191 / 200
第190話 砂漠の町前哨戦(5) 第三者side
しおりを挟む
「ふん、ラッセルのやつ、ずいぶんと囀っているようだな」
「そうなのですか? 竜人様」
「ああ、――って、どうしてお前がここにいるんだ? ガルーブ」
人間の血液を濃縮させワインと混ぜた独特の香りのする血のワインを口にしながら、一人呟いていた高山浩二は、自身を竜人と呼んだ者へと視線を向けていた。
「我が主、カネコより竜人様に何かあれば手助けをするようにと仰せつかっておりますゆえ」
「ふん。必要ない」
「分かりました。では――」
「ああ。金子には、ハイネの町を落すように伝えておけ。茜が、あの町で行方不明になっているのは確かなのだからな」
「御意に――」
立ち上がるガルーブという男の頭には羊のような角が生えており、顔以外は猿のそれであったが、顔だけは美男子そのものであった。
「まったく……」
蝙蝠の翼を生やし飛んでいくガルーブの後ろ姿を見て高山浩二は「人間の顔の皮を剥いで被ることに何の意味があるのか……」と、何の感慨もない言葉を彼は呟く。
その頃、エイラハブの町では既に形勢は決しようとしていた。
城壁の上には無数に転がる人の頭。
その数は100を下らない。
さらに右腕を失ったベルガルが片膝を回廊につき、自身の片腕を奪ったラッセルを見上げ睨んでいた。
「この私に背中を見せずに抵抗してきたことは美しい。だが――、愚か! 愚か! 愚か! 愚か! 愚かである!」
「ふん、どちらにしても貶めるのだな」
「貴様ら人間もよく行っている行為! ――それは総意! ――それは当然!」
面白おかしく笑う。
それは、道化のように。
そんな姿を見ていて、ベルガルは血反吐を吐きながら、疑問に思っていたことを聞くことにする。
どちらにしてもベルガルの寿命はもって数分。
聞いても意味はないが、町を襲ってきた理由だけは知りたいと思ったのだ。
しかも大軍を擁してまで襲ってきた理由を、どうしても……。
「しかし、貴様らの目的は一体何だ? どうして、こんな町に攻めてきた」
「ふむ……」
そこで声を出し笑っていた道化であるラッセルが黙ると周囲を見渡す。
「たしかに……、今回は意味がなかったようだの」
「どういうことだ……」
「決まっている。このような些細な町に魔王軍が大軍を持って攻めてくると本当に思っているのか?」
「なん……だと……!?」
「まぁ、貴様の命もあと少し。冥途の土産に教えてやろう。この町には、この世界の理から外れた者がいると報告があったのだ」
「何? どういうことだ?」
「貴様も知っているだろう? 異世界から召喚された勇者というのを」
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。この国に連れて来られた者がいたのだよ。異世界から来た者がな」
「……つまり、貴様らの目的は……」
「そう。この町でなく異世界からきた者を抹消しにきたのだ」
「なるほどな……。だが――」
「分かっておる。もう、ここには居ないというのだろう?」
「……」
黙り込むベルガル。
「まあ、よい。そのままでも出血で死ぬが、私の鎌で、その命刈り取ってやろう! 神の慈悲でな!」
ベルガルの首に目掛けて振り下ろされる漆黒の鎌。
それは確実に人の首を刈り取る軌道を描き振り下ろされ――、甲高い音と共に鎌は吹き飛ばされた。
「――なっ!?」
顔を上げる。
その白い仮面をかぶった顔を。
ラッセルの視線の先――、そこには……。
「何とか間に合ったようだな」
「カズマ……」
何かを投擲した様子のカズマが立っていた。
「そうなのですか? 竜人様」
「ああ、――って、どうしてお前がここにいるんだ? ガルーブ」
人間の血液を濃縮させワインと混ぜた独特の香りのする血のワインを口にしながら、一人呟いていた高山浩二は、自身を竜人と呼んだ者へと視線を向けていた。
「我が主、カネコより竜人様に何かあれば手助けをするようにと仰せつかっておりますゆえ」
「ふん。必要ない」
「分かりました。では――」
「ああ。金子には、ハイネの町を落すように伝えておけ。茜が、あの町で行方不明になっているのは確かなのだからな」
「御意に――」
立ち上がるガルーブという男の頭には羊のような角が生えており、顔以外は猿のそれであったが、顔だけは美男子そのものであった。
「まったく……」
蝙蝠の翼を生やし飛んでいくガルーブの後ろ姿を見て高山浩二は「人間の顔の皮を剥いで被ることに何の意味があるのか……」と、何の感慨もない言葉を彼は呟く。
その頃、エイラハブの町では既に形勢は決しようとしていた。
城壁の上には無数に転がる人の頭。
その数は100を下らない。
さらに右腕を失ったベルガルが片膝を回廊につき、自身の片腕を奪ったラッセルを見上げ睨んでいた。
「この私に背中を見せずに抵抗してきたことは美しい。だが――、愚か! 愚か! 愚か! 愚か! 愚かである!」
「ふん、どちらにしても貶めるのだな」
「貴様ら人間もよく行っている行為! ――それは総意! ――それは当然!」
面白おかしく笑う。
それは、道化のように。
そんな姿を見ていて、ベルガルは血反吐を吐きながら、疑問に思っていたことを聞くことにする。
どちらにしてもベルガルの寿命はもって数分。
聞いても意味はないが、町を襲ってきた理由だけは知りたいと思ったのだ。
しかも大軍を擁してまで襲ってきた理由を、どうしても……。
「しかし、貴様らの目的は一体何だ? どうして、こんな町に攻めてきた」
「ふむ……」
そこで声を出し笑っていた道化であるラッセルが黙ると周囲を見渡す。
「たしかに……、今回は意味がなかったようだの」
「どういうことだ……」
「決まっている。このような些細な町に魔王軍が大軍を持って攻めてくると本当に思っているのか?」
「なん……だと……!?」
「まぁ、貴様の命もあと少し。冥途の土産に教えてやろう。この町には、この世界の理から外れた者がいると報告があったのだ」
「何? どういうことだ?」
「貴様も知っているだろう? 異世界から召喚された勇者というのを」
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。この国に連れて来られた者がいたのだよ。異世界から来た者がな」
「……つまり、貴様らの目的は……」
「そう。この町でなく異世界からきた者を抹消しにきたのだ」
「なるほどな……。だが――」
「分かっておる。もう、ここには居ないというのだろう?」
「……」
黙り込むベルガル。
「まあ、よい。そのままでも出血で死ぬが、私の鎌で、その命刈り取ってやろう! 神の慈悲でな!」
ベルガルの首に目掛けて振り下ろされる漆黒の鎌。
それは確実に人の首を刈り取る軌道を描き振り下ろされ――、甲高い音と共に鎌は吹き飛ばされた。
「――なっ!?」
顔を上げる。
その白い仮面をかぶった顔を。
ラッセルの視線の先――、そこには……。
「何とか間に合ったようだな」
「カズマ……」
何かを投擲した様子のカズマが立っていた。
83
お気に入りに追加
743
あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる