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第65話 異世界の市場(2)
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「わかりました」
雪音さんは、俺から少し離れた位置に体育座りで座る。
スカートを穿いていて、男と二人きりなのだから、すこしはその辺を考えて座ってほしいものだ。
しばらく休んでいると、ようやく落ちついてきた。
「月山さん」
「何でしょうか?」
「どうして、私に会計の――、事務の仕事を任せる気になったのですか?」
「どうしてとは?」
「だって、私は都内で保育士をしていたので……、あまり関係ない職種だというか……」
「目黒さんに推薦してもらったからです」
「目黒さんって、細工師の?」
雪音さんの問いかけに俺は相槌を打つ。
「それでも私に仕事を振るよりも、他に適切な人は――」
「適切な人だからこそ、貴女なんです。結城村に住んでいて、秘密を共有できる人間。そして資格を有している人間としたら限られますから」
「それって……、喜んでいい事なのでしょうか?」
どことなく不安な表情をしている彼女に俺は内心首を傾げる。
村長と一緒に居た時の雪音さんは、もっと前向きな性格の女性だと思ったからだ。
「そうですね。少なくとも自分にとっては無くてはならない存在だと思っています」
「本当ですか?」
「はい。あくまでも自分にとってはですが――」
「桜ちゃんには嫌われてしまっているようですけど……」
商売と桜がどう繋がるのか……、いまいち理解に苦しむが――。
まぁ、商売に関しては桜の許可も得られている事だしな。
「桜も、時間をかければ雪音さんを分かってくれると思いますよ」
まぁ、とりあえず励ましておくとしよう。
「それでは、そろそろ行きますか」
しばらく話していて動悸も治まってきた。
いつも通りカウンター傍のシャッター開閉ボタンを押すと音を立ててシャッターが上に上がっていく。
それに共だって、外から差し込む光がより一層店内を明るく照らしていく。
「これって……」
雪音さんも気が付いたのか、呆然とした様子で外の景色を見ている。
「とりあえず、自分は外の兵士と話をしてくるので待っていてください」
「わ、わかりました……」
何度も頷く雪音さんを店内に置いたまま異世界側へと通じる扉を開ける。
「ゴロウ様?」
目の前で待機していたナイルさんが話しかけてくる。
「こんにちはですかね」
「はい。それより、今日はどういった趣で? しばらくは、こちらの世界には来ないと伺っておりましたが……」
「それが、異世界では金の取引が難しくなってきたので、ルイズ辺境伯領の特産物を金で購入しようかと思っていて――」
「なるほど……、こちらの世界の特産物を異世界で販売するという事ですか」
「そうなります」
地球人から見たら、ノーマン辺境伯がいる世界こそが異世界なんだが――、そこは訂正する必要はない。
それにしても、こちらの考えを一瞬で理解してくれるのは、最初から説明しなくてもいいから非常に助かる。
「分かりました。それでは、ノーマン様に伝令だけは出しておきます」
「ありがとうございます」
「それでは市場に行かれるという事でいいんですよね?」
「そうなります」
「――では、私と数名の兵士で護衛を致します」
「そのへんは、特に大丈夫かと思いますが……」
「ゴロウ様に何かあれば私の首が飛びますので――」
「分かりました」
きっと誇張ではなく物理的に首が飛ぶんだろうなと思うと、さすがに無理に拒否することは出来ない。
「それで、じつは同行者が一人居るのですが大丈夫でしょうか?」
「同行者ですか? サクラ様でいらっしゃいますか?」
「いえ――、従業員です」
「それは……」
「何かマズイですか?」
「ご親族の方でしたら、問題ないのです。――ですが、それ以外の方ですと……、こちらの世界での身分証を発行する必要がありますので……」
「そんな物を聞かれたことがないですね」
「もちろんです。ゴロウ様とサクラ様は、貴族としての魔力を持っていますので――、ノーマン様が貴族籍を作り用意致しましたので」
いま聞き捨てならない内容の言葉が聞こえたような気がするぞ?
「貴族籍ですか?」
「はい。ルイズ辺境伯のみならずエルム王国では国内に滞在する際には、かならず身分証というのは必要になりますので」
「なるほど……」
「その為、身分証明書を発行する形になるのです。――ですが、それは此方の世界の人間に限る形になります。今回は、従業員の方は異世界の方ですよね?」
「そ、そうなります」
話が――、あまりいい方向に進んでいるとは思えない。
「ですので、さすがに異世界人であっても理に反して連れてきた人間を受け入れる訳には行かないのです」
「そうですか……、それなら仕方無いですね」
雪音さんには、着いて来てもらったが、市場を一緒に調査するのは諦めるしかないようだ。
「ちなみにゴロウ様。従業員の方は男性ですか?」
「いえ、女性ですが……」
「なるほど……」
ナイルさんは、唇に手を当てながら思案した表情を見せる。
「それでしたら、ゴロウ様の奥様――、もしくは婚約者という事にすれば問題はないかと――」
「それは……」
「それに一般人の方ですと護衛する際にも色々とありますので、ゴロウ様の婚約者、もしくは妻という事にしておけば貴族に嫁いできた方を護衛するという大義名分も出来ます。その方が、兵士も動きやすいのです」
「そうですか……」
たしかに、そう言われるとそうかも知れないが――。
田口村長からも雪音さんを「よろしく頼む」と、頼まれたからな。
それに、市場に行っても俺だと気が付かないことがありそうだし……。
「わかりました。一度、従業員に確認を取ってみます」
「よろしくお願いします」
ナイルさんと別れ店内に戻ると、雪音さんがガラス壁から見える異世界の街並みを興味津々に見ている。
「――あっ。月山さん! どうでしたか? それにしても異世界って本当に存在したんですね。おじいちゃんが言っていたので、呆けが始まったのかなって心配していたんですけど……」
ずいぶんな言われようだが、普通に異世界が存在すると言われたら誰でも――、その人を心配することだろう。
「あの……、雪音さん」
「はい? 何でしょうか?」
「実は、ここの町を治めている辺境伯直轄の部下の人に、異世界人で戸籍の無い人は町というか国への入国の許可は難しいと言われていまして……」
「それじゃ! 私は、こんな楽しそうな光景が見える町を散策出来ないという事ですか?」
「そうなります」
「そんなー」
異世界の街並みや住人を見ていた時の雪音さんの目は輝いていた。
思った通り落胆の色を表情に浮かべてくる。
「…………あれ? でも、月山さんも私達と同じ日本人ですよね?」
「まぁ半分は――」
「半分? もしかして月山さんは異世界人だったりするんですか?」
「半分は……」
「えっと……、つまり異世界人とのハーフってことですか?」
「そうですね」
「つまり、月山さんは異世界に戸籍があると?」
「はい」
「なるほど……」
しばらく目の前で唸りながら考え込んでいた雪音さんであったが――、ハッ! とした表情をして俺を見てくる。
「――あ、あの! 私、閃いたんですけど! とりあえず月山さんの婚約者とか、そんな感じにすれば、身内特典みたいな感じで町の中を散策できたりしませんか?」
「たぶん可能だと思います」
「――なら! ソレで行きましょう!」
「そんなに軽い感じで受けてしまっていいんですか?」
俺としては理想的に話が進んだから別に問題はないんだけど……。
本当は、俺から提案するべき案件だった。
――でも……、20歳代の女性に40歳代のおっさんが婚約者とか言うとセクハラになるからな。
本当に気が付いてくれて助かった。
雪音さんは、俺から少し離れた位置に体育座りで座る。
スカートを穿いていて、男と二人きりなのだから、すこしはその辺を考えて座ってほしいものだ。
しばらく休んでいると、ようやく落ちついてきた。
「月山さん」
「何でしょうか?」
「どうして、私に会計の――、事務の仕事を任せる気になったのですか?」
「どうしてとは?」
「だって、私は都内で保育士をしていたので……、あまり関係ない職種だというか……」
「目黒さんに推薦してもらったからです」
「目黒さんって、細工師の?」
雪音さんの問いかけに俺は相槌を打つ。
「それでも私に仕事を振るよりも、他に適切な人は――」
「適切な人だからこそ、貴女なんです。結城村に住んでいて、秘密を共有できる人間。そして資格を有している人間としたら限られますから」
「それって……、喜んでいい事なのでしょうか?」
どことなく不安な表情をしている彼女に俺は内心首を傾げる。
村長と一緒に居た時の雪音さんは、もっと前向きな性格の女性だと思ったからだ。
「そうですね。少なくとも自分にとっては無くてはならない存在だと思っています」
「本当ですか?」
「はい。あくまでも自分にとってはですが――」
「桜ちゃんには嫌われてしまっているようですけど……」
商売と桜がどう繋がるのか……、いまいち理解に苦しむが――。
まぁ、商売に関しては桜の許可も得られている事だしな。
「桜も、時間をかければ雪音さんを分かってくれると思いますよ」
まぁ、とりあえず励ましておくとしよう。
「それでは、そろそろ行きますか」
しばらく話していて動悸も治まってきた。
いつも通りカウンター傍のシャッター開閉ボタンを押すと音を立ててシャッターが上に上がっていく。
それに共だって、外から差し込む光がより一層店内を明るく照らしていく。
「これって……」
雪音さんも気が付いたのか、呆然とした様子で外の景色を見ている。
「とりあえず、自分は外の兵士と話をしてくるので待っていてください」
「わ、わかりました……」
何度も頷く雪音さんを店内に置いたまま異世界側へと通じる扉を開ける。
「ゴロウ様?」
目の前で待機していたナイルさんが話しかけてくる。
「こんにちはですかね」
「はい。それより、今日はどういった趣で? しばらくは、こちらの世界には来ないと伺っておりましたが……」
「それが、異世界では金の取引が難しくなってきたので、ルイズ辺境伯領の特産物を金で購入しようかと思っていて――」
「なるほど……、こちらの世界の特産物を異世界で販売するという事ですか」
「そうなります」
地球人から見たら、ノーマン辺境伯がいる世界こそが異世界なんだが――、そこは訂正する必要はない。
それにしても、こちらの考えを一瞬で理解してくれるのは、最初から説明しなくてもいいから非常に助かる。
「分かりました。それでは、ノーマン様に伝令だけは出しておきます」
「ありがとうございます」
「それでは市場に行かれるという事でいいんですよね?」
「そうなります」
「――では、私と数名の兵士で護衛を致します」
「そのへんは、特に大丈夫かと思いますが……」
「ゴロウ様に何かあれば私の首が飛びますので――」
「分かりました」
きっと誇張ではなく物理的に首が飛ぶんだろうなと思うと、さすがに無理に拒否することは出来ない。
「それで、じつは同行者が一人居るのですが大丈夫でしょうか?」
「同行者ですか? サクラ様でいらっしゃいますか?」
「いえ――、従業員です」
「それは……」
「何かマズイですか?」
「ご親族の方でしたら、問題ないのです。――ですが、それ以外の方ですと……、こちらの世界での身分証を発行する必要がありますので……」
「そんな物を聞かれたことがないですね」
「もちろんです。ゴロウ様とサクラ様は、貴族としての魔力を持っていますので――、ノーマン様が貴族籍を作り用意致しましたので」
いま聞き捨てならない内容の言葉が聞こえたような気がするぞ?
「貴族籍ですか?」
「はい。ルイズ辺境伯のみならずエルム王国では国内に滞在する際には、かならず身分証というのは必要になりますので」
「なるほど……」
「その為、身分証明書を発行する形になるのです。――ですが、それは此方の世界の人間に限る形になります。今回は、従業員の方は異世界の方ですよね?」
「そ、そうなります」
話が――、あまりいい方向に進んでいるとは思えない。
「ですので、さすがに異世界人であっても理に反して連れてきた人間を受け入れる訳には行かないのです」
「そうですか……、それなら仕方無いですね」
雪音さんには、着いて来てもらったが、市場を一緒に調査するのは諦めるしかないようだ。
「ちなみにゴロウ様。従業員の方は男性ですか?」
「いえ、女性ですが……」
「なるほど……」
ナイルさんは、唇に手を当てながら思案した表情を見せる。
「それでしたら、ゴロウ様の奥様――、もしくは婚約者という事にすれば問題はないかと――」
「それは……」
「それに一般人の方ですと護衛する際にも色々とありますので、ゴロウ様の婚約者、もしくは妻という事にしておけば貴族に嫁いできた方を護衛するという大義名分も出来ます。その方が、兵士も動きやすいのです」
「そうですか……」
たしかに、そう言われるとそうかも知れないが――。
田口村長からも雪音さんを「よろしく頼む」と、頼まれたからな。
それに、市場に行っても俺だと気が付かないことがありそうだし……。
「わかりました。一度、従業員に確認を取ってみます」
「よろしくお願いします」
ナイルさんと別れ店内に戻ると、雪音さんがガラス壁から見える異世界の街並みを興味津々に見ている。
「――あっ。月山さん! どうでしたか? それにしても異世界って本当に存在したんですね。おじいちゃんが言っていたので、呆けが始まったのかなって心配していたんですけど……」
ずいぶんな言われようだが、普通に異世界が存在すると言われたら誰でも――、その人を心配することだろう。
「あの……、雪音さん」
「はい? 何でしょうか?」
「実は、ここの町を治めている辺境伯直轄の部下の人に、異世界人で戸籍の無い人は町というか国への入国の許可は難しいと言われていまして……」
「それじゃ! 私は、こんな楽しそうな光景が見える町を散策出来ないという事ですか?」
「そうなります」
「そんなー」
異世界の街並みや住人を見ていた時の雪音さんの目は輝いていた。
思った通り落胆の色を表情に浮かべてくる。
「…………あれ? でも、月山さんも私達と同じ日本人ですよね?」
「まぁ半分は――」
「半分? もしかして月山さんは異世界人だったりするんですか?」
「半分は……」
「えっと……、つまり異世界人とのハーフってことですか?」
「そうですね」
「つまり、月山さんは異世界に戸籍があると?」
「はい」
「なるほど……」
しばらく目の前で唸りながら考え込んでいた雪音さんであったが――、ハッ! とした表情をして俺を見てくる。
「――あ、あの! 私、閃いたんですけど! とりあえず月山さんの婚約者とか、そんな感じにすれば、身内特典みたいな感じで町の中を散策できたりしませんか?」
「たぶん可能だと思います」
「――なら! ソレで行きましょう!」
「そんなに軽い感じで受けてしまっていいんですか?」
俺としては理想的に話が進んだから別に問題はないんだけど……。
本当は、俺から提案するべき案件だった。
――でも……、20歳代の女性に40歳代のおっさんが婚約者とか言うとセクハラになるからな。
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