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第143話 砂上の戦闘(2)
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城塞都市デリアを出立してから数日が経過し、リオンが幌馬車を引くという光景も珍しくなくなってきた。
まぁ、それは俺達から見た場合に限るが。
幸い、道中で商人に出会うことも無かったから変な視線に晒されることもなかったが、おそらく魔王軍が王都を攻めておらず商人や旅人の行き来が盛んだったら、色々と噂が立ったのかも知れないが……、細かい事は気にしないことにしておく。
「カズマ」
「ん? どうした?」
幌馬車での移動中は、リオンが幌馬車を引くという仕事を放棄しない限り、基本的に俺やエミリアは暇である。
やる事と言えば、今後の対策とか方針の話し合い、あとは俺が取得している錬金術などのスキルを使って装飾品を作るくらいだ。
そして――、現在の俺は自分のステータスとスキルなどを確認する為にアイコンを選んでいたが、そこでエミリアが眠そうな目で話しかけてきた。
「今って、どの辺なのでしょうか?」
「そうだな……」
俺は、城塞都市デリアの冒険者ギルドマスターのラムドから依頼の為に必要な物として地図を受け取っていた。
それをアイテムボックスから取り出し、幌馬車の床の上に広げる。
地図は、主にリーン王国のみが書かれており、書かれているのは街道と村や街や都市、そして王都くらいなものだ。
とても簡素な作り。
日本で暮らしていれば見られる精巧な地図からは程遠いが、それは致し方ないと言ったところだろう。
何せ、地図というのは軍事機密の塊のようなものだ。
事細かく書かれているような地図を他国が手に入れたりすれば戦争に利用されかねない。
しかも、現在は魔王軍が攻めてきている状況で、その魔王軍に地図を奪われて利用されたらたまったものではない。
そういう事情から冒険者に配布というか渡される地図というのは、簡略化されている。
まぁ、俺の場合にはアルドガルド・オンラインのシステムがサポートしているので詳細な地図を視界内に表示させる事は可能な訳だが……、それはエミリアが見る事は出来ないので地図を出しただけで。
「今は、この辺だな」
俺は、システムコンソールからMAPの画面の視界内に投影しながら、現在地を確認。
その現在地と、冒険者ギルドで貰ってきた地図を照らし合わせて自分達が現在いる場所を指差す。
「まだ3分の1というところですか」
「まぁ、そんな感じだな」
「結構、遠いのですね」
「そうだな」
俺は頷く。
多人数型オンラインゲームのアルドガルド・オンラインの初期の時代には、国家間の移動というのは、そんなに時間が掛からなかったので意識した事はなかったが、こういう風に実際に何日もかけて移動していると、ゲームはやはり移動が省略されているのだとつくづく思う。
「そう致しますと、到着までは一週間前後でしょうか?」
「計算上としてはそうなるな。それよりも、問題は魔物と一度も遭遇していないことだな」
「そういえば、デリアを出てから魔物と一度も会ってないですね」
「ああ、少なくとも魔王軍とは鉢合わせしてもいいものなんだが……」
「でも、出会わないのは良い事なのでは……」
「少なくとも魔王軍と戦っている現状では、俺達が最大の戦力である以上、俺達と魔王軍が行き違いになる事は余計な被害を生みかねない。それは、さすがに目覚めが悪いからな」
そう語るとエミリアがキョトンとした瞳で俺を見て来ていた事に気がつく。
「どうかしたのか?」
「いえ、何でもないです」
何故か知らないが、エミリアが少し嬉しそうな表情で言葉を濁してきた。
まぁ、それは俺達から見た場合に限るが。
幸い、道中で商人に出会うことも無かったから変な視線に晒されることもなかったが、おそらく魔王軍が王都を攻めておらず商人や旅人の行き来が盛んだったら、色々と噂が立ったのかも知れないが……、細かい事は気にしないことにしておく。
「カズマ」
「ん? どうした?」
幌馬車での移動中は、リオンが幌馬車を引くという仕事を放棄しない限り、基本的に俺やエミリアは暇である。
やる事と言えば、今後の対策とか方針の話し合い、あとは俺が取得している錬金術などのスキルを使って装飾品を作るくらいだ。
そして――、現在の俺は自分のステータスとスキルなどを確認する為にアイコンを選んでいたが、そこでエミリアが眠そうな目で話しかけてきた。
「今って、どの辺なのでしょうか?」
「そうだな……」
俺は、城塞都市デリアの冒険者ギルドマスターのラムドから依頼の為に必要な物として地図を受け取っていた。
それをアイテムボックスから取り出し、幌馬車の床の上に広げる。
地図は、主にリーン王国のみが書かれており、書かれているのは街道と村や街や都市、そして王都くらいなものだ。
とても簡素な作り。
日本で暮らしていれば見られる精巧な地図からは程遠いが、それは致し方ないと言ったところだろう。
何せ、地図というのは軍事機密の塊のようなものだ。
事細かく書かれているような地図を他国が手に入れたりすれば戦争に利用されかねない。
しかも、現在は魔王軍が攻めてきている状況で、その魔王軍に地図を奪われて利用されたらたまったものではない。
そういう事情から冒険者に配布というか渡される地図というのは、簡略化されている。
まぁ、俺の場合にはアルドガルド・オンラインのシステムがサポートしているので詳細な地図を視界内に表示させる事は可能な訳だが……、それはエミリアが見る事は出来ないので地図を出しただけで。
「今は、この辺だな」
俺は、システムコンソールからMAPの画面の視界内に投影しながら、現在地を確認。
その現在地と、冒険者ギルドで貰ってきた地図を照らし合わせて自分達が現在いる場所を指差す。
「まだ3分の1というところですか」
「まぁ、そんな感じだな」
「結構、遠いのですね」
「そうだな」
俺は頷く。
多人数型オンラインゲームのアルドガルド・オンラインの初期の時代には、国家間の移動というのは、そんなに時間が掛からなかったので意識した事はなかったが、こういう風に実際に何日もかけて移動していると、ゲームはやはり移動が省略されているのだとつくづく思う。
「そう致しますと、到着までは一週間前後でしょうか?」
「計算上としてはそうなるな。それよりも、問題は魔物と一度も遭遇していないことだな」
「そういえば、デリアを出てから魔物と一度も会ってないですね」
「ああ、少なくとも魔王軍とは鉢合わせしてもいいものなんだが……」
「でも、出会わないのは良い事なのでは……」
「少なくとも魔王軍と戦っている現状では、俺達が最大の戦力である以上、俺達と魔王軍が行き違いになる事は余計な被害を生みかねない。それは、さすがに目覚めが悪いからな」
そう語るとエミリアがキョトンとした瞳で俺を見て来ていた事に気がつく。
「どうかしたのか?」
「いえ、何でもないです」
何故か知らないが、エミリアが少し嬉しそうな表情で言葉を濁してきた。
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