本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第180話 VS 地竜ウェイザー(3)

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「ククククッ」

 超超高温の魔法より焼き尽くされ体の表面が黒く変色した地竜から声が聞こえてくる。

「どうやら、この契約者は貴様の弱点なようだな……」
「何!?」

 地竜だったモノ――、灰の塊と化した巨大な竜の姿をした存在は、そう告げると体を起こしていく。
 その際に、竜の体表は次々と剥げていく。
 砂漠の上に落ちていく焼け焦げた鱗。
 そして――、剥げた下から姿を現す緑色の鱗。
 それは、まさしく地竜――、グリーンドラゴンと言って差し障りないもの。

「貴様の先ほどの魔法。さすがに、我も驚いたぞ。もはや人間とは思わん。全力で貴様を殺す」
「エミリアを盾にしながら、大言壮語なものだな」
「言ったであろう? 貴様を、もはや人間とは思わんと。そして、この娘は、我と契約した言わば、我のモノ。自分の所有物をどう扱おうと問題はない」
「いや問題はあるな」
「――何?」

 俺は、頭上の地竜を見上げながら口を開く。

「そいつは、俺の妻であり、俺の女だ。契約か何かしらねーが、自分の女に手を出されて、『はい、そーですか』なんて、納得する訳がねーだろ?」
「何を言うのかと思えば……」
 
 俺を小馬鹿にするかのような態度。

「言っておくが、貴様は、この贄のことを何も知らないようだから教えてやろう。知れば、誰も、この娘を守るような事はしないはずだ」
「何?」
「……やめて……ください……」

 空中に浮かび、人質とされていたエミリアが意識を取り戻したのだろう。
か細い声で、地竜が語ろうとした言葉を遮った。

「よかろう。契約者である生贄であるお前が、竜族の契約にして使役の法を守る限り、我は汝の意に従おう」
「カズマ……」
「エミリア……」

 俺の名前を呼び、何かを訴えかけようとしているかのように真っ直ぐに見てくる彼女。
 だが、エミリアは、俺から視線を逸らす。

「ごめんなさい。私は、カズマには相応しくないの……」

 そう、エミリアは自身の声から告げる。

「何を言っている!」

 エミリアが何を言ったのか一瞬、理解できなかった。
 理解したら、それは――。

「私は、カズマには……。あなたには相応しくないの……」
「だから、何を言っている! 理由を言え!」
「それは……」

 彼女は、頭を振る。

「そういうことだ。人間」
「たしかに貴様は強い。全ての力を解放していなかった我を相手にしても互角以上の戦いを繰り広げられるほどにな。だが! 助けを求めていない者に対して、助けようなどという考えは驕り意外の何物でもない。それでも、貴様は戦うというのか?」
「当たり前だろう?」

 俺は間髪入れずに言葉を返す。

「そもそも、俺はエミリアが好きだ。自分の命や存在をかけても彼女と幸せになると決めた。それが俺の覚悟だ! たとえ、エミリアが俺を嫌いだと、どんな罪を背負っていたとしても――、たとえ世界の全てがエミリアを否定しても、俺はエミリアを肯定する!」
「カズマ……」
「だいたい、男がプロポーズする時ってのは、一生で一度のものなんだ! その決意を生半可に捉えてもらっては困る! 俺は、どんな時でも、お前の味方だし! どんな状況下に置いても、俺は――」

 そこで俺は、唇を噛みしめる。
 ああ、自分は馬鹿だったなと。
 何を遠慮していたのだろうと。
 本当にエミリアを大事に――、信じていたのなら、裏で何か動かずに、エミリアに何があったのかを聞くべきだった。

「お前が好きだ! 何度も言わない! だから、どんな事があったのか教えてほしい! それが例え取返しの付かないことであっても、俺はお前を――エミリアを守る!」
「愚かな! 所詮は人間。この生贄が何をしたのか貴様は何も――!」
「黙れ! お前には聞いていない! エミリア! 聞かせてくれ! お前は、俺と離れたいのか! それとも、俺と一緒に居たいのか! どっちだ!」
「それは……」
「だが言っておくぞ! お前が離れたいって言っても、俺はストーカーのごとくお前に付き纏うからな!」
「カズマ……」
「だから、観念して俺の元へ来い!」

 俺の言葉に彼女は――、エミリアは俯く。
 そして――。
 エミリアを包んでいた光が砕け散る。
 それと同時に、エミリアの身体は落下してくる。

「馬鹿な! 使役の法を解除するだと! 自分の国が、どうなってもよいのか! 貴様の母親は何のために!」

 俺はエミリアを抱きとめる。

「悪いな。ウェイザー。エミリアが何を契約していたかは知らねーが、それが国を守ることに繋がるのなら、俺がエミリアの国とやらを守ってやるよ」
「愚かな……何と言う愚かな……」
「リオン。エミリアを頼む」
「マスター。了解しました」
「カズマ……私……」
「気にするな」

 俺はエミリアの頭を撫でる。

「俺は、どんな時でもエミリアの味方だ。たとえ何があってもな――」
「うん……」
「貴様……贄の……契約を破棄するとは……、お前がエイラハブの町で何をしたのか知れば、この者は!」
「黙れよ」

 俺は、地竜の言葉を遮る。
 エイラハブの町で何が起きたのかは知らない。
 だが、それを話していいのは地竜ではない。
 エミリアだ。

「さて、エミリアを人質にした事は万死に値する。手加減は一切しないからな」

 俺は視界内のカーソルを動かし、無数の魔法アイコンを起動しながら宣言する。



 
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