本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第188話 砂漠の町前哨戦(3) 

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「まぁ、とりあえずは――」

 俺は呟きながら立ち上がる。
 馬車が破壊された以上、一度は態勢を整えるためにエイラハブの町に戻った方がいいだろう。
 エイラハブにいる商人や冒険者ギルドに兵士達は一時的に駐屯している連中だとしても、魔王軍と戦っていると言う事を言えば荷馬車の一台くらいは都合をつけてくれるはずだろうし。

「一度、足を確保する必要があるな」

 俺の言葉にビクッ! と、するウェイドルザーク。
 そんな地竜の腹を肘で小突くリオン。

「お前が壊したのか?」
「も、申し訳ありませぬ!」

 土下座を慣行してくる地竜に俺は溜息をつく。

「まぁ、壊したものは仕方ない。お前の鱗の数枚でも売って買うとするか」
「――ヒッ!」
「また地竜に化ければ問題ないだろう?」
「今は、それだけの力は……」
「役に立たないな」
「マスターが、何時もより辛辣ですの」
「それは当たり前だろう。人様の持ち物を壊されて寛大な気持ちで対応できる奴の方がおかしい。とにかく、一度、エイラハブの町に行って物資を調達する」
「――では、奥方様は、妾が!」
「我が魔神の奥様を――」
「リオンとウェイドルザークは黙ってついてこい」
「主様。我のことはイドルとお呼びください」
「ん?」
「魔神様は、我の名前が長いからとイドルと呼んでおりました」
「なるほどな……」
「なら、リオンとイドルは俺のあとをついてくるだけでいい。分かったな?」
「はっ!」
「御意に!」

 寝ているエミリアを抱き上げる。
 所謂、御姫様抱っこというものだが、ステータスが強化されている俺にとってエミリアの身体の重さは無いようなものだ。

 視界内に周囲のMAPを開きエイラハブの町を確認し、走り始める。
 後ろからは二人が付いてきている。
 しばらく走ったところで、無数の人影が見えてきた。

「あれは……荷馬車を馬が引いているのか?」

 しかも、荷馬車の数が10や20どころではない。
 百近い。

「あんたら! どこにいくつもりだ!」

 立ち止まり話を聞こうとしたところで、俺達の横を通り過ぎようとしていた荷馬車の内、一台が停まり話しかけてきた。

「ん? エイラハブの町で足を確保しようと思っていたんだが?」
「馬鹿言うな! 魔王軍が攻めてきているんだぞ! 魔物の数は数万を超えているんだ! 逃げないと死ぬぞ! ほら! 乗せて行ってやるから、さっさと荷馬車に乗りな!」
「そういえば、魔王軍が攻めてくるって言っていたな……」

 エミリアの事で、完全に失念していた。
 それに元・勇者が攻めてきているとも。
 なら、俺にとって一番、因縁のある相手だ。

「いや。すまないな」
「――なら……」
「気を使わせてしまってすまない。エイラハブの町に攻めてきている魔王軍は俺の得物だ。情報感謝する」
「――え? 何を言って……」

 俺の言葉に戸惑う商人。

「とにかく、あんたらは逃げてくれて構わない」
「なら好きにしな」

 商人が御者席から馬を操り、荷馬車をはしらせる。
 俺達から離れていくのを確認したあと、俺は町に向かって走り始めた。




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