雪音さんに任せている状態だ。
雪音さんが、寝泊まりで家にいるのは3ヵ月限定なので、それまでには家事を教えてもらいある程度は料理が出来るようにならないといけないんだが……。
気が付けば、朝食の時間。
テーブルには、イカと里芋の煮物・海苔・大根の味噌汁に白米とほうれん草の和え物と――、これぞ日本食! と、言う物が置かれている。
「この煮物美味しいですね」
「美味しいの!」
「わん!」
「ありがとうございます」
頬を赤く染めて微笑んでくる雪音さん。
ここ最近、一緒に暮らしていて思ったことなんだが、彼女は料理をすることが好きらしい。
それは、フーちゃんのお皿には山盛りに載せられている雪音さんが手作りのローストビーフを見れば分かることだ。
ローストビーフの味もいいのか美味しそうにフーちゃんも食べている。
どう考えても3ヵ月で雪音さんの料理の腕に勝てる気がしない。
「あの雪音さん」
「はい?」
「このローストビーフって……」
「根室さんから頂いた牛のモモ肉を使っています。実家には冷凍している牛モモ肉がたくさんありますので。あと、フーちゃんはローストビーフが好きだと桜ちゃんに聞きましたから、今日は特別です」
「――でも、ローストビーフを作る肉は高いのでは?」
「たしかに素材を厳選するのでしたら高いです。でも国産の普通の牛のモモ肉を使うのでしたら、そんなに高くはないですよ? それに、この肉は貰い物を調理しただけですので」
「な、なるほど……」
雪音さんの料理スペックが俺よりも高くて困る。
これ雪音さんが居なくなったら、我が家の食事情が大変になりそうだ。
それに、3ヵ月以内に雪音さんの体が患っていた不治の病が完治している事も伝えられるようにしないといけない。
異世界の事も含めてやることが多すぎる。
「月山さん、どうかしましたか?」
「いえ。なんでも!」
「そ、そうですか?」
ジッと俺を見てくる雪音さん。
やばい、何か変なことでもしただろうか……。
「そのパジャマ、今日で2日目ですよね? あとで洗濯しておきますので出しておいてくださいね」
「――あ、はい……」
「桜ちゃんもね」
「うん!」
パジャマを渡したあと、普段着に着替えてから、何時ものように店を開ける。
そして――。
お昼になるというのに客がまったくこない!
むしろ、朝から一人も客が来ない!
そもそも朝から店の前の通りを一台も車が通っていない。
本当にどうしようか……。
思わず心の中で突っ込みをいれておく。
「今日は暇ですね」
店舗の内ガラスを無心で拭いていた俺に恵美さんが話しかけてくる。
彼女も、品出しが終わったのでレジで退屈そうにしていて。
「そうですね……」
そんな彼女の問いかけに答えるのは、相槌しかなかった。
何か気が利くような応対が出来ればいいんだが――、正直言って女性と普通に接するのは苦手だったりするからだ。
「恵美さん、そろそろお昼ですのでレジは自分がしますので休憩してきてください」
「あ、はい! 分かりました。あの……、今日も台所をお借りしても?」
「どうぞ」
現在の月山家の食事情は、朝食を雪音さんが作ってくれている。
そしてお昼は、和美ちゃんが居るという事で雪音さんか恵美さんが交代で、夕食は雪音さんがという感じでローテーションが出来ており、俺が料理に携わる時間が殆どない。
まぁ、恵美さんも自分の娘の為に料理を作ってくれているので、俺としても任せるのは心苦しくなくていいんだが――。
ちなみに恵美さんは、中華料理と日本食で、雪音さんはオールラウンダーである。
つまり今日は恵美さんが昼飯を作ってくれているとなると中華料理と言う感じになる。
――ということもあり現在、月山家の食事情は急速に改善されている。
問題は、従来の冷蔵庫だと多種多様な調味料が置かれる事になったのでスペース的にはきつくなってきたという点だろう。
その内、大型冷蔵庫に買い替えた方がいい。
「新しい冷蔵庫か……」
恵美さんが母屋に向かったあと、レジ横に設置しておいたノートパソコンでインターネットを起動する。
そして冷蔵庫を確認していく。
「いままでは162リットルくらいの冷蔵庫で十分だったからな。やっぱり、今後のことも考えると、それなりに大きい冷蔵庫が必要か……だけどな……」
よくよく考えると田舎だからこそ、大きな家に住んでいるからこそ! 大きめの冷蔵庫があっても問題ないと思う。
ただ、このままの状態だと商売が失敗した時に都会に引っ越す可能性が出たら、大きめの冷蔵庫を購入しても置く場所に困ってしまう。
それは、あまり考えたくないがない可能性でもない。
「とりあえず保留だな……」
「何が保留なんですか?」
「大きめの冷蔵庫を買おうかどうか迷っていたんですよね」
「交渉が楽?」
「はい。もし、私達の世界にエルム王国側が侵略を想定して辺境伯が事前に察していたのならば、田口様が言われた通り月山様の身を案じて取引を辞めて異世界へ通じる道を封じる手筈を取ると言うのが一般的だと思います。それと共に、エルム王国側は月山雑貨店の特性を理解していない可能性があります。――ただし、結界を作ったと目されるエルフ一族が結界の条件を変更したとなれば話は変わりますが――」
「それでは、交渉はどちらにしても難しいのでは?」
「いえ、逆です。話を伺った限り相手側は此方の戦力と文化的水準を理解していないと考えるのが妥当でしょう。文化水準というのは食に反映されるのは、歴史を見れば分かります。技術は戦争が進化させますが、文明は政情が安定しませんと進化はしませんので――。先ほどの市場動画を見た限りでは、エルム王国は食保管に関しては、そこまで進んでいないというのが見て取れます。魔法が存在しているとなると一概には言えませんが恐らくは、地球との文明レベルの差は1000年から2000年近く。これなら、十分に相手を説得することは可能です。それどころか――」
そこで藤和さんが、目を細める。
「月山様、一日だけお時間を頂けますか?」
「――それでは?」
「はい。3万人もの市場を――、強いてはエルム王国の市場を手放すのはもったいないですから。王国側との取引で多少、損失が出たとしても全体から見れば些細な物です。莫大な利益を捨てるなど勿体ないですから」
そう呟くと藤和さんが、スマートフォンを手にする。
「一か月後に総合火力演習ですか」
ボソッと呟いた言葉を俺は聞きとることが出来なかった。
「何かありましたか?」
「いえ、何でもありません。それでは私は一度、社に戻り資料を作って参りますので――」
立ち上がった藤和さんを俺は玄関まで見送った。
――翌朝。
トントントンとリズミカルな音が聞こえてくる。
それは、最近では慣れしたんだ物であり、眠気を堪え乍ら瞼を開ければ台所にはエプロンを身につけた雪音さんが立っていて料理をしていた。
そして室内を見渡せば桜とフーちゃんが寝ている。
壁掛けの時計を見れば時刻は午前7時少し過ぎ。
「ふぁー」
思わず欠伸が出る。
それに気が付いたのか――、
「月山さん、おはようございます」
「ああっ……おはようございます」
挨拶をしてきた雪音さんに挨拶し返すと寝床から出る。
昨日は、藤和さんを見送ったあと、いつもどおり店の営業を行った。
そして何時も通り雪音さんは、事務処理をする上で遅くなることもあり客間の一室で泊まっていくことになり、いまに至る。
もう最近では、家事の殆どを雪音さんに任せている状態だ。
雪音さんが、寝泊まりで家にいるのは3ヵ月限定なので、それまでには家事を教えてもらいある程度は料理が出来るようにならないといけないんだが……。
気が付けば、朝食の時間。
テーブルには、イカと里芋の煮物・海苔・大根の味噌汁に白米とほうれん草の和え物と――、これぞ日本食! と、言う物が置かれている。
「この煮物美味しいですね」
「美味しいの!」
「わん!」
「ありがとうございます」
頬を赤く染めて微笑んでくる雪音さん。
ここ最近、一緒に暮らしていて思ったことなんだが、彼女は料理をすることが好きらしい。
それは、フーちゃんのお皿には山盛りに載せられている雪音さんが手作りのローストビーフを見れば分かることだ。
ローストビーフの味もいいのか美味しそうにフーちゃんも食べている。
どう考えても3ヵ月で雪音さんの料理の腕に勝てる気がしない。
「あの雪音さん」
「はい?」
「このローストビーフって……」
「根室さんから頂いた牛のモモ肉を使っています。実家には冷凍している牛モモ肉がたくさんありますので。あと、フーちゃんはローストビーフが好きだと桜ちゃんに聞きましたから、今日は特別です」
「――でも、ローストビーフを作る肉は高いのでは?」
「たしかに素材を厳選するのでしたら高いです。でも国産の普通の牛のモモ肉を使うのでしたら、そんなに高くはないですよ? それに、この肉は貰い物を調理しただけですので」
「な、なるほど……」
雪音さんの料理スペックが俺よりも高くて困る。
これ雪音さんが居なくなったら、我が家の食事情が大変になりそうだ。
それに、3ヵ月以内に雪音さんの体が患っていた不治の病が完治している事も伝えられるようにしないといけない。
異世界の事も含めてやることが多すぎる。
「月山さん、どうかしましたか?」
「いえ。なんでも!」
「そ、そうですか?」
ジッと俺を見てくる雪音さん。
やばい、何か変なことでもしただろうか……。
「そのパジャマ、今日で2日目ですよね? あとで洗濯しておきますので出しておいてくださいね」
「――あ、はい……」
「桜ちゃんもね」
「うん!」
パジャマを渡したあと、普段着に着替えてから、何時ものように店を開ける。
そして――。
お昼になるというのに客がまったくこない!
むしろ、朝から一人も客が来ない!
そもそも朝から店の前の通りを一台も車が通っていない。
本当にどうしようか……。
思わず心の中で突っ込みをいれておく。
「今日は暇ですね」
店舗の内ガラスを無心で拭いていた俺に恵美さんが話しかけてくる。
彼女も、品出しが終わったのでレジで退屈そうにしていて。
「そうですね……」
そんな彼女の問いかけに答えるのは、相槌しかなかった。
何か気が利くような応対が出来ればいいんだが――、正直言って女性と普通に接するのは苦手だったりするからだ。
「恵美さん、そろそろお昼ですのでレジは自分がしますので休憩してきてください」
「あ、はい! 分かりました。あの……、今日も台所をお借りしても?」
「どうぞ」
現在の月山家の食事情は、朝食を雪音さんが作ってくれている。
そしてお昼は、和美ちゃんが居るという事で雪音さんか恵美さんが交代で、夕食は雪音さんがという感じでローテーションが出来ており、俺が料理に携わる時間が殆どない。
まぁ、恵美さんも自分の娘の為に料理を作ってくれているので、俺としても任せるのは心苦しくなくていいんだが――。
ちなみに恵美さんは、中華料理と日本食で、雪音さんはオールラウンダーである。
つまり今日は恵美さんが昼飯を作ってくれているとなると中華料理と言う感じになる。
――ということもあり現在、月山家の食事情は急速に改善されている。
問題は、従来の冷蔵庫だと多種多様な調味料が置かれる事になったのでスペース的にはきつくなってきたという点だろう。
その内、大型冷蔵庫に買い替えた方がいい。
「新しい冷蔵庫か……」
恵美さんが母屋に向かったあと、レジ横に設置しておいたノートパソコンでインターネットを起動する。
そして冷蔵庫を確認していく。
「いままでは162リットルくらいの冷蔵庫で十分だったからな。やっぱり、今後のことも考えると、それなりに大きい冷蔵庫が必要か……だけどな……」
よくよく考えると田舎だからこそ、大きな家に住んでいるからこそ! 大きめの冷蔵庫があっても問題ないと思う。
ただ、このままの状態だと商売が失敗した時に都会に引っ越す可能性が出たら、大きめの冷蔵庫を購入しても置く場所に困ってしまう。
それは、あまり考えたくないがない可能性でもない。
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