本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第194話 復讐の時間だ! 覚悟はいいな!(1)

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 耳障りな音が途切れると共に、雷撃魔法が消失し――、炭と化した高山の身体は前のめりに崩れる。
 体の節々から煙が立ち上り肉の焼ける匂いが周囲に漂う。

「おのれ……。これが、これが田中一馬……、お前の力か……」
「まだ生きているのか」

 俺は、長年、自分自身を虐めてきた高山浩二を見下ろしながら近づく。

「まさか……、お前のようなゴミに……」
「何を言っている? 誰かを貶めて愉悦に浸り、暴力を振るうことで自身の虚栄心を見たそうとしていた犯罪者が――。どの口で、他人をゴミと蔑むことが出来るんだ?」

 倒れていた高山の頭を足で踏みつける。
 カエルの潰れたような声が聞こえてくるが、気のせいだろう。

「なあ? お前、俺を虐めていた時、どう思ったよ?」
「何を……ぐふぉ」

 高山の頭を蹴り飛ばす。
 もちろん手加減をして――。

「なあ、自分が圧倒的優位の状況から誰かを殴って蹴るのは楽しかったか?」

 地面の上を転がっていく高山の首を掴む。
 体格差は否めないが、立てる力もないようで顔だけを俺に向けている男を俺は睨みつける。

 そして――、俺は高山の顔面に向けて拳を振り下ろす。
 モンスター化した高山の顔には無数の鱗があったが、俺の強化されたステータスには存在しないも同じで、一発殴っただけで高山の鱗が弾け飛ぶ。
 
 ――ああ、怒りが収まらない。

 40歳を過ぎても、学生の頃に受けた虐めという嘘の犯罪名で刻まれた精神的な痛みというのは薄まる事は無かった。
 よく、時が過ぎれば、学校の虐められた記憶は劣化し過去の物となると語っているコメンテーターや政治家や評論家や弁護士がいるが、あんなのは嘘だった。
 全て誤魔化しにすぎない。
 そう、虐められた事がない人間の妄想に過ぎない。
 よく犯罪者にも人権はあると弁護士会のゴミ共は語るが、あんなのは体の良い子供だましだ。
 虐めというのは犯罪! そう刑事罰! それを事実無根にしようとしているに過ぎない。
 大抵、虐めをする連中ってのは権力者側の人間だから、そういう事にしたいのだ。

 ――もう一度、高山の顔面に拳を振り下ろす。
 
 すると肉を潰すような音と感触と共に骨が軋む音が拳を伝わってくる。

「不愉快だ」
「――あ、ががが……」
「どうして、貴様らは、他人に暴力を振るうことを平気で行うことが出来る!」

 高山の胴体を蹴り飛ばす。
 地面の上を水平に飛んでいく死に体の高山の身体は、近くの建物の壁を破壊し倒れ込む。

「なあ? どうして、お前は俺を攻撃したんだ?」

 理由なんてどうでもいい。
 もう理由なんて必要ない。
 20年以上、俺の中で燻った怒りと憎しみ。
 その前では、どんな理屈があろうと、どんな思いがあろうと俺には関係ない。
 だが――、思わず口にしてしまう。
 それは、論理的ではないことは理解している。
 だが、聞かずにはいられない。
 答えは必要ないと思っていてもだ。

「や、やめ……」
「やめねーよ」

 高山の腕を両手で掴み捩じ切る。
 ブチッと言う音と共に、緑色の血が――、鮮血が――、周囲を染め上げていく。

「ギャアアアアアアアアアアア」

 痛覚が残っていたのか、涙を零しながら頭を地面に擦りつけてきた。

「ずいばぜん……ゆるじてくだ――ギャアアアアアア」
「誰が謝れと言った?」

 俺はアイテムボックスからロングソードを取り出すと同時に高山の右足を斬り飛ばした。
 地面の上を転げ、泡を吹きながら、「だずげて、だずげて」と何度も懇願してくる高山浩二。

「なあ――」

 地面に剣を刺し、俺は横目で高山を見ながら呟く。

「お前さ。俺が、止めてってお願いした時に、虐めを止めたことがあったか?」
「――ヒッ!」
「俺はな。何度――、虐められている時に、殺してやろうと思ったと思う? なあ? お前、自分が何をしたのか未だに理解してないのか?」

 俺はロングソードを手に持ち高山を真っ直ぐに視る。

「俺な、何度も何度も何度も何度も何度も! お前を――、お前達を殺そうと思ったんだわ」



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