25 / 437
第25話 現地視察と取引交渉
しおりを挟む
――ただ、一点だけ気になった物が目に入った。
壁掛けの写真――、人物は年齢としては70歳ほど。
名前は、藤和一と書かれている。
以前に、親父の業務日誌に出てきた名前。
「それでは、こちらにお座りください」
事務所内の一角。
パーティションで区切られた場所に、俺と桜は通される。
ソファーに座ったあとは、30代の女性が入ってくると3人分のお茶を出したあと、頭を下げて立ち去った。
「お待たせしました」
広辞苑のような分厚い資料を持って現れた藤和一成は、テーブルを挟んで向かい側に座る。
「いえ、こちらこそ――、突然来てしまって――」
「いえいえ、このようなご時世ですから……。それで、月山さんは当社のご利用は初めてでいらっしゃいますよね?」
丁度、話題を振ってきてくれたな。
気になったことを聞くとしよう。
「その前に、失礼ですが――、事務所内の壁に掛けられている肖像画の方ですが……」
「ああ、私の父です」
「なるほど……、おそらくですが月山雑貨店と藤和一さんの間では、取引があったと思うのですが――」
「私の父が……ですか?」
「はい。私の父の業務日誌に書いてあったので……、ですが――、再度、取り引きを行おうと電話をした会社が、株式会社藤和だったのです。そちらでは、取引データは残っていたのですが、断られてしまって……」
「そうですか……」
俺の言葉を聞いていた藤和一成さんが沈んだ表情になり。
「――実は……、株式会社藤和は、私の父である藤和一が興した会社なのです。ただ――、母が他界してからボケてしまい土地・建物・権利を専務であった飯塚幸三に奪われてしまったのです。私は、アメリカに仕事で滞在していたので……、そのことに気が付かず、気が付いた時には――」
「そうですか……」
あまり深入りにするのはあれだな。
「申し訳ありません。このような話を――」
「いえ、こちらこそ」
「それでは商談の話に戻させて頂いても?」
「ええ」
「――では、月山様は、どのような商品をお求めでしょうか?」
「じつは、そのことなのですが……。月山雑貨店は、これから開店させる予定なのですが、仕入れの商品など、まだどこの問屋・仲卸とも契約をしていない状態でして……」
「――と、言いますと? まさか、これから問屋を探されるということでしょうか?」
「ええ、まあ――、そうなります」
俺は溜息交じりに、結城村の月山雑貨店が置かれている状況を説明する。
「なるほどなるほど……、それでは我が問屋の藤和が全力で商品入荷と発注をお手伝いしたいと思います。法人口座などは、すでに開設されていらっしゃいますか?」
「いえ……」
そういえば、法人口座なんて作ってないな。
「畏まりました。それでは、お支払いは個人口座と言う事で宜しいでしょうか?」
その言葉に、俺は目黒さんから注意された事を思い出す。
目黒さんは、銀行経由で取引を行った場合、公的機関に資金の流れが知られてしまうと言っていた。
つまり、金の流通経路が判明する可能性がある! ということだ。
月山雑貨店が異世界と繋がっているという事情を知っている人数は少なければ少ない方がいい。
それなら銀行口座を経由して取引を行うのはナンセンスだろう。
「しばらくは現金でお願いできますか?」
「――げ、現金でございますか?」
一瞬、藤和一成の表情が明るく見えた気がしたが、気のせいだろう。
まあ、せっかく見つかった父親の代から利用していた問屋だ。
現金で駄目なら、口座も上手くやれば何とかなるだろう。
「不都合があれば、銀行口座でも構いませんが……」
「――い、いえ! そんな事はありません。現金ですね! もちろんです。いつでもニコニコ一括払いは当社も歓迎しております」
「そうですか」
現金で取引が出来る事に内心、安堵する。
「月山様。出来れば――、一度、店舗の方にお伺いさせて頂きたいのですが……」
「構いませんが?」
まぁ、俺としても店を始める以上、商品はきちんと置いておきたい。
プロの目線から、どういう物を置けばいいのかをアドバイスしてもらえることは頼もしいことだ。
「それでは少しお待ちください」
藤和一成は立ち上がると、俺達が座っていたブースから出ていく。
そして、先ほどお茶を持ってきた女性と話をしたあとすぐに戻って来る。
「月山様、お待たせしました。今から、向かいたいと思うのですが案内してもらっても?」
「構いませんが? 他のお客などは大丈夫ですか?」
「――はい。もちろんです。すぐに向かいましょう!」
すぐに現場を視察してくれるのは、こちらとしても願ったり叶ったりなんだが……、月山雑貨店が、どこの問屋とも仲卸とも契約をしていないと言った時、現金で払うと言ったとき、明らかにやる気を見せていたんだが……、やはり手付かずの店舗というのは珍しいのかもしれないな。
問屋の藤和から出たあと、桜と共に車に乗り込む。
そして藤和一成が運転する車が、問屋の藤和の敷地から出てくる。
車は軽トラック。
俺の車を先頭に走り始める。
そして結城村の月山雑貨店に到着したのは、それから2時間後。
軽トラックと言う事もあり坂道を上がる際に、速度が出ず時間が掛かったのが原因だ。
「こちらが月山雑貨店になります」
店のシャッターは開いていた。
リフォーム踝が店内改装をしていたからであった。
「おお、五郎。どこに行っていたんだ?」
「ちょっと問屋が見つかったので――」
「そうか、そうか。ようやく開店か。酒やタバコを置いてくれると助かる」
「検討します」
「おお、ずいぶんと大きな店舗なのですね。これなら、物資が大量に必要ですね」
店内に入った藤和一成が、カタログを片手に持ちながら独り言を呟いていた。
リフォーム会社 踝が工事している間――、店内を一通り見終わったあと、これからの打ち合わせということで実家の居間へと場所を移す。
現在の時刻は、午後4時。
7月下旬と言う事もあり、まだ日は高く熱い。
「こちらへどうぞ」
藤和さんを居間に通す。
4部屋の内、一部屋は応接室として使う予定だったので、テーブルしか置いていない事が幸いし、二人分の座布団だけを用意するだけで事足りた。
「桜、俺は藤和さんとお店の事で話をするから部屋で待っているんだよ」
俺の言葉にぶんぶんと首を横に振ってきたかと思うと、姪っ子の桜はタタッと小走りで自分の部屋に入り、ノートを持ってすぐに戻ってきた。
「おじちゃん! 桜も一緒にいくの!」
まっすぐに目を見て話しかけてくる桜。
「それじゃノートだけ借りていいか? まだ、正式に契約が済んだわけではないから分かってくれるか?」
「…………う、うん」
目を伏せて桜が頷くのを見ながら、頭を撫でる。
さすがに、こちらも色々と渡したくない情報があるのだ。
安易に話を持っていくのはよろしくはない。
桜が部屋に入っていくのを見送ったあと、藤和さんが待っている居間へと戻る前に台所に行き、麦茶のボトルを冷蔵庫から取り出しコップに氷を入れたあと、麦茶を注いでから居間へと戻る。
「藤和さん、お待たせしました」
「――いえ、こちらこそ」
二人して用意した麦茶を飲んだあと、今度の仕入れなどに関して俺から話し始める。
「それで店舗内を見て頂いてどうでしたでしょうか?」
「そうですね……。まずは、私が思ったのはずいぶんと広い店舗だったという事です。そのため、多くの製品が置けると思っているのですが――」
藤和さんが言い淀む。
「プロの立場から見て、何か改善提案とかあれば遠慮なく言っていただけますか?」
「――いえ、改善提案というよりかは予算的にどうなのか……、と、思いまして――」
「なるほど……。そうですね、予算は200万円くらいを考えています」
「に、200万円ですか!?」
「はい。即金で200万円です」
「なるほど、なるほど」
藤和さんは、真剣な表情でカタログをテーブルの上に載せてくる。
どうやら、早く商談に入りたいようだ。
まぁ、こんな田舎まで来て商談が成立しないと藤和さんが困るのは分かる。
だが、俺としては先に確認しておきたい事がある。
「それと……」
「何か要望があれば、すぐに対応させていただきます!」
先に金額を提示したのが功を制したのか、打てば響くがごとく答えが返ってくる。
「じつは塩が欲しいのです」
「塩ですか? 調味料と言う事でしょうか?」
「そうですね」
まあ、異世界で使うのだから、それも調味料だろう。
「当社と致しましては塩の在庫は特にあります。それで量としては如何ほど――」
「はい。10トンほど塩が欲しいのです。ご用意できますか?」
「じゅ、10トンでございますか?」
「はい。とりあえず10トン欲しいのですが……、ご用意できますでしょうか? その分は200万円とは別に100万円を即金で用意しております」
俺の問いかけに、藤和一成が唾を飲み込んだ音が聞こえてきた。
壁掛けの写真――、人物は年齢としては70歳ほど。
名前は、藤和一と書かれている。
以前に、親父の業務日誌に出てきた名前。
「それでは、こちらにお座りください」
事務所内の一角。
パーティションで区切られた場所に、俺と桜は通される。
ソファーに座ったあとは、30代の女性が入ってくると3人分のお茶を出したあと、頭を下げて立ち去った。
「お待たせしました」
広辞苑のような分厚い資料を持って現れた藤和一成は、テーブルを挟んで向かい側に座る。
「いえ、こちらこそ――、突然来てしまって――」
「いえいえ、このようなご時世ですから……。それで、月山さんは当社のご利用は初めてでいらっしゃいますよね?」
丁度、話題を振ってきてくれたな。
気になったことを聞くとしよう。
「その前に、失礼ですが――、事務所内の壁に掛けられている肖像画の方ですが……」
「ああ、私の父です」
「なるほど……、おそらくですが月山雑貨店と藤和一さんの間では、取引があったと思うのですが――」
「私の父が……ですか?」
「はい。私の父の業務日誌に書いてあったので……、ですが――、再度、取り引きを行おうと電話をした会社が、株式会社藤和だったのです。そちらでは、取引データは残っていたのですが、断られてしまって……」
「そうですか……」
俺の言葉を聞いていた藤和一成さんが沈んだ表情になり。
「――実は……、株式会社藤和は、私の父である藤和一が興した会社なのです。ただ――、母が他界してからボケてしまい土地・建物・権利を専務であった飯塚幸三に奪われてしまったのです。私は、アメリカに仕事で滞在していたので……、そのことに気が付かず、気が付いた時には――」
「そうですか……」
あまり深入りにするのはあれだな。
「申し訳ありません。このような話を――」
「いえ、こちらこそ」
「それでは商談の話に戻させて頂いても?」
「ええ」
「――では、月山様は、どのような商品をお求めでしょうか?」
「じつは、そのことなのですが……。月山雑貨店は、これから開店させる予定なのですが、仕入れの商品など、まだどこの問屋・仲卸とも契約をしていない状態でして……」
「――と、言いますと? まさか、これから問屋を探されるということでしょうか?」
「ええ、まあ――、そうなります」
俺は溜息交じりに、結城村の月山雑貨店が置かれている状況を説明する。
「なるほどなるほど……、それでは我が問屋の藤和が全力で商品入荷と発注をお手伝いしたいと思います。法人口座などは、すでに開設されていらっしゃいますか?」
「いえ……」
そういえば、法人口座なんて作ってないな。
「畏まりました。それでは、お支払いは個人口座と言う事で宜しいでしょうか?」
その言葉に、俺は目黒さんから注意された事を思い出す。
目黒さんは、銀行経由で取引を行った場合、公的機関に資金の流れが知られてしまうと言っていた。
つまり、金の流通経路が判明する可能性がある! ということだ。
月山雑貨店が異世界と繋がっているという事情を知っている人数は少なければ少ない方がいい。
それなら銀行口座を経由して取引を行うのはナンセンスだろう。
「しばらくは現金でお願いできますか?」
「――げ、現金でございますか?」
一瞬、藤和一成の表情が明るく見えた気がしたが、気のせいだろう。
まあ、せっかく見つかった父親の代から利用していた問屋だ。
現金で駄目なら、口座も上手くやれば何とかなるだろう。
「不都合があれば、銀行口座でも構いませんが……」
「――い、いえ! そんな事はありません。現金ですね! もちろんです。いつでもニコニコ一括払いは当社も歓迎しております」
「そうですか」
現金で取引が出来る事に内心、安堵する。
「月山様。出来れば――、一度、店舗の方にお伺いさせて頂きたいのですが……」
「構いませんが?」
まぁ、俺としても店を始める以上、商品はきちんと置いておきたい。
プロの目線から、どういう物を置けばいいのかをアドバイスしてもらえることは頼もしいことだ。
「それでは少しお待ちください」
藤和一成は立ち上がると、俺達が座っていたブースから出ていく。
そして、先ほどお茶を持ってきた女性と話をしたあとすぐに戻って来る。
「月山様、お待たせしました。今から、向かいたいと思うのですが案内してもらっても?」
「構いませんが? 他のお客などは大丈夫ですか?」
「――はい。もちろんです。すぐに向かいましょう!」
すぐに現場を視察してくれるのは、こちらとしても願ったり叶ったりなんだが……、月山雑貨店が、どこの問屋とも仲卸とも契約をしていないと言った時、現金で払うと言ったとき、明らかにやる気を見せていたんだが……、やはり手付かずの店舗というのは珍しいのかもしれないな。
問屋の藤和から出たあと、桜と共に車に乗り込む。
そして藤和一成が運転する車が、問屋の藤和の敷地から出てくる。
車は軽トラック。
俺の車を先頭に走り始める。
そして結城村の月山雑貨店に到着したのは、それから2時間後。
軽トラックと言う事もあり坂道を上がる際に、速度が出ず時間が掛かったのが原因だ。
「こちらが月山雑貨店になります」
店のシャッターは開いていた。
リフォーム踝が店内改装をしていたからであった。
「おお、五郎。どこに行っていたんだ?」
「ちょっと問屋が見つかったので――」
「そうか、そうか。ようやく開店か。酒やタバコを置いてくれると助かる」
「検討します」
「おお、ずいぶんと大きな店舗なのですね。これなら、物資が大量に必要ですね」
店内に入った藤和一成が、カタログを片手に持ちながら独り言を呟いていた。
リフォーム会社 踝が工事している間――、店内を一通り見終わったあと、これからの打ち合わせということで実家の居間へと場所を移す。
現在の時刻は、午後4時。
7月下旬と言う事もあり、まだ日は高く熱い。
「こちらへどうぞ」
藤和さんを居間に通す。
4部屋の内、一部屋は応接室として使う予定だったので、テーブルしか置いていない事が幸いし、二人分の座布団だけを用意するだけで事足りた。
「桜、俺は藤和さんとお店の事で話をするから部屋で待っているんだよ」
俺の言葉にぶんぶんと首を横に振ってきたかと思うと、姪っ子の桜はタタッと小走りで自分の部屋に入り、ノートを持ってすぐに戻ってきた。
「おじちゃん! 桜も一緒にいくの!」
まっすぐに目を見て話しかけてくる桜。
「それじゃノートだけ借りていいか? まだ、正式に契約が済んだわけではないから分かってくれるか?」
「…………う、うん」
目を伏せて桜が頷くのを見ながら、頭を撫でる。
さすがに、こちらも色々と渡したくない情報があるのだ。
安易に話を持っていくのはよろしくはない。
桜が部屋に入っていくのを見送ったあと、藤和さんが待っている居間へと戻る前に台所に行き、麦茶のボトルを冷蔵庫から取り出しコップに氷を入れたあと、麦茶を注いでから居間へと戻る。
「藤和さん、お待たせしました」
「――いえ、こちらこそ」
二人して用意した麦茶を飲んだあと、今度の仕入れなどに関して俺から話し始める。
「それで店舗内を見て頂いてどうでしたでしょうか?」
「そうですね……。まずは、私が思ったのはずいぶんと広い店舗だったという事です。そのため、多くの製品が置けると思っているのですが――」
藤和さんが言い淀む。
「プロの立場から見て、何か改善提案とかあれば遠慮なく言っていただけますか?」
「――いえ、改善提案というよりかは予算的にどうなのか……、と、思いまして――」
「なるほど……。そうですね、予算は200万円くらいを考えています」
「に、200万円ですか!?」
「はい。即金で200万円です」
「なるほど、なるほど」
藤和さんは、真剣な表情でカタログをテーブルの上に載せてくる。
どうやら、早く商談に入りたいようだ。
まぁ、こんな田舎まで来て商談が成立しないと藤和さんが困るのは分かる。
だが、俺としては先に確認しておきたい事がある。
「それと……」
「何か要望があれば、すぐに対応させていただきます!」
先に金額を提示したのが功を制したのか、打てば響くがごとく答えが返ってくる。
「じつは塩が欲しいのです」
「塩ですか? 調味料と言う事でしょうか?」
「そうですね」
まあ、異世界で使うのだから、それも調味料だろう。
「当社と致しましては塩の在庫は特にあります。それで量としては如何ほど――」
「はい。10トンほど塩が欲しいのです。ご用意できますか?」
「じゅ、10トンでございますか?」
「はい。とりあえず10トン欲しいのですが……、ご用意できますでしょうか? その分は200万円とは別に100万円を即金で用意しております」
俺の問いかけに、藤和一成が唾を飲み込んだ音が聞こえてきた。
695
お気に入りに追加
1,961
あなたにおすすめの小説
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる