本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

文字の大きさ
上 下
169 / 200

第168話 砂上の戦闘(27)第三者視点

しおりを挟む
 巨大な爆発音が周囲に響き渡ると同時に、粉々に粉砕された幌馬車の破片が周囲に飛び散る。
 砂塵が周囲に舞い上がり、その中から一塊の影が姿を現す。
 影は、砂塵舞う中でも態勢を崩すことなく、地竜から距離を置きながら的確に砂漠の上へと降り立つ。

「奥方様、体に異常はありませんか?」
「……ええ」
「ほう。殺気は抑えていたが、対応するとはな……」

 地竜が、リオン達に体を向けながら頭上から威圧を含んだ音をリオンとエミリアに向ける。

「当然と言えるところ。貴様が、隠れて攻撃を仕掛けてくることは以前から度々あったことだからのう」
「ふん。まるで我が卑怯者のような言い方は好かんが――。どうしても、エミリアを此方に渡すつもりはないのか?」
「くどい! それに……」

 リオンは、視界の端に粉砕された幌馬車の破片を見たあとに、その大きな眼を小さく細めていく。

「妾のマスターの持ち主を破壊した貴様は、我が敵! 同じ古代竜であったとしても、貴様を殺すことの正当性は得たからのう」
「よかろう。ならば、互いの正当性をかけて戦うといたそう」
「奥方様、マスターがいる町に向かってくだされ」
「リオン?」
「マスターより、奥方様を守るようにと言い遣っておりますので。それと妾と同等の力を持つ四大属性竜の一匹である地竜ウェルザーと戦えば、この一帯は焦土と化しますゆえ」
「そんな!?」

 エミリアの眼が大きく見開き――。

「それじゃリオンちゃんは、死ぬ可能性もあると言う事なの?」
「それは……」
「そんなの駄目よ! カズマも、そんなことを望んではいないわ!」
「ですが、マスターは奥方様を守るようにと――」
「ハハハハハッ」

 エミリアと、リオンの会話を聞いていた地竜は、その時、高笑いをする。
 その笑い声だけで周囲に砂ぼこりが舞い上がるほどに。

「なるほど、なるほど……。これは愉快だ。見当違いな心配をするとは――」
「どういうことなの?」
「エミリア、教えてやろう。ここは砂漠であり陸地。地の理は、地竜である我にある。つまり、そやつが勝てる見込みなど一遍も無いと言う事だ。つまり、そやつはエミリア――、貴様が逃げる為の時間稼ぎをすると言っているだのよ。自らの命をかけてまでな」
「そんな……」
「奥方様、やつの言う事に耳を傾けてはなりませぬ」
「――でも! リオンちゃんが……、地竜の言っていることは本当なの? だから、私に町に向かって逃げろって言ったの? 本当の事を言って」
「これは滑稽だ。エミリア、貴様自身が何をしたのか隠しているというのに、なのに他者に対して真実を語って欲しいと嘯くとは」
「――ッ!? そ、それは……」
「奥方様。ここは時間を稼ぎますゆえ。すぐに町に逃げてください」
「でも……」
「どうする? エミリア。これ以上、罪を重ねるつもりか? 貴様は、我と契約をしたはずだ。貴様の行動の結果に他者の命を更に天秤にかけるというのか?」

 地竜は、エミリアへと視線を向けている。
 そして――、その表情はエミリアが折れると確信しているように自信に満ち溢れていて――。

「…………私が、贄になるのなら、ここは引き下がるということなの?」
「約束しよう。元々、四大竜同士の戦いは魔神様により禁止されているからな」
「奥方様!」

 エミリアを庇うようにして立っていたリオンを押しのけて、エミリアが地竜に近づく。

「――さて、エンブリオン。竜の契約は何者にも犯されるものではない。それは貴様も理解しているはずだ。それに、ここで貴様がどんなに奮闘しようと、このフィールドでは水竜である貴様には勝ち目はない。無駄死にだ」
「だが! マスターの命令で――」

 そう言いかけたリオンの言葉を遮るように、エミリアは頭を振る。

「リオンちゃん、ごめんね。私……やっぱり……。カズマには、私のことは……」
「――ッ!?」
「さて、行くとしようか」

 地竜ウェルザーは、エミリアを掴むと、砂漠の中へと潜っていき一瞬で姿を消した。
 あとに残ったのは、粉砕された幌馬車とリオンだけで。

「奥方様……」

 そこには、立ち竦んだリオンが、消えたエミリアの場所を呆然と見つめていた。


 
 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...