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第4話 姪っ子はゲームが好き
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こっそり後ろから何のテレビゲームをしているのか見ると、どうやら経営シミュレーションゲームをしているようで――。
「それゆけ! コンビニか……」
たしか資金が5000万円スタートで、コンビニを作って棚や商品を仕入れて店を大きくしていくゲームだったな。
俺が社会人なりたての時に購入して、ほとんど遊ばずに放置していたものだ。
よく、そんな古いゲームを段ボールの中から見つけたものだな。
それにしても、桜は来年から小学校入学するのに、こんな高度な経営シミュレーションゲームをして面白いのか?
しかも建築場所を選んで店を建てる訳でもなく、オプション画面ばかり開いて「リピーターが大事、季節物も大事、顧客回転数も……」とブツブツと言いながらノートに鉛筆で何やら書いているし。
女の子の遊び方というのは、こういうものなのか?
おままごとの延長みたいな?
女の子というのはよく分からないな。
俺が桜くらいの小さい頃は、ダンゴムシを集めてコレクションにしていたが、やはり男と女では遊び方が違うのだろう。
まぁ、夢中になっているところ悪いが――。
「桜」
「――ひ、ひゃい!?」
俺の言葉に、ぴくんっ! と体を一瞬震わせたかと思うと桜が涙目で振り返ってくる。
どうして、涙目なのか……。
何も俺は悪いことしていないよな?
「お、おじちゃん……」
「お兄さんな」
とりあえず訂正しておくことは忘れない。
「村の皆が俺達が引っ越してきたことを祝ってくれるんだが、桜はどうする? ゲームが楽しいなら夕飯食べてゲームしておくか?」
「……人いっぱいくるの?」
やっぱり人がたくさん居るところは苦手なのか?
まあ施設とかの件もあったからな。
でも、嘘をつくのはよくない。
「ああ、たぶん……」
「……何人くらいなの?」
「どうだろうな? 4~50人はくると思うが、人混みが苦手なら別に無理はしなくていいぞ?」
「…………いくの。マーケティングは大事なの……」
マーケティングって……。
いま覚えたばかりの用語を使ってくるとは……。
まあ、小さい頃はゲームに影響される事はよくあることだからな。
「それじゃ戸締りしてくるから、桜もお出かけの準備しておけよ」
「……うん」
家の戸締りが終わったあと、結城村の寄り合い所に車で向かう。
一応、寄り合い所は実家の隣にあるため車で3分くらい走れば到着できる。
寄り合い所に到着したあとは、踏み固められただけの土の駐車場に車を停める。
桜と一緒に平屋の寄り合い所の横開きの扉をスライドさせる。
するとガラガラと音が鳴ると――、寄り合い所の奥の方から60歳くらいのおばさんが出てきた。
「おやおや――、五郎ちゃんじゃないの」
「田口さん、おひさしぶりです」
俺と桜を出迎えたのは、村長の妻である田口(たぐち) 妙子(たえこ)。
今年で65歳くらい? になったはずだ。
正確な年齢までは覚えていない。
「堅苦しい挨拶はいいのよ。それで、その子が恵子ちゃんの子供なの?」
「はい。桜と言います。来年から小学校に上がる予定なのですが――」
「まぁまぁ、そうなのね」
「おーい、妙子! 何をしている! さっさと五郎君を連れてこないか!」
「あら、いけないわね。ついつい話し込んでしまって――、こんなところじゃあれだから、ささっ、中にどうぞ――」
促されるまま俺と桜は寄り合い所の建物に、靴を脱いでから上がる。
奥の部屋では、すでに酒を飲んで出来上がっている村長をはじめとする顔役の姿も見られた。
日が沈みかけたところで俺と桜は、寄り合い所の建物から出た。
「また、集まりをするのでな。その時にこいよ」
村長である田口(たぐち) 隆造(りゅうぞう)は、顔を赤くして話しかけてくる。
俺が寄り合い所に到着し顔合わせをしてから2時間ほど経ったが、ずっと飲んでいたこともあり酒臭い。
「はい。それでは踝さんには――」
「分かっておる。棚の件は、儂のほうから言っておくから心配するな。それより、早く帰った方がええ。結城村は街灯がすくないからな」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げて、疲れて寝てしまっている桜を車の後部座席に乗せたあとエンジンを掛けると、アクセルを踏んだ。
車のライトをハイビームにしたまま車のハンドルを切りながら運転する。
家までは3分の距離だが、やけに長く感じる。
いつもは都会の道を走っていることもあり、距離感が掴めないのが一番の理由だろう。
村長が、完全に周囲が暗くなる前に早く帰れと言った意味が分かった気がする。
車を運転しながら、今日あった事を思い起こす。
今日は、ほとんど顔合わせだった。
村長から俺が引っ越してきたことと。
結城村で唯一の雑貨店が近々開店すること。
妹の恵子の娘――、つまり俺の姪っ子の桜が来年小学校に通うこと。
それだけが伝えられた。
それだけでも、「なるほど」と話が通ってしまうのが人口300人しかいない田舎の村のいいところでもある。
ちなみに、結城村には分校が一つあるだけで子供は桜を含めて6人しかいないらしい。
小学4年生
小学6年生
中学1年生
中学2年生
中学3年生
――の5人。
中学3年生は、桜が分校に入学する頃には卒業して都会の高校に行く事になっている。
そして寮にも住むことが決まっている。
つまり、桜が分校に入学する頃には、桜を含めて子供は5人しかいないという事になる。
どうりで、うちの桜がお年寄りに人気だったわけだ。
村長なんて「村を挙げて桜ちゃんを立派な大人にするぞ!」とか張り切っていたからな。
そんな言葉、俺の時なんて一度も言われたことがない。
まぁ、その時は分校ではなく結城小学校と結城中学校があったからな。
同世代だけでも200人くらいは居たし。
そうなると……、ずいぶんと過疎化しているんだなと感じてしまう。
ちなみに村長からは、男一人だと女の子を育てるのは大変だろうと村長の娘が明日から面倒を見てくれることになっているが――、俺としては旦那の相手はしなくていいのか? と疑問に思わずにはいられない。
まぁ、買い出しや店の開店の手続きなどを考えるとやることが一杯あるから助かるから好意に甘えるとしよう。
そうこう考えている内に、車のヘッドライトが月山雑貨店の看板を照らした。
「ようやく着いたか」
今日は、色々あったからな。
早めに風呂に入って寝るとしよう。
車を停めたあと後部座席で寝ている桜を両手で抱き上げる。
その時に、桜が大事に抱えていたノートが足元に落ちた。
すぐに拾い上げて助手席に置いたあと、桜を部屋まで運びベッドに寝かせる。
「やっぱり疲れているよな。熟睡しているようだし……風呂は明日でいいか」
部屋から出てドアを閉めたあと、俺はシャワーを浴びる。
そして寝巻に着替えたあと、自分の部屋に行き布団を敷いたあと横になり目を閉じた。
――ペタペタ
そろそろ眠れそうになったところで、何か知らないが廊下を誰かが歩く音が聞こえてくる。
この家には俺と桜しかいないはず。
それなのに廊下を歩く足音がするのはどういうことだ?
「……ま、まさか……」
幽霊とか、そういうのじゃないよな?
親父とか母親が化けて出てきたとか?
そういうベタな展開を俺は求めていない。
――ペタペタペタ
やっぱり誰か歩いている。
間違いない。
お、おちつけ……、そ、素数を数えろ……。
2、4、8、16……。
――ペタペタ
足音が止まった?
しかも俺の部屋の襖の前で!?
「…………」
そっと布団から顏を出し襖の方を見る。
襖の障子紙を通して人影らしき物が見えるが……。
明らかに物の怪の類にしか見えない。
何故なら、その人影の頭には大きな丸い耳が付いていたから。
すでに心臓はドキドキを通り越してバクバクしている。
決して! オカルトが嫌いだとか! 心霊現象が苦手だとか! そんなんじゃない!
起きてしまっていることは、冷静にかつ慎重に対処するというか対応することが必要なだけであって! 俺が怖がりということは断じてないわけで! それだけは俺の名誉に誓って言いたいわけで!
心の中で必死に自分を取り繕っている間にも襖がゆっくりと開いていき――。
「ひいいいいい」
「おじちゃん?」
「…………」
「…………」
互いに無言になる。
最初から分かっていた。
幽霊なぞ居ないということくらい。
そもそも科学全盛期のこの時代。
魔法とか心霊現象とかそんな物があるわけがない。
「いやー、桜君。どうかしたのかな?」
「……ひと……なの」
「――ん?」
冷静に振舞ったというのに、返って来た答えは予想とは違った。
「どうかしたのか?」
「……一人はいやなの……」
それだけ言うと、桜が熊のぬいぐるみを抱いたまま部屋に入ってくると、布団に入ってくると横になってすぐに寝てしまった。
訳が分からない。
一人が嫌って……。
そういえば――。
アパートで3週間一緒に暮らしていた時は、毎日一緒に同じ布団で寝ていた。
つまり人肌が恋しいということか?
「とりあえずクーラーでもつけて寝るか」
一緒に寝るとなると夏だと暑くなるからな。
明日は、踝と打ち合わせして、雑貨店を開店するための商品の買い出しにいかないとな。
「それゆけ! コンビニか……」
たしか資金が5000万円スタートで、コンビニを作って棚や商品を仕入れて店を大きくしていくゲームだったな。
俺が社会人なりたての時に購入して、ほとんど遊ばずに放置していたものだ。
よく、そんな古いゲームを段ボールの中から見つけたものだな。
それにしても、桜は来年から小学校入学するのに、こんな高度な経営シミュレーションゲームをして面白いのか?
しかも建築場所を選んで店を建てる訳でもなく、オプション画面ばかり開いて「リピーターが大事、季節物も大事、顧客回転数も……」とブツブツと言いながらノートに鉛筆で何やら書いているし。
女の子の遊び方というのは、こういうものなのか?
おままごとの延長みたいな?
女の子というのはよく分からないな。
俺が桜くらいの小さい頃は、ダンゴムシを集めてコレクションにしていたが、やはり男と女では遊び方が違うのだろう。
まぁ、夢中になっているところ悪いが――。
「桜」
「――ひ、ひゃい!?」
俺の言葉に、ぴくんっ! と体を一瞬震わせたかと思うと桜が涙目で振り返ってくる。
どうして、涙目なのか……。
何も俺は悪いことしていないよな?
「お、おじちゃん……」
「お兄さんな」
とりあえず訂正しておくことは忘れない。
「村の皆が俺達が引っ越してきたことを祝ってくれるんだが、桜はどうする? ゲームが楽しいなら夕飯食べてゲームしておくか?」
「……人いっぱいくるの?」
やっぱり人がたくさん居るところは苦手なのか?
まあ施設とかの件もあったからな。
でも、嘘をつくのはよくない。
「ああ、たぶん……」
「……何人くらいなの?」
「どうだろうな? 4~50人はくると思うが、人混みが苦手なら別に無理はしなくていいぞ?」
「…………いくの。マーケティングは大事なの……」
マーケティングって……。
いま覚えたばかりの用語を使ってくるとは……。
まあ、小さい頃はゲームに影響される事はよくあることだからな。
「それじゃ戸締りしてくるから、桜もお出かけの準備しておけよ」
「……うん」
家の戸締りが終わったあと、結城村の寄り合い所に車で向かう。
一応、寄り合い所は実家の隣にあるため車で3分くらい走れば到着できる。
寄り合い所に到着したあとは、踏み固められただけの土の駐車場に車を停める。
桜と一緒に平屋の寄り合い所の横開きの扉をスライドさせる。
するとガラガラと音が鳴ると――、寄り合い所の奥の方から60歳くらいのおばさんが出てきた。
「おやおや――、五郎ちゃんじゃないの」
「田口さん、おひさしぶりです」
俺と桜を出迎えたのは、村長の妻である田口(たぐち) 妙子(たえこ)。
今年で65歳くらい? になったはずだ。
正確な年齢までは覚えていない。
「堅苦しい挨拶はいいのよ。それで、その子が恵子ちゃんの子供なの?」
「はい。桜と言います。来年から小学校に上がる予定なのですが――」
「まぁまぁ、そうなのね」
「おーい、妙子! 何をしている! さっさと五郎君を連れてこないか!」
「あら、いけないわね。ついつい話し込んでしまって――、こんなところじゃあれだから、ささっ、中にどうぞ――」
促されるまま俺と桜は寄り合い所の建物に、靴を脱いでから上がる。
奥の部屋では、すでに酒を飲んで出来上がっている村長をはじめとする顔役の姿も見られた。
日が沈みかけたところで俺と桜は、寄り合い所の建物から出た。
「また、集まりをするのでな。その時にこいよ」
村長である田口(たぐち) 隆造(りゅうぞう)は、顔を赤くして話しかけてくる。
俺が寄り合い所に到着し顔合わせをしてから2時間ほど経ったが、ずっと飲んでいたこともあり酒臭い。
「はい。それでは踝さんには――」
「分かっておる。棚の件は、儂のほうから言っておくから心配するな。それより、早く帰った方がええ。結城村は街灯がすくないからな」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げて、疲れて寝てしまっている桜を車の後部座席に乗せたあとエンジンを掛けると、アクセルを踏んだ。
車のライトをハイビームにしたまま車のハンドルを切りながら運転する。
家までは3分の距離だが、やけに長く感じる。
いつもは都会の道を走っていることもあり、距離感が掴めないのが一番の理由だろう。
村長が、完全に周囲が暗くなる前に早く帰れと言った意味が分かった気がする。
車を運転しながら、今日あった事を思い起こす。
今日は、ほとんど顔合わせだった。
村長から俺が引っ越してきたことと。
結城村で唯一の雑貨店が近々開店すること。
妹の恵子の娘――、つまり俺の姪っ子の桜が来年小学校に通うこと。
それだけが伝えられた。
それだけでも、「なるほど」と話が通ってしまうのが人口300人しかいない田舎の村のいいところでもある。
ちなみに、結城村には分校が一つあるだけで子供は桜を含めて6人しかいないらしい。
小学4年生
小学6年生
中学1年生
中学2年生
中学3年生
――の5人。
中学3年生は、桜が分校に入学する頃には卒業して都会の高校に行く事になっている。
そして寮にも住むことが決まっている。
つまり、桜が分校に入学する頃には、桜を含めて子供は5人しかいないという事になる。
どうりで、うちの桜がお年寄りに人気だったわけだ。
村長なんて「村を挙げて桜ちゃんを立派な大人にするぞ!」とか張り切っていたからな。
そんな言葉、俺の時なんて一度も言われたことがない。
まぁ、その時は分校ではなく結城小学校と結城中学校があったからな。
同世代だけでも200人くらいは居たし。
そうなると……、ずいぶんと過疎化しているんだなと感じてしまう。
ちなみに村長からは、男一人だと女の子を育てるのは大変だろうと村長の娘が明日から面倒を見てくれることになっているが――、俺としては旦那の相手はしなくていいのか? と疑問に思わずにはいられない。
まぁ、買い出しや店の開店の手続きなどを考えるとやることが一杯あるから助かるから好意に甘えるとしよう。
そうこう考えている内に、車のヘッドライトが月山雑貨店の看板を照らした。
「ようやく着いたか」
今日は、色々あったからな。
早めに風呂に入って寝るとしよう。
車を停めたあと後部座席で寝ている桜を両手で抱き上げる。
その時に、桜が大事に抱えていたノートが足元に落ちた。
すぐに拾い上げて助手席に置いたあと、桜を部屋まで運びベッドに寝かせる。
「やっぱり疲れているよな。熟睡しているようだし……風呂は明日でいいか」
部屋から出てドアを閉めたあと、俺はシャワーを浴びる。
そして寝巻に着替えたあと、自分の部屋に行き布団を敷いたあと横になり目を閉じた。
――ペタペタ
そろそろ眠れそうになったところで、何か知らないが廊下を誰かが歩く音が聞こえてくる。
この家には俺と桜しかいないはず。
それなのに廊下を歩く足音がするのはどういうことだ?
「……ま、まさか……」
幽霊とか、そういうのじゃないよな?
親父とか母親が化けて出てきたとか?
そういうベタな展開を俺は求めていない。
――ペタペタペタ
やっぱり誰か歩いている。
間違いない。
お、おちつけ……、そ、素数を数えろ……。
2、4、8、16……。
――ペタペタ
足音が止まった?
しかも俺の部屋の襖の前で!?
「…………」
そっと布団から顏を出し襖の方を見る。
襖の障子紙を通して人影らしき物が見えるが……。
明らかに物の怪の類にしか見えない。
何故なら、その人影の頭には大きな丸い耳が付いていたから。
すでに心臓はドキドキを通り越してバクバクしている。
決して! オカルトが嫌いだとか! 心霊現象が苦手だとか! そんなんじゃない!
起きてしまっていることは、冷静にかつ慎重に対処するというか対応することが必要なだけであって! 俺が怖がりということは断じてないわけで! それだけは俺の名誉に誓って言いたいわけで!
心の中で必死に自分を取り繕っている間にも襖がゆっくりと開いていき――。
「ひいいいいい」
「おじちゃん?」
「…………」
「…………」
互いに無言になる。
最初から分かっていた。
幽霊なぞ居ないということくらい。
そもそも科学全盛期のこの時代。
魔法とか心霊現象とかそんな物があるわけがない。
「いやー、桜君。どうかしたのかな?」
「……ひと……なの」
「――ん?」
冷静に振舞ったというのに、返って来た答えは予想とは違った。
「どうかしたのか?」
「……一人はいやなの……」
それだけ言うと、桜が熊のぬいぐるみを抱いたまま部屋に入ってくると、布団に入ってくると横になってすぐに寝てしまった。
訳が分からない。
一人が嫌って……。
そういえば――。
アパートで3週間一緒に暮らしていた時は、毎日一緒に同じ布団で寝ていた。
つまり人肌が恋しいということか?
「とりあえずクーラーでもつけて寝るか」
一緒に寝るとなると夏だと暑くなるからな。
明日は、踝と打ち合わせして、雑貨店を開店するための商品の買い出しにいかないとな。
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