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第184話 エミリアの真相(3)
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「カズマ――。私は、私は……」
瞳から涙を零しながら、懺悔の言葉を口にするエミリア。
彼女は、彼女なりに実の国を守りたい気持ちと、大勢の人を死なせてしまったという罪悪に板挟みになって、どうしようもできない現実から逃げられなかったのだろう。
逃げた先には、同胞の死というものがあったのだから。
「もう……」
「だから言っただろう。エミリアの国は、俺が守ってやる」
「でも……、そんなことをしたらカズマは……人から嫌われて……獣人族にも良いようには思われない……」
「細かいことは気にするな。周りから忌避の眼で見られるなんて慣れているからな」
そう、俺は何年も味方が誰もいない学校という密閉空間で虐められ続けてきた。
いまさら、それが世界全体になったところで、大した差はない。
それにエミリアが居るのだから、プラマイで言えばプラスだ。
「カズマって強いですよね」
「まぁ、俺は最強だからな。地竜も瞬殺したし」
「そういえば、そうですね」
泣きはらした目で俺に抱き付いてくるエミリアを抱き返しながら、俺はエミリアの頭を撫でる。
「マスター」
「リオン、戻ったか」
エミリアが泣き疲れたところで、何かを引き摺りながら戻ってきたリオン。
よくよく見れば肉塊の塊だ。
大きさとしては人間一人分ほどの大きさ。
「さすがに地竜を食べる気にはならないぞ?」
「マスター、これは竜のコアと呼ばれる人で言うところの心臓部にあたります」
「ほう」
コアか……。
そういえば、アルガルド・オンラインでは、四竜を何度もレイド討伐して心臓を集めることで最強の武器や防具を作るシステムがあったな。
かなり難易度が高くリアルマネートレードでも高値で取引されていた記憶がある。
「これを加工すれば、品質の高い武器や防具を作れるかと」
どうやら、異世界ガルドランドにも同様のシステムがあるようだな。
ならエミリア用に何か特殊なアイテムを作るのもありかもな。
「なるほど。俺の錬金術の力が――」
「待ってくれ!」
俺が言いかけたところで心臓が跳ねると、突然、心臓が破けて中から血がドバッ! と、流れ出て周囲がスプラッタと化す。
「――一体何が!?」
「まさか……」
目を思わず背けてしまったが、視線を心臓部へ戻すと、そこには金髪褐色の美女が立っていた。
「誰だ?」
「ウェイザー! 貴様! 生きていたのか!」
「何とかギリギリな」
「ん?」
俺は二人の会話から、何となく事情を察してしまう。
「まさか、お前……」
「地を司る四竜が一匹! ウェイドルザークと申します。魔神様」
「……」
思わず無言になる俺。
ウェイドルザーク、その名前はアルドガルド・オンラインの世界において地竜の正式名称であり真の真名。
その名を明かすと言う事は、絶対服従を誓う証である。
「ウェイザー! 貴様! 我がマスターを、侮辱するどこか! 殺そうとしたではないかえ!」
「それは、まさか魔神様が本当に降臨しているとは思わなかったからだ! だが! 我をい鎧袖一触されるほどの強さを見せたと言う事は魔神様に他ならない! 我が、我の産みの父である神に服従することに何の問題があろうか!」
「はぁ……。ウェイザー」
「はっ、魔神様! 我のしたことで気分を害したのでしたら、その手で我を無へと帰してくだされ!」
膝を砂漠につき、頭を垂れるウェイザー。
それを見て俺は思わず溜息をつく。
「なら、貴様に聞きたいことがある。貴様は魔神の神殿で何をしようとしていた?」
瞳から涙を零しながら、懺悔の言葉を口にするエミリア。
彼女は、彼女なりに実の国を守りたい気持ちと、大勢の人を死なせてしまったという罪悪に板挟みになって、どうしようもできない現実から逃げられなかったのだろう。
逃げた先には、同胞の死というものがあったのだから。
「もう……」
「だから言っただろう。エミリアの国は、俺が守ってやる」
「でも……、そんなことをしたらカズマは……人から嫌われて……獣人族にも良いようには思われない……」
「細かいことは気にするな。周りから忌避の眼で見られるなんて慣れているからな」
そう、俺は何年も味方が誰もいない学校という密閉空間で虐められ続けてきた。
いまさら、それが世界全体になったところで、大した差はない。
それにエミリアが居るのだから、プラマイで言えばプラスだ。
「カズマって強いですよね」
「まぁ、俺は最強だからな。地竜も瞬殺したし」
「そういえば、そうですね」
泣きはらした目で俺に抱き付いてくるエミリアを抱き返しながら、俺はエミリアの頭を撫でる。
「マスター」
「リオン、戻ったか」
エミリアが泣き疲れたところで、何かを引き摺りながら戻ってきたリオン。
よくよく見れば肉塊の塊だ。
大きさとしては人間一人分ほどの大きさ。
「さすがに地竜を食べる気にはならないぞ?」
「マスター、これは竜のコアと呼ばれる人で言うところの心臓部にあたります」
「ほう」
コアか……。
そういえば、アルガルド・オンラインでは、四竜を何度もレイド討伐して心臓を集めることで最強の武器や防具を作るシステムがあったな。
かなり難易度が高くリアルマネートレードでも高値で取引されていた記憶がある。
「これを加工すれば、品質の高い武器や防具を作れるかと」
どうやら、異世界ガルドランドにも同様のシステムがあるようだな。
ならエミリア用に何か特殊なアイテムを作るのもありかもな。
「なるほど。俺の錬金術の力が――」
「待ってくれ!」
俺が言いかけたところで心臓が跳ねると、突然、心臓が破けて中から血がドバッ! と、流れ出て周囲がスプラッタと化す。
「――一体何が!?」
「まさか……」
目を思わず背けてしまったが、視線を心臓部へ戻すと、そこには金髪褐色の美女が立っていた。
「誰だ?」
「ウェイザー! 貴様! 生きていたのか!」
「何とかギリギリな」
「ん?」
俺は二人の会話から、何となく事情を察してしまう。
「まさか、お前……」
「地を司る四竜が一匹! ウェイドルザークと申します。魔神様」
「……」
思わず無言になる俺。
ウェイドルザーク、その名前はアルドガルド・オンラインの世界において地竜の正式名称であり真の真名。
その名を明かすと言う事は、絶対服従を誓う証である。
「ウェイザー! 貴様! 我がマスターを、侮辱するどこか! 殺そうとしたではないかえ!」
「それは、まさか魔神様が本当に降臨しているとは思わなかったからだ! だが! 我をい鎧袖一触されるほどの強さを見せたと言う事は魔神様に他ならない! 我が、我の産みの父である神に服従することに何の問題があろうか!」
「はぁ……。ウェイザー」
「はっ、魔神様! 我のしたことで気分を害したのでしたら、その手で我を無へと帰してくだされ!」
膝を砂漠につき、頭を垂れるウェイザー。
それを見て俺は思わず溜息をつく。
「なら、貴様に聞きたいことがある。貴様は魔神の神殿で何をしようとしていた?」
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