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第157話 砂上の戦闘(16)
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「それは……」
エミリアが俯く。
その様子から、俺は心の中で考える。
何かあるのならエミリアから、俺に話してくれるはずだと……。
だが、躊躇するという事は、どうしても秘密にしたいという事なのだろう。
それはダルア達、獣人達の話から想像するに商業ギルドが関わっていることは間違いない。
そして、話から考えられるのは『奴隷』というキーワード。
始めてエミリアと出会った時、彼女は奴隷として使われていて逃げてきた時に出会った。
つまり……。
「分かった」
無理に聞くことではない。
話してくれなければ分からない事だってあるが、それは俺のエゴだ。
誰にだって隠したいこと――、秘密にしたい事の一つや二つはある。
俺だって、自分の経歴をリオンやエミリアに伏せているし、話していない。
だから……、
「……カ……ズマ……?」
エミリアが、不安な瞳で俺を見上げてくる。
どんな表情を俺はしているのだろうか?
俺は額に手を当てつつ、口角を歪めるようにして笑みを作る。
「誰だって話したくない事の一つや二つはあるからな。すまないな、エミリア。無理に聞きだそうとしてしまって――」
「……」
俺の言葉にエミリアは、唇を噛みしめるようにして首肯すると顔を伏せてしまう。
エミリアの表情を見ることはできない。
「リオン」
「マスター、どうかいたしましたか?」
「お前とエミリアは町から少し離れた場所で待機しておいてくれ。必要な物資などは、アイテムボックスから荷台に出しておく」
「了解した。ということは、マスターは一人で町に行かれるという事ですか?」
「そういうことだ。それと、さっきの獣人だが、獣人は匂いなどで追跡する力を持っているはずだ。追跡には注意しろ」
「そこは問題ないかと」
俺の言葉にリオンは頷くと同時に、幌馬車のハーネスから左手を離す。
そして左手を振るう。
それと同時に、砂漠地帯で空は晴天だというのに、空から雨が降りそそぐ。
「なるほど……。水で匂いを消し去るということか」
「ハッ! その通りです」
「それなら問題ないな」
周囲が乾燥した砂漠エリアであっても、片手間に雨を降らせるあたり腐っても、四大属性を司る最強の四竜の一匹アクアドラゴンなだけはあるな。
「エミリア。エイラハブの事情が綺麗に片付いたら、迎えにくる。それまでは、リオンと行動を共にしていてくれ」
「――え?」
俺はエミリアの頭に手を置く。
「一応、言っておくがエイラハブの兵士達と一悶着あったから、俺だけで行動した方がいい。二人の冒険者ギルドカードが失効されたら困るからな」
「――で、でも……」
「旅をしていく上で、定期的な収入を得る為には冒険者ギルドカードが使えなくなるのだけは困る。だから二人は、しばらく俺と距離を置いて待っていてくれ」
「……カズマ」
エミリアの弱々しい声。
それと共に揺れる大きな瞳。
何かを伝えたいという気持ちは分かる。
ただ、言葉にするには決意が――、気持ちが――、揺れているのだろう。
「そんなに心配するな。なるべく冒険者ギルドカードが失効されないように動くからな」
「……うん」
「リオン。どんな手を使っても構わない。エミリアを必ず守り通せ」
「了解致しました。マスター」
「――では、行って来る」
俺は幌馬車から飛び降りると同時に空中で一回転する。
幌馬車は、あっと言う間に俺から離れていく。
離れていく幌馬車を見ながら、俺は視界内のコンソールを起動しMAPを視界内に表示させ幌馬車をチェックする。
謂わば、GPS機能みたいなモノだが、使うようになるとは思わなかった。
「――さて、エイラハブに行くとするか」
今度は、エミリアに関与していると思われる商業ギルドに向かう為に。
エミリアが俯く。
その様子から、俺は心の中で考える。
何かあるのならエミリアから、俺に話してくれるはずだと……。
だが、躊躇するという事は、どうしても秘密にしたいという事なのだろう。
それはダルア達、獣人達の話から想像するに商業ギルドが関わっていることは間違いない。
そして、話から考えられるのは『奴隷』というキーワード。
始めてエミリアと出会った時、彼女は奴隷として使われていて逃げてきた時に出会った。
つまり……。
「分かった」
無理に聞くことではない。
話してくれなければ分からない事だってあるが、それは俺のエゴだ。
誰にだって隠したいこと――、秘密にしたい事の一つや二つはある。
俺だって、自分の経歴をリオンやエミリアに伏せているし、話していない。
だから……、
「……カ……ズマ……?」
エミリアが、不安な瞳で俺を見上げてくる。
どんな表情を俺はしているのだろうか?
俺は額に手を当てつつ、口角を歪めるようにして笑みを作る。
「誰だって話したくない事の一つや二つはあるからな。すまないな、エミリア。無理に聞きだそうとしてしまって――」
「……」
俺の言葉にエミリアは、唇を噛みしめるようにして首肯すると顔を伏せてしまう。
エミリアの表情を見ることはできない。
「リオン」
「マスター、どうかいたしましたか?」
「お前とエミリアは町から少し離れた場所で待機しておいてくれ。必要な物資などは、アイテムボックスから荷台に出しておく」
「了解した。ということは、マスターは一人で町に行かれるという事ですか?」
「そういうことだ。それと、さっきの獣人だが、獣人は匂いなどで追跡する力を持っているはずだ。追跡には注意しろ」
「そこは問題ないかと」
俺の言葉にリオンは頷くと同時に、幌馬車のハーネスから左手を離す。
そして左手を振るう。
それと同時に、砂漠地帯で空は晴天だというのに、空から雨が降りそそぐ。
「なるほど……。水で匂いを消し去るということか」
「ハッ! その通りです」
「それなら問題ないな」
周囲が乾燥した砂漠エリアであっても、片手間に雨を降らせるあたり腐っても、四大属性を司る最強の四竜の一匹アクアドラゴンなだけはあるな。
「エミリア。エイラハブの事情が綺麗に片付いたら、迎えにくる。それまでは、リオンと行動を共にしていてくれ」
「――え?」
俺はエミリアの頭に手を置く。
「一応、言っておくがエイラハブの兵士達と一悶着あったから、俺だけで行動した方がいい。二人の冒険者ギルドカードが失効されたら困るからな」
「――で、でも……」
「旅をしていく上で、定期的な収入を得る為には冒険者ギルドカードが使えなくなるのだけは困る。だから二人は、しばらく俺と距離を置いて待っていてくれ」
「……カズマ」
エミリアの弱々しい声。
それと共に揺れる大きな瞳。
何かを伝えたいという気持ちは分かる。
ただ、言葉にするには決意が――、気持ちが――、揺れているのだろう。
「そんなに心配するな。なるべく冒険者ギルドカードが失効されないように動くからな」
「……うん」
「リオン。どんな手を使っても構わない。エミリアを必ず守り通せ」
「了解致しました。マスター」
「――では、行って来る」
俺は幌馬車から飛び降りると同時に空中で一回転する。
幌馬車は、あっと言う間に俺から離れていく。
離れていく幌馬車を見ながら、俺は視界内のコンソールを起動しMAPを視界内に表示させ幌馬車をチェックする。
謂わば、GPS機能みたいなモノだが、使うようになるとは思わなかった。
「――さて、エイラハブに行くとするか」
今度は、エミリアに関与していると思われる商業ギルドに向かう為に。
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