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第121話 デリア総督府消滅(21)
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「ばかな……。この魔王様から頂いた体を切り捨てることができるのは……、やはり貴様は勇者で――」
「だから、言っただろう? 俺は勇者ではないと」
「――では、貴様は一体何なのだ!」
「何度も言わせるな。俺は、ただの冒険者だ」
「ただの冒険者が、この私の――、最強の体に傷をつけることなぞ……」
「お前が弱いだけだ。正直、がっかりだ」
「――なに!?」
「アンセムの方が、お前よりも数倍は強かったぞ?」
「――くっ……。元・勇者が倒されたと聞いていたが……、この世界の勇者が、ここまで強いとは……。仕方あるまい。貴様を殺す為に準備していたが――!」
「何? 俺を倒すために?」
「そうだ! この町の兵士を傀儡にしたのも、瘴気の門を開いたのも、総督を殺したのも全て! 貴様を! 勇者カズマを殺す為だ!」
「……つまり、これだけ大掛かりな事をしたのは、俺を殺す為だということか?」
「そうだ!」
「なるほどな……」
どうりで、用意がいいと思った。
「それは、全てお前の考えか?」
「魔王様からの勅命だ!」
「なるほど……」
ペラペラをよく話すやつだ。
それと共に、俺は深く溜息をつく。
どうやら、俺は完全に魔王とやらのターゲットになっていることに。
まぁ、それはそうか。
召喚された勇者は全員、魔王軍に入った訳だし。
そんな最中、魔王軍四天王を倒すような冒険者が居たとしたら警戒しない方がおかしい。
「――さて、準備はいいか! 見せてやろう! 人間! いや! 勇者カズマよ! この城塞都市に掛けた呪いを今こそ解放する!」
アデルデンの叫びと同時に、ボーンドラゴンの足元を中心に赤紫の魔法陣が出現。
その範囲が拡大していく。
「召喚の魔法陣!?」
「アデルデン! 貴様、何のつもりだ!」
「くっくっくっ。この力だけは使うつもりはなかった! だが! 魔族の未来の為に貴様は、ここで必ず殺さねばならん! 私の存在を使ってでも!」
魔法陣は俺の足元にまで広がってくる。
咄嗟に、俺は跳躍し上空20メートルまで飛ぶ。
さらに、風の魔法で上昇し上空100メートル近くまで舞い上がったところで、アデルデンが作り上げた魔法陣が、総督府の敷地内全体を呑み込む様子を視認する。
「何をするつもりだ?」
俺の疑問に答えるかのように、突然、魔法陣の内側が消滅する。
「フハハハハハ、勇者よ! 私の存在を生贄にして異界の魔神を召喚した! 僅か10分ほどの召喚だが、もはや創造神のいない世界に魔神を止める力を持つ者はいない! ウギャアアアア」
アデルデンの絶叫という咆哮が周囲に響き渡る。
そして――、総督府の塀の内側。
円状に大地が消滅した漆黒の暗闇の中から、太さ50メートルは下らない漆黒の瘴気を纏った腕が現れた。
その腕はアデルデンを握りつぶす共に、二の腕まで姿を現す。
「おいおい、何の冗談だ? 異界の魔神ギガノブロテスかよ」
「だから、言っただろう? 俺は勇者ではないと」
「――では、貴様は一体何なのだ!」
「何度も言わせるな。俺は、ただの冒険者だ」
「ただの冒険者が、この私の――、最強の体に傷をつけることなぞ……」
「お前が弱いだけだ。正直、がっかりだ」
「――なに!?」
「アンセムの方が、お前よりも数倍は強かったぞ?」
「――くっ……。元・勇者が倒されたと聞いていたが……、この世界の勇者が、ここまで強いとは……。仕方あるまい。貴様を殺す為に準備していたが――!」
「何? 俺を倒すために?」
「そうだ! この町の兵士を傀儡にしたのも、瘴気の門を開いたのも、総督を殺したのも全て! 貴様を! 勇者カズマを殺す為だ!」
「……つまり、これだけ大掛かりな事をしたのは、俺を殺す為だということか?」
「そうだ!」
「なるほどな……」
どうりで、用意がいいと思った。
「それは、全てお前の考えか?」
「魔王様からの勅命だ!」
「なるほど……」
ペラペラをよく話すやつだ。
それと共に、俺は深く溜息をつく。
どうやら、俺は完全に魔王とやらのターゲットになっていることに。
まぁ、それはそうか。
召喚された勇者は全員、魔王軍に入った訳だし。
そんな最中、魔王軍四天王を倒すような冒険者が居たとしたら警戒しない方がおかしい。
「――さて、準備はいいか! 見せてやろう! 人間! いや! 勇者カズマよ! この城塞都市に掛けた呪いを今こそ解放する!」
アデルデンの叫びと同時に、ボーンドラゴンの足元を中心に赤紫の魔法陣が出現。
その範囲が拡大していく。
「召喚の魔法陣!?」
「アデルデン! 貴様、何のつもりだ!」
「くっくっくっ。この力だけは使うつもりはなかった! だが! 魔族の未来の為に貴様は、ここで必ず殺さねばならん! 私の存在を使ってでも!」
魔法陣は俺の足元にまで広がってくる。
咄嗟に、俺は跳躍し上空20メートルまで飛ぶ。
さらに、風の魔法で上昇し上空100メートル近くまで舞い上がったところで、アデルデンが作り上げた魔法陣が、総督府の敷地内全体を呑み込む様子を視認する。
「何をするつもりだ?」
俺の疑問に答えるかのように、突然、魔法陣の内側が消滅する。
「フハハハハハ、勇者よ! 私の存在を生贄にして異界の魔神を召喚した! 僅か10分ほどの召喚だが、もはや創造神のいない世界に魔神を止める力を持つ者はいない! ウギャアアアア」
アデルデンの絶叫という咆哮が周囲に響き渡る。
そして――、総督府の塀の内側。
円状に大地が消滅した漆黒の暗闇の中から、太さ50メートルは下らない漆黒の瘴気を纏った腕が現れた。
その腕はアデルデンを握りつぶす共に、二の腕まで姿を現す。
「おいおい、何の冗談だ? 異界の魔神ギガノブロテスかよ」
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