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第41話 飛行機事故ニュース

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「私のコネをフルで! 使っても90トンまでが即ご用意出来る範囲内でしょうか? ですが――、金額としては割引をしても600万円ほどは掛かってしまい――」
「本当ですか! なら明日には届けて頂けますか?」
「――え!? ――で、ですが……、お金は――」
「全部、現金で! 一括で! お支払いしますので!」
「一括で!? 600万円を!? ちょ、ちょっとお待ちを――、倉庫を確認してきますので!」
 
 藤和さんが慌てた声で受話器を保留もせず離れたようだ。
 それにしても、さっきはコネをフルに活用すると言って90トンもの塩を集めると言っていたが、どうして倉庫に見にいったんだろうか?

「ああ、なるほど――」

 そこで俺は得心いった。
 きっと知り合いの業者に連絡しに行ったのだろう。
 つまり、知り合いの業者の倉庫を確認してくるという意味でさっきの言葉を言っただけだ。
 俺としたことが、90トンもの塩を藤和さんが抱えていると勘違いしてしまった。

「月山様、お待たせしました。明日のお昼までには90トンの塩を納入できそうです」
「分かりました。それで、金額の方ですが――」
「税金と割引を含めて650万円ほどでいいです」
「そうですか、分かりました。用意しておきますのでよろしくお願いします」

 銀行の預金と合わせると、手持ちは800万円ほど。
 650万円を支払ってしまうと一時的に手持ちが100万円ほどになってしまうが塩をノーマン辺境伯に納入すれば十分すぎるほどの元が取れる。

「まぁ問題は――、フォークリフトが届くのが遅かったら90トンの塩を手作業で運ぶだけの作業になりそうということだけか……」



 ――さて、あとは……。

 部屋の時計を見ると時刻は午後5時を過ぎていた。
 
「あと7時間か……」

 やはり大量の塩を納入するにあたってノーマン辺境伯には話を通しておくべきだろう。
 それに、宝石も返して金に代えて貰った方がいい。
 こんなのを家に置いておいてもお金に代えられないのなら宝の持ち腐れだからな。

 それにしても、良かれと思って主婦掲示板に聞いた料理が失敗するとは……、時間が来るまで動画サイトで勉強でもするとしよう。

「……なるほど、チキンライスが必要なのか……」

 色々と動画サイトの料理内容は勉強になる。
 そのうち、桜が喜んでくれるような料理が作れるようになればいいんだけどな……。

「一応、ニュースサイトでも見ておくか。ここ最近、忙しくてテレビも殆ど見られなかったからな」

 パソコンで、ニュースサイトを閲覧して内容を確認していく。
 別段、珍しい物は見当たらない。

「とくに――、それらしい物はないか」

 ニュースサイトを閉じようとカーソルを移動させようとしたところで手が止まる。

「これは……」

 妹が乗っていた飛行機事故に関する内容が書かれている。
 内容は、飛行機がマレーシア沖で消息を絶ったという事は以前と同じだったが――、見つかった機体の破片などが別の飛行機の物であったため、妹の乗っていた飛行機が墜落したかどうかすら分からないと言った内容であった。

「どういうことだ? 引き続き調査を続行するとは書かれているが――」

 本来、飛行機は燃料が無くなれば落ちるはず。
 そもそも飛行機を着陸させる為には長い滑走路が必要不可欠であり、洋上で――、海の上で胴体着陸した場合には機体損傷は免れないし、何より何の連絡もつかないのはおかしい。

 ニュースに書かれている航空機関係に詳しい専門家も、俺と同じような事を指摘しているし、何より今の携帯電話は去年に日本が打ち上げた通信衛星と接続できるようになっていて、マレーシア付近なら電波を受信できたはず。
 
 以前に、そういうニュースが流れていた。

「飛行機が突然、影も形もなく消えることなんてあり得るのか? 調査は、引き続き続行するようだな」

 もしかしたら妹が生きているかも知れないという期待に安堵しつつ、お昼寝をしている桜の方を見ると畳の上に敷いた布団の上で良く寝ている。

 桜に、飛行機事故の進捗を――、もしかしたら母親が生きているかも知れないという事を伝えるべきだろうか。
 いや――、不確かな情報で一喜一憂させるのは好ましくないだろう。

 もう少し詳細な情報が入ってきてからでも遅くはない。

「五郎、ひさしぶりだのう」

 思案していた所で、玄関を通さずに縁側の方から村長が俺にいきなり話しかけてきた。

「――そ、村長! お久しぶりです。それより玄関がありますよ」
「この時間だと、桜ちゃんがお昼寝しているかと思ってのう」
「なるほど……」

 つまり村長なりに気を利かせたということか。

「それでな、五郎にちょっと話があって来たのだ」
「話とは何でしょうか?」
「うむ。踝からな、水洗トイレの配管を通すという話を聞いたんじゃが――」
「ああ、そのことですね。たしかに、そういう話をして一応、話は纏まったのですが……」

 踝さんの方から村長に話を通したのか。
 それにしても、お金は俺が払うのに何故だろうか?

「踝に桜ちゃんが何か困っていたら報告するようにと言っておったのだが……」
「なるほど、それで下水管の工事の話も村長の元にいったということですか」
「そうなるのう。ところでだ! こんなのがあるんだがどうかのう?」

 村長が、俺に手渡してきたのは完全独立型トイレのパンフレット。
  
「これは……」
「うむ。実はのう――、今度、寄り合い所のトイレを新しくしようと考えておったんだが――、先に五郎のところで、このトイレを置いて使い勝手を見てはどうかと思っての」
「なるほど……、こんなのもあるんですね」

 パンフレットを開いて中を見ていく。

「太陽光パネルで電気を作り電源を賄えるわけですか」
「うむ。しかも、すごいのはそれだけではないのだ。排泄物などは微生物で分解処理するために、汲み取り作業も不要という完全自己処理型のトイレでのう」
「こ、これは……、すごいですね」

 こんな物があるとは思わなかった。
 しかも大きさは高さ奥行き、横幅と5メートルずつ。
 無駄に広い駐車スペースを2台潰して置くだけで下水管工事も必要なくなるという優れもの……。
 ただ、お値段は1000万円近い。
 それに一つ言いたいのはシャワー室まで完備とか、そういう機能は必要なのだろうか?

「それにしても、これって増設も出来るんですね」
「そうだのう。どうじゃ? 良かったら儂の方から話を通しておくぞ? それに――、今後は必要になるかも知れんからのう」
「今後?」
「いや――、こっちの話じゃ。今なら、納入予定の物を、五郎の店に回すがどうじゃ? 無料で!」
「――いや、さすがにそこまでしてもらう訳には……」
「ふむ。なら異世界と貿易して稼いだお金で払ってくれればよい。調味料関係は高く売れたのにと五郎――、お主の父親も言っておったからのう」
「親父が?」
「うむ。あとな――、胡椒の取り扱いだけには気を付けるのだ。金と同等の価値で取引されていたらしいからのう」
「なるほど……」

 普通に胡椒などを店で販売しようと考えていたが、異世界で開店する前にはノーマン辺境伯に確認しておいた方が良さそうだな。 

「村長、このトイレに関してですが――、しばらく考えさせてもらっても大丈夫ですか?」
「うむ。よいが……、店の方の改築もあるのだろう?」
「はい。水洗トイレに関しては、そのまま続けたいと思います。実家の方も、下水管を繋げる予定ですので――」
「なるほどのう。実家も考えるとそれが良いのかもしれんか」
「はい。こちらのパンフレットについては別で考えたいと思います」
「分かった。また困ったことがあったら相談するといい」
「ありがとうございます」
「よいよい」

 村長が庭から出ていくのを見送ったあとパンフレットに目を落とす。
 それにしても、設置するだけで使えるというのはかなり魅力的な物だ。
 一考する余地は十分にありそうだな。



 


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