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第78話 商品の価格
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俺は甘い物を殆ど食べないから良くは分からないが……、そこで――、ふと桜と初めて会った時の事を思い出した。
たしかケーキ屋に行った時にいい笑顔でケーキを食べていたような……。
仕方ないな。
俺はクッキーを10枚ほど取り出しお皿の上に乗せる。
「おじちゃん?」
「食べていいよ」
「本当に? でも、おじちゃんの分は?」
「俺は甘い物は得意ではないから。桜が食べていいよ」
「うん!」
桜がクッキーを食べながらリンゴジュースをいい笑顔で飲んでいる。
どうやら女の子という生物は、甘い物が好きらしい。
「それじゃ、俺は店の方に行っているから留守番を頼んだよ」
「うん。いってらっしゃいなの」
雑貨店の駐車場に到着したところで、10トントラックが一台増えていた。
どうやら、想ったよりも納品される商品が多いよう。
「藤和さん」
「月山様、どうかなさいましたか?」
「トラックが一台増えているようですけど……」
「はい。飲料などを積載したトラックです。先に到着したのは冷凍食品と日用品を積んだ物になりますので」
「なるほど……。冷凍食品は……」
「まだ冷凍と冷蔵ケースが冷えていませんので冷えてからという形になります」
そういえば、北海道から帰ってきたばかりという事もあり、店舗のコンプレッサーや独立タイプの冷蔵冷凍ケースの電源は入れていなかった。
その事を思い出しつつ頷く。
「それでは、まずは日用品からですか」
「そうなります」
「ところでフォークリフトとか使いますか?」
「宜しいのですか?」
「もちろんです。作業は効率的に進めた方がいいと思いますので、――それでは鍵を持ってきますので――」
実際は、桜ではないとフォークリフトのエンジンが入らないから桜セットという事になるわけだけど。
「あと、こちらを皆さんで――」
麦茶の入ったピッチャーと紙コップ20個におせんべいにクッキーといったお茶請けを置いて家に戻る。
「桜」
「おじちゃん?」
居間からテテテッと桜が走ってくる。
「フォークリフトのエンジンを掛けたい、すこしいいか?」
「うん!」
桜と一緒に、家の庭に停めてあるフォークリフトの傍までいき雨避けのブルーシートを外したあとエンジンを掛けてもらう。
すぐにエンジンが始動し――、
「それじゃ俺は店にしばらく行っているからお留守番を頼むな」
「わかったの」
フォークリフトを運転しつつ雑貨店前まで移動する。
すると荷物の搬入をしていた派遣と運転手たちが休憩している様子が視界に入る。
その中でいち早く、俺が乗っていたフォークリフトに気が付いた藤和さんが小走りで近づいてくる。
「月山様、申し訳ありません。お手間を――」
「気にしないでください。それとここ最近バッテリーの調子が悪いので、エンジンは切らないで使ってもらえますか?」
言い訳は適当にしておく。
古いフォークリフトだし十分な理由だとも思う。
「わかりました。それでは、こちらが納入リストになります」
藤和さんから、納品リストの一覧を受け取る。
そして捲りながら目を通していく。
その間にも休憩が終わったのか搬入作業と製品陳列が開始される。
「ずいぶんと品数が多いですね」
「はい。なるべく村の方々の参考を取り入れましたので――」
その言葉――、それは桜が結城村の寄り合いの時に仕入れた情報――、桜ノートのことを言っているのだろう。
「洗剤に、柔軟剤、あとは……」
蚊取り線香など、日用品の数は200種類を超えている。
さらに冷凍食品に至っては有名どころからマイナーなところまで――。
アイスに至っては50種類を超えており調味料の数もすさまじく多い。
「レトルトも結構多いんですね」
「はい。最近は、レトルトやカップ麺に水を求めている人も多いので――」
「田舎には井戸があるんですけどね……」
「井戸は、基本的に電気で動かしているからだと思いますよ? 台風で、電気が来なくなったら水の供給は難しいですから」
「ああ、たしかに……」
災害時とかは電気が停まるとポンプを動かすのは電気だからな……。
「そういえば、開店は何時頃を予定されていますか?」
「来週の月曜日を考えています」
来週と言っても4日後。
チラシかSNSか寄り合い所経由で新規開店の話を拡散してもらった方がいいだろう。
「分かりました。何かイベントをする予定などは?」
「特に考えてはいないですね」
店の前で焼きそばを作って配布するような予定は特にない。
せいぜい開店しましたと報告するくらいだろう。
「そうですか……」
「はい。人口300人の結城村では、そういうことをしても意味ないと思いますので」
「それでは、私も微力ながら新規開店をされる月山様のお店のことを宣伝させていただいてもいいですか?」
「よろしくお願いします」
搬入の作業が始まり、すでに数時間が経過し日はすっかりと静まり返っている。
そんな中、フォークリフトが稼働する音と店舗の商品を積んだ荷物を積んでいるトレーラーのエンジン音だけが鳴り響く。
「五郎、帰ったのか」
藤和さんから預かった納品伝票を見ながら、レジに商品登録をしていた所で、田口村長の声が聞こえてきた。
その声にハッ! として顔を上げると店入り口に田口村長の姿があり――、
「田口村長」
「踝から商品の搬入が今日だと聞いたのでな」
「そうでしたか……。すいません、気が付かずに――」
「何か、集中しなければいけない作業をしていたのだろ?」
「はい。じつは、搬入商品のデーター登録をしていなかったもので……」
実際の所、何の商品を搬入するのか――、店頭に並べるかなどは藤和さんに一任していたこともあり物が決定するまではレジへの登録ができなかった。
そして――、4日後の開店に向けて現在、死に物狂いで登録をしているところだったりする。
「そうか。人手は必要かの?」
「人手?」
村長の後ろから、村長の孫娘である雪音さんが姿を見せると頭を下げてくる。
「こんばんは」
「夜分遅くに失礼いたします」
挨拶を交わす。
それと共に、俺はカウンターの上に置いておいたノートパソコンで時間を確認する。
時刻はすでに午後7時を過ぎ。
そろそろ夕飯の支度をしないといけないか。
「村長、雪音さん、夕飯は済んでいますか?」
「食べたが……、そういえば――、五郎」
「はい?」
「送ってくれたカニは美味しかったぞ?」
「いえいえ。それでは、少しお願いがあるのですが――」
雪音さんの方を見て話したことで彼女も何かを察したのか首を傾げながら「お願いですか?」と不思議そうな顔を見せてくる。
「はい。姪っ子の夕食を作らないといけないので、少しだけレジへの商品登録の方をお願いしたいのですが――」
「分かりました」
二つ返事で同意してくる雪音さん。
ノートパソコンを使ってアプリを起動する方法、そして操作方法と商品登録方法を教える。
「あの、月山さん」
「何でしょうか?」
「価格設定とか空欄のままですけど、どう致しましょうか?」
「そうですね……」
実はいくらで販売するかをまだ決めていない。
それは、結城村という特殊な場所が問題で価格が決められないというよりも、商店を経営したことがないからだ。
現在はメーカー側の小売り希望価格だけを入れて、隣の販売価格の欄は空欄にしてある。
あとはカテゴリー設定と税金設定くらいはしているが――。
「そうですね。田口村長」
「――ん? どうしたのかの?」
「実は、商品の販売価格について迷っているんですよね」
田口村長には、店のリフォーム代金を払ってもらった事、それと父親が月山雑貨店をしていた時に買いにきてくれていた実績もあるので、その点を踏まえて聞くことにした。
たしかケーキ屋に行った時にいい笑顔でケーキを食べていたような……。
仕方ないな。
俺はクッキーを10枚ほど取り出しお皿の上に乗せる。
「おじちゃん?」
「食べていいよ」
「本当に? でも、おじちゃんの分は?」
「俺は甘い物は得意ではないから。桜が食べていいよ」
「うん!」
桜がクッキーを食べながらリンゴジュースをいい笑顔で飲んでいる。
どうやら女の子という生物は、甘い物が好きらしい。
「それじゃ、俺は店の方に行っているから留守番を頼んだよ」
「うん。いってらっしゃいなの」
雑貨店の駐車場に到着したところで、10トントラックが一台増えていた。
どうやら、想ったよりも納品される商品が多いよう。
「藤和さん」
「月山様、どうかなさいましたか?」
「トラックが一台増えているようですけど……」
「はい。飲料などを積載したトラックです。先に到着したのは冷凍食品と日用品を積んだ物になりますので」
「なるほど……。冷凍食品は……」
「まだ冷凍と冷蔵ケースが冷えていませんので冷えてからという形になります」
そういえば、北海道から帰ってきたばかりという事もあり、店舗のコンプレッサーや独立タイプの冷蔵冷凍ケースの電源は入れていなかった。
その事を思い出しつつ頷く。
「それでは、まずは日用品からですか」
「そうなります」
「ところでフォークリフトとか使いますか?」
「宜しいのですか?」
「もちろんです。作業は効率的に進めた方がいいと思いますので、――それでは鍵を持ってきますので――」
実際は、桜ではないとフォークリフトのエンジンが入らないから桜セットという事になるわけだけど。
「あと、こちらを皆さんで――」
麦茶の入ったピッチャーと紙コップ20個におせんべいにクッキーといったお茶請けを置いて家に戻る。
「桜」
「おじちゃん?」
居間からテテテッと桜が走ってくる。
「フォークリフトのエンジンを掛けたい、すこしいいか?」
「うん!」
桜と一緒に、家の庭に停めてあるフォークリフトの傍までいき雨避けのブルーシートを外したあとエンジンを掛けてもらう。
すぐにエンジンが始動し――、
「それじゃ俺は店にしばらく行っているからお留守番を頼むな」
「わかったの」
フォークリフトを運転しつつ雑貨店前まで移動する。
すると荷物の搬入をしていた派遣と運転手たちが休憩している様子が視界に入る。
その中でいち早く、俺が乗っていたフォークリフトに気が付いた藤和さんが小走りで近づいてくる。
「月山様、申し訳ありません。お手間を――」
「気にしないでください。それとここ最近バッテリーの調子が悪いので、エンジンは切らないで使ってもらえますか?」
言い訳は適当にしておく。
古いフォークリフトだし十分な理由だとも思う。
「わかりました。それでは、こちらが納入リストになります」
藤和さんから、納品リストの一覧を受け取る。
そして捲りながら目を通していく。
その間にも休憩が終わったのか搬入作業と製品陳列が開始される。
「ずいぶんと品数が多いですね」
「はい。なるべく村の方々の参考を取り入れましたので――」
その言葉――、それは桜が結城村の寄り合いの時に仕入れた情報――、桜ノートのことを言っているのだろう。
「洗剤に、柔軟剤、あとは……」
蚊取り線香など、日用品の数は200種類を超えている。
さらに冷凍食品に至っては有名どころからマイナーなところまで――。
アイスに至っては50種類を超えており調味料の数もすさまじく多い。
「レトルトも結構多いんですね」
「はい。最近は、レトルトやカップ麺に水を求めている人も多いので――」
「田舎には井戸があるんですけどね……」
「井戸は、基本的に電気で動かしているからだと思いますよ? 台風で、電気が来なくなったら水の供給は難しいですから」
「ああ、たしかに……」
災害時とかは電気が停まるとポンプを動かすのは電気だからな……。
「そういえば、開店は何時頃を予定されていますか?」
「来週の月曜日を考えています」
来週と言っても4日後。
チラシかSNSか寄り合い所経由で新規開店の話を拡散してもらった方がいいだろう。
「分かりました。何かイベントをする予定などは?」
「特に考えてはいないですね」
店の前で焼きそばを作って配布するような予定は特にない。
せいぜい開店しましたと報告するくらいだろう。
「そうですか……」
「はい。人口300人の結城村では、そういうことをしても意味ないと思いますので」
「それでは、私も微力ながら新規開店をされる月山様のお店のことを宣伝させていただいてもいいですか?」
「よろしくお願いします」
搬入の作業が始まり、すでに数時間が経過し日はすっかりと静まり返っている。
そんな中、フォークリフトが稼働する音と店舗の商品を積んだ荷物を積んでいるトレーラーのエンジン音だけが鳴り響く。
「五郎、帰ったのか」
藤和さんから預かった納品伝票を見ながら、レジに商品登録をしていた所で、田口村長の声が聞こえてきた。
その声にハッ! として顔を上げると店入り口に田口村長の姿があり――、
「田口村長」
「踝から商品の搬入が今日だと聞いたのでな」
「そうでしたか……。すいません、気が付かずに――」
「何か、集中しなければいけない作業をしていたのだろ?」
「はい。じつは、搬入商品のデーター登録をしていなかったもので……」
実際の所、何の商品を搬入するのか――、店頭に並べるかなどは藤和さんに一任していたこともあり物が決定するまではレジへの登録ができなかった。
そして――、4日後の開店に向けて現在、死に物狂いで登録をしているところだったりする。
「そうか。人手は必要かの?」
「人手?」
村長の後ろから、村長の孫娘である雪音さんが姿を見せると頭を下げてくる。
「こんばんは」
「夜分遅くに失礼いたします」
挨拶を交わす。
それと共に、俺はカウンターの上に置いておいたノートパソコンで時間を確認する。
時刻はすでに午後7時を過ぎ。
そろそろ夕飯の支度をしないといけないか。
「村長、雪音さん、夕飯は済んでいますか?」
「食べたが……、そういえば――、五郎」
「はい?」
「送ってくれたカニは美味しかったぞ?」
「いえいえ。それでは、少しお願いがあるのですが――」
雪音さんの方を見て話したことで彼女も何かを察したのか首を傾げながら「お願いですか?」と不思議そうな顔を見せてくる。
「はい。姪っ子の夕食を作らないといけないので、少しだけレジへの商品登録の方をお願いしたいのですが――」
「分かりました」
二つ返事で同意してくる雪音さん。
ノートパソコンを使ってアプリを起動する方法、そして操作方法と商品登録方法を教える。
「あの、月山さん」
「何でしょうか?」
「価格設定とか空欄のままですけど、どう致しましょうか?」
「そうですね……」
実はいくらで販売するかをまだ決めていない。
それは、結城村という特殊な場所が問題で価格が決められないというよりも、商店を経営したことがないからだ。
現在はメーカー側の小売り希望価格だけを入れて、隣の販売価格の欄は空欄にしてある。
あとはカテゴリー設定と税金設定くらいはしているが――。
「そうですね。田口村長」
「――ん? どうしたのかの?」
「実は、商品の販売価格について迷っているんですよね」
田口村長には、店のリフォーム代金を払ってもらった事、それと父親が月山雑貨店をしていた時に買いにきてくれていた実績もあるので、その点を踏まえて聞くことにした。
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