本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第140話 城塞都市デリアⅡ(11)

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「ええ。それより……」
「はい。そろそろ出立したいと思います」
「そうなのね……。また、デリアに来た時は寄ってね」
「もちろん。その時は、宜しくお願いします」

 俺はセリアンさんの言葉に頷く。
 最初は、色々とあったが城塞都市デリアに来て長くとは言わないが濃密な時間を過ごした宿。
 そして、俺のパーティメンバーとも気軽に接してくれているので、気心知れた宿というのは、得難いものだ。
 もちろん、次回来た時には使わせてもらおう。
 どうせ港町ケインへの帰路の時には、再度使う事になんだろうし。

 宿の料金は既に渡してあったので、俺達は宿の前に停めてあった場所へと移動する。
 もちろん、荷馬車のハーネスを持つのはリオンの役目だ。
 
「カズマ君!」

 エミリアが荷馬車に乗り込み、俺も御者席へと上がろうとしたところで俺の名前を呼ぶ声が。

「ベラウイさん?」

 声をかけてきたのは、宿屋の主人であるベラウイ。
ミエルの父親であり、セリアンの旦那。

「そんなに息を切らせてどうかしたんですか?」
「ハァハァ……。――いや、なに君の奥さん。エミリアさんに頼まれて馬の処分を頼まれていたんだが、売れたから、その費用をね」
「ああ、それはリオンが色々と食べて食費という事でもらっておいてください」
「だが、それなりのお金には……」
「それなら、王都へ調査に行った後に、またケインの港町に戻るので、その時に宿を使わせてもらうので、滞在費から引いてもらえば」
「そ、そうか……。わかった。待っているよ」
「エミリアお姉ちゃん、行っちゃうの?」
「うん。でも、また来るから」
「リオンも?」
「うん。そうよ」

 一緒に送る為に、宿から出てきたミエルとエミリアの会話を聞きつつ、俺は荷馬車のハーネスを両手で持つリオンへと視線を向ける。

「あの……カズマ君」
「どうかしましたか?」
「――いや、私の気のせいだったらいいんだが……」

 ベラウイさんの視線がハーネスを持つリオンに向けられている。
 その表情は困惑した色が見られる。
 きっと幼女にしか見えないリオンに荷馬車を引かせるのは正気か? と、思っているのかも知れない。

「まぁ、リオンが荷馬車を引きますので」
「やっぱり……。ところで……」
「リオンは、総督府に向かった時も荷馬車を引いていたので大丈夫です」
「そうなのか……。やっぱり私の勘違いではなかったんだな……」
「まぁ……」

 普通に、常識的に考えたら12歳くらいにしか見えない美幼女に、重さ数トンもある荷馬車を引くハーネスに触らせて、あまつさえ牽引させようとは考えられないだろう。
 だが、リオンは腐っても、この世界では最強の四大竜の一匹である水竜アクアドラゴン。
 美幼女に化身しているとは言っても中身は、巨大なドラゴンなのだ。
 心配するだけ損を言ったところだろう。

「そうか……。気を付けてな」
「お姉ちゃん、リオンちゃん。またね……」
「皆さんの旅に幸あらんことを!」

 ベラウイ、ミエル、セリアンの3人の宿関係者に見送られて俺達は宿を後にする。
 そして、まだ復興途中の城塞都市デリアの大通りを抜け、城塞都市デリアの外へと通じる城塞門へと向かう。





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