本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第162話 砂上の戦闘(21)

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 思わず疑問符が口から零れ落ちる。
 商人と言えば、取引きの帳簿に関しては金銭に絡むことなのだから、嘘を記載する事なんてありえないからだ。

「それとも、何かの隠語か何かか?」

 そうとしか考えられない。
 だが、それなら余計な事を書かない方がいいだろう。
 無駄に詮索を受ける必要もなくなるだろうし。

「他の書簡に関しては――」

 独り言を呟きながら、パピルスや紙などを見ていくとおかしな点に気がつく。
 小麦を輸出していたのは、数か月前までだったという事に。
 それ以降は、小麦は輸入へと切り替わっている。
 そして、それは先月の交易内容も変わっていない。
 つまり、数か月前までは小麦を輸出していたという事になるが――。

「つまり、小麦を輸出できる基盤が数か月前まではあったということか? それが何かしらの理由で出来なくなり輸入へと切り替わったと……」

 そこで、ふと思い出す。
 エイラハブの街は、街という規模を考えたらやけに人通りが少ない事に。
 実際に街の衛兵に連れていかれた建物は大きな建物であった。
 そして、その建物には人の痕跡は殆どないと言って差し障り無いもので――。

「情報が断片的すぎるな」

 俺は視界内のシステムコマンドから、リーン王国付近の情報をMAP上に表示する。
 するとエイラハブの街は存在しているが、その周辺の土壌は草原。
 
「システムのMAPを信じるのなら、いまのエイラハブの街は緑豊かな土地に囲まれていると考えることができるが……、だがな……」

 これ以上は得られる情報がないと判断する。
 その時、システムコマンドが開き――、人が近づいてくる足音を拾う。
 もちろんステータス的に強化された俺の聴覚も、人の足音を確認した。
 室内の扉まで音を消して近づく。
 そして、ドアノブを僅かに回す。
 すると、小さな音を立てて、ゆっくりと扉が開く。
 だが、その音は思っていたよりも静謐な空間では大きく響き、足音が急速に大きくなっていく。

「まったく――」

 どうやら相手も音を聞いたことは明らか。
 俺はすぐに近くの本棚の上に跳躍し飛び乗る。

「なんだ? 書庫が開いているぞ?」

 そんな戸惑いの声が聞こえてくる。
 そして、扉を開けて室内に入ってきたのは20代後半の細身の男。
 白の麻布を使い作られたであろう服。
 アラブの民族衣装のようなモノを着た男が姿を見せる。

「誰かいるのか?」

 当たりを見渡しながら、恐る恐る室内に入ってくる男。
 真上で潜んでいた俺に気づかずに通り過ぎた男の背後へ俺は本棚の上から降りたあと、男に気付く間も与えることもなく首元に手刀を落し、その意識を刈り取る。

「さて、証人ゲットと」

 男を担ぎ上げると俺は屋上に移動した。
 



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